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『蜥と姫のうた 1』 作者:しぎゅー / 異世界 ファンタジー
全角3826文字
容量7652 bytes
原稿用紙約10.65枚
魔力欠乏に陥り徐々に「無窮の黒」に呑まれつつある大国カルドの東部の街、テレジアラントで出会ったトカゲ頭の騎士と美しき姫君。緩やかな滅びのお伽噺における最後の希望、トカゲの騎士は課せられた使命の中で何を思うのか。
 暖かい、というのが最初の感情だった。
 すうっ、と光が周りを囲んでいるようなそんな感情に心地よさを覚えながら、俺は導かれるようにして瞼を開いた。長い眠りから覚めたような、そんな心地よさだ。
 青い光だ。
 淡い光が、床から湧き出ている。
 それはまさしく魔力の成すものだ。その光は目に入ったとして一切の痛みを伴わないし、むしろずっと包まれていたいような、そんな気持ち良さを与えるようなものであることを俺は知っている。そう、それは−−−
それは?
「…?」
 それは経験したものであるはずなのに、そのことは確信しているはずなのに、何故か具体的な景色が思い浮かばない。頭が重く、身体も片膝を立てて休息をしていたようで、どうも長く眠っていたようである。
 過去の情景が浮かばないことに困惑しているうちに、その光は五秒とも経たずに霧散した。何らかの魔術を行っていたであろうこの状況に困惑を重ねつつ、辺りを見渡そうとした。
 狭い部屋だ。人間が五人座れるほどの部屋一杯に青い光を漂わせている。が、それ以上に奇妙なのは、目の前の人間二人だ。片方は惚けたような表情をした若い男で、もう一人は何やら驚いた顔の金髪の少女だ。肩くらいにかかった髪に、翠のカチューシャを付けている。目と鼻の先にあったその姿はまるで、フランス人形と見まごうようなもので、俺はつい見とれてしまっていた。
 次に俺がハッとしたのは彼女が球を蹴るような格好で左脚を下げ、それを思いっきり俺の顔に目掛けてぶつけてきたことだ。ガツンと衝撃がやってきたが、痛みがあったことはほぼ記憶にない。何故ならその瞬間、俺の意識は途絶えたからだ。

「まあ、なんだ。災難だったな」
 先ほどの部屋にいた若い男が俺にそんな言葉をかけた。黒いローブを着た黒髪の好青年と言うべき出で立ちだ。その目つきは細いが、垂れているおかげかあまり負の印象はない。
 現在、我々は謎の魔術が行われていたであろうあの狭っ苦しい部屋でなく、教会のように広い部屋でも自己主張を崩さない巨大なテーブルが置いてある部屋に移っていた。俺が意識を失っている間に、隣の男が文字通り「引きずって」運んだのだと教えてくれた。彼はこの部屋の事を「食堂」と呼んでいたのだが、ざっと五十はあるであろう椅子が長方形の長テーブルに並んでいるその光景はまさに大衆食堂のようなものである。天井にある二つの見たこともないような立派なシャンデリアと、部屋の奥の壁に模られた3m長はある”女神イライトファイラ”のステンドグラスを除けば、まあ大衆食堂だと言い張れるだろう。実際のところ、その美しさたるや目に入った時は再びまどろみの中に沈んでしまいそうなほどであった。
「しかし、なんとも変なことになっちまったもんだ……俺は、あの娘がそうしたほうが良いって言うから従っちまっただけなんだがなあ……」
 独り事のなんと多い男なのだろうか、と嘆息しそうになるのをじっとこらえて俺は目の前のガラス製のグラスに目を落とした。水がなみなみ注がれていたそのグラスの中身は飲み干してしまったが、しかし俺はその透明なグラスに映っているもの……立派な鱗の付いたトカゲの顔をじっと見ていた。それは本来なら俺の頭が映っているべき場所にあって、俺の方をじっと見ている。グラスの側面が丸いせいで爬虫類然としたその顔は歪み、見るものに畏怖というよりかは失笑を与えるような表情となってはいるが、しかし俺には一切笑えなかった。隣の男はそれを見て本当に失笑していたのだが。
「なあ、これ、あんたにもトカゲに見えるか」
グラスを指差して隣の男にそう聞くと、「ああ。何せ、あんたの顔がマジでトカゲだからな」と俺の顔を見て言い放った。その事実は非常に認めがたいものだったが、しかし顔を触ってみると鱗の尖った感触が確かにあって、口が本物のトカゲのように出っ張っていたのが確かに分かった。
「しかしまあ、ご立派なトカゲ顔ですこと」半開きのドアを開け放って先ほど俺を蹴飛ばした不遜な少女が失笑を隠そうともせずに腕を組んで現れた。先程は白いドレスを身にまとっていたが、今は半袖の青いワンピースに白いケープを羽織ったカジュアルなスタイルだ。しかしその可愛らしさは変わらず、等身大の人形が動いているようにも見える。
「まあ、お嬢様」その背後に立つ影が彼女の態度を諌める。黒を基調としたその清楚なエプロンドレスを着た女性は、見るもの全てに規範的なメイドとはどうあるべきかを教えるような出で立ちでそこに在った。「あまり客人にそのような態度を取ってはなりませんよ。折角、この地に参られたのですから……」
「なによ、リディア。まさか、このトカゲを客人扱いするつもり?」人形のような少女は模範的メイドの模範的な戒飭をかわして再び失笑した。
「なあ、俺は笑われるためにお呼ばれしたのかい……」こらえきれずに皮肉を吐き出した。椅子から立ち上がらずに声を零す。「なんなら芸でもやってみたほうがいいか?」
「やめろ!」隣の男が立ち上がって強く言った。「二人とも落ち着いてくれ。まずは俺達は状況を把握すべきだと思う、違うか?」
「そうね、それもそうだわ。そっちの”トカゲさん”は自分の名前すら知らないようだし」顔から笑みをふっと消して少女は言った。扉の前で腕を組んでいた彼女はその体勢を崩さないままカツカツとブーツを鳴らして俺の向かいの席に座った。傍らのメイドは、彼女の斜め後ろに柔和な表情をたたえて立っている。
 そう、結局のところ、俺は自分の名前が何で、自分がどこから来て、どういう生活をしてきて、といった記憶を一切思い出せずにいた。知識や経験は確信を持てずとも確かにあったが、しかしそこがどこから育んだものなのかは全くわからないままであった。
「まず、ここがどこだか知りたい」苛つきを抑えた俺はまずそう口に出した。
「カルドの東部よ。テレジアラント領の、ね」
「テレジアラント! じゃあ、もしかして!」おぼろげな知識の海から取り出されたその情報を辿る。
「そう、私の名前はマリア・テレジア。14代目の、ね」
「なんてこった……」そう、俺は知っている。テレジアラント領の領主は代々女性なのだ。それも美しい女性だ。そういう血統なのだという噂を、恐らく記憶を失う前の俺は聞いていたはずだ。
「ようやくわかったかしら?あんたが不躾な言葉を喚き散らす相手がどんな立場なのか、ね」勝ち誇ったような笑みをたたえた彼女はそう言うと、机に頬杖を立てた。
「まあいいわ、”トカゲさん”。こっちはリディア。私付きのメイドよ」斜め後ろのメイドさんを指して言った。
「名乗るのを遅れてしまい申し訳ございません、リディアと申します。お見知り置きを……」
「ああ、どうも……」その瀟洒な態度につい挨拶を返してしまう。
「こちらも名乗るのが遅くなったな、俺はスカルブル・ラバラ。皆からはルブルって呼ばれてる。よろしくな」 隣の男が胸を指差して名乗った。「一応この辺の集落の長をやってるが、まああんま畏まらないでくれよ。そちらのお嬢さんにも同様にな。テレジアラントの人間はあまり上下関係を好まない」
ルブルという男はそう言って俺に握手を求めた。俺はそれに一呼吸遅れて応える。律儀な男のようだった。
「それで、私たちはカルドにいるわけだけど」ふっと真剣な表情になって彼女は話し始めた。「テレジアラントがどういうところなのか知ってるってことは、カルドがどういう状況だとは知ってるわけ?」
「えっと……悪いが、わからん」正直に告白した。実際のところ、”どういう状況なのか”というのがどういう意味を持っているのかわからなかったからだ。
「そこからは俺が話そう」隣の男が割って入る。「カルドは現在、魔力欠乏に陥ってる。いや、陥ってた、ってのが正しいかな。実際のところ、世界にはもう魔力なんて殆どないんだからな」
「魔力がない! じゃあ世界はどうなってるんだ?」
「今のところは持ちこたえてる。まあ、幾らか魔力の蓄えはあってな……でも、遠くの街とかはもうダメだ、空間自体が無くなってる。えっと、なんだっけ……」ルブルという男が金髪の少女、マリアを見て言う。
「無窮の黒」彼女は言った。「その空間自体が黒くなってて、見えなくなってるのよ。ちょっとずつ広がってるそれが、どんどん街を飲み込んでる。魔力が完全になくなるとそうなるらしいわ。このへんも多分、時を待たずにそうなるでしょうね」
「待ってくれ、じゃあ俺達の魔力は? 生きてるだけで生成される分の魔力じゃ補えないのか?」
「私たちが”人間”、ならね」再び彼女は失笑した。自嘲を含んだそれを俺に見せて、それから言い放った。「私たちはね、最早人間じゃないわ。魔力も何も生み出さない。代わりに魔力も使わない。”幻体”よ。あんたを除いてはね」俺を指差してそう吐き捨てる。
 その言葉に俺は目眩がした。幻体だって?人間じゃないだと?魔力欠乏?無窮の黒?
 現在の自分の境遇も相まって、まるで下手なお伽話を聞いているような気分になった。それは実際のところ間違えてないのかもしれない。滅びに向かう世界に現れた、トカゲ頭の男。美しいブロンドの少女。
 天を仰ぐ代わりに俺はまた、女神イライトファイラのステンドグラスを見た。その美しさは先程とは印象がまるで違う、想像力に溢れた虚構から来るもののようであった。
2014/04/29(Tue)01:33:34 公開 / しぎゅー
http://blog.livedoor.jp/sashimi_no_haka/
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■作者からのメッセージ
はじめまして、色々活動している者です。普段は排泄活動とかしてます。
ダークファンタジーみたいなものを書いてみたくてやってみたら出来上がったのでそれをなんかしました。なんとなく翻訳調の文章なのは趣味だからです。アドバイスなど頂ければ幸いです。心の励みになります。
続くかどうかは皆目わかりませんが、頑張ってみます。三日坊主についてはプロを自負してるのでその辺りは期待しないで下さい。
この作品に対する感想 - 昇順
 はじめまして。何やらおもしろそうなお話ですね。やっぱりマリアお嬢様と恋仲になっていくんでしょうか。っていうのは気が早いですね。それにしてもどうしてトカゲなんだろう……。ただこの分量では続きが気になるとしかいえません。この世界の常識などをすっとばしていきなり「トカゲ頭」「無窮の黒」「幻体」とくるものですから、主人公でなくとも目眩がしてしまいます。もちろんあとで追い追い説明があることでしょうし、序章としてはこれくらいでいいのかもしれません。ちなみに「フランス人形」があるということは、この世界にもフランスがあるのでしょうか。
 では、これからもよろしくお願いします。がんばってください。
2014/05/03(Sat)21:04:360点ゆうら 佑
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