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   『魂もあげるから・・・』  ...  ジャンル:未分類 未分類
 作者:暁菜                 
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 「行ってらっしゃい!」
 私は、いつものように彼を・・・拓哉を仕事に送り出した。笑顔で。
 これからおきる、出来事など、夢にも見ていなかった。
 「いってきまース!」
 拓哉のあの笑顔を見たら、何も考えられなくなった。
 いつも通りの、日常が始まるとしか思っていなかった。
 
 
 
 
 「ただいま。」
 拓哉が帰ってきた。笑顔。
 私も笑顔で返す。
 「おかえり!早いのね、まだ午前中。」
 私は、そう言い終えると、拓哉の方へパタパタと小走りに近づく。そして、重そうな会社着を脱ぐのを手伝ってあげた。
 「ありがとう。」
 「いつもの事でしょ。」
 そう、これがいつもの生活。私の生きがい。拓哉のそばに居られる事、拓哉を手伝ってあげれる事が、私の今の生きがい。
 「いつもの事だけど、それが僕には、とても大きい事に感じられるんだ。君にしか出来なくて、君じゃなくちゃいけなくて・・・。本当は毎日ありがとうを言うべきだったと思ってるよ。」
 そんな事、今まで言った事無かったから私は凄くビックリした。
 「・・・そんな事無い。私は拓哉の役に立てる事が嬉しくて・・・・。」
 拓哉の手が、私の肩を優しく掴む。真剣な目に、私は黙ってしまった。
 「ありがとう。今まで、僕の役に立ってくれて。僕を支えてくれて。君がいたから・・・・僕は・・・」
 「・・・・・拓哉」
 「君は、僕の生きがいだった。無くしたくないものだった。」
 「・・・・」
 拓哉の顔が近づいてきたので、私は目を閉じる。
 
 ・・・・しかし、閉じてはいけなかったのだ・・・・・・!
 
 「・・・・拓哉?」
 目の前には、もう拓哉は居なかった。
 
 
 
 
 「拓哉・・・拓哉・・・拓哉・・・!」
 私は、裸足である事にも気付かずに、外に飛び出していた。拓哉が居ない事は、感覚でわかっていたけど、理解と気持ちは別。理解できても気持ちには言い聞かせられない。たとえ叫ぶ事しか出来なくても・・・・。
 「・・・・拓哉・・・拓哉ぁ・・・!」
 私は、道に座り込んだ。両手は目から溢れる涙を拭っていた。
 「・・・か・・して・・・たく・・や・・・を・・・・」
 私は抑えきれない気持ちを、空に叫ぶ。
 「・・・・拓哉・・・を・・拓哉を、返してよぉぉーーーーーーー!」
 
 『神様。神様、神様・・・カミサマ・・・・カミサマァ・・・』
 
 涙を拭う事などほっておいて、両手を合わせる。手が震えて、合わさっているのか自分じゃ解らなかった。
 「わ、私・・の、体・・でもっ・・・なんで・・も、あげる・・・た、魂も・・・あげる、からっ・・・だっだからぁ、」
 立ち上がって、天に良く声が届くように・・・
 「おねがい・・・っ・・・・たく、拓哉を・・・返してぇぇーーー!返してよぉ!返せ!返せよぉ!返せぇぇ!・・・・・・返して・・・」
 ふらついた・・・・
 
 
 
 
 気付いたのは、病院の中だった。私は、あのまま道で倒れていたらしい。
 「鈴木さん、鈴木 みやこさん。お電話です。」
 「・・・はい。」
 私は自分の名前を呼ばれて返事をした。
 「どうぞ。」
 「・・・・どうも。」
 受話器に耳をあてた。警察の人らしい。
 「・・・ここからが本題なんですが、」
 「はい・・・」
 「ご主人が、昨日亡くなられました。事故で・・・」
 「・・・・拓哉」
 私の意識はそこで途切れた。
 
 
 
 
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2003/11/05(Wed)21:07:30 公開 / 暁菜
 ■この作品の著作権は暁菜さんにあります。無断転載は禁止です。
 
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■作者からのメッセージ
 いやぁ、ガラにも無いですね!
 私も最近熱を出して頭がどうにかなったんすかね!
 でも、感想やアドバイスもらえると嬉しいんですが。
 私は、そうっすね。こんな未来は来て欲しくないですね!幸せが一番だ!
 贅沢言うなら不老長寿&不死・・・
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