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『聖夜3』 作者:水芭蕉猫 / ショート*2 未分類
全角3461.5文字
容量6923 bytes
原稿用紙約10.35枚
BL注意。ヤマとオチはありません。ひたっすらに野郎二人がいちゃいちゃしてるだけです。
 ミニスカサンタである。
 何が楽しくて三十路の野郎にミニスカサンタなのか、雪哉にはまったく解らない。
「なぁなぁお願いだから。ほんっとにほんっとにお願いだからさー!!」
 目の前にはミニスカサンタのXL衣装を両手に掲げ、瞳をキラッキラと輝せて懇願してくる恭介の姿。
 くらっと眩暈がするが、ここで倒れるわけにはいかなかった。
 今宵はクリスマス。少し前に「クリスマスプレゼントは何が良い?」なんてこのお調子者のパートナーに聞くんじゃなかったと雪哉は思いっきり後悔した。
 その時の恭介には「ちょっとまだ決まってないから待ってて」なんて言われた。その後も何度か聞いたのだが、のらりくらりとはぐらかされつつ今日に至る。仕方なく雪哉は新しい腕時計を勝手に用意してこの日を迎えたのだが、夜になってご馳走を食べて良い雰囲気になった途端のコレである。
 結婚して五年も立つと、雪哉も恭介もある程度は手の込んだ料理も出来るようになる。
 結婚五年目。つまり、養子縁組してから五年目の今日は、折角だからと二人一緒に頑張ってクリスマスの御馳走を作ってみたのだ。朝早くから買い出しに出て、夕方からローストチキンやスモークサーモンの生春巻き、エビフライ等を二人で仲良く作り上げた。
 今年は二人ともうまい具合に休みも取れて、突然の仕事も恭介が風邪を引くことも無くて、心配事も一つも無くて、雪哉も今日ばかりはずっとご機嫌だ。
「チキン、なかなか上手にできたじゃねぇか」
「意外と生春巻きって巻くの難しいのな」
 そういう具合に、仲良し夫婦っぽく台所に立ってキャッキャウフフと甘いクリスマスを楽しんでいた。のだが、丸鶏の半分が骨となり、ケーキを食べてシャンパンを飲んで良い具合に酔いが回ってきたそんな時、箪笥の中から恭介がいそいそと目にも鮮やかな赤いミニスカサンタコスプレ衣装を出してきた。所謂、夜の繁華街で看板を持ったお姉ちゃんが呼び込みに使うアノ衣装だ。
「何これ」
「クリスマスプレゼントのリクエストです」
 そこから始まる攻防戦線。というより、恭介の一方的な説得が始まったのだった。
「良いだろう良いだろう!? 結婚してからあんまりこういうの着たこと無かったじゃん!? せっかくクリスマスなんだから今夜だけ特別!! 今夜だけだからねぇおーねーがーいー!!」
 女子高生みたいな発音で喋りつつ、べたーっと腰に抱きついてくる恭介の頭を、雪哉はえぇい鬱陶しい!! とばかりに引きはがした。
「な、なんでこんなの着なきゃなんないんだよ!? 野郎の女装だぞ!? 見てもつまんないだろう!?」
 何が楽しくて三十路の野郎がミニスカサンタ衣装なんて恥ずかしい女装を着なきゃならんのか。いかな人生のパートナーの頼みとはいえこの願いは憚られる。そういえば、夏頃にロープで縛らせてくれとか言われた気もするが、最近の恭介はアブノーマルにでも目覚めつつあるんだろうか。や、確かに結婚五年目ともなればマンネリもしてくるけどさ。色々と。
「詰まんなくない!! 絶対詰まんなくないから!! むしろ雪哉だから見たいんだよ!!」
 頼むよー。クリスマスだろー。俺だけのサンタさんだろー。なぁなぁなぁ頼むよー。
 駄々っ子みたいに腹に頭をぐりぐり擦りつけられて、だから、あの、その、と言いよどむ雪哉。だが、
「俺だけのクリスマスプレゼント欲しいなー。サンタさんに来てほしいなー」
 でっかい犬がキューンと鳴くような声でそう言われると雪哉はぐぐっと言葉に詰まる。
 ここまでされてウジウジ嫌がるのも男らしくない。見ている人は恭介だけだし、今日は楽しいクリスマスだ。何かもう吹っ切れるしかないだろう。
「ええい仕方がない!! 今日だけだからな!! 今日だけ!!」
 真っ赤なミニスカサンタさんの衣装をむんずと掴んだ雪哉は半分怒ったように洗面所へ向かったのだった。


 ★   ★   ★


 雪哉としては、体のラインが出るような衣装はあんまり好きではない。
 もう結婚してから五年も立つ。恭介からの愛情は今でもしっかり感じている。だから不安を抱きようが無いのだが、なんだかんだ言いつつも、やはり女性へのコンプレックスからは抜け切れないでいた。
 早い話、やっぱり女の子とは違うな、とか、やっぱり女の子の方がこういうのは似合うな。と少しでも恭介に思われるのが怖いのだ。
「やっぱり老けてくるとどうにもなぁ……」
 人間、どんなに若作りをしようと頑張ったところで老けてくる。三十代にもなれば益々男性ホルモンは増してきて、髭だって今より濃くなるだろう。その後も徐々に筋肉は衰えて、太りやすくなって、髪だって薄くなるかもしれない。一応体脂肪には気を付けて生活しているのだが、やっぱり女とは違うなと思われるのが凄く怖い。今、途方もない幸せに包まれている分、恭介を失う時を考えたりすると雪哉は涙が出そうなくらい辛くなる。
「皺は……まだ出来てないな……」
 洗面台の鏡を見ながら目尻を触ると、ぴょこんと前髪の中から白髪が一本飛んでいるのが見えた。
「髪、染め直さなきゃな」
 そのうち白髪染めタイプを買わなきゃダメになるんだろうなぁ等とげんなりしながら赤い衣装に手をかける。
 ワンピースタイプのサンタ服のスカートをを頭からすっぽりかぶった。すとんと頭を通して袖から腕を出し、適当に裾を引っ張って整える。やっぱり胸の部分はぶかぶかするがウエスト部分はぴったりだ。しかしスカートからにょっきり生える筋肉質な足見て、やっぱり似合わないような気がする。
 一応、内股気味に姿勢を正し、鏡を見ると女装した男がそこにいた。
 胸元に三っつの白いぼんぼりがついた、赤くて可愛いミニスカサンタの服を着た三十路の野郎だ。
 これがまだ十代の可愛い少年ならまだしも、三十路だぞ。果たして恭介はこんなののどこが良いのだろう。
(こんなの、恭介に見せるとか本気で辛いんだけど……)
 しかしここでグズグズしていても仕方ない。付属品の赤い帽子を頭に乗せて、意を決してそろりそろりと洗面所を出て行くと、興奮で幻の尻尾をぶんぶん回すヒト科の大型犬が出迎えた。
「おお、おおお、おおおおおーーーーー!!!」
 恥ずかしさのあまり肩を落として右手で顔を隠す雪哉の周りを、正しく犬のようにはしゃいだ恭介はどたどたぐるぐる回って舐めまわすように眺めている。
「似合わないだろ?」
 げんなり顔のまま自嘲するように笑って尋ねる雪哉だが、恭介はぶんぶんぶんを首を振ってぺかーっと擬音が浮かび上がる程のすがすがしい笑顔を見せた。そして両手の拳に親指を立ててサムズアップを形作ると、
「グレイト――――――!!!!!! 最高だよ雪哉!! めっちゃ可愛いよ雪哉!! ありがとうありがとう俺マジで来年も生きていけるよ!!」
 抱きしめてほっぺたにキスして赤い帽子の上からガシガシ頭を撫でる恭介に、雪哉はマジでこいつは目が腐っているんじゃないかと本気で思った。
「どど、どこがだよ!? 野郎の女装だぞ!? 三十路だぞ!? 全然似合わないだろうが!?」
 慌てて食って掛かる雪哉だが、すると恭介は解ってねぇなーという顔をしてちっちっちと指を振る。
「そこが良いんだよ。『俺に似合わない女装させて何が面白いんだ?』って挙動不審な雪哉が見たくってさ」
 何だそれは聞いてない。
 ぽかんとする雪哉の顔を恭介は顔をニヤニヤとさせたまま、どこかの名探偵のように顎に人差し指を当てて言う。
「どうせ雪哉の事だから、歳くって似合わない女装なんかしたら現実を目の当たりにした俺にキモがられるんじゃないかって心配したんだろ?」
「うぐっ」
 図星だった。
「ど、どうせ俺はネクラの心配性ですよーだ……」
 思わず呻いた雪哉はあまりの恥ずかしさに言い訳がましくボソリと言うが、しかしまた茶化すのかと思っていた恭介の行動は予想外な物だった。
 にこにこ笑顔を崩さぬままで雪哉の左手を手に取ると、筋張ったその手の甲に柔らかな唇を押し付けた。
 その薬指には、もちろん銀に輝くペアリング。
「大丈夫だからそんなに心配するな。俺はきっと三十年たっても雪哉の事を誰よりも綺麗だよって言える自信があるからさ」
「雪哉、愛しているよ」とそのあまりにも直球ストレートな物言いに、雪哉は首まで真っ赤にしたまま「バカ」と呟く。
 それから恭介の手を両手でぎゅっと握り返し、蚊の鳴くような小さな声で「俺も、お前を世界で一番愛しているよ」囁いた。


2015/12/25(Fri)07:45:31 公開 / 水芭蕉猫
■この作品の著作権は水芭蕉猫さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 クリスマス作品です。
 百合にしようか薔薇にしようか悩んだ結果、2009年初出のあの二人にご登場いただきました。ひたっすらにクソ甘いだけのお話です。実は毎年この時期になると出せー出せ〜と念を送られるような気がします。作中では五年となっていますが、今確認したら結婚して六年目でした。うーん、でも去年は書けなかったので、五年目にしておきます。キリが良いしね。うん。
 野郎の女装は似合う似合わないだけではなく、恥ずかしそうにしている表情こそポイントが高いと思うんだ(真顔)

 雪哉&恭介はクリスマスの日だけに書くゲイカップルのひたすら甘いだけのお話です。過去に二話ありますが、これだけでも大丈夫です。ただひたすら甘いだけですので……。

 それでは皆様、良い聖夜を〜♪
この作品に対する感想 - 昇順
……徹夜明けのクリスマスの早朝、うるうると目頭を潤ませている狸がいる。なぜか「リア充は今この瞬間に分子レベルまで崩壊しろ!」と叫びたくならない。そう……やはり狸は愛が欲しいのだな。相手がオスでもメスでもミケでもブチでも、無差別に愛が欲しいのだな。
大丈夫だ雪哉。たとえウン十年後にサムソン方向化していても、あるいはミイラ化していても、きっと恭介にとって君は愛しいデブやホネであるに違いない。そーゆー世界なんだからな、そこは。
……涙を拭って、もうちょっと狸の世界の愛を打ち続けてみようと思う、クリスマス連休(アブレとも言う)の狸です。
2015/12/25(Fri)06:17:141バニラダヌキ
 ヾ(* ̄ ̄ ̄ ̄▽ ̄ ̄ ̄ ̄*)ノこんばんわ♪
 恭介さん、笑えました。いいじゃないですか、雪哉さん。クリスマスぐらい、羽目を外そうぜ!!
 普通のサンタの衣装じゃなくて、ミニスカをチョイスした恭介さんのセンス。
 楽しいカップルです。
2015/12/25(Fri)17:14:352斑鳩青藍
おお、やっぱりあの二人が出てきましたか。思えば、ここに来て初めてBLってものを読んだのがこれの第一話だったわけですが……あれから何年も経って、僕もずいぶん感覚変わったというか、この二人見ててももはや普通の仲良しカップルにしか見えないな。
しかし今年のクリスマスは、おっさんやら三十路やらその両方やらがテーマのクリスマスなんだろうか。しかし三十なんてまだまだ若いぞと思いつつ、雪哉くんの悩みっぷりやら、「マジでこいつは目が腐っているんじゃないかと本気で思った」なんて辺りやら、「興奮で幻の尻尾をぶんぶん回すヒト科の大型犬」のはしゃぎっぷりやら、ほのぼのした空気を楽しませていただきました。ちょっとパタリロ思い出したり。このシリーズでは、今回のが一番好きだなあ。
楽しいものを読ませていただいてありがとうございました。猫様のクリスマスがメリーでありますように。


2015/12/25(Fri)19:38:271天野橋立
バニラダヌキ様>
 お読みいただきありがとうございます!! わぁいふっかふかのお座布団だー!! ともふもふさせていただいてます。そうですそうですやっぱり愛ですよね。愛。私も愛が欲しいです。この二人は、私も同性異性関わらずこんなラブラブなことがしたいわぁという願望が山盛りに。あとこんな二人が萌えるわぁな下心が大匙三杯くらい入っております。
 雪哉は多分、ずっと愛されるんだろうなぁと思います。だって雪哉は愛を大切にするはずなのです。愛を大切にする人は同じように大切にされるはず。逆に恭介がデブでもホネでも雪哉は愛するのだろうなぁと思います。狸さんの愛の世界も楽しみにお待ちしておりますよ!

斑鳩青藍様>
 お読みいただきありがとうございます!! 恭介のセンスは何かもうアレです。ヘテロカップルでも彼女にミニスカサンタを着せるのとにたような感じですな! 雪哉! 出し渋りしないでとっとと着替えてこいよ!! なんてな。

 天野橋立様>
 お読みいただきありがとうございます!! えぇ出てきましたよこの二人。いやはや今思えばあの頃はよくBLなんて出したなぁと思いますが、まぁこれが私の愛の形なのさと開き直ります。どんな傾向の人間だってクリスマスを祝い人を愛する権利はあるのさ!!
 そうですね。今年はちょっぴり年齢層高めのクリスマスなのかもです。三十路はですね、いざ大台に入ってしまうとちょっぴりだけ不安になってくるお年頃だと思うのですよ。だから雪哉は悩みまくりでしょうな。来年はジムにでも通うくらい気を使うはず。現在の郭公の方がメチャメチャ陰気くさいので、せめてこっちくらいは甘々ラブラブのアホ小説にしよう!! ってことで楽しく書きました。パタリロは初期の方しか読んでないですが、ジャック好きだったり。ふふふ。お気に召していただきありがたく思います! 私のクリスマスはゆるーくまったり進行しておりますよ!!
2015/12/25(Fri)22:29:030点水芭蕉猫
大晦日も間近という、このときにやっと感想を書いている私をお許しくだされ。
さて、三十路で、しかもミニスカのサンタの衣装が着られて、こんな甘いセリフが吐けちゃう男性って。。かなり限られるよなあ。例えば芸能人で言えば誰だろう?なんて考えながら読みました。恭介側はムキムキ。。とかはダメなの?やっぱ。
「○○、愛しているよ」の、○○に自分の名前を当てはめてみたら、ああ悲しい。そんなこんなで、甘すぎる二人にあてられっぱなしでした。クリスマスと言えども、猫さん節を貫いていて良いですね。またお邪魔します!
2015/12/30(Wed)22:58:040点えりん
今年のレス返今年のうちに、というわけでもありませんが、お読みいただきありがとうございます猫ですにゃん。
三十路でミニスカサンタが着れて甘いセリフを吐けるなんてキャラは現実にはおらんと思います。私は耽美というものは二次元至上主義の立場をとりますので、こういう人たちは平面の世界にしかおらんのです。そういう考えていけば、恭介がムキムキというのはアリですね。そう考えるのも萌えますね(おい)
大丈夫だよえりんさん。私も書いてて血涙流しながら書いてたんだ。あぁ、寂しい……。だからこそキャラだけには幸せでいてもらいたい。そんな猫のオヤゴコロ(?)ありがとうございました。
2015/12/31(Thu)21:55:490点水芭蕉猫
学校で生徒にホモだホモだとはやしたてられる浅田です。
なんというか、終始ニヤニヤとしながら読んでいました。
こういう作品を読むと復帰しなきゃなーと思いつつなかなかに復帰できないもどかしさ。
2016/02/05(Fri)19:59:160点浅田明守
浅田明守様>
おや。おひさですね。ホモっぽくみられるんですか? 相手は誰ですか? 生徒×教師ですか? とアホなことをほざきつつ、お読みいただきありがとうございました。復帰はね、無理しなくても良いと思うのですよ。書きたくなった時に書くのもまた良いものです。ニヤニヤして頂きありがとうございました^^
2016/02/05(Fri)21:40:020点水芭蕉猫
[簡易感想]セリフが多すぎる気がします。
2017/02/16(Thu)11:16:440点Boss
合計4
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