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   『人形の屋敷』  ...  ジャンル:未分類 未分類
 作者:みぬり                 
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 ――だって私は人形ですから――
 
 
 〜紬 つむぎ〜
 
 手に触れた瞬間、私はあの人の「人形」になった。
 この身体は全て、あの人のモノになった証……。
 
 捨てられたのだ。あいつらは私を捨てたのだ。
 私は役立たずだと感じ、私だけを置いて逃げたのだ。
 家に帰ったトキ、それが分かった。
 あいつらは。あいつらは紙切れ一枚残して行ったのだ。
 「紬、達者に暮らせよ」。と。私はあいつらを恨んだ。
 お兄ちゃんもお姉ちゃんもお母さんもお父さんも憎んだ。
 15歳が一人で、身寄りもなく生きていくのは不可能。
 毎日のように来る借金取りから隠れていた、そんな夏の日。
 あれは、神の手に見えてしょうがなかった。
 
 「俺の屋敷で暮らそう。」
 イキナリそう言ってきたあの人は手を差し延べてくれた。
 …あの手につかまれば?
 あの手にすがれば、私は生きていけるんじゃないか――。
 思いっきり、その手を掴んだ。あの人はこう言った。
 
 「お前は、俺の館で<人形>として扱ってやる。」
 
 …その日から、私はあの人の「人形」となった。
 あの人は、私を大事に大事に扱ってくれた。
 私は、これ以上ない幸せを感じた。
 あの人の近くに居ると、全てを忘れられた。
 あの人の持っていた「人形」は、私だけではなかった。
 皆が明るくて可愛くて…友達が出来た私にとって、
 そこは至上の天国だったような気がする。
 
 …だったのに――――――。
 
 怖い。私はずっとここであの人の「人形」として
 生きていかなければならないのだろうか?
 そんなのは、イヤ。
 この館に来て2年後。
 私はここを出ようと決心をした。あの人にもその気持ちをつげた。
 あの人は…冷笑を浮かべて私の腰まである髪を撫でた。
 「あてはあるのか? まあ…行きたいんなら行けばいいさ。
 その代わり…お前が俺なしで暮らしていけるかな、紬?」
 …ちゃちな脅しだったのに、その言葉は私の
 胸に重く響いた。
 
 その日から、私は逃げる事も喋る事もしていない。
 あの夏の日から、私はもうあの人なしでは
 生きていけなくなったのだろうか?
 人形は、使われてこそ価値があるもの。
 だから私はここに居る。
 
 あれから3年目の夏。
 未だに私はあの方の「人形」。
 
 人形なのだから…。
 
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2003/09/06(Sat)18:07:09 公開 / みぬり
 ■この作品の著作権はみぬりさんにあります。無断転載は禁止です。
 
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■作者からのメッセージ
 未熟なので色々ご指摘
 お願いします〜。
 やっぱ子供ですからこれくらいの
 拙い文章しか書けませんが…。
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