『雪の日の奇跡』 ... ジャンル:未分類 未分類
作者:旅の小説家                

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雪の日の奇跡

僕の名前は長谷川 和樹(はせがわ かずき)、どこにでもいそうな普通の高校3年生だ。それは高校生活最後の冬のことだった。僕には前から好きな人がいる。昔からの幼馴染で名前は桜井 澄香(さくらい すみか)という。僕とは違って、勉強もできて、運動もできて、みんなから好かれる存在だ。僕には、そんな澄香と学校へいって、おしゃべりをして街へ一緒に遊びに行って・・・そんなささいなことがとても楽しく、そして幸せだった。高校生活が終わったら会えなくなるかも知れない。僕はそのことをあまり考えないことにしていた。しかし、そんな僕の心に反し厳しい現実が待ち受けていた。

「澄香はどこの大学に受験するの?」

当然僕とは違い頭のよい澄香は、一流大学を受験することに決まっていた。僕には到底いけそうにない。

「和樹はどこの大学に受験するの?」

もちろん僕にでもいけそうな大学を受験することにしていた。そのことを澄香にいうと、澄香は悲しそうな顔をして僕にこういった。

「そうなんだ・・・じゃあ私たち会うことが少なくなるね。ちょっと寂しいかな。」

澄香は苦笑いして僕の顔を見ている。一時の悲しい空気がその場を流れた。僕は慌てて話題を変えた。それからは、いつものようにいつもとなんら変わりない話などをして、学校を後にした。季節は冬。周りの木はほとんど葉がおちていて、いかにも冬を感じさせた。今にも雪が降って来そうだった。そんな学校からの帰り道、僕は心に決めたことがあった。それは、高校生活が終わる前に澄香に告白をすることだ。冬の凍てつく寒さの中、僕は家に帰ったきた。誰もいなく、シンと静まった家の中に向かって、僕は1人で、

「ただいま・・・」

そう一言・・・それが僕の日課となっていた。ストーブをつけて部屋が暖まった頃、僕は夜御飯を作り、食卓テーブルに並べていた。夜御飯を食べて落ち着いたところで、澄香にメールを送った。そして何通かメールを交わしているうちに僕は眠たくなり、布団にもぐった。気づいた時にはもう、朝8時をすぎていた。

「やべー!学校に遅刻する!」

学校へ行く支度をさっさと済ませて急いで学校へいった。今日も昨日と同じくとても寒かった。しかし、空はとてもよい快晴となっていた。僕は何故かそういう日が好きだった。でも、そんなことを考えている暇はない。学校まではバスを何本か乗り継いで、早くても40分はかかる。やっと学校へたどり着いたその時には、学校の時計は9時を指していた。急いで授業中の教室に入ると先生怒られて、クラスメートから冷やかしが飛んできた。澄香はそんな俺を見て、クスッっと微笑した。そして、僕にとって憂鬱な高校3年生の難しい授業が終わった。もうそろそろ本格的に受験について考えている時期であった。しかしぼくは受験について甘く考えているのか、あまり勉強はしていなかった。放課後、いつのもように僕は、澄香と話をしていた。澄香は僕にこんなこと言ってきた。

「今日はどうして遅刻したの?学校休むかと思っちゃったよ。」

そんな澄香の質問に僕は少しはずかしそうに答えた。

「今日の朝、寝坊しちゃって、気が付いたら8時過ぎてたんだよ。」

「なんか、ドジでいかにも和樹って感じだね。」

「ドジっていうのは余計だろ。」

そんなことを話しているうちに、学校から帰る時間が近づいていた。

「私、もうそろそろ帰るね。」

そんな澄香の言葉に僕は勇気をもって、ついに言った。

「なぁ澄香。今日は久しぶりに一緒に途中まで帰らない?」

そんな僕の言葉に澄香は少し驚いた表情で、答えた

「和樹から私を誘うなんて珍しいね。じゃあ途中まで一緒に帰ろうよ。」

二人で学校を出て、僕は緊張していた。いつ告白するか・・・そんなことを考えているとついつい無言になってしまった。

「和樹、どうしたの?今日は珍しく静かだね。」

「なんでもないよ別に。」

僕はそう言うと少し笑って見せた。あたりは静寂に包まれていた。告白するなら今しかない。僕はそう思うと、無意識のうちに口から言葉が出ていた。

「なぁ澄香・・・」

澄香はキョトンとした顔をしてこちらを見た。

「どうしたの?急に改まっちゃって。」

「うんとさ・・・あの、その・・・」

言葉が突っかかって僕は口ごもった。心臓が凄くバクバク動いているのがわかる。そしてついに僕は言った。

「俺さ・・・前からずっと澄香のことが好きだった。付き合ってくれ!」

言った。一か八かだった。これで付き合うことになればそれでうれしいが、振られればたぶん大学へ行ってからもう一生合うことはないだろう。そんなことを僕が思っている時、澄香がしばらくの沈黙の後口を開いた。

「ホントはね・・・私、大学へ行って和樹と離れるのがとても寂しかったの・・・それは、私も和樹のこと好きなんじゃないかな?って思ってたの。だから私も和樹のことが好き。これからはよろしくね。」

そういうと、澄香は僕の腰に手を回し抱きついてきた。僕はそんな澄香を軽く抱きしめた。昔は同じぐらいの身長だったけど、今は僕の方が身長が高くなっていた。そんな小さな澄香が今は、凄くかわいく思えた。そして、澄香を抱きしめながら僕は沈黙をやぶり口を開いた。

「ああ・・・よろしくな。」

僕は凄く照れていて顔が真っ赤になっていた。やがて白くて冷たいものが降ってきた・・・雪だ。とても神秘的になっていて、たぶん僕には一生忘れない思い出となるだろう。明日から楽しい日々がくるんだ。そう思うと胸が躍るようだった。僕と澄香は互いに挨拶を交わし家の方向へ歩いていった。家に帰って誰もいない。僕はいつものように、

「ただいま・・・」

と、一言。いつものように夜御飯を済ませて、皿洗いをして風呂へ入って・・・いろいろなことをしたあとに、澄香へメールを送った。少し照れくさく思った。いつものように何通かメールをしたあと、僕は布団にもぐった。そして朝がやってきた。今日は朝食をしっかりとって学校へ行く時間は充分あった。家を出ると、そこには昨日と同じ気持ちのよい快晴が広がっていた。

「今日は気持ちのいい日だし、少しゆっくり歩かな。」

僕はそう一人でつぶやくと、学校への道を歩いた。バスを何本か乗り継いで、バスを降りたそこにはなんと澄香が立っていた。

「あれ?澄香、どうしたこんなところにいるの?たしか家は逆方向のはず・・・」

澄香は顔を赤くしこう答えた。

「今日はちょっと一緒に学校いきたくて・・・ね」

そんな澄香の言葉が、うれしくてたまらなかった。もちろん二人で学校へ行くことにして、学校へ歩き出した。そんなことが1週間の間毎日続き、今日もまた、いろいろおしゃべりをそながら歩いているうちに、学校へついた。そしてまた授業が始まった。なんとなく外を見るとだんだん雲行きが怪しくなってきた。そして学校を帰るころには吹雪いていた。

「急いで帰ろう。」

僕がそう言うと一緒にいた澄香も少し歩くスピードを早めた。そしてお互い手を振り別れてそれぞれの方向へ歩き出した。100メートルぐらい歩いたその時、

「キャッ!」

澄香の声が聞こえたような気がして、凄い悪寒がした。僕は気のせいだろうと歩いているとやはり澄香の声が気になり、澄香の家の方向へ走り出した。なんとそこには倒れている澄香の姿があった。急いで駆け寄り声をかけた

「おい!澄香大丈夫か!お〜い!」

しかしすでに澄香に意識はなかった。急いで救急車を呼び、澄香は病院へと運ばれていった。一緒に病院へ同行し、そこではとても残酷なことを聞いてしまった。

「澄香は・・・澄香は大丈夫なんですか?」

「残念ですが・・・頭を強く打っていて、脳死状態です。もう2度と目を覚ますことはないでしょう。車にひき逃げされたんだと思います。」

「そんな・・・」

僕が帰り道を歩く中、目にはうっすらと涙が浮かんでいた。それからの毎日というもの、毎日がとてもつまらなくなっていた。澄香の所へお見舞いへ行くことにした。病院につくと澄香の集中治療室へと足を進めた。集中治療室の中には、ベッドに寝ている澄香の姿があった。そんな澄香の頬に手をあてて、

「また・・・絶対に二人で楽しく過ごそうな。」

僕はそう言うと病院をあとにした。凄く寒くて今にも雪が降ってきそうだった。公園の前に通りかかると、そこには信じられない光景があった。なんと公園の池の前に澄香が立っているのだ。僕は急いで澄香に駆け寄った。澄香は僕に気づき振り返るとニコッっと少し笑って見せてきた。

「澄香、病院で寝てるはずなのに・・・どうして?」

澄香は悲しそうな顔をして答えた。

「あのね、和樹のことを思うと安心して眠っていられなくて、私にもわからないけど何故かここに存在しているの。」

僕はそんな言葉を必死に理解したことにした。

「私わかるの。あともう少しで私は消えちゃう・・・」

「そんな・・・」

「ゴメンね、一緒にいられなくて・・・本当にゴメンね。もっと和樹といろいろなところへ遊びに行って仲良くなりたかった。」

そういうと澄香は涙を浮かべた。

「消えちゃうなんて言うなよ。いつかまた二人で楽しく過ごそう。」

僕がそういい終えた頃に、澄香は淡い白い光を放って澄香は消えかけていた。僕は今にも消えそうな澄香を抱きしめると、澄香も僕を抱きしめた。

「ホントにゴメンね。和樹・・・またいつか会おうね。」

そういうと、澄香の姿はうっすらと消えていく。

「ああ・・・必ず一緒に・・・」

そういい終えると澄香の姿は僕の前から消えていった。あたりが静寂に包まれた。その時だった。僕の携帯電話にメールが入った。病院の先生からだ。そこには、

「澄香さんが奇跡的に回復し、今ベッドから目覚めました。」

と、そう書いてあった。僕は信じられなかった。しかしそこへ1通の電話が入った。澄香からだった。

「今ね何故か回復して起きれるようになったの。また楽しく二人で付き合っていこうね。」

「よかったな澄香・・・ホントによかった。」

僕の目には少し涙が浮かんでいた。そのことを悟った澄香は

「男の子が泣いちゃダメでしょ。」

と、からかってきた。

「じゃあ私早く学校へ通えるように回復するためにもう寝るね。」

「ああ、オヤスミ澄香。」

「うん、バイバイ。」

そう言うと電話が切れた。そして僕は家へ向かって一歩、また一歩と歩き始めた。僕の心は喜びにみたされていた。あたりは僕の心を包み込むように、優しく雪が降ってきた。告白したあの日と同じ・・・僕は心こう思った。

『雪の日の奇跡だ・・・』

そして家への帰り道を急いだ。


2003/10/20(Mon)20:31:23 公開 / 旅の小説家
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