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『橙星』 作者:夏夜 / リアル・現代 ホラー
全角20030文字
容量40060 bytes
原稿用紙約62.3枚
 それは何気ない日常に溶け込んでいて、当事者はあまり気づくことのない出来事。 主人公、常盤沢藍(ときわさわあい)は美しく、無口な高校二年生。彼女の悩みはちょっと変わったストーカーと、最近転校してきた不思議な転校生で、東雲橙(しののめだいだい)という少年。関わっているはずなのに関わっていない。すぐ隣にいるのに何も知らされていない。 気づかなければ全然恐ろしくもない出来事。 しかし、気がつきさえすれば、これほど気味の悪いものはない。 そんな恐ろしくないようで恐ろしいような、そんな物語をお楽しみください。
    第一章 東雲 橙 a

「寒い……」
 枯れた葉が二、三枚ついている、ほとんど丸裸の木の前を通り過ぎながら、常盤沢藍は手のひらに息を吹きかけた。息は一時的に手を暖めるが、すぐに白く凍りつき、空気中に四散した。すぐに冷たくなってしまう手を擦りあわせて、藍はそれを大事そうにポケットにしまった。常盤沢藍、その名を持つ少女の身長は平均よりも高く、足はすらりと長い。黒のソックスに包まれたその足は、思わず目を見張るほど美しく形の整ったシルエットをしていた。そんな恐ろしく形の整ったボディラインの彼女は、顔のバランスもとても端正で、白い肌と、黒炭のように黒い髪と睫毛を持っていた。睫毛は長く、若干上向きに伸び、光を浴びてきらめくたっぷりとした黒髪は、流れるように腰に垂れていた。
 十二月にもなると、冬はとてつもなく寒く、とてもじゃないが耐え難い。藍はもともと早かった歩く速度を、さらに早くした。
 早く暖かいところに行きたかった、というのもあるが、それだけではない。
 着いてきているのだ。後ろから。
 黒くて、ぼやっとした、何なのかよくわからない存在。鏡餅くらいの大きさで、形は円形、イメージ的にはぽよぽよしている。ただ、何なのかよくわからないためか、凄く嫌な感じはする。藍も最初は気のせいだと思ったのだ。それは現れては消えるから。しかし、最近は一度現れるとなかなか消えてくれないようになった。
 気がつくとそれはすぐ後ろに居た。
 藍の後ろで、振り返れ、振り返れ、と、どこにあるのかわからない口で唱え続けているのだ。
 しかし、気味の悪い未確認物体に「振り返れ」と言われて素直に振り返る藍ではない。そういうものに何かを言われて、返事をするとろくな事にならないのは、どんな小説でもセオリーだ。こういう現実世界で、小説を教訓にするというのもなんだか変な話だが、事態が事態だ。他の人には見えないから相談も出来ないし、したとしても自分が病院に連れて行かれるのがオチなので、口が裂けても言う気はない。
 ところが、こういう不気味なものの声には何らかの力が働いているらしく、それの声を何度も聞いていると、何故かとても振り向きたくなってしまうのだ。この前は英語の単語テストの時に声が聞こえて、危うく振り返ってし合うところだった。(危うくカンニングをしてしまうところだった)
 そんな迷惑この上ない存在だったが、それが現れるようになってから三ヶ月、藍自身、それとの付き合い方も重々に心得ていた。
 まず、それは一人で居る時によく現れる。単語テストの時は、精神的に一人きりだったからだと、藍は思っている。
 そして、藍がふっとそれの存在を忘れると、いつの間にか消えている。
 とはいっても、意識してものを忘れるのはなかなかに難しいもので、今までの三ヶ月間、一度も成功したことはない。だから一刻も早く学校に着こうと、こうして急いでいるのだ。
「ああ、もう」
 毎朝毎朝のことにイライラしながら、藍はため息をついた。
 吐いた息は白く凍りつき、藍の後ろで静かに消えていった。
「おはよう」
 不意に声をかけられた。明るい、アルト調の声だ。
 自分の背後ばかり気にしていたせいか、近くに人がいたことに全く気がつかなかった。声をかけてきたのは、名前も知らない、見たこともない少年で、おそらく同い年くらいであろう。明るい色の髪の毛と、何故か頭にかけた眼鏡が特徴的だった。くりくりとした大きな目の瞳は髪の毛と同じく、明るい茶色をしており、少年の明るい雰囲気を、そのまま表している。肩幅はせまく、華奢な体つきをしたその少年は、藍を見て、優しく微笑んだ。
「お、おはようございます」
 ぎこちない挨拶を返し、藍はおもむろに振り返った。
 いなくなっている。
 ホッと胸をなでおろすと同時に、「この男の子に感謝しなくては」と思いながら少年の方に向き直った。
「……あれ?」
 そこには少年はおろか、枯葉一枚もなく、殺風景な道が在るだけだった。
「……?」
 藍は不思議そうに首を傾げて、「先にいってしまったのか」と勝手に納得し、再び学校に向けて歩き出した。
 後ろから語りかけてくる声はない。
 久しぶりにとても快適に感じる登校時間だった。

「東雲 橙です」
 今朝会った少年は黒板の前にたってそう言った。
 この高校とは違う紺色のブレザーの制服に身を包んだ彼は、簡単な自己紹介をした後、「よろしくおねがいします」と一礼した。
 「ああ、それで見たことがなかったのか」と藍は一人で納得し、クラスの生徒たちは、久しぶりの転校生に浮き足立っていた。
「結構、可愛い顔してるね」
「……そう?」
 同級生の赤毛の少女、高梨由香が小さな声で話しかけてくる。彼女は藍とは幼稚園以来の友人で、ホラー小説やスリラー小説などの、血を見るお話が大好きだ。その彼女がそんな事を言ったのがあまりにも意外で、藍はそれを口に出した。
「あんたがぐっちゃぐちゃのスプラッタな小説以外に感心を持ったの初めて見ました」
「失礼な、私は少なくとも藍よりは異性に興味を持っているよ!」
「私が何に対しても無関心のように言わないでくれませんか?」
「……違うの?」
 由香の言葉はあえて聞こえないふりをして、藍は怪訝そうな顔つきで首をかしげた。
「(私はそれよりもあの眼鏡が気になる……)」
 「何で頭にかけているんでしょう? 何か意味があるのだろうか」と、藍は少年自体よりも、眼鏡ばかり見ていた。由香はというと「私はああいう可愛い系より、こう影のあって血しぶきの似合う美しい感じの年上の方が……」とぶつぶつ言っている。藍は今度はちゃんとこう返した。
「それは由香がこの次元にいるかぎり無理だと思いますが」
 「ていうか、血しぶきの似合うってどんな男ですか」とため息混じりに吐き出した。
 再度前を向くと、もう質疑応答も終わっていて、橙は何を質問されたのか、人懐っこそうな笑顔でニコニコしている。
「じゃあ、東雲くんはあそこの空いている席に座ってね」
「はーい」
 担任である原澤三咲に言われ、橙は藍の三つ後ろの席に向かって歩き出した。クラスの皆は嬉々とした眼差しで、転校生を見るが、藍は興味なさそうに橙を眺めていた。
「……」
 通り過ぎ様に、橙と目が合った。
 橙は藍の顔を見ると、今朝と同じように優しく微笑んだ。
「……?」
 何事もなかったように自分の席に向かう橙の背中を見送りながら、藍は不思議そうに首をかしげた。
「どうしたの? 藍」
 由香が訊いてくる。
 藍は黒板の方に向き直りながら無機質な声でつぶやいた。
「……変な奴」
「……それ、自分の事?」
 ペコッと由香の頭を軽く叩いた。

 放課後、藍は一人だった。
 いや、正確には二人だったのだが、あれを一人と数えていいのか、藍にはわからなかった。
 それはいつもと同じように、藍の後をぴったりとくっついてきていた。
「振り返れ……、振り返れ……」
 相変わらず、代わり映えのない声が背後から響いている。なんだか今日はやけに必死な声だ。
「……さすがに三ヶ月も無視されたら、おばけでも必死になるのでしょうか?」
 ボソリと独り言のようにつぶやき、おかしくなって短く笑った。その間も「振り返れ……、振り返れ……」という声は止まない。
 茜色の空を見ながら、藍はいつものように「帰ったら何をしましょうか」とつぶやき、今日の課題はなんだったかと思い出す。今日は数学の課題と理科基礎の課題が出ている、期限は明後日までだったか……。いや、その前に犬の散歩に行かなければ。弟は犬の散歩なんかしないだろうし。
 もんもんと考え事をしていると、しだいに後ろに居るはずのそれについても気にならなくなってきた。しかし、藍が晩御飯のおかずについて考えていた時だった。
「振り返れ!!」
「!?」
 驚いて藍は足を止めた。
 それの声はとても大きく、とても早口に響いてくる。
 そこでやっとそれの様子がいつもと違うことに気づいた。
 藍は歩くスピードをあげ、早く家に帰ろうと、それの声を振り切るようにして歩く。こんなに後ろのこれを恐ろしく感じたのは、それが現れて一週間ぐらいの間だけだったか。
 藍は曲がり角を右に曲がり、交差点に出た。後ろにぴったりくっついてきているそれも、藍と一緒に交差点に出る。ああ、もうすぐで自宅だ。藍がそう思った時、交差点の横断歩道の信号が赤に変わった。
「む……」
 藍が露骨に嫌そうな顔をする。
 後ろから声が響いた。
「振り返れ……、振り返れ……」
 ああ、うるさい。少しは黙っていてくれ。
「振り返れ……、振り返れ……」
 振り返ったって、お前のほかには何もいないんだろう? 私はお前には何も出来ないし何も与えることは出来ない。それなのに、お前は私に振り返れというのか?
「振り返れ……、振り返れ……」
 だいたいなんで、意味のわからない黒いまんじゅうみたいな物体に、命令されなければならないんだ。どうせお前など、私の後をつけて気持ちの悪い声で語りかけるくらいしか能のない、私が振り返らなければ何もすることができないんだろう?
「振り返れ……、振り返れ……」
 そんな無力きわまりない存在が、なんで私に命令するんだ。
「振り返れ……、振り返れ……」
 他をあたれ!!
「振り返れ……、振り返れ……」
 帰れ!!
「振り返れ……、振り返れ……」
 私に近づくな!!
「ねぇ……」
「私にさわるな!!」
 後ろから誰かに肩をたたかれて、藍は思わず振り払った。
「ご、ごめんなさい……」
 橙がおびえた表情で、振り払われた手を押さえながら、二、三歩後ずさりする。
 藍はポカンと口を開けた後、「ご、ごめん、びっくりしたから、つい」と謝った。後ろから聞こえてくる声はいつの間にか消えていた。
「常盤沢さん……ですよね? 同じクラスの」
「そうですよ、東雲橙」
「あ、はい、これからよろしくお願いします……」
 そう言って橙はぎこちない動きで、深々とお辞儀した。なんだか照れくさくなってしまった藍は、話題を変えることにした。
「それで、何か用ですか?」
「あ、うん、信号青なのに渡らないのかなぁって思ったんだけど……」
 橙はどもりながら信号機を指差した。
「また、赤になっちゃったねえ」
「あ」
 藍は「まぁいいか」と伸びをして、くすくす笑う橙に背を向ける。そして、聞こえるか聞こえないかくらいの小さい声で、橙に言った。
「ありがとう」
「え?」
 橙がきょとんとした顔で、首をひねる。
「なんでもないです」
 そうごまかして、信号機が再び青になるのを確認すると、駆け足気味に横断歩道を渡った。お礼を言ったわけを訊かれたも返答に困るからだ。
 そして橙のほうを振りかえらずに、自宅に向かって走っていった。
「……”私に触るな”だって」
 ポツリと橙がつぶやいた。
「嫌われてるね」
 長い黒髪をきらめかせながら走り去っていく、藍の背中を見つめながら、橙は足元の”それ”に話しかけた。それは橙の足の下で、苦しそうに蠢いている。
「藍を追いかけたい?」
 くすくす、と橙が笑った。それはクラスの皆や藍に見せた、子供のように無邪気な笑顔などではなく、とても悪意に満ちた笑顔だった。
「駄目だよ」
 ぐっとそれを踏みつける足に力をこめる。
「藍に憑くのは僕だけなんだから……」
 ぶちっという音がして、橙の足の下にあったそれはつぶれ、そして消えた。
 橙は来た道を引き返しながら、「あの黒いの、また来るんだろうなー」と独り言のようにつぶやいて、もう一度、藍の走っていったほうへ振り返る。
「でも、誰にも渡さないけどね」
 邪気にに満ちた無邪気な笑顔を、誰も居ない交差点に投げかけて、橙は藍色に染まっていく、橙色の空を見た。その空に浮かんだ一番星は、夕日のせいか、橙色に輝いて見えた。

   第二章 青柳 紺

 突然だが、僕、青柳紺はストーカーである。
 ストーカーといえばあれだ。好意を抱いてる女性をストーキングしたり、頻繁に電話をかけたり、しつこく付きまとったりなどというストーカー行為を行う人間の事だ。
 自慢じゃないが、僕は成績優秀、運動神経抜群、人徳もあるクラスの委員長、顔もそこそこいいほうだと思っている。そんな僕が声をかけた女子に少なからずも嫌な顔をされるわけがないのだが、恋焦がれた相手が相手なのだ。多少奥手になっても仕方がない。
 僕がどうしようもなく恋焦がれてる女の子は、周りの女子高生とはかなり浮いていた。
 彼女は美人で秀逸。運動も困らない程度にはできるようで、あまり隙を見せない。交友関係は女子高生とは思えないほどに地味で、僕が知っている限りでは同じクラスの高梨由香が親友で、あとは会ってもあいさつをする程度の関係だ。話し方も何処かていねいで、独特の雰囲気をかもし出している。あと、猫好き。
 何故奥手の癖にこんなにも相手の事を知っているのか、その答えは至極簡単、僕が彼女のストーカーだからだ。
 僕はいつも彼女を見ている。
 無論、生徒会の活動や、クラス委員の活動、部活動、塾など、僕だってそんなに暇じゃない。いつも見ているとはいっても、心の中で、だ。
 僕は彼女の事が気になりだすと、彼女が今何をしているのか考え、想像する。最初はなかなか思いつかなかったんだけど、その行為を繰り返しているうちに、結構スムーズに思いえがけるようになってきた。本当にその場で見ているかのようにね。朝の登校時間や、放課後の下校時間、ああそうそう、英語の単語のテストの時も彼女がちゃんと解けているか心配で思い描いたなあ、余計なお世話だったみたいだけど(彼女は僕と同じく満点だった)。けれど、僕が見ているのは決まって彼女の後姿なのだ。それこそ、本当に後をつけているみたいにね。僕は彼女が振り返ってくれないのがとても悲しくて、とても寂しくて、いつも強く念じるんだ。
「振り返れ……、振り返れ……」
 と。
 彼女は横目で僕のいるほうをちらちら伺うけど、いつも振り返ってはくれない。あの美しく魅力的な顔を見させてくれないのだ。おかしいだろ? 僕の思い描いた彼女なのに、全然僕の思いどおりにならないのだ。まるで「あんたのモノになんかなりませんよ」とでも言うかのようにね。
 それが僕はとても悲しくて、彼女が僕を好きになってくれるように、念じ続けるんだ。
「振り返れ……、振り返れ……」
 僕の方に振り返って、と。
 でも彼女は三ヶ月間、一度も振り返ってはくれなかった。
 それなのに、それなのに、だ。
「常盤沢さーん」
「なんでしょう、東雲橙」
 奴の呼びかけに彼女、常盤沢藍は無機質な表情のまま振り返った。
「その、フルネームでよぶのやめてくれないかな、ちょっと居心地悪いから」
「そうですか、でもこれはもう癖のようなものなので、呼ばれたくなかったら私が慣れるまで待つことです、何年かかるかわかったものではありませんが」
「わかった!! じゃあ慣れるまで話しかけるね!! 」
 奴は高校生とは思えないほどの童顔な顔で、とても無邪気に笑う。常盤沢は呆れたように笑いながらため息をついた。
 奴の名前は東雲橙、昨日転校してきたばかりのくせに、この持ち前であるのだろう人懐っこさで、男子票、女子票ともに獲得した男である。
 クラスの人間と仲良くするのはいい、僕はクラス委員だ。クラスの人間は仲がいいに越したことはない。
 しかし、常盤沢藍は別だ。
 普通、好意を寄せている人間に他の異性が近づいたらいい気はしないものだろう。
 僕のそれも同じようなもので、僕が好きな常盤沢に、東雲が何かとついて回るのが気にくわない。
 早い話、僕は東雲の奴に嫉妬しているのだ。
 別に友人として他と平等に仲良く接しているなら、僕はこんなにも彼を敵視することはなかっただろう。けれど、彼の行動の節々には、彼女への好意が滲み出ている。他のクラスメイトは気づいていないようだが、彼は明らかに常盤沢を好いている、もしくは興味を持っている。同じ感情を抱いているからこそ感じるものなのだろうか、これは。
「ね、常盤沢さんの事はなんて呼べばいいかな?」
「お好きなように呼べばいいと思います」
「じゃあ、藍ちゃん」
 隣で東雲が馬鹿げたことを言っている。小学生じゃあるまいし、初対面の異性をいきなり名前で呼んだりするだろうか、普通。
(断られて嫌な顔をされてしまえ)
 僕はそう念じながら、今日のクラスの生徒の授業態度を日直日誌に記録する。
 えーと、今日も特に変わったことはなく、いつもどおり勤勉な態度で授業を……
「いいですよ」
 べきり。
 受けていました。と書こうとしたとき、力を入れすぎたのか、シャープペンの芯が折れてしまった。続きを書くために芯を出そうとしたとき、肘で机の上の消しゴムを転がしてしまう。机から落ちて二、三度床の上をはねた消しゴムは、さらに数回転がって、すぐ隣で憎たらしいくらい嬉しそうな顔をした東雲の足に当たった。
「あっ」
 東雲と僕が同時に声を出す。
 僕が手を伸ばす前に、東雲は僕の小さく使い込まれた消しゴムを拾い上げ、「はい」と手渡してきた。俺は東雲の顔を見ないようにしながら消しゴムを受け取り、情けないくらい小さな声で「ありがとう」と言った。
 自分でも良くない態度だったと思う。いくら気にくわないとはいえ、親切にも落としたものを拾ってくれたのだ。ちゃんとお礼を言うのが、良い友好関係を築くための基本であろう(築きたいとも思わないが)。
 どうか常盤沢が僕の事を嫌いになりませんように。
 そう願いながら僕は自分の席に座りなおした。
「どうしたの? いつもと様子違くない? 青柳くん」
 高梨由香が常盤沢と東雲、両方に言う。東雲は「何が?」というように沈黙し、常盤沢は「人見知りなんじゃないですか?」と軽く流した。
(ああ、冷たい礼儀知らずだとは思われてない、良かった)
 僕は心の中で静かに安堵のため息をつきながら、東雲の存在を疎んだ。
 実は僕は東雲の顔を正面から見ることが出来ない。
 怖いのだ、東雲が。

 昨日の放課後、僕はひどく焦っていた。多分、常盤沢が今日来たばかりの転校生に微笑みかけられて、微笑み返したのを見てしまったからだと思う。
 頭に思い浮かべた常盤沢の後ろ姿に向かって、いつもより強く「振り返れ……、振り返れ……」と念じていた。
 交差点で、何に怯えているのか、常盤沢が小刻みに震えているのがわかった。うつむいたままで信号が青に変わっても進もうとしない。
 僕が心配してもう少し近づこうとしたときだ。
 急に視界が暗くなった。
 背中から押し付けられるような圧迫感を感じて、僕は激しく呻いた。誰かが僕を押さえつけているのだ。
 こんなことは初めてだった。常盤沢を思い描いて、心の中でストーキングしている時の僕は壁など、どんな障害物でも通り抜けるし、周りの人間にも見えないし、周りの人間からの干渉も受けない。そんな存在だったはずだ。それなのに、そのときの僕はたしかに他人からの干渉を受けていたのだ。
 足音が遠ざかっていく音が聞こえる。ああ、彼女が行ってしまう、後を追わなければ。
「……だって」
 ふっと少しだけ上からの圧力が弱まった。僕は体をよじって僕を押さえつけている存在に目を向ける。
「嫌われてるね」
 転校生の東雲橙が、不敵な笑みをたたえて僕の上に立っていた。
 彼を見た時は本当に驚いた。「どうして東雲が僕を踏みつけられるのか」「東雲はこんなに大きかったか」「嫌われている? 誰が? 何に?」という疑問ばかりが頭を駆け巡った。
「藍を追いかけたい?」
 東雲に問われて、僕は常盤沢を追いかけなきゃという使命感に駆られた。あの様子、きっとただ事ではない。絶対何かあったのだ。
 僕が常盤沢を追いかけようと、もがき始めると、東雲は「駄目だよ」といいながら、僕を踏みつける力を強くする。痛みのせいであまり聞こえなかったが、東雲は蔑むような目を僕に向けながら言う。
「藍に……のは僕だけなんだから」
 僕は見た。
 橙色の空の下、口の端を歪ませる、無邪気すぎる邪気の塊を。
 僕はそこでやっと我に返った。
 おかしな話だろう。自分の妄想の中での出来事なのに、あまりにも現実味がありすぎて、現実世界の方の東雲も恐ろしくなってしまったんだ。自分の妄想に振り回されるなんて自分でも情けないと思うし、他の事でも、妄想と現実が混ざりあってしまったら嫌なので、これからは妄想に浸るのも控えようと思っている。
 東雲の事はもう仕方がない。常盤沢に好意を寄せている以上、彼と必要以上に仲良くなる気はないし、なれる気もしない。これからもああいう接し方で問題もないような気がする。
「藍ちゃん、一緒にかえろう」
「……いいですよ」
 ……やっぱりもう少しきつくあたってもいいかもしれない。
「東雲くん、部活動はどうするんですか?」
「え?」
 少しでも水を差してやろうと思い、僕は顔を合わせずに東雲に声をかけた。
「たとえ帰宅部でも専用の紙に書いて、先生に提出してくださいね」
 これは本当だ。しかし、別に今日言わなくてもいいことだ。そうとは知らずに東雲は「じゃあ、提出してから帰るよ」と微笑みながら言った。
「藍ちゃん達は先に帰ってて」
「待ちますよ? それに貴方、職員室の場所わからないでしょう」
「大丈夫、いいんちょさんに訊くから」
「え?」
 僕の意思は訊かずに東雲は常盤沢たちにそう言った。常盤沢は心配しているのか、少し不安そうな顔をしていたが、気のせいだと思いたい。
 常盤沢たちが教室から出て行き、足音が遠ざかっていく。
「ねえ」
 常盤沢の出て行った方を見つめたまま、東雲が声をかけてきた。
「プリント提出した後でいいからさ、少し、お話しようか?」
「は?」
「昨日の事」
 昨日、橙色の空の下で見た、無邪気のような邪気の塊がそこに居た。
 彼は、髪の毛と同じように少し薄い色をした大きな瞳を、妖しく輝かせながら笑い、彼が前後に揺れるたびに、髪の毛が夕日の色に輝く。教室がうす暗いせいからか、それとも僕が彼に抱いている不安のようなもののせいなのか、その色は綺麗なんてものじゃなく、もっと、そう、とても禍々しいもののように見えた。
 「十中八九僕のストーカー行為についてだ」と僕は思い、「それならどうして僕の妄想でおきたことを東雲が知っているんだ?」という新たな疑念を重ねた。
 僕は何処かおかしくなってしまったのだろうか。普通の人間であるはずの東雲に僕の妄想の中でおきたことなど、わかるはずがないのに。それとも、おかしいのは僕ではなく、この気持ち悪いくらい雰囲気や表情の変わる東雲がおかしくて、僕はただ彼に翻弄されているだけなのだろうか。
「き、昨日の事って?」
 僕はどもりながらも東雲に訊ねた。東雲は僕をまっすぐに見据えてこういうのだ。
「それはまず置いといて、とりあえず、プリントが何処にあるのか教えてよ」
 消しゴムを拾ってくれた時のような、屈託のない表情で聞いてくる東雲を見て、僕は嫌な汗が背中を伝っていくのを感じた。
 教室の隅の暗い行き止まりが、とても暗く、薄気味悪く見えたのは、きっと彼のせいだろう。僕は戸惑いながらも頷き、東雲の顔を見ないようにしながら、プリントを手渡した。プリントが若干湿っていたのは、僕の手から滲んだ汗のせいだろう。プリントに丸い字で文字を書きながら歌う、東雲の鼻歌を聞きながら、僕は心臓が握りつぶされるような緊張に耐える。
 何かを考える余裕すら持てなかった。
 ただただ、東雲の楽しそうな鼻歌が、僕の右の耳から入って左耳から流れ出ていく、それだけだった。

 
 突然ですが、僕、東雲橙は人間ではありません。
 「人間でなければ一体お前はなんなのか」そう問われると少し困る。なぜなら僕自身も自分がどういう名称のものなのかわからないからだ。自分の理解できないものを、他人に説明することはできないし、その逆もまた同じだ。それから僕は昔の記憶がほとんど欠落しているから、日常的な知識もあまりない。たまに、自分の行動が周囲の人間より幼いな、と感じるときがあるが、それは多分そのせいだろう。もちろん授業なんて理解できないから、隣の人にこっそり答えを教えてもらったりする。
 そんな自分についても、周囲の世界に対しても知識の薄い僕にわかっていることはたったの二つ。
 一つは僕には東雲橙という名前がついているということ。
 もう一つは、僕が藍を好きで取り憑くために此処に来たという事。
 僕はなるべく藍に好かれたくて、藍や藍の親友、由香はもちろん、クラスメイトにもとってもフレンドリーに応じる。もともとそういう性格だったからか、とても接しやすい。もっとも、ある一人の人物にはフレンドリーにしてやるつもりなんてないんだけど。
 青柳紺。
 整ったつやのある黒髪と、シルバーフレームの眼鏡が特徴的な、精悍な顔の男子生徒で、人徳溢れるこのクラスの委員長。ただし、ストーカー。
 藍本人はもちろん、クラスメイトはそんな疑ってもいないし、そして青柳本人さえも、『あれは自分の妄想の中で起こったことだ』と思っている。
 そうだよね、そうかもしれないよ、青柳にとっては。でも藍と僕にとってはそうじゃない。藍の見ている、『後ろをついてくるぷよぷよした黒い饅頭のようなもの』の正体が、この青柳紺だからである。いや、正確には青柳の藍に対する独占欲や興味、淡い恋心といった念の塊だ。「相手を想う気持ちならそれも一つの愛の形でいいんじゃないか」と思う人もきっといるだろうが、それは大きな間違いだ。恋心というと綺麗なようなもののような気もするが、その綺麗で純粋なものと同じくらい、汚く恐ろしいものももっている。独占欲やそれからくる嫉妬、執着心などがそれだ。そんなものが人智を超えた形で存在しているのだ、ろくなものではない。
 僕は藍が好きで、取り憑こうとしている、人間の形をしたよくわからない物体だ。そんな僕が狙っている藍にあんなものがつきまとっているなんておもしろくないに決まっている。
 転校してきたその日の放課後に黒い饅頭姿になった彼の気持ちを踏み潰してやったら、これにはかなり青柳も驚いたようで、藍を妄想の中でストーキングするのをやめたし、彼にとっての現実世界に居る僕にも多少の畏怖の念は抱いたみたいだった。でも、あの感じの念は、また藍のもとに現れると思う。僕が現れるたびにつぶしてたんじゃきりがないし、いつも一緒に居るにしても限界がある(お風呂とか、おトイレとか)。
 だから今日、青柳が僕と藍の放課後デート(僕にとってはデート)の邪魔をしようとしたことにわざと便乗して、藍の居ないところで、彼に釘を刺そうと思っているのだ。
 僕は”帰宅部”と書かれたプリントを持って、職員室まで道案内をしてくれている青柳の背中をじっと、見つめる。
 ちらりと青柳が振り返る。
 ぱちりと目があう。
 僕が優雅に微笑むと、青柳は慌てて正面を向いた。
 ”教務室”と書かれた扉を抜けて、担任の原澤先生に、プリントを渡す。
「あれ、明日でも良かったのにー」
「いやー、提出物は早い方がいいですし……」
 やっぱりそうか、と思いながら、僕は先生にプリントを手渡す。
 先生は「気をつけて帰れよ」と言って、自分の席に戻ってしまった。
 僕は礼儀正しく一礼してから、職員室から出る。今更ながらに思うが、本当は”教務室”なのにこの学校の人は誰一人として教務室って呼ばないよね、どうでもいいけど。
 帰りも行きと同じように、青柳の背中を見て歩く。特に意味はない。彼が僕のすぐ前を歩いているだけ。でも、青柳はその僕の視線が気になるみたいで、ちらちらと僕の方を見てくる。
 ぱちりと目があう。
 また微笑んでやろうと思ったら、微笑む前に視線を逸らされた。
 むっとして僕の足の前を忙しなく歩く、彼のくつのかかとを軽く踏んでやる。青柳はつんのめって転びそうになったが、何とか踏みとどまり、普通に歩き始める。
「あ、ごめん」
 僕は社交辞令とばかりに謝る。
 青柳は振り返りもしなかった。


 「ねぇねぇ、今読んでる本、BLものなんだけど、なかなかおもしろいよ。」
 帰り道、夕日に照らされたアスファルトを踏みしめながら、藍と由香は話をしていた。藍はどちらかという無口な方なのだが、何も言わなくたって由香が勝手に話してくれる。それに、藍も由香も本を読むことが好きなので、話題も通じておもしろい。そしてなにより、由香は藍のことをよく理解しているため、藍の表情があまり変わらなくとも、嫌な顔をしない。
 いつも明るくて天真爛漫。
 藍は由香のそんなところが好きだった。
「BLって、なんですか?」
「え? 知らない?」
 由香が答えようとし、突然立ち止まった。
「……あ、やばいかも」
「どうかしたんですか?」
 藍も立ち止まる。
「忘れ物、した」
「何をですか? 貸せる物なら貸しますが」
「……数学のプリント」
「明日提出ですよ?」
 「それはいくらなんでも貸せません」と言う様に、藍は首を横に振る。それにあわせるように、彼女の長い黒髪も否定的に左右に揺れる。
「まだ、学校からそんなに離れてないし……」
 後ろを振り返りながら、由香が地団駄を踏む。
「取りに行ってくる」
 と藍に言って走り出した。しかし、由香の予測に反して、藍は平行して由香の隣を走っていく。
「さき帰ってていーよ?」
「1人になるのが……嫌なんです」
 あの黒い饅頭のような物の声を思い出して、身震いする。
 最近は前ほど頻繁に現れることはなくなったが、1人になると、やはりアレがまた出てくるような気がして恐ろしい。
「そ、帰りが遅くなってもいいの?」
「構いません」
「じゃ、ゆっくり、話しながら行こうか」
 そう言いながら、由香はゆっくりと走るスピードを落とす。
 先ほどまでは目の前にあった、オレンジ色の太陽が今度は背後に回り、目前に細長い影が2つ、仲の良さそうに伸びる。
「……はい」
 藍が安心したように微笑みながら頷いた。


「それで、何の事だよ。昨日の事って」
 紺は、なんとかごまかそうと、聞き返した。
「君、藍のストーカーでしょ?」
「……」
 「今度は呼び捨てかよ」と思いながらも、紺は
「な、何のことかなぁ?」
 としらじらしくも、首を捻る。
「君はきっとこう思っているだろうね。『どうせあれは僕の妄想でしている事なんだから、僕がストーカーをしている証拠も事実もない』 ……そうだね、そのとおりだよ。あれは君にとっても周りの人にとっても現実には起こっていない事だ。僕がなんと言おうが、君の人間性が貶められたり、藍が法的手段に出る事もできない。もっとも、藍自身、あの黒くてぽよぽよした不気味な物体が、まさか人徳溢れるクラス委員長の、想いが具現化した物だなんて、考えもしないだろうさ」
「黒くて、ぽよぽよした物体?」
「ああ、君は気づいてないかもしれないだろうけど、藍をストーキングする君の姿は、僕と藍には見えている。ただし、黒くて丸い、饅頭みたいな姿で、だけど」
 紺は「信じられない」とでも言うかのような表情で、橙を見る。
 橙の言っている事は、突拍子のない事のようにも思えるが、彼の言葉は、紺の持つ疑問をすべて解決できるものだった。
 でも、仮にそうだとしたら、その事に気づいたこいつは、ただ想いの具現化した現実のものではない紺の気持ちを踏み潰す事ができたのだろう。
「君の想いが藍を付回すと、僕としてはすごく困るんだよねぇ」
 橙は馬鹿にしたような笑いを紺に投げかけた。
「だってそうでしょ? 君のアレは、藍に悪影響を与える可能性が極めて高い」
「……っ!」
 紺は橙を睨み付けた。
 まず気に入らないのは、彼の人を馬鹿にしたような態度。そして彼の言葉という事場に、自分の藍に対しての淡い気持ちを、邪悪なものだと一蹴されたような気分になったのだ。
「……そこまで言うなら、聞かせてくれ」
「なぁに?」
「……お前は、何だ?」
 緊張のためか、上手くまわらない舌を一生懸命使いながら、紺は橙に訊ねる。
「今、お前が言った事が本当だとしたら、お前は何だ? 普通の人間じゃない。それに、お前は藍を特別に想っている。それは、どうしてだ?」
「……」
 どくん、どくん、と心臓が波打つのを紺は感じる。こんなに緊張するのは初めてだ。今まで数々の機会に全校生徒の前でスピーチなどをしてきたが、こんなにも全身が強張る事はなかった。
 対して橙は、いつものように微笑みをたたえたまま、脂汗を滲ませている紺を楽しそうに眺めている。
「教えてほしい?」
 焦らすように橙はそう前置きした。
「それは、僕が人間じゃないからさ」
「……な」
「……簡単な話だろ? 人間じゃないんだ、僕は。君の常識は僕には通用しない。それと、『人間じゃないならお前は一体何なんだ』 っていう質問には答えられないから。僕にもわかんないし」
 「それから次の質問だけど……」と前置きをしてから、
「僕は藍に憑こうとしてるんだよ、あ、これについても『どうしてそんな事しようとするんだ』っていう質問はなしね。僕にもわからないから」
「……どういう事だ?」
「簡単に言うと、藍にとり憑いてどうにかしちゃおうってわけ。ほら、お化けが人間にとり憑いたりするじゃない、あんな感じ。ただし、僕は自分がお化けなのかどうかもわからないから、どうやってとり憑くのかも、とり憑いた後、藍がどうなるのかは、全く持ってわからないんだけどね」
「……なんだ、ソレ」
 紺は乾いた笑い声を漏らしながら、畏怖の眼差しを橙に向ける。
 そして、彼の言葉を少しずつ理解していくと同時に、ふつふつと怒りがこみ上げてきた。
 紺は前に飛び出し、橙の胸ぐらをつかむ。橙は全く抵抗しなかった。それどころか、踏みとどまる事すらしなかったので、いきおいに押されて後ろに尻餅をつく。
「お前、人の純粋な気持ちを悪影響呼ばわりするわりには、お前が一番有害な存在じゃないか」
「うん、そうだよ」
 こんな状況にも関わらず、橙は微笑みを絶やさず、素直に頷く。
「僕は藍が欲しい、そのためにも君のような人智の超えた能力を持つ藍サイドの人間はいないに越したことはないからね」
「なっ……」
「その僕がこう言ってるんだ。藍から手を引かないと、ただじゃおかないよ?」
「何、言ってるんだ。そんな事聞いたら、余計引き下がるわけいかないよ」
 そこでやっと橙の微笑みが消えた。代わりに現れるのは、鬼のような形相。殺気と悪意に満ち溢れた目で、紺のことを睨みつけている。
「呪い殺すぞ、この野郎」
 その目にわずかにしり込みしながらも、紺は掴んだ橙のシャツを離そうとはしなかった。
 その緊迫した雰囲気を打ち破るように、ガラリと教室の扉が開く。
「あ」
「え?」
 開けたのは由香だった。
 膝を突いて屈んだまま、橙のシャツを掴んでいる紺と、紺に胸ぐらを掴まれたまま、後ろにすわりこんでいる橙を見て、何を想ったのか、
「BLってなんだっけ?」
 と言う。
「いや、何でこのタイミングで言うの?」
 2人同時にそう返しながら、彼女の近くに藍の姿を探し、その姿がないことに心底安心した。

  第三章 桜木 涼子

「みてみて、この雑誌」
 橙が転校してきて三週間ほど経ったころ、冬も深くなり、より一層寒さを感じる日の放課後。
 教室の窓側の席、藍の席の前で由香が一冊の雑誌を広げた。
 暗い雰囲気の表紙に描かれた紅い文字の見出し、『本当にあった都市伝説全集』という言葉から、彼女の趣味が伺える。彼女はそのホラー雑誌の、実録特集ページを開いて、藍と橙に見せた。
 そこには見覚えのある街並みと、廃墟のような建物を写した写真が掲載されていた。その記事のサブタイトルを、藍は目を細めながら読み上げる。
「……鈴鹿病院の幽霊、目撃者相次ぐ?」
「鈴鹿病院といえばとなり街にありますよね?」
「そうなの!! 歩いていける距離なの、そんなところに心霊スポットがあるなんて、凄いことだと思わない?」
「……別に」
「右に同じです」
 自分の好きなジャンルの話に目を輝かせる由香とは反対に、藍と橙は関心の薄そうな反応を見せる。
「だって、鈴鹿病院に現れる髪の長い女の幽霊だよ? 白い服の!!」
「なんか、テンプレ過ぎませんか? 世の中のお化けって皆そうなんですか? というか、目撃者相次ぐって、不法侵入者だらけじゃないですか、警察仕事してください」
 頬を高潮させてはしゃぐ由香に、藍は呆れたように言う。そして同時に、彼女がこれから何を言い出すのか、予想がついてため息をついた。
「要するに、行ってみたいんですね?」
「うん!!」
「うわ、いい返事」
 嬉々とした顔でうなずく由香を見て、橙がひきつった笑みを浮かべながらつぶやいた。
 その橙の方に、由香が振り返る。そして、隣の席にいる紺と橙を見比べ、ニヨニヨとなにかを期待するような笑みを浮かべた。
 その様子を見ていた橙と、由香の視線を感じていた紺は、とても嫌な予感がした。
「そーだ、青柳くんも一緒にくる?」
「え?」
「……」
 予想通りの言葉に、橙は困ったように目を伏せ、紺は額を押さえる。
 彼女、山梨由香はとてつもない勘違いをしている。
 三週間前に目撃したあの現場を、どう見たらそうなってしまうのか、橙も紺も彼女の思考回路を理解することはできなかったが、彼女はどうやらあの瞬間の二人がとても仲睦まじく見えたらしい。それからというものの、橙が藍や由香と帰ろうとすると、さりげなく紺をさそったり、買い物に出かけようという時も、「青柳くんは誘わなくていいの?」と訊ねてきたりする。
(なんて、いらない気遣い……)
 その度に橙と紺は今までに感じたことのない眩暈を覚えた。
 だが、誤解を解こうにも、あの現場の説明では話せない事が多過ぎる上に、彼女は生来、あまり人の話をよく聴く性分ではないらしい、話そうにも彼女の方が自分の趣味について深く語り始めるためこちらの話ができない。唯一の救いといえば、その誤解を彼女が藍に話していないという事だけだった。人の話を聴かない空気を読まない人間のわりには、変なところで几帳面なうえに神経質で、やたら気を使う。
 今更訂正するのもめんどうなので、橙はその誤解が藍の耳にはらなければいいか、と思うことにしてあまり気にしないようにしている。紺としても想い人である藍と共に行動するきっかけを作ってくれるし、橙と藍を迂闊に二人きりにしないためにも、今のところはこれでもいいかと考えてはいた。
「……どうかしたんですか?」
「別にー?」
 それでもこの何かを期待するような目はいまだに慣れることはできないのだが。




 鈴鹿病院は、藍の通っている学校から、歩いて30分ほどの所にある、そんなに古くも広くもない、ごくありふれた普通の病院だ。2、3年前までは、高齢では合ったのだが院長もまだ健在で、充分な人数の医師と看護士が働く医療施設だったのだが、院長がなくなり、廃病院となった今ではその見る影もない。また、もう6時を過ぎてしまったため、薄暗く、人気もない。心霊雑誌のキャッチコピーを見たせいか、そこはより一層禍々しいもののように思える。
「本当に行くの?」
 不安そうな面持ちで橙が訊いた。
「ああなった由香は人の話を全くと言っていいほど聴きません、少し見たら帰るので、先に帰っていてもいいですよ? 東雲橙」
「そういうわけにはなぁ……」
 「いかないんだけど」と、橙は困ったように笑った。その橙に紺は嫌々ながらも、そっと耳打ちする。
「お前、ここ出ると思うか?」
「……何が?」
「何がって……、お前の同族さんだよ」
「……僕は幽霊といった類とはちょっと違うんだけどなぁ」
 藍が見ていないためか、少し本性を見せながら橙はつぶやく。紺はぶっきらぼうに「同じようなモンだろ」と返した。
「……いるよ」
 少しの間、病院正面の入り口を眺めてから、独り言のように橙は言った。
「え……」
「多分、だけどね」
 そう言って橙はかけあしで走り、さり気無く藍の右隣を陣取る。
 紺はずるりとした嫌な感じを肌に感じながらも、橙と藍をいっしょにいさせるわけにも、こんな山に藍と由香を残して帰るわけにもいかず、しかたなく三人の後を追った。
「おじゃましまーす」
 誰もいない暗闇に明るい声で、そう話しかけて、由香は先頭を切って院内へと侵入した。
 当然ながら電気は通っていない。下は埃まみれ、しかし、懐中点灯で照らすと、誇りに付いた人間の足跡が多く見えることから、前に此処に肝試しに来た者のものだろう。
「……で、そこに現れたのが……で、だから……だったの!!」
「そうなんですか」
「「……」」
 真っ暗な院内を懐中電灯を一つ片手に、一向はそんなに険しくもない、ゆるやかな山道を登って行っていた。道中院内の雰囲気にも飽きた(飽きたのなら帰ればいいのに、そこは断固としても譲らなかった)由香が、暇を紛らわすために知っている怪談話をし始めたのだが、これが驚くほどに怖くない。いや、正確に言えば、彼女の持っている話は、普通に聞けばそれなりに怖い話だ。しかし、彼女が話すことによって、彼女の口調と声色によって話の怖さが八割程、損なわれているのだ。ここまで怖い話を怖くなく語れるのも、一つの才能だろうと、橙と紺は思った。
「……あれ?」
 藍がふと立ち止まった。
「どうしたの?」
 由香が聞く。
「いえ……、今前に人が立っていたように思えたので……」
「何言ってんの!! こんな遅くにこんな所に人なんているわけないよ!! いたらそれ幽霊だね!!」
(その幽霊を見に来たんじゃなかったのだろうか?)
 由香の言葉に、紺は矛盾を感じるが、めんどうくさい事にならないように、そこは黙っておく。
「どの辺?」
「あの……扉の後ろのあたりに」
 藍が指さした扉の後ろには、やはり誰もいなく、しんしんとした冷たい暗闇が周囲に拡散しながら存在しているだけだった。
「いないね」
「ええ、見間違いだったのかもしれません」
 そう言って藍は後ろの由香に話しかけようと振り向いた。
「……っ!!」
 そこに、いたのだ。
 彼女が先ほど、扉の後ろに見た、長い黒髪の少女が。
 その少女は病院の入院患者の服を着ていて、顔色は昼間の月のように青白く、瀕死病人のようであった。目はうつろで、薄い下まつげの下に、夜の闇のようなクマが色濃く刻まれている。
「……ひゃ」
 藍は悲鳴を上げかけた。その手を、藍の視線によって少女の存在にに気がついた紺が藍の手を取り、そのまま駆け出す。
「え? ……ちょっと、何?」
「高梨さんっ、こっち!!」
 事情を全く飲み込めていない、少女に一番近い位置にいる由香の手を、橙がとって紺と藍の後を追った。
(あのストーカー野郎……藍に何かしたら、即呪い殺してやるっ!!)
 そう思いながらちらりと後ろを見やると、少女の姿は既に無く、踏み荒らされてまばらになった積もった埃を被ったタイルが闇に紛れて存在しているだけだった。
「……?」
 橙は不意に足を止めた。
(……追ってこない? あの手の人間霊はしつこいと思ってたのに)
「……どうしたの? 東雲くん」
「……いや、なんでもない」
 少女の話を由香にすれば、めんどくさい事になるのが目に見えていたので、橙はそうぼやいてごまかし、「藍といいんちょさんを探そう」と山道を早歩きで進んでいった。
「……」
 歩きながら、橙はさっきの少女の事を考える。
(あの少女は、どうしてこの病院に現れるのだろう……? あの少女が地縛霊だとすると、この病院で亡くなった患者か何かだと考えるのが自然だ。そして、急に消えた……)
「ねぇ、さっきまでいたものが急に消えたってことは、どういうことかな?」
 ボソリと、橙は由香に訊いた。由香は「お化けの話?」と首をかしげ、
「別のどこかに移動したってことじゃない? 後ろに行ったと思ったら、前にいたり、撒いたと思ったら、出口にいたり……」
「……そっか」
 橙は愕然とした。
 そうだ、彼女を最初に視たのは藍だった。そしてその藍といるのは冴えないただの人間の子供……。
 彼女にとって、これほど甘美で、狙いやすい的はないだろう。
「……藍」
 橙は、そうつぶやいて、桜並木の向こうにある、黒い海をにらみつけた。

 紺は走っていた。
 自分の恋焦がれている少女の手をひきながら、ひたすらに走っていた。本来、好きな少女の手を握っているのだから、もっと舞い上がって喜んでも良いように思えるが、この状況ではそんな事も言っていられない。
 あの不気味な双眸の少女は何者なのだろう。
 ……いや、考えるまでもない。
 心霊スポット、不気味で半透明の幽霊としてはテンプレートすぎる少女の姿、そしてその幽霊と同じような存在の橙が『いる』と言った。ここまでお膳立てされておいてあの少女が、散歩に出かけていた近くの病院の入院患者、なんてことは許されないしありえない。そもそもこの近くに病院はない。歩いてこれるような距離ではないのだ。
 あれは人ではない。
 あれはこの世のものではない。
 そう確信していたから、紺は止まることも振り返ることも出来なかった。
 止まったら追いつかれそうな気がして。
 振り返ったら何かがいそうな気がして。
「ちょっと……、待ってください、青柳紺」
「!!」
 そんな、回転するだけの紺の足を止めさせたのは、手をひかれるがままに走っていた藍だった。
 紺がゆっくり足を止めると、藍は肩で息を切らせながら、そっと後ろを振り返る。そこには深々と、夜の暗さがしみ出しているだけで、橙も由香の姿もなかった。
「はぐれてしまったようです」
「でも、俺たち、まっすぐ走ってなかったか?」
「私もそう思っていたのですが……」
 藍の言葉を受けて、紺も今始めて、自分達のいる所がどこか、確認する。
 暗い病院内の、病棟の真ん中。均等に並んだ扉が、ゆるくきしむ蝶使いにぶらさがって、ギイギイと揺れている。
「ずっと……後ろを付いて来てると思ってたのに」
「ここは、何かおかしいです。早く由香達と合流して、ひきずってでも帰りましょう」
「そうだな、ああ、携帯電話は?」
「そういえば、そうですね」
 思い出したように藍は赤い折りたたみ式の携帯電話を取り出し、由香の携帯に電話をかける。めずらしいことに、橙は携帯をもっていないらしいが、紺に言わせればそれも当然なのだ。人ではない、ということは身分証も持っていないだろうし、お金もないだろう。携帯を持つことなど、できるはずがない。そしてこれも悲しい事に当然の事なのだが、紺は由香と藍の携帯の番号を知らない。
 藍は眉間に皺を寄せながら、携帯に耳を傾ける。
 トゥルルル……トゥルルル……
 コール音がしばらく続く。しかし、そのコール音に答える様子はない。
「でません……ね」
 鳴り続けるコール音。
 藍が諦めて電話をきろうとした時、ガチャリ、と電話に出る音がした。
「もしもし? 由香ですか?」
「……」
 電話の向こうは静まり返っている。
「由香? どうかしましたか?」
「………ょ」
「はい?」
「……くらいよ……さむいよ」
「え?」
「暗いよ、寒いよ、暗いよぉ……」
 それは明らかに由香の声ではなかった。震える声でつぶやく声は、聞いていると体の芯から冷えていきそうなほど、おぞましい声で、まるで人の声ではないようだった。しかし、明らかにその声は日本語を解して、電話越しに藍に語りかける。そう、例えるなら、恐怖が直接話しかけてきているような、妙な感覚だ。
「寒い暗い寒い暗い寒い暗い寒い暗い……」
 だんだん、声は感覚をつめ、激しさを増していく。
「ちょっと、貴方大丈夫ですか? 由香はどうしました?」
 藍は声に対して恐ろしいと思いながらも、訊かずにはいられなかった。
「……」
 声は一瞬黙り込み、不意に抑揚のない声で笑い始めた。
「フハハ……アァハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」
「……っ!?」
 その声があまりに大きくて、思わず藍は電話から見耳を離す。だから、その声の最後の言葉が、藍に受話器から届く事はなかった。
「お前……おもしろいな」
 先ほどまで受話器から聞こえていた声が、すぐ耳元で聞こえて藍は振り返りながら後ろに飛びのく。
 目の前にいた。
 それは、不意に視界の中に現れた。
 さきほども見かけた、長い髪の毛の白い服を着た女の人。
 やはり、顔は人間とは思えないほどに青白く、光をたたえる事もない、虚ろな目の下には、やはり濃いくまがくっきりと刻まれている。
 藍は再び現れたそれを見て声にならない悲鳴を上げる。
「あ……青柳紺」
 視線だけで、この場で唯一頼れる少年を探すが、電話をかける前まで近くにいたあの誠実そうな少年の姿が見えない。
 逃げてしまった……わけはない、と言いたいところだが、何分、由香以外の人間とあまり親しくしていないせいか、どうも信頼が薄い。
 近くにいない少年を頼る事はできずに、何処にも止まる事のできない視線は宙を彷徨い、最終的にはずるずると近づいてくる少女の恐ろしい姿に、釘付けになってしまった。
「おまえ、私のさがしものしらないか?」
 
2012/07/13(Fri)21:34:23 公開 / 夏夜
■この作品の著作権は夏夜さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 こんにちは、夏夜ともうします。
 初投稿、ということで書かせてもらいましたのは、ホラーモノ。しかし、私はホラーを書くのが初めてですし、怖いのが苦手なので、あまり怖いものはかけません。
 それでもホラーを書いてみたのは、なんとなく書きたくなったからです。
 怖いような、そうでもないような、そんなどっちつかずのお話を書いていけたらなぁ、と思っています。
 それでは、失礼します。
この作品に対する感想 - 昇順
 はじめまして、白たんぽぽと申します。
 作品読みましたー。なかなか雰囲気のあるいい話ですね〜。ただ、ホラーというよりは、昼ドラ的怖さを感じました。けど、人の気持ちほど怖いものはないので、ホラーと言ってもいいですよね。
 読んでいて、イメージ的にぽよぽよしてる、てところでなぜか和んでしまいました。そのせいでぷよぷよのような何かを想像してしまいました、ごめんなさい。
 また、英単語のテストのときのエピソードにくすり、と笑ってしまいました。これってもしかしてホラーに見せかけたコメディーなのか、と最初誤解してました。
 しかし、読み進めることによって、ふむ、これはやばい話だな〜、と思うようになりました。まさか一人の女性を取り合うような話だとは思いませんでした。思うことによって生まれたゴースト、それを打ち破れる謎の少年、そして事情をまったく理解出来ていない女の子と、次が楽しみな展開で面白かったです〜。
 描写的には、あの交差点のところが良かったです。あのテンポ感がとてもいいです。そして、それによってすごく盛り上がりを感じました。
 あと関係ないですが、キャラ的には由香が一番好きですね。むちゃくちゃ濃くて好みです。この子もストーリーに関わるのか、ちょっと注視したいな、と思っていたり思っていなかったり。
 次回更新楽しみにして待ってます。執筆がんばってください〜。ではでは。
2010/12/24(Fri)00:03:090点白たんぽぽ
 初めまして白たんぽぽさん。夏夜と申します。
 小説読んでくださってありがとうございます。この掲示板で初めていただいた感想なので、とても嬉しいです。
 たしかに、ちょっと昼ドラくさいコメディー的な部分も多少ありますが、そういう流れになったのは、夏夜が笑いを入れないと死んでしまう病気だからです。なんだか暗い場面ばかりを書いていると、自分まで鬱な気分になってしまうからなのです。
 交差点のところは、意外にもちょっと悩んだところなんです。私は結構、お話の舞台設定などを自分の身近なところに似せて、イメージしやすくしているんですけどね、お話のなかの交差点はむちゃくちゃ人通りがないんですよ。私の住んでいるところは、都会に比べると田舎ですが、交差点はいつも何かしらいます。人やら車やら……。
 だから、交差点にしようか、どうしようか、と舞台設定的な意味で悩みました。結局、そこは妄想……失礼、想像力でカバーし、あのシーンは人通りの少ない交差点になりました。
 あのぽよぽよした物体を人の想いの形にしたのは、「結局生きた人間が一番怖いんですよ」的な展開の印象を与えたかったからです
 由香が好きですか、あれは私の友人がモデルなんですよ。本当に赤毛なんです。美人なんです。おもしろいんです。
 それでは、続きも頑張って書くのでお付き合い頂けたら、と思います。
 ではでは。
2010/12/24(Fri)08:19:300点夏夜
 はじめまして、夏夜さん。作品、拝読させて頂きました。
 ホラーという一言に釣られたのですが、夏夜さんのホラーは雰囲気の出し方が良いですね。ホラーでは同じ言葉を繰り返して、恐怖感を煽るというのはよく使われてますが、その使い方がとても上手で、どきどきしました。今まで淡々と〈「振り返れ……、振り返れ……」〉と言っていたのに、突如〈「振り返れ!!」〉と鬼気迫る様子で発せられ、今までの淡々としたギャップと、これからも変わらず同じ調子が続くのだろうという心理への奇襲攻撃を食らった気分で、思わずビクッ、となりました。いいですよね、こういう古典的だけど効果的な方法大好きです。
 また、どの人物もキャラが立っていて、主人公からして面白い人物だなぁ、と思っただけに、主人公の美少女設定をもうちょっと全面に出して欲しい気もしました。ストーカーに狙われるほどの美少女なのに、その描写がほとんどないのはもったいない、実にもったいない! ……と美少女と美形好きはもの申してしまいます。すみません。
 今後、転校生によって盤上がどうなっていくのか楽しみにしています。
2010/12/24(Fri)23:24:560点一二三四吾
 初めまして一二三四吾さん。夏夜と申します。
 ホラー好きですか、私も好きです。でも最近、私の好きなホラーを書く方が少なくなってきているのが残念です。
 繰り返しの展開は、結構イメージしやすくて好きです。文章で読者を驚かせたり、勘ぐらせたりするのって、私にとっては難しいので、そう言っていただけると、とても嬉しいです、有り難うございます。
 美人描写が少ないのは、私が人物の描写及び風景描写がものすごく下手くそだからだと思います、すみません。
 でも、こうして指摘していただいたからには、これからばしばしと盛り込んでいけるよう、努力します!! 
 感想有り難う御座いました。
 これからも頑張りますので、お付き合い頂けたら嬉しいです。
 ではでは。
2010/12/25(Sat)10:19:230点夏夜
こんばんわ、夏夜さん。
以前の感想で指摘し忘れていたので、ちょっとぶしつけになりますが、それについて書かせてください。
この作品は損していると思います!というのも、作品紹介の二行目『彼女の名前はちょっと変わったストーカーと』の部分がちょっと日本語としておかしくなっていると思うのです。多くの方は作品紹介を読んだ後に作品を読んでいると思うので、そこのところの間違いによって読むのを遠慮している方もいらっしゃるのではないか、なんて思いました。
折角面白い話なのに、そこがすごくもったいないと思います。なので、そこに関しては取り急ぎ訂正されたほうがよろしいのではないか、と思いました。
よろしく検討していただけることを願っております。
(もしかして、僕のパソコンでだけ間違って表示されているだけなのかもしれないですが、そのときは無視してくださいー)
続き楽しみにして待っております。執筆ぜひ頑張ってください〜、ではでは。
2010/12/27(Mon)22:56:430点白たんぽぽ

 こんばんわ、白たんぽぽさん。
 本当だ……書き間違えてる!!
 いやぁぁぁぁっ!!!(心の叫びです、スルーお願いします)
 すぐに直します!! ただちに!! 今すぐに!!
 親切にご指摘、どうも有り難うございました!!
 ではでは。

2010/12/28(Tue)08:35:150点夏夜
ホラーと聞いて飛んできました! 水山 虎というものです。
 文章での恐怖感、なかなか出せているのではないかと思います。キャラがちゃんとあるのも良いですね。
 ほお、ホラーが最近少なくなってきているのですか……僕もホラーかいてみようかな……短篇で。
ヒントにさせてもらおうと思いました。続きがんばってください。
2010/12/29(Wed)19:53:290点水山 虎

 はじめまして、水山 虎さん。夏夜と申します。
 読んでくださって有り難う御座います。
 楽しんでいただけたら幸いです。
 ホラー書くんですか? じゃあ、その時は是非、おじゃまさせていただきますね!!
 続き頑張ります。
 ではでは。
2010/12/30(Thu)07:04:070点夏夜
 こんにちは、お久しぶりです。
 今回の更新分も面白かったです。でも、なぜか怖くない……。いえ、由佳のキャラクターを十分に堪能させてもらって、大満足なんですが、うん、でも楽しげに怖いことを言うところが、怖いキャラなのかな、と思っていた部分もありまして、そうじゃなくて安心したような、そうでないような、みたいな気分だったりします。今回のような怖いはずのことを言っているのに怖くない、というギャップも十分楽しかったので、そこに関しては満足なのですが、うーん(でも、やっぱり由佳のキャラクター性は良いと思います。特にボーイズ・ラブのくだりなんか)。
 最初の感想あたりで述べたように、やはりホラーに見せかけたコメディ疑惑が頭をもたげ始めていたりします。うーん、いい意味でまたその疑惑を裏切って欲しいな、と次回を期待していたりします。ではでは。
2011/04/06(Wed)21:05:520点白たんぽぽ

 お久しぶりです、白たんぽぽさん。
 ホラーなのに怖くない……コメディ大好きな私なので、前向きに褒め言葉として受け取ります。でも、せっかくホラーと表示しているので、すこしくらいぞっとするエピソードがあったほうがよさそうですよね……。
 ボーイズ・ラブのくだりは、本当に思い付きです。なんでホラーでこの話をやろうとおもったのか、本当にジャンルとミスマッチで我ながら呆れてきました……(笑うところです)。
 まだまだ話は始まったばかりなので、白たんぽぽさんの期待をいい意味で裏切れるように、頑張りたいと思います。
 それでは、有り難うございました!!
2011/04/08(Fri)20:05:360点夏夜
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