『吸血鬼を狩る者 「序章」』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:七野了                 

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序章 〜吸血鬼を狩る者〜


 ローマ――

 ここでは人間のほかに、吸血鬼と言う生き物が存在している。人間の血を吸い、まるで人間を玩具のように扱う化け物――人々からそう恐れられていた。
 だが、吸血鬼に対抗する者たちも居る。

 ―――それが教皇庁



「主よ、聖母様……私をお守りくださいませ…」

 尼僧の服を来ている一人の少女が、十字架を握り締めながら歩き続けていた。
 辺りは夜――この辺は吸血鬼エリアだ。吸血鬼が出るのもつかの間だったが、少女…ファラ=アシュレイはここに来る理由があったからだ。

「兄さん……必ず仇を討つからね……」

 そっと十字架に触れながら、片手には銀が入っている銃をぎゅっと握り締めていた時、風も吹いていないのに、大樹がそっと揺れる。
 ファラは息を呑むと、銀の玉が入っている銃を構えると、そこに同じ顔をした二人の女性が立っている。

「おや、だれかいらっしゃったようよ、ミリス」

「マリス、紛れ込んだのは可愛い小鳥」

 顔をあわせると、クスクスと笑い出す二人に、ファラは恐怖を感じながら銃を構えていた。

 琥珀色の瞳を閃かせて、薄桃色の唇が囁いた。

「ミリス、弱ったわねぇ…せっかくのお客さまなのにお茶の準備をしていないわ。」

「あ……兄上をどうした、この化け物ども!」

 揺れた蝋燭の炎をあわせて、三つの影が奇怪な生き物のように踊る。内心、それに怯えながらも、少女は渾身の力を振るって叫んだ。

「わ、私はリフォカリエス教会のシスター、ファラ=アシュレイ!兄上の仇をとりに来た!いざ、尋常に勝負しろ!」

「兄上?ひょっとしてこの小鳥ちゃんが言っているのは、あの勇敢な雄鶏君の事なのかしらマリス?ほら、この間私たちに聖書を呼んでくれたあの雄鶏君。」

「せ…聖書ならここにあるぞ!十字架も!そして、銀入っている銃も……さぁ、覚悟してその首を差し出せ!」

「「貴方のお兄さんはとっても美味しかったわ小鳥ちゃん」」

 甘い声は、直接、両耳の耳朶に吹き込まれた。
 二つの手は両肩をつかまれ、ファラの顔は霜でも降りたかのように真っ白になった。確かに距離が置いてあったはずなのに、目の前から消えていた。
 まるで瞬間移動をしたかのように、二人の化け物たちは勇敢な少女の背後に立っていた。

「一生懸命、聖書を読んで……」

「十字架を突き付け……」

「それから命乞いをして……」

「結局、私たちのご飯になった。」

 かわるかわる囁かれる声に、ファラは答える事すら出来なかった。凍りついたように立ち尽くす少女の手に氷のように冷たい指が巻きつき、銀の銃を床に落とした。

「この小鳥ちゃん。兄より賢かったわよねぇ…ミリス、用意はいい?」

「そうねマリス。忌々しい銀……我ら長生種は紫外線の次にこれがお嫌い。」

「怖がらなくても良いわ、小鳥ちゃん。貴女は愛しいお兄様の所に会いに行くのですから」

 裂けた薄桃色の唇から、八重歯にしては長すぎる輝きと、ねっとり甘い声がこぼれた。
 
「さぁ小鳥ちゃん。貴女のお味はどうかしら?」

 窓から咲きこむ数かな月明かりの中、紺色の唇が、そっと少女の首筋と重なった。白々の光る牙が、初々しい柔肌にゆっくりと埋められる―――





「いけないなぁ…こんな所で食事とはな……」





「「!?」」

「食事する前に、まず私と勝負してみないか?」

 天窓の向こうには、蒼い夜空が見える。その南店から地上を見下ろす二つの月――銀色の真円を描いた一つ目の月。
 そして、血のように紅い姿を浮かべた二つ目の月の不吉な光のした、忽然とたたずんで居たのは影だ。

「吸血鬼マリス・ザドロフシュカ、同ミリス・ダドロフシュカ……父と子の精霊の御名においてあなたたちをこの村における二十二件の殺人および、血液強奪容疑で逮捕する。」

 と、そっと銃を出すと、そのまま二人の吸血鬼に向ける。二人が気づいたときにはもう遅く、さっきまで離れていた筈なのに、そこに居た影は、二人の傍に居たのだ。
 
「そ…その尼僧服は…」

「教皇庁!?」

「そう言う事だ。大人しくしていないと私は手加減と言うものを知らない。もしかしたら死ぬかもしれないぞ?」

 銃を構えていると、ミリスは動き出す。
 尼僧服を着た女性はニヤっと笑い、ミリスが攻撃をしてくるのを読んだかのように、すっと避ける。

「な!?」

「こう言う攻撃は…ワンパターンなんだよ……さっきも言ったはずだが、私は容赦と言うものを知らない。」

 突然尼僧服を着た女性の右目が紅く光だし、その赤い光をあびた双子は、その場に固まってしまう。身体を動かそうとするが、動けない状態だった。
 ミリスとマリスはただ呆然としながら、女性の方を見て言る……

「お…お前はいったい…?」

「私か?」

 女性はクスクスと笑い、そしてそっと答えながら、女性は引きがねを引く。


「私は教皇庁国務聖省より派遣された者……コードネーム「漆黒の堕天使」。まぁ…吸血鬼を狩る者だよ。」


2003/12/02(Tue)16:11:53 公開 / 七野了
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