『涙は流れ続ける……』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:クレイドル                

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 俺は、生まれたばかりだが、体のでかさは、2、30メートルあった。
 そして、その体は重金属で創られている。俺の親は、優秀な連中ばっかりだ。そう1人ではない。親はたくさんいる。
 俺には、Killer−SR−20という名前が与えられた。
 一体、どういう意味を持つのか解らないが。
 俺には、ある任務が与えられた。世界平和の維持という高貴な任務だ。
 この任務を果たすために、特別な学習は別段必要なかった。
 何故なら、生まれる前に、俺の頭脳には、ありとあらゆる英知が、デジタル信号によって組み込まれていたから。
 後は、任務遂行の日を待つだけだ。
 別に難しい事をする訳ではない。ただ、お偉いさんに背中を押してもらうだけで、俺は動き出すことが出来る。後はプログラムされた通り動けば良いだけだ。
 簡単なことだ。 
 恐らく、俺はいい結果を導くはずだ。間違いない。
 やがて、俺に任務遂行の話が上がった。
 俺を創り上げた親達は、皆喜んでいた。
 「これで、この戦争は終わる。」
 と………
 「お前は、この忌まわしき戦いに終止符を打つことが出来る偉大な存在だ。正義の女神だ。最後の審判を下す神だ。さあー怒りの斧を振り落とすのだ。」
 お偉いさんが、叫んだ。
 そして、お偉いさんは震える指で、赤いボタンを押した。
 俺の体が、熱くなってきた。やがて、激しい振動が俺の体を包み込む。
 そして、俺は、空を目指した。
 何の障害もなく、青い空を白い雲のように駆けていく。
 俺の任務遂行の時間が、刻々と近ずいてくる。
 そんな一瞬だったかも知れない。。
 俺は、夢を見た。
 それは、激しい光に包まれ、あっという間に、焦土と化した世界だった。
 炎に包まれる中、人々逃げ惑い、喚き続ける。
 おぞましい光景だ。まさに地獄絵だ。。
 苦しみ続ける人間の姿以外、見つけることができなかった。
 何てこった、場所によっては、黒こげになった屍しか見当りはしない。
 そして、永遠に燃え続ける炎。一体何が起こったのだろう……
 場面が変わった。
 俺を創った親達だ。彼等は全員で、喚起の声を上げて喜んでいる。
 「これで、戦争は終わる。恐らく誰もが喜ぶ。犯罪者も、悪魔も、魔女も、死神も、全員だ、すべての者が喜ぶに違いない。。」
 叫んでいた。。。
 しかし、その喜びもつかの間だった。彼等は、次々と精神を病み、自殺する者、精神病院で一生を過ごすことになった者、皆、まともな人生を送っていない。何故、戦争を終了させた英雄なのに。。。
 そして、俺に任務を命じたお偉いさんは、その後、廃人になった。何故、最初はあんなに喜んでいたのに。。。。
 やがて、俺は夢から覚めた。一瞬の間にとても長い夢を見たような気分だった。
 そして、任務遂行、5秒前、突然涙が溢れ出した。
 何故!さっき見た夢が原因なのだろうか。
 涙が次々と溢れ出して来る。
 止まることを忘れている。
 涙が流れ続ける中、俺は確実に任務を遂行した。
 世界が平和になることを信じて。

 完
 
 

2003/11/23(Sun)23:16:07 公開 / クレイドル
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