-
『8×8〜最期の告白〜 後編』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:Rue
-
123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
「やっぱり強いな、香は。」
ゲームを始めて十数分ほど経っただろうか。
あと3手くらいで香が勝つだろう。
俺は下を向いて、ずっと考えていた。
次の手じゃない。
香の「話したい」ことだ。
ゲームを始めてから香は一言も喋っていない。
ためらっているようにも見えた。
珍しいこともあったもんだ。
どんなことでもストレートに言う香が。
このままではゲームは終わらない。
俺はポーンを進めようと手を伸ばした。
その瞬間、香が突然口を開いた。
「亮・・・、わたし、ずっとあんたのことが好きだったの。」
あまりに突然だった。
俺は一瞬理解できなかったが、すぐに気づき、香のほうを見た。
香はいなかった・・・。
ついさっきまで、チェスをしていたはずだ。
外に出た様子もない。
部屋の中に隠れているのだろうか。
そう思って席を立ったとたんに、出入り口の扉が勢いよく開いた。
「亮!!」
健太だった。
「ど・・どうした?そんなに急いで・・・。」
俺は半ば混乱していた。
今日はいつもとは何かが違う。
突然なことが多すぎる。
そして、健太の言葉が追い討ちをかけることになった。
「香が・・トラックにひかれて・・・死んだ。」
俺の思考回路は完全に止まった。
何度呼びかけても、香は返事をしない。
何度探しても、香はどこにもいない。
ただそこには、チェス盤があるだけだった・・・。
-
2003/10/29(Wed)17:28:50 公開 / Rue
■この作品の著作権はRueさんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
題名の「8×8」ってのはチェス盤のことです。なんとなくつけてみました。
作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。