『家―2―』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:来夢                

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放課後、玄関で靴を履き替えていると面倒くさい人に話しかけられた。
「藤森さん」
それはクラスメイトの男の子。
背が低く、眼鏡をかけ、彼の周りはいつも優しい空気をしている。
靴を履き替え外に出ても、何故かついて来る。
「金谷君て電車通だっけ」
なるべく普段道理にしたつもりだが、やはり少し声が低めになっていたかもしれない。
「うん」
私は自転車通学で、つまり自転車小屋に向かう途中まではついて来る気だ。
ため息を小さく吐いた。
「藤森さんて今一人暮らしなんだって?」
「うん でも多分本当に少しの間だけだから」
「でも大変じゃない?」
「全然平気だよ〜」
「なんかその家少し変わってるって聞いたけど」
『くそ、誰だよ。余計なこといいやがって』
私は心の中で叫んだ。
「本当に大丈夫?何かあったら言ってね」
彼は本当に心の底から心配しているような声で言う。
何を期待しているのか、それとも何も考えていないのか。
授業中少しでも寝ていれば寝不足かと、学校をサボれば風邪かといちいち聞かれ心配される。
みんなは彼のことをいい人だというけれど、私には余計なお世話だとしか思えなかった。
けれどそんなに人のことばかり心配していてよく疲れないな、と少しだけ感心してしまう。
自転車小屋が見えると、私は急ぎ足になった。
「じゃあ。また明日」
「うん ばいばい」
彼と別れ、自転車に乗ると、私はペダルを思いっきりこいで家へと向かった。


家の前に女の子がいた。
ほとんど泣きそうな顔をして家のほうを見ている。
「どうしたの?」
自転車から降りて、少女に声をかけた。
「な…に…ボ…が…」
搾り出すような小さな声を何とか聞き取ると、どうやら塀の中にボールが入ってしまったらしい。
門を開け、庭を見渡す。
赤色のものが八重桜の木の下に見えた。
『あれだな』
しゃがんだり、体を捻ったりして八重桜の下にたどり着いた。
目をボールを手で取り上げると、その下に何かの欠片が見えた。
とりあえずボールを女の子に渡そうと思い家の外に出ると、そこには誰もいなかった。
『また幽霊?』
しかたなくボールを玄関の前に置き、私はまた八重桜の下に立った。
『何か埋まってる…』
手で土を掘ってみると、あっさりとそれは姿を現した。
古い長方形の小さな封筒。


ふたを開けた。

中には写真一枚。
着物姿の若い男女の写真だった。
多分男の人はおじいちゃんだと思う。
おじいちゃんが死んだ後、アルバムを整理している時見せてもらった写真と同じ顔だった。
じゃあ女の人は?
おばあちゃんかもしれない。
けれど私はおばあちゃんを知らない。
おばあちゃんはお父さんが子供の頃に死んだと聞かされていたし、写真も一枚もなかった。

写真に一粒の水滴が落ちてきた。
『雨だ』そう理解するのにずいぶんと時間がかかった。
頭の中は新しくみつけたもののことで一杯だったから。







2003/11/30(Sun)20:58:02 公開 / 来夢
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