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   『あめだま。』  ...  ジャンル:未分類 未分類
 作者:らぃむ。                 
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 あめだま。
 
 学校の退屈な授業。教室で騒ぐ面々。アタシは大人しく授業に参加する。赤紫色のフレームが可愛いメガネかけて、ノートと教科書を開いて。センセイが黒板に書いた事をきちんと記入。色ペンでマークを付ける事を忘れずに。手前の子が携帯片手にメール打ってることなんか、構わない。たとえその子がテストで成績が悪かろうと、知ったこっちゃない。それは個人の問題だから別にどってことはない。
 
 落書きだらけの机のなかに仕込んだ飴玉の袋。こっそり封をきる。センセイにバレないように、顔を黒板に向けて。音なんかでバレることはない。元々五月蝿いこのクラスメイトたちがいるから、当然、袋を開ける音なんかがセンセイの耳に届くなんてことはない。更に言えば先生は年だし、耳も遠くなっているだろう。だから簡単にモノが食える。
 小さい袋から取り出した飴を、手のひらに落す。添加物がいっぱい含まれていそうなほど真っ赤な飴。相当着色料を使っているのだろう。その飴を、センセイが黒板の方に向いた時、口元に手を当て、ソレを含んだ。
 着色料がたっぷり含まれた飴は、口の中でコロコロと転がった。飴の味は、見た感じからも分かるかのように、イチゴ味だった。
 
 カリカリと、黒板の上で白のチョークがダンスする。
 真っ白な粉が飛んで、チョークを持っているセンセイにふりかかる。
 
 急いで飴の入っていた袋をポケットに仕舞いこみ、シャーペンを左手で持ちなおし、黒板に書かれた内容を書きこんだ。
 『あ』
 ちょうど書いていたページのスペースが切れかかっていた。慌てて次のページを開いて書きこんだ。
 色とりどりのペンを次々に取り替えて、大事な個所をマークしていく。ふと手を止めて、ペンを眺めた。今口の中で転がっている飴の色と同じ、赤い色だった。しかし、このペンの色とは違って、飴の方は少し、透明っぽかったのを思いだし、また、ノートに書きこみはじめた。
 
 トン、トン。
 
 後ろで誰かがアタシを突ついた。
 『なぁに、ユカ。』
 突ついた犯人は、アタシの後ろの席のユカだった。ユカはちょっと焦った感じで、ドコにマークを引くべきなのかと聞いてきた。
 『えっと…今減数分裂の図を書いたでしょ?んで、その中のー…ココが、相同染色体だから、ココにマークを引けば大丈夫。』
 『アリガト〜、助かったよ』
 ユカは安心したのか、笑顔をこちらに向けた。
 『あ、コレ教えてもらった授業料。口の中のモノがなくなったら食べな。』
 そういって、ユカの手の中のモノを貰った。“口の中のモノ”といったのだから、多分――――。
 
 
 手の中で、着色料がたっぷり詰まった小さな飴が、いくつか転がっていた。
 
 *END*
 
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2003/11/29(Sat)11:05:27 公開 / らぃむ。
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■作者からのメッセージ
 最近授業がつまらないからと舐めているんですよ、飴。オススメの飴、あったら教えてください。
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