『桜咲く夜空』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:はるか                

123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142
夏の光が冬を射す。不思議な風が桜を包む。運動場に一つだけ桜の樹があった。緑の桜も華麗、綺麗。

春。新しい制服身にまとい、一つの桜の樹を背景に集合写真。最後のクラスも取り終えて一休みの桜の樹に1人の少女が駆け寄った。
「サキ」
少女は桜の樹に向かってそう呟いた。と即座に桜の樹から離れていった。
夕方の風に吹かれて桜散る。みるみる黒ずんで行く空を見上げながら桜の樹は何故か寂しそうだった。夜の風吹く運動場、昼間に比べ物にならない程静かだった。ずっと桜の樹は闇に溶けていた。ただ、時々、儚そうな月の光だけが桜の樹を照らしていた。桜の樹は月の光で微笑んだ。朝日が昇る数秒前、桜の樹は大きく息を吸い込んだ。朝日が昇る頃、桜の樹は凛として朝日を眺めている。徐々に増えてゆく生徒の姿。桜の樹は昨日の少女を探していた。と1人、桜の樹に向かって走って行く少女がいた。昨日の少女だ。
「サキ!」
来るなりそう叫ぶ少女を桜の樹はまじまじと見つめた。
「あなたの名前はサキ。ね?」
ね?と言われても・・そう桜の樹は思い困っただろう。だが桜の樹は嬉しかった様だ。いかにもわざとの様に桜の花びらを風に乗せた。少女は満点の笑顔を見せた。そして、去っていった。
そんな日が続き桜の花の終わり近づく。だが少女は変わりなく桜の樹に・・・いや、サキに会いに来ていた。が、次の日からは来なくなった。サキの不安は募る。少女は一体どうしているのだろう。夜のサキは寂しげだったが今では昼間の寂しそうだった。知らず知らずのうちに少女から力をもらっていたんだろう。サキの力ももう切れそうだった。それから数週間。サキの桃色は緑色に変わった。と、同時の様に運動場に人影はなくなった。毎日、大きな声が響いていたのに聞えてこない。数ヶ月も経ってサキは廃校になった事を知った。少女は廃校になる前に転校したのだと悟った。秋、緑が赤っぽい色になりやがて冬になった。でも雪かきの人たちが現れなかった。去年まではサキのまわりの雪をどけてくれていたのに今年は無かった。葉はなくなり樹だけのサキは惨めさを感じていた。桜の使命は桜を咲かせる事。冬に桜は無茶だけど何故か惨めだった様だ。日に日に暖かくなり溶けてく雪とともにサキは自分の名前を溶かしていた。桜の樹。小さなつぼみをつけた日だった。あの少女がやってきた。
「サキ・・・」
寂しそうな顔に無理に笑った少女にサキは笑う事が出来なかった。どうしたの?その一言聞けたらいいのに。サキはそう思ったんじゃないだろうか。少女は蕾を見て小さく笑い、
「咲いてね」
と言った。ふっと、太陽の光がなくなり一気に夜の様に暗くなった。夜桜。サキは思い切り高々と背を伸ばした。すると、サキは桃色を咲かせた。わぁっと少女がサキを見上げた。と夜の肌寒い風が吹き桜の花びらを宙に乗せた。サキは花びらと共に言葉を乗せた。「笑って」すると、少女は満点の笑顔を見せた。聞えたのだろうか?そんなはずはない。
「サキは咲いたね。私も咲けるかな。」
そう言ってくるっと振り返り歩き始めた。とサキは少女に向かって叫んだ。「名前は?」
届くわけが無い。そう分かっていた。音にもならなかった。だけど少女は立ち止まりサキの方を向き言った。
「つぼみ」
と言って暗い運動場消えていった。つぼみ・・・。サキは夜空を見上げて思った。サキの名前。勇気がなくて静かだった少女は咲きたかったんだ。勇気が欲しかったんだ。だけど咲けなくて桜の樹にサキと咲の字をサキと読んで名前をつけたんだと。思っているだけだけどサキにはつぼみの声が聞えた様だった。

それから数年経った。サキの周りをきれいにしてくれる人もなく、サキの四季は狂っていた。春。いや、冬。今、蕾をつけた。サキは言った。
「つぼみ、つぼみは絶対咲けるよ。サキという名前付けてくれたでしょ?」
数年前と同じ事を思った。届かない。聞えない。そう分かってた。でも、桜を見せる事が出来るのはこれが最後。そう悟ったから。だからそう言った。と、目の前に少女の姿。つぼみだった。
「ありがとう」
なんで・・・?サキはそう思っただろう。聞えてないはずなのにつぼみには思った事が伝わる。つぼみの頬を伝わる輝くものがあった。その光でサキは精一杯の桜をつぼみに浴びせて消えた。運動場一面の雪の上、桜の花びらが散った。白を背景に桃色花びら。
笑いながら、泣きながらつぼみはサキを見つめていた。

不思議な桜は運動場に。元気の無い人に桜は綺麗な花びらで元気づけて。桜咲いた夜に僕は何を祈ろう。

2003/10/20(Mon)22:46:31 公開 / はるか
■この作品の著作権ははるかさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
何が言いたいんだか・・・。冬で春のイメージで書いたんですが・・・ってここで意味不明ですね。(笑)運動場の広さと桜の存在。雪に桃色。綺麗な景色を感じて貰えればと思います。でもやっぱ、変ですよね・・・。感想お願いします

作品の感想については、登竜門:通常版(横書き)をご利用ください。
等幅フォント『ヒラギノ明朝体4等幅』かMS Office系『HGS明朝E』、Winデフォ『MS 明朝』で42文字折り返しの『文庫本的読書モード』。
CSS3により、MSIEとWebKit/Blink(Google Chrome系)ブラウザに対応(2013/11/25)。
MSIEではフォントサイズによってアンチエイリアス掛かるので、「拡大」して見ると読みやすいかも。
2020/03/28:Androidスマホにも対応。Noto Serif JPで表示します。