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   『アイのカタチ・第二話』  ...  ジャンル:未分類 未分類
 作者:クローズン                 
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 透はとりあえず、恭子がちゃんと登校してきたのか確かめようと教室へ急いだ。
 (大丈夫かなぁ・・・)
 いや、大丈夫。絶対来てる筈。透は自分自身にそう言い聞かせた。
 (恋なんてしたことないからわかんないけど)
 あれくらいで登校拒否なんてしないよ、うん。するわけない。
 そう言い聞かせつつも、いつの間にか早足になっていた。
 何度も人にぶつかりそうになりながらも、とにかく急ぐ。
 そして教室に入った。
 「おはよー、透。」
 「ああ、おはよー。」
 親友の由紀だ。透は彼女の顔を見た途端、妙にホッとしてしまった。
 なんだか、世界が滅亡してしまうような絶望感にいつの間にかさらされていたらしい。人間、異様に急いだりなんかしてると、思考が偏ってしまうものだ。
 「どうしたの?息なんて切らして」
 「あ?いや、別に・・・」
 「そお?じゃぁいいけど。それよりさー、昨日のアレ見た?」
 由紀が夢中で話してる間、透は教室を見渡してみた。
 男子生徒がふざけあっていたり、女子はおしゃべりに夢中になっていたり。
 いつもと変わらない。だが、透はそこに物足りなさを感じた。
 「恭・・・あ、小山・・・さんは?」
 物足りないもの―恭子。
 そう、彼女がいないのである。思い切って透は聞いてみた。
 「まだ、来てないのかな・・・」
 「?そうなんじゃない?」
 恭子について特に関心のない由紀だからこその回答だった。
 透は少しがっかりしたが、考えてみれば、まだ始業時間まで時間がある。
 もう少ししたら来るのだろう。いや、ひょっとしたら遅刻ギリギリで来るのかもしれない。
 (そうだよ、そうに違いないよな、うん)
 透はそう割り切って考えることにした。
 「それでさー、そこでCMはいっちゃってさー、」
 「マジ?それでどうなったの?」
 由紀と雑談。
 と、しばらくして、始業のチャイムが鳴った。
 
 
 
 「青山。」
 「はい。」
 「榎本。」
 「はーい。」
 朝のホームルームの時間だ。
 担任教師が生徒の出席を確認していく。
 いつもはこの時間ボーっとしてるのに、今日はなんだか真面目に透は聞いていた。
 それもやはり、恭子が来てるのかが気になってのこと。
 透自身の肉眼では、彼女が来たかどうか確認できなかったのである。
 (ほ、本当に来てないのかよー・・・)
 どうしよう。やっぱり、自分のせいなのだろうか?
 「小山ー。」
 担任が恭子の名を呼ぶ。
 しかし、返事はない。
 「欠席かー?連絡もないのに。」
 いわゆる無断欠席というヤツだろうか。
 透は焦った。焦ってどうにもなるものでもないのに。
 (電話とかしてあげたほうがいいのかなー、それともなんだ、実はオレも好きだったんだとか言ってやったりとか?いや、それはちょっと・・・)
 彼女は彼女なりに考えた。しかし、考えたところで浮かぶものでもないから、人生って難しい。
 「そうだな、小山の家に近いやつが今日の連絡プリントを届けてくれ。
 えーと・・・長谷川!」
 「えっ、は、はい!」
 担任教師に突然名前を呼ばれて透は素っ頓狂な声を上げてしまった。
 「お前が届けてくれよ。家近いんだろ?」
 「こ、小山さんのとこに、ですか?」
 「そうだよ、嫌なのか?」
 (ど、どうしようか・・・)
 約三秒ほど悩んだ末、
 「行かせてもらいます・・・。」
 恭子の家にいくのを承諾した。
 うまくすれば、彼女になんとか言ってやれるだろうし。
 透は恭子の家に行くのが待ち遠しくなった。
 
 
 
 放課後、柄にもなく透は、近くの図書館に入った。
 同性愛について調べるために。
 その後、恭子の家に向かうつもりである。
 (それにしても・・・)
 まるでほんの山だ。透にしてみれば、見るだけで頭が痛くなってくる。
 「こんなんじゃ探せないよー・・・」
 同性愛について書かれた本。
 そもそも、ちゃんとあるのかさえわからないのに。
 とりあえず、透は恋について書かれた本から見てくことにした。
 「なになに・・・、大好きな彼に振り向いてもらうには、プレゼント作戦が良く効く・・・ってこれじゃなくて!」
 こういうのじゃなくて、オレが探してるのはレズの本なのに・・・。
 透は気を取り直して、次の本に目を通した。
 「男と女の恋愛を異性愛といい、女同士、男同士で生まれる恋愛を同性愛という・・・なるほど、これだ!」
 そうそう、こういう本が見たかったんだよー。透はこの本を借りようと、カウンターへと急いだ。と、その時。
 「透ちゃん?」
 聞き覚えのある女の声。誰だと思って振り返ってみると、そこには。
 「こ・・・小山さん・・・。」
 そう、そこに立っていたのは、小山恭子だった。
 それも、私服で。別に調子が悪そうとかそんなんじゃなさそうで。
 「な、なんでここに?」
 「それは私のセリフなんだけどな。」
 「オ、オレだって・・・、どうして学校休んだりしたの。」
 恭子はその質問には答えずに、透へと歩み寄ってくる。
 「?」
 何だろう、透には彼女の顔が悲しそうに見えたのは、気のせいだろうか。
 「返事は?」
 「え?」
 いきなり返事は?とか聞かれても・・・と、透には返事のしようがない。
 しかし、恭子は言葉を続ける。
 「やっぱり、透ちゃんもレズっておかしいって思うんだね・・・。」
 「そ、そんなこと。」
 (一言も言ってないじゃないか)
 でも、その考えは自然なのかもしれないと、透はその時思った。
 透の周りでも、レズとかホモはキモイって思う人はいるし。
 透自身、おかしいとかキモいとは思わないものの、やはり自分には関係のないものと思ってしまう。
 (自分の事半分男だと思ってるのになあ)
 「それで、何で学校休んだんだよ、・・・やっぱ、オレのせい?」
 恭子は何も言わなかった。
 とにかく透は学校の連絡プリントだけでも渡し、
 「明日は絶対学校来いよ。待ってるから。」
 そして、足早に立ち去った。
 振り返らずに行ったため、恭子がどんな顔をしたかはわからない。
 ただ、
 「ありがとう・・・」
 という呟きが聞こえたような気がした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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2003/09/15(Mon)16:17:33 公開 / クローズン
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■作者からのメッセージ
 おわかりの通り、この小説は同性愛をテーマにしたものです。
 ・・・なんか途中メチャクチャですが。
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