オリジナル小説 投稿掲示板『登竜門』へようこそ! ... 創作小説投稿/小説掲示板

 誤動作・不具合に気付いた際には管理板『バグ報告スレッド』へご一報お願い致します。

 システム拡張変更予定(感想書き込みできませんが、作品探したり読むのは早いかと)。
 全作品から原稿枚数順表示や、 評価(ポイント)合計順コメント数順ができます。
 利用者の方々に支えられて開設から10年、これまでで5400件以上の作品。作品の為にもシステムメンテ等して参ります。

 縦書きビューワがNoto Serif JP対応になりました(Androidスマホ対応)。是非「[縦] 」から読んでください。by 運営者:紅堂幹人(@MikitoKudow) Facebook

-20031231 -20040229 -20040430 -20040530 -20040731
-20040930 -20041130 -20050115 -20050315 -20050430
-20050615 -20050731 -20050915 -20051115 -20060120
-20060331 -20060430 -20060630 -20061231 -20070615
-20071031 -20080130 -20080730 -20081130 -20091031
-20100301 -20100831 -20110331 -20120331 -girls_compilation
-completed_01 -completed_02 -completed_03 -completed_04 -incomp_01
-incomp_02 -現行ログ
メニュー
お知らせ・概要など
必読【利用規約】
クッキー環境設定
RSS 1.0 feed
Atom 1.0 feed
リレー小説板β
雑談掲示板
討論・管理掲示板
サポートツール

『私たちの読書空間』 作者:遥 彼方 / リアル・現代 ショート*2
全角2700文字
容量5400 bytes
原稿用紙約8.15枚
私は彼女と週に一度、自宅で読書をできることを本当に嬉しく感じていた。そんな時、彼女が曇り顔で家を訪れる。友情を描いた短編小説。
 私は彼女の写真が載った音楽雑誌の記事を読んで、本当に興奮してしまった。彼女が早く来ないかとそればかりを考えて、一言目は「おめでとう」にしようか、それとも「頑張ったね」にしようか悩んでいた。でも、もう言うべき言葉は決まっていた。
 雑誌を脇に置くと、手元の文庫本を開き、読み出す。その外国人作家の、ヒッチコック監督の有名な映画原作を読んでいると、その濃密な内容に時間を忘れて浸ってしまった。
 切ない恋物語からホラーまで様々な短編が入っていて、素晴らしい作品だった。私は何度も時計を気にして読んでいたけれど、やがてチャイムが鳴った。
 ぱっと顔を上げて、文庫本を置き、玄関へと走った。そして、ドアを開くと、そこに一人の女性が立っていた。
 とても長い髪をしていて、その量が多く、流れるような煌めきがロングから放たれていた。可愛らしいニットワンピースを着ていて、アンダーにタートルネックを着ていた。
 彼女はどんな服を着ても様になるので、いつもその可愛らしい姿に見惚れてしまうことがある。
 彼女はコーチのバッグをフローリングに置くと、茶色いブーツを脱いで「お邪魔します」と上がってきた。私は笑顔で口を開こうとしたけれど、その時彼女が顔を上げたのでその表情を間近で見た。
 その顔は本当に曇り空のように寂しげで、私を不安げな目でじっと見つめてきた。私は少し驚き、でも何も言わずに、「どうぞ」とリビングへ通した。
 彼女が約束の時間に遅れることなんて今までなかったのに、今日に限って既に三十分が経過していた。私は心配で何度も口を開こうとするけれど、何と言えばいいのか全くわからなかった。
 彼女はリビングのソファに座ると、手に提げていた白い箱を掲げて見せた。
「遅れて本当にごめんね。これ、ショートケーキ。一緒に食べよ」
 そこで彼女がようやく笑ってくれたので、私は頬を緩ませ、「ありがとう」とうなずいた。いつもはスナック菓子やクッキーだったのに、今日は有名店のケーキだった。
「今、紅茶を淹れるから」
 私はキッチンへと向かい、紅茶を淹れる準備を始める。やかんに水を入れて火にかけると、そこで彼女が「実は」と言った。
「……何かしら」
 私がキッチン越しにそう言うと、彼女は俯いてぼそぼそと小さな声で言った。
「頼みがあるの、春香に」
「何でも言って。何か大切なこと?」
 ポットとカップに湯を入れて暖めながらそう言う。
「実は……実はね、」
 彼女はそうつぶやき、少し間を置いてから言った。
「私、レポートまだできていないんだけどさ、見せてくれない?」
「また、どうして?」
 私がいつもの彼女らしからぬ申し出に、少し真顔で言うと、彼女は再び俯いた。
「何か勉強する気がしなくてさ」
 そこで私は彼女の心の内を理解してしまう。たぶん彼女はそれを私に言いに来たんだろうと思って、彼女から言い出すのを待った。
 温めたポットに二人分の茶葉を入れて、沸騰したお湯を勢い良く注ぎ、蓋をして蒸らした。
 彼女はバッグから文庫本を取り出し、いつものように読み始めた。私は彼女が話し出すのを待ち、カップに茶漉しを使って濃さが均一になるよう回しながら注いだ。ようやく紅茶が完成すると、ソーサを握ってガラステーブルに運んだ。
 そして、コンポにフィッシュマンズの宇宙というベスト・アルバムを入れて、かけた。心地良い音楽が流れ、佐藤伸治が特徴的なその歌声を響かせ始める。
「実は、大学を辞めようと思ってるの」
 ソファに座った私を見て、彼女が思い詰めた顔で言った。私は黙ってうなずいてみせた。
「アーティストデビューが決まって、シングルが出ることになったんだ。だから、遊んでる場合じゃないなって」
 私は彼女の曇った顔を見て、「迷いがあるのね」と言った。
「私、友達に恵まれてるし、勉強も楽しいから辞めるのに迷っちゃって。でも、自分の道を貫くなら、それしかないなって」
 私は静かに目を閉じ、呼吸を整えた。そして瞼を開き、先程からずっと伝えたいと思っていたその言葉を零した。
「美琴が決めたことなら、私は応援するだけ。ずっと美琴の味方だから」
 彼女は目を見開いて私を見つめ、そしてゆっくりと体から重荷がすっと引くように表情が柔らかくなっていった。
 ありがとう、と彼女はつぶやいた。
「紅茶も冷めちゃうし、この箱開けようか」
 私がそう言ってショートケーキの箱を手元へ引き寄せると、彼女は何故かそこでふと意味ありげに笑った。
「春香とたまにこうしてお菓子を食べながら読書ができる時間が一番幸せだった。これからも友達でいようね」
「もちろんだよ、美琴」
 私が紅茶に角砂糖を入れて飲むと、ふと美琴が私の手元の文庫本を見つめて、あ、とつぶやいた。
「それ、もしかして……」
 彼女の顔がぱっと明るくなっていく。
「そう。ダフネ・デュ・モーリアの『鳥』という表題の短編集。美琴に勧めてもらった本だよ」
 美琴はその本を手に取ってぺらぺら捲りながら、「まだ読んでてたんだね」と笑った。
「あの頃、美琴はアーティストになる為にすごく頑張ってたじゃない。でも、本も欠かさず読んでいたから、美琴が勧める本は間違いないと思ってさ」
 私はそう言ってその作品の面白さについて語った。紅茶が冷めてしまうのも気にならなかった。美琴は私が淹れた紅茶を美味しそうに飲んでくれた。
「もし近い未来、美琴がテレビに出て歌ったら、私は全部美琴の歌を聴くと思う。もしテレビに出れなくなって、みんなが忘れたとしても、私は美琴を見ているよ」
「本当に……ありがとう」
 美琴の目が滲んでいたけれど、私は何も言わず、「美琴はどんな本、読んでるの?」と彼女の本を覗き込んだ。
「これは……」
 彼女は少し言い淀んだ後、ぽつりと優しさに満ちた言葉を零した。
「春香が出会った頃に勧めてくれた本だよ」
「え?」
「レイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』」
 私は彼女を長い間見つめていたけれど、ゆっくりと微笑んだ。
「もし美琴が遠い存在になっても、私は友達でい続けるよ」
「うん。そうだね」
 私は彼女の言葉に笑いながら、そっとショートケーキの箱を開いた。そして、その縁に掛かっていた一枚の紙切れがひらりと落ちた。
 それは手紙のようだった。私はそこに書かれた文字を見て、心がふわりと浮き上がるのがわかった。

 ……ずっと友達でいようね。 親友より

 私は美琴を見て、そして小さく、本当にゆっくりとうなずき、彼女の悪戯っぽい笑顔に微笑んだ。
 私の視界は曇っていき、逆に彼女の先程曇っていた顔が鮮やかに晴れていくのを感じた。
2014/12/19(Fri)21:09:59 公開 / 遥 彼方
■この作品の著作権は遥 彼方さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ご無沙汰しています。前作から色々と試行錯誤しながら書き続けていましたが、息抜きで掌編を書いてみました。せっかくだから色々試してみようと思い、音読などをやってみたりしています。文章が雑で読みづらくないか、どんな風になっているのか心配ですが、ご感想・アドバイスをいただけたら本当に嬉しいです。少しでもほっこりしていただけるようにと書いてみました。もう少しでクリスマスですが、私も作品を掲載できたらと思っています。至らないところばかりですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
この作品に対する感想 - 昇順
 おひさしぶりです。友人との微妙な距離感が切ないですね。
 さて文章が読みづらくないか、とのことですが……ところどころ読みづらいかと思います。たとえば「とても長い髪をしていて、その量が多く、流れるような煌めきがロングから放たれていた。」などは、書いてあることはわかるのですが、いまひとつきれいな文章になっていないかな、と思われます。とくに前半はぎこちない文章が多いようでした(あくまでぼくの主観ですが)。
 それから紅茶を淹れる描写について。これは紅茶じゃないほうがよかったかな……と感じました。比較的ポピュラーな飲み物なので、読んでいる側としてはどうしても、既知の、単調な描写が続いているように思えてしまいます。たとえばタピオカジュースとかだったらまだ面白く――雰囲気が壊れますね、すみません。
 「音読」って文章を声に出して読んで推敲する、ってことでしょうか? そういう方法もあるんですね。ぼくもいろいろと試行錯誤中なのですが、結局のところ、うまい人をまねするのが上達への一番の近道のような気もします。クリスマス作品、楽しみにしていますね。
2014/12/22(Mon)20:30:240点ゆうら 佑
ゆうら佑様、お久しぶりです(^_^)貴重なアドバイス、ありがとうございます。
読みづらくなっている部分があると聞いて、やはり雑な文章になっているところがあったとはっきりわかって良かったです。本当に貴重なご指摘、ありがとうございました。

紅茶を淹れる描写が単調になっていたということで、もう少し読者の興味をそそる、自然な話の流れになるように気を付けていきたいと思います。

音読試してみたのですが、やはりもう少し丁寧な文章になるよう心がけたいと思います(汗)

それでは、貴重なご感想ありがとうございました。ゆうらさんの作品もいくつかアップされているので、楽しみに読みたいと思います。

それでは、ありがとうございました。
2014/12/22(Mon)21:24:210点遥 彼方
合計0点
名前 E-Mail 文章感想 簡易感想
簡易感想をラジオボタンで選択した場合、コメント欄の本文は無視され、選んだ定型文(0pt)が投稿されます。

この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
スタッフ用:
投稿者用: 編集 削除