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『水を飲まない街(企画に乗りたかったが期日もサイズも大幅に規定を外している)』 作者:模造の冠を被ったお犬さま / サスペンス お笑い
全角7733文字
容量15466 bytes
原稿用紙約23.3枚
 ハリウッド映画の原作になる予定のパニック小説です。
水を飲まない街







 三大都市がある県にしては知名度が低く「ああ、四国の」と言われる、パッとしない県。おい、愛媛と混同するな。
 その都市とも廃藩置県によって同じ県内に収まっているだけで、実際には遠く離れた土地。都市がある東側をエンド藩と無理やりに英語で読んでみれば、こちら西側はスリーリバーズ。スリーリバーズのひとつ、リッチリバーこそが現在地──俺の生活圏だ。
 NHK大河ドラマ『風林火山』の主人公、山本勘助ゆかりの地であり、稲荷でも全国的に有名だし、若葉祭は戦国時代の感謝を今に伝える由緒ある祭だ。若葉祭より『うなごうじ祭』の名前のほうが通りがいいか。ん、それも聞いたことがないだって。現代語訳すると、うじ虫祭だ。ほら、参加したくて堪らなくなってきただろう。遠慮しなくていいぞ、近うよれ。
 もともと、この辺り一帯は歴史が深い。垢抜けずとも都市があるということは、すなわちそこがある程度以上の広さを有する平野なのであり、歴史を紐解くまでもなく“平野あるところに文明あり”ということで、論理がウロボロスになってしまったが言いたいことは結局、そんなに田舎じゃないしうらぶれてもいない。だから馬鹿にするな。
 古都たる京都や奈良が目ではないほど仏閣や神社がある上、三英傑である信長・秀吉・家康出生の地でもある。 日本人ならこの武将たちを知らないなんてことはあるまい。戦乱の時代を駆け抜けた三人の中で、特に肩入れし英雄視している武将もいるだろう。俺は秀吉派だ。
 百姓の出でありながら天下を獲った秀吉。そのサクセスストーリには男の浪漫を感じる。──男色は生理的に受け付けないしな。
 上司の履物を懐で温めるような機転も発想も忠義も野望もない俺は、満開の桜を見てやりきれない思いを一時だけ忘れようとしている。
 天を仰げば視界いっぱいのさくらさくらさくら。やわらかな薄紅色の花が舞い、はらはらはらと注ぎ降る。真綿で包むようにやさしい。おだやかな心持ちになる。
 視線を水平に戻すと、一歩を踏み出すのにも危険予測を発揮しなければならない黒山の人だかり。彼らから見れば、桜を見上げる俺など障害物以外のなにものでもないだろう。視線に引きずられて精神まで俗世に落ちてくる。
 屋台がひしめく桜トンネル。満開の桜に、満員の人。桜を見に来たのか、桜を見に来た人を見に来たのか、桜を見に来た人を見に来た人を見に来たのか。“水、水を見る”の反転した境地。桜は綿のようで、また雲のようでもある。天上天下、風雅な桜と喧騒にまみれた酔っ払いども。桜の木の高さにさえ手が届かない。
 畏敬と憧憬をこめて、改めて桜を見る。はらはらはら、はらはらはらはらはら──じむじむ。零れ落ちる薄紅の向こうに黒い影が見えた。落ちてくる。大きさはすぐに花びらを超えて。質量を伴った物体が。
 野球のフライを捕るときの感覚が甦り、今の俺に重なる。オーライオーライ。俺に落ちている。自由落下の加速度が一本の直線を引く。その先に俺がいる。
 飛び退いた。綿菓子の割り箸が右手甲に刺さる。クレープを通して、女の歯が肩に当たる。ドミノ倒しの要領で、どこかで誰かが倒れたようだ。
 タイルの上、ぼるんっ。落ちて、それから少し跳ねた。洗濯して乾かしていたクッションでも風に飛ばされてきたのだろうか。腰を落として首を伸ばしたとき、首の後ろに衝撃を受けた。意識が途切れて──消えた。
 渡来道秀、享年四十。





 ひとり暮らしの寂しさを埋めるために点けていた21型テレビから漏れ出てくるJ−POPに注意を促すチャイム音が被さった。
 画面上部にテロップが流れている。
 “降りけが人が続出 死者は不明 警察は原因を究”。なにが降ったのだろう。季節はずれの雹だろうか。原因がわからないなら、常識的な氷の粒や水の類ではないのか。非常識な物質が降っている。今もまだ大量に、それも、広範囲に。
 “続出”ということは今なお起こっているということだし、数量を多いこともわかる。死者が“不明”ということは見てすぐに判断できないぐらい規模が大きいためだろう。
 テレビの画面が切り替わる。
『番組の途中ですが、報道特別番組をお送りします。愛知県南東部で午前十一時ごろから×××××が降っており……』
 見たことのないニュースキャスタが泡を食って早口に捲くし立てる。
 いまなんて──。日本人もエイプリルフールにジョークを放映するような、洒落の通じる民族になったのだろうか。しかし、趣味が悪い。人死にに関わるようなことをジョークにするなんて、ジョークだから趣味が悪い。これでは慢心で偽造の人道家を、それと熱心で偽善の動物愛護団体の運動を活発にするだけだ。
『……気流に乗って移動してきたなど憶測が飛んでいますが、真相は未だわかっていません。警察では現在、負傷者の救出に当たるほか……』
 そんな憶測はどこで聞いたんだ。ニュースディレクタが思いつきで考えたんじゃないのか。竜巻は局所的に発生するだけで『デイ・アフター・トゥモロー』だってそんな大移動はしないし、この時期にそんな方角から季節風は吹かないし、台風は熱帯海上で生まれるものであって南下してからまた北に上がってくるなんてことはない。気流に乗ってきたなら『それ』だけが飛ばされてくるなんてあり得ない。そんな知性のかけらもないジョークを言うより、「それは仮の姿で、真の姿はエイリアンだった」のほうがはるかに説得力がある。
 電気炊飯器の“ご飯を炊き終わった報せ”を聞いて立ち上がる。ご飯をよそり、ふりかけをかけてゆかりごはんにした。昨日の余りもの、ブリの煮つけを鍋から取り出して皿に盛り付ける。
 ショウガが利いていておいしい。すこし塩味が強すぎる気もする。
 こんなとき──あ。テレビに地図で説明されて、ようやく思い至る。アイチケンナントウブは愛知県南東部で、そこには祖父母が住んでいる。
 ケータイに手を伸ばす。呼び出し音が、繋がった。
「おばあちゃん、わたしわたし。そっちでコアラが降ってるってホントなの」
 エイプリルフールは先週、通過している。 





 玉砂利の上を草履が滑る。
 烏のように黒い装束を身に纏った人物は、身体のラインを隠すという和服の特性が発揮されてなお細長かった。それは夕暮れの影法師のようでもあったが、時間はまだ太陽の昇りきらない時刻。
 場所は仏教系稲荷の総本山、円福山豊川閣妙厳寺。通称、豊川稲荷。
 本尊は千手観音で鎮守は荼吉尼真天。稲荷と呼ばれていながら、同時に曹洞宗の寺社でもある。宗教に関して大らかな国民性が具現化したような建物であり、場所だった。
「んー。まあ、こんな感じだね」
 参拝客にしては不自然だ。順路通りに歩けばいいものを、玉砂利の上など歩いて響きを愉しんでいる。足取りは確かだが、どこか浮き足立っていた。参りに来たのなら、明らかに神仏の気を悪くしている。
 人物は賽銭箱の前に立ち、本尊を観察している。やがて、飽きたのかそのまま踵を返した。賽銭箱には視線を落としただけで、金銭は一円も奉納していない。一礼も、一拝たりともしていない。
 奥の院を通り、霊狐塚へと向かう。
「初詣に来るとこじゃないね。夏──うん、夏がいい」
 奈良や鎌倉みたいに派手な大仏とか、呼び物があるわけじゃないし。そんなことを口の中で唱えている。
 観光客が喜ぶところではない。それは的を射ている。由緒を知っているものだけが、その地を踏んだ思い出を記念にするだけである。有名な神社だからご利益がある、そう考えているものは神社というものの本質を根本的に間違えている。神社は願いを聞き届けてくれる場所ではない。
 この場所の特筆すべきは、霊狐塚。領域の質が他と切り離されて純粋。平たく言えば、空気が違う。
 一歩ごとに霊圧の高まる鳥居の道を、しかし飄々と突き進んでゆく。
「おや」
 人物の表情筋が初めて働いた。
 千体以上のキツネがおわすこの場所で、対峙する。
 人物が漆黒であるならば、対峙したのは真紅だった。ジャケットもパンツもブーツも赤い。髪の色も、左眼も。
 しかし、なにも起こらない。双方ともに、神前で事を構える無粋な真似をしようとは考えなかった。なにも気付かなかったように、すれ違う。
「白狐憑きだったっけね」
 つぶやきは、届かないことを前提にしている。



「いま帰ったぞい」
 僕はアパートに帰るたびに「ただいま」の挨拶が不安で仕方がない。もしも、返ってこなかったらどうしよう。そんな考えを隠すように、いつも少しアレンジした「ただいま」を使っている。
「おかえ、おなか空いた」
「『おかえり』ぐらい最後まで言ってくださいよう」
「あ、またキモノで出かけたの。うーわー、ウける。ふはは」
 今日も居る。僕は一安心した。最近、僕はこの人のために生きているのではないかと思える。僕もずいぶんと人に依存するようになったものだ。少し前までは考えられないこと。
「ずいぶんとうれしそうだな。恋でもしたか」
 僕はカップうどんをふたつ棚から取り出して、薬缶に火をかける。
「ええ。赤髪に会っちゃいました」
「ふーん。そ」
 あれ、素っ気ない。
「嫉妬ですか。らしくないと言うか、らしいと──」
「むっきゃー。それはどーゆーことかな。この僕が君に恋していると思っちゃてたりとかするの? 思い上がりも甚だしいね。この僕が? そんな君に? にゃいにゃい。
 だいたいさー、嫉妬する必要がにゃいじゃにゃい。僕のことがないにしてもさー。君は僕にぞっこんなワケだし。ラブラブラブじゃない。目がハートで、中では星が瞬いてるよっ。好き好きビーム全開でそんなことを仰るなんて、『まだまだだね』だぜ。
 ──僕のモンだろ、君は」
 そうだっけ。ぞっこんだったっけ。
 僕は高音を響き渡らせる薬缶の火を止め、カップうどんに熱湯を注いで三分間待つ。
「で、なにしにどこさ行ったのさ」
「お稲荷さん。地元を舞台にした小説を書こうと思って。フィールドワーク」
 ホントのことを言うと、調査ではなくて着想を得ようと思ってのことだったのだけれど。その程度のごまかしはご愛嬌。
「ふーん」
 素っ気なくない。なんでもないような顔してるけれど、目が輝いている。『目の中で星が瞬いてるよっ』ってこういうことか。僕の書くものに興味をもってくれている。
 僕は三分経ったカップうどんを二段ベッドの上まで運ぶ。
「お持ちいたしました」
「うむー。苦しゅうない苦しゅうない」
 僕の同居人は二段ベッドの上から降りない。それなのにその存在はどこか儚い。僕の部屋を去る姿が想像に易くて、だから嫌だ。ぞっこんじゃなくて結婚で。鎖で繋げて楔を打って。ずっといっしょに暮らしたい。
「あーあ」
「ん、どした?」
 そのとき、アパート全体が揺れた。投石されているような感じ。断続的にやってくる。物干し竿の折れる音がした。
「カーテン開けようよ」
「だーめ」
「もうお昼だよ」
「僕の中にいる魔王の封印が解けかけているんだ。うっ、くっ」
 僕たちは外でなにが起きているのか知らなかった。どんな非常事態で、世界中が注目しているニュースで、未曾有の事件で、あり得ない出来事だったとしても、僕たちふたりはそこで完結していた。
「世界が滅びるときも」
 笑いながら真剣な顔をしている。よくわからない顔だった。
「なに?」
「そばにいることを許可する」
 たぶん、僕はよろこんだ。





 わたしはお母さんと日よう日にさくらトンネルにさくらを見にいきました。
 わたしはお母さんに二百円でわたがしを買ってもらいました。わたしがわたがしを食べるとき、おじさんがわたがしにぶつかって、わたがしがなくなりました。
 おじさんはわたがしがなくなったことをわたしにあやまらなかったのでコアラで死んじゃいました。コアラがかわいかったです。
 みんながワーワー言っていて、お母さんはわたしを引っぱって図書かんに入れました。図書かんに入ったことは、なつ休みにプールのかえりにプナラテリウムを見てから一回もありませんでした。
 たくさんふってきたコアラが立って、さくらの木にのぼりませんでした。コアラがのぼることにしたのは図書かんなのでした。
 図書かんのかべをのぼったコアラが丸いやねにつくと穴があきました。コアラが食べたみたいです。プレタナルルームのやねが丸いやねだったので、もうプレタナルは見れません。わたしはかなしいと思いました。
 プテラレアエルムームのやねがなくなるとプテラレアエルムームの中にもコアラがふって、そっから1かいに下りてきました。コアラがかいだんをころがって下りてくると、みんながまたワーワー言います。
 男のおじさんがコアラをけりました。コアラはぜんぜんうごかなくて、おじさんは足をもってぴょんぴょんとびはねていました。いたかったからだと思います。でも自分がやられていやなことはあいてにしてはいけないから、しょうがないことです。
 コアラは本だなと本だなのあいだにも入ってきて、みんなは本だなとかテーブルの上にいます。コアラはかわいいけど、たくさんいるとちょっときもいです。わたしはお母さんと学習しつの中にかくれていました。
 コアラは図書かんを食べました。かべを食べて、大きなガラスも食べます。学習しつのかべやドアもがじがじがじと食べました。かべに穴があいてコアラのはなが見えました。コアラが食べると穴はもっと大きくなってコアラが学習しつに入ってきます。お母さんはねていました。
 コアラがだっこしたくなったけど、重くてできません。わたしは学習しつから出ました。図書かんのかべは穴ぼこだらけになっていたので外に出ました。コアラは空からふっていなかったです。
 コアラをふみつけないように図書かんのちゅう車じょうをあるいて、やたいにつきました。わたがしやさんからメロンパンナちゃんのわたがしをとりました。
 これはさっきのこまちとかれんのわたがしがダメになったからです。マックドナルでジュースをこぼしたときもあたらしいのをくれたのでいいことです。わたがしはまだ食べていなかったからこうかんします。わるくないです。
 わたがしはおいしくて、わたがしやさんはコアラが食べました。図書かんは入り口のとこがなくなりました。
 わたしはつかれました。
 まだ書かないといけないんですか。
 もういやです。
 おわり。





『おばあちゃん、わたしわたし。そっちでコアラが降ってるってホントなの』
 蜜柑を食べていると電話が鳴りました。座椅子から腰を上げて電話をとると、孫の声が聞こえました。元気でやってるみたいで、よかった。
「わたしわたし詐欺の方ですか。ご苦労さまです」
『わたしだって。今、神奈川にいる孫娘の芽久菜だって』
「孫にメグナなんていません。お引取りください」
『おばあちゃん、わざとボケてるのかホントにボケちゃってるのかわからないから、そんな確認やめて。確認したかったらディスプレイ表示する電話を買いなよ』
 本人だねえ。これからはIT社会だから新しい固定電話なんて買わないんだよ。
 ガンガン、と玄関扉を叩く音がします。
「芽久さん、おじいちゃんが帰ってきたからちょっと待っててね」
『ちょ、待……』
 照さんはなおもガンガン玄関扉を叩きます。あたしが開けなければ、叩き壊す気なんでしょうか。
「照さん。今、開けますからね」
 からからから、びしゃん。開けようとしたら、照さんが勢いよく開け放ちました。
「見ろ、ばーさん。おのれ鬼畜米兵め。今度はこんなものを落としてきよった」
 照さんのたくましい腕に片足を捕まれて、目のくりくりとした可愛らしいコアラがぶら下がっていました。
「いやですよ、照さん。それはコアラです」
「コアラか、そういえば動物園で見た獣にこんなのがいたな。あのときは動かなかったから人形かと思ったが。そうか、これがコアラか。米兵め、奇天烈なものを落としてきよる」
「照さん。コアラはオーストラリアらしいですよ。ニュースでやってます」
「米兵ならぬ濠兵か。戦況はどうなってる。すかさずこちらも反撃に出るぞ」
「照さん、戦争は起こっていません。異常気象で飛んできたようですよ」
「ばーさん、騙されちゃあいかん。こんなナリをしているが、コアラというやつは侮れん。こいつは商店街を瓦礫に変えよった。爆撃機より恐ろしいぞ。落とされた直後はなんともないが、周囲の建物を食い続けて焼け野原と同じにしてまう。商店街なんて酷い有様だ」
 テレビジョンで聞いている分にはそんなに凄惨な光景とは思いもよりませんでしたが、なるほどそんなに被害が出ているのなら大事ですね。
「おい、ばーさん。受話器が外れているぞ」
「ええ、そうでしたそうでした。芽久さんが心配してかけてくだ……」
「芽久か、儂だ儂。──詐欺じゃない。可愛い爺ちゃんを忘れたか。
 ──そう、大変なんだ。そっちは無事か。──ならいい。こっちはやられた。ぬかったな。──ああ、儂なら大過ない。ばあさんも相変わらずだ。──コアラか。そういえば芽久。お前、動物園に行ったときコアラが好きだと言っていたな。何匹送ってほしい。何匹でもいいぞ。──そうか。真実本当だ。コアラが降っとる。──怪我はないようだったが。大変だぞ。八の服屋はぺしゃんこだし、菊の家具屋なんて跡形もない。──ああ、そうだ。こっちのことは安心しろ。家とばーさんぐらい守れらあな。それより気をつけろよ。そっちでコアラが降らない保障はないからな。──そうだ。じゃあな」
 まだ、あたしが話し中でしたのに。
「ばーさん、篭城の準備だ。コアラのやつ、ガラスは食うくせして木材だけは食わんらしい。窓には板を打つぞ。ああ、腕が鳴るな。血潮が沸く。ばーさん、覚悟を決めろよ」
 照さん、凛々しい。





 街はコアラで埋め尽くされていた。
 当事者でないものたちは懸命に、“これはなんなのか”“これがどういうことなのか”“だれによるものなのか”“これからどうなるのか”“なぜその街なのか”“なぜコアラなのか”と議論を続けていたが、なにひとつとして答えが導かれる兆しが見えなかった。
 延々と根拠や理屈のない推論が無責任に垂れ流されていたが、その『根拠や理屈のないこと』が真相ではないかと気付き始めてもいた。それを振り払うように、さらに荒唐無稽な主張が述べられ議論は混沌と化す。もはや、子供の口喧嘩のような体裁だった。論者は『意味がない』ということに怯えているのだ。意味がなくては解決策を見つけられない。自分たちの理解できる範疇に落とし込んで、わかったつもりになって、回答を出したふりをする。十八番となったその手段が今回の件には使えなかった。
 コアラはあらかたコンクリを食べ終わっていた。ガラスと鉄筋もほとんど尽きた。次にコアラたちはアスファルトを食べ始めていた。道路だ。道路は全国に張り巡らされている。そういうことだった。
 コアラは行軍する。






2007/12/30(Sun)19:23:40 公開 / 模造の冠を被ったお犬さま
http://clown-crown.seesaa.net/
■この作品の著作権は模造の冠を被ったお犬さまさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 山本勘助のお墓は祖父母の家から徒歩2分のところにあります。この間、ドラマになった記念だとかでお餅を振舞っていました。今もまだ幟が立っています。なんとかして人を呼び込もうとしているみたいです。やっぱり田舎ですね。
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