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『Another Re;ality 0』 作者:タツキ / ファンタジー 未分類
全角6293文字
容量12586 bytes
原稿用紙約18.1枚
 高校生の浅井綾人はある日、幼馴染の白峰和奏が死ぬ夢を見る。それを忘れようとしながら日々を過ごすが、その日常にさえ悪夢の片鱗が見え始めていく。夢の中で和奏を殺害した人物が姿を現し、友達、そして和奏さえもが向こう側へと姿を消してしまう。『和奏と、皆と一緒に帰るんだ』その決意を決め、踏み出した向こう側で綾人が目にする“セカイ”とは。
Episode 0 ―prologue―

 彼女の想いは、彼の未来は。そして彼の命は。
全てを巻き込み姿をかえて“セカイ”を殺す為の刃と成る。
「さあ、最終戦だ」
そう呟いたのは、一体誰だ?

「はい、スタート!」
そう、声が響き渡って。

 どこか、遠くの方から騒がしい音が聞こえる。ベルを打ち鳴らすような音。そのけたたましい音は遠くの方からゆっくりと、しかし着実にこっちへと近付いて来ていた。
「うるさいな……」
誰に言うでもなくボソッと言ったその呟きで、意識は心地良い微睡から現実へと一気に引き戻される。何度か目を瞬かせ「夢から覚めたのか」と頭が認識するまで待ってから、枕元に置いてあった騒音の原因、つまりは目覚まし時計のアラームを止め、元の場所であるベッドの棚へと戻す。
 確か、今日は何か予定があったはずなんだけれど。
再び微睡へと堕ちそうになる意識でそう考え、予定を書き込んだ手帳を探そうかとしたが、面倒になってその動作を途中で止める。もう一度目を閉じよう。そう思うと何をするのも面倒臭くなってしまい、一度起こした上半身は吸い込まれるようにベッドへと戻って行ってしまう。
 季節は冬の終わりに差し掛かり、吐く息は白い。この季節はベッドから出る事さえ億劫になってしまう。無意識に吐いていた溜め息の白さを眺めながら意識は微睡へと――
――そうだ。今日は“君”との約束があったんだ。
それを思い出すと共に、微睡へと堕ちかけていた意識は完全に目を覚ます。約束の時間は十時三十分のはず。まだ寝ぼけているのか、それとも焦っているのかよく働かない頭でそれだけを思い出す。
「今何時だ?」
急いで上半身を起こし、棚に戻した目覚まし時計へと手を伸ばした。そこに表示されていた現在時刻は十一時二十五分。既に五十五分の遅刻。全身を冷や汗が駆け落ちていくのが分かる。胸の中を焦りだけが無限ループしてしまって上手くベッドから抜け出せない。それでもなんとかベッドから脱出すると、部屋の端にあるクローゼットまで駆け寄り、出来る限りの素早さで洋服を取り出して寝間着からそれに着替える。冬の寒さが服を脱いだ肌に突き刺さるが、そんなことを気にしている余裕はない。一分一秒でも早く君の下へ行かなければ。何か必要な物もあったかもしれないが、今はそんなことを考えている余裕も無く、とりあえず財布と携帯だけをポケットへと捻じ込んだ。
 君と待ち合わせしている“公園”へは、家から自転車でもおよそ三十分はかかる。つまり、今からどれだけ急いでも待ち合わせの時間から一時間三十分以上は遅れてしまうということになる。
 重い気分で家に鍵をかけ、そのまま流れ動作のようにして自転車の鍵を開け、跨った。
「アイツ、怒ってるんだろうな……」
そう呟きながら足を乗せたペダルは、タイヤの空気が抜けているのか、それともこの気分のせいなのか、やけに重く感じる。この家から公園までの約三十分の間、公園に近付くにつれてその重さは増していくような気がして。後悔か恐怖なのか、口からは溢れるように溜め息が零れていく。
 公園の前に到着すると、溜め息を吐きながら携帯で現在時刻を確認する。携帯の画面には十一時五十八分と表示されていた。公園の入り口付近に自転車を停めて、中に入って君の姿を探す。この狭い公園で待てるような場所と言ったら中央にあるベンチ辺りだろうか。そう目星を付けると息を大きく吸い込み、少しだけ息を整えて足を動かし始める。
 予想通り、君は公園中央に四角く並べられたベンチに腰掛けていた。後ろ側から近付いて行っているせいでその表情を伺うことは出来ないが、何度も腕時計を確認しているその素振りを見る限り、怒っているのは確かだろう。
 悪いことをしたな。と思うのと同時に言いようのない気だるさがこの体を襲い、纏わりつく。この先に進みたくない、今すぐ帰ってしまいたい。そんな気持ちを感じながらもそれを必死に抑え、君の下へと少しずつ進んで行く。
「まずは謝らないとな……」
距離はまだ十mはある。だが、その距離が縮むにつれて、足の進む速度は落ちていく。
また、君は腕時計に視線を落とす。そんなに見たって時間は巻き戻ったりしないんだぞ、なんて自分の遅刻を棚に上げてそんなことを思ってみたりする。悪いとは、思ってるんだ。
 ゆっくりと足を動かしベンチの後ろに回り込むと、君の後ろに立つ。
君はまだ、気付かない。ゆっくり進み過ぎて足音まで消えてしまっていたのか。などと馬鹿みたいにそう考えて苦笑いすると、ゆっくりと瞬きをして、君に聞こえないように小さく深呼吸をする。よし、大丈夫だ。
 そして、緩慢な動作で右手を上げ、君の後頭部にストンと落としてみる。
なぜか、その動きが酷く他人事のように見えてしまって。振り上げた腕も、落とした右手も、まるで自分の物ではないような感覚に包まれていく。
「……へ?」
 おかしな声を上げたのは、君ではなかった。
自分のその声にさえ違和感のような感覚を覚えながら、視線をゆらゆらと左右させる。始めにチョップを喰らわせた自分の右手を見て、それから君へとゆっくり視線を戻す。
 君は、怒りに満ちた瞳を向けていた。
「ごめん。ごめんなさい。申し訳ないです」
極限まで高まった罪悪感から、風を切るような速さで一気に頭を深々と下げる。下がった視界に君の長く伸びた黒い髪が映って、微かにシャンプーの匂いが鼻をつく。
 頭上から君が大きく溜め息を吐く音が聞こえる。これは相当怒っていらっしゃるのではないだろうか? 恐る恐る視線を頭上へと上げていき、逃げ出したいのを堪えて君を見る。でも、そこには予想に反して君の潤んだ瞳があって。思わず君の可愛さにオロオロして何もできなくなってしまう。謝るべきだ。もう一度頭を下げるべきだ。そう、頭では理解しているのに。
「なんで遅れたの」
「ごめん、寝坊して」
「心配したんだよ?」
「ごめん」
「許さないから」
そう言って君が、服の裾を握り締める。右腕が引っ張られる形になって、若干前のめりに体勢が崩れた。
これって、ドラマだとキスシーンが入るタイミングだよな? なんてパニックに陥ってしまった思考は訳の分からない結論に辿り着く。キスしていいんだよな? 完全に制御不能になった思考がデタラメに体を動かして、ゆっくりと君に、唇が近付いていく。
 高鳴る胸、震える息。これ以上ないってくらいに緊張し、今までに生きてきた中で間違いなく一番興奮していたんだと思う。
だけど、その興奮は一瞬で醒めてしまって。
君が、一筋の涙を零した。それを見た瞬間に消えたはずのあの罪悪感が再び姿を現す。これはやっぱり謝った方がいいのだろうか? オロオロと君を見る視線が頼りなく揺れてしまって――

「はいストップぅ! 何してるの? 何女の子泣かしてるの? キスぐらいもっとパッとしなさいよ、この童貞!」
突然の怒声で、俺は“演劇の練習”から“現実”へと引き戻される。
俺が、助かったという思いと罪悪感が織り交ざった不思議な感覚に囚われながら怒声のした方向へと視線を向けると、そこには明るい茶髪を肩の上で切り揃えた少女が鬼の様な形相をして立っていた。
「え、悪いの俺? いや、俺だよな……明らかに」
小さく呟いた俺のその言葉にその少女はまたも気が狂ったように暴言を浴びせかける。
 この鬼の様な形相をした少女は宮原沙耶乃(みやはら さやの)と言い、この演劇部の部長を務めている少女だ。
茶髪のショートヘアーで、赤い眼鏡をかけているその顔は美人の類だと言ってもいい。ただ、驚く程に口と性格が悪いのだ。そのせいかどうかは分からないが、彼女に恋人の類が出来たという話を俺はまだ聞いたことがない。
「もう本番まで時間はないのよ? この馬鹿は何やってるの、ほんっと信じらんない!」
沙耶乃は傍らにいる黒縁眼鏡の少年に持っていた台本を叩き付ける。少年は優しげに微笑むと、沙耶乃から台本を受け取って近くの机にそれを置いた。
 この黒縁眼鏡の名前は野沢悠(のざわ ゆう)。この演劇部の副部長を務め、いつも暴走する沙耶乃を抑えることのできる数少ない一人だ。黒く、少し伸びた髪を揺らして、彼はいつもの様に沙耶乃に言葉をかける。
「沙耶乃、落ち着いて下さい。和奏ちゃんもこんな所でファーストキスは嫌でしょう?」
悠の言葉に沙耶乃は鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまう。その足が貧乏揺すりをし始めているのを見ると、機嫌が直った訳でもないようだが。
「ごめんなさい……」
瞳から零れた涙を指で拭い、和奏が俺達三人に向かって謝罪の言葉を投げる。その目頭は指で擦ったせいで赤くなってしまっていて、それが更に俺の罪悪感を募らせていく。
「あ、ご、ごめんな和奏。俺があんなことしたから……」
焦りと罪悪感で言葉を突っ返させながらもなんとか和奏に謝罪の言葉を伝える。和奏はその言葉にゆるゆると首を横に振り、俺に向かって笑顔を見せた。
「ううん、違うの。綾人、私嫌だった訳じゃ――」
和奏のその言葉が終わらない内に、悠は机の上に置いた台本を再び手にした沙耶乃が奇声を上げ始める。
「もおお!あと少ししか練習する時間ないのに、こんなカスみたいなシーンもちゃんとできてなくてどうするのよ! それもこれもあの童貞のせいよ! これだから童貞は!」
沙耶乃は「童貞」と連呼し俺を睨みつけると、そのままプイとそっぽを向いてしまう。悠がなだめる言葉をかけても、もう沙耶乃の機嫌は直らない。
 練習をしている体育館の外はもうだいぶ暗くなっていた。正確な時間は分からないが、今はだいたい七時過ぎぐらいだろうか。十二月二十三日、今日はいつもより気温が低くなるから風邪に注意、と天気予報のお姉さんが言っていた気がする。
「もう今日はこれぐらいにしておきますか?」
悠が沙耶乃にそう言って首を傾げる。沙耶乃は貧乏揺すりをしながら少し考え込んだ後、俺を見ながら大きく溜め息を吐いて、言葉を続けた。
「そうね、もう時間も時間だし……。明日、明後日と休みで、また明々後日から練習再開するわよ、いいわね!」
沙耶乃は怒声にも聞こえる声で俺達に向かって“練習”の終了を告げる。何事も無く荷物をまとめると、俺と和奏、悠と沙耶乃に分かれ、いつもと同じような会話を交わして俺達は体育館を後にする。
 今日の練習が終わった、という解放感に包まれながら俺は和奏と二人で家路に着く。他愛もない言葉を交わしながらてくてくと家まで約十五分の距離を歩いて行くその道程は、俺にとって何よりも大事な“日常”の一つで。
 白峰和奏(しらみね わかな)。俺の小学生からの友人である彼女は快活な性格をしていて正義感と優しさに溢れ、男女を問わず人気が高い。運動が苦手だがその分勉強が得意で、彼女の特徴とも言えるその腰まで伸ばされたロングストレートの黒髪が、今はマフラーの中に一まとめにされていた。
 俺は、和奏のことが好きだ。
“好きだ”と確信したのが中学一年生の頃だから、もう三年ぐらいは片想いを続けているのか。その想いを実らせたいなんて思ったりしたこともあったが、今では実らせたいという気持ちよりも、和奏との関係を壊したくないという気持ちの方が強くなってきている。どうせうればいいのかと悩んではいるが、その答えが出ることはなさそうで。もどかしいこの想いもまた恋なのだろうなんて思える程にはまだ至っていないが、それでも俺の毎日は退屈ながらにも充実していた。
「ねえ?」
 和奏に突然声をかけられて視線を向けると、和奏は少し悲しげな表情を浮かべてみせる。俺が「なんだ?」と言う風に首を傾げると、和奏は俺から視線を逸らして足を止めた。
「あのね、明日ってクリスマスでしょ?」
そこで和奏は一度言葉を止める。俺もつられて和奏より二〜三歩離れた場所で足を止めてその言葉の続きを待った。
「今日のキス未遂さ、悪いって思ってる?」
急に和奏の口から無かったことにしようと思っていた“それ”を蒸し返されて、俺は動揺しながらも千切れそうな勢いで首を横に振る。
「じゃあ明日、私と……デートしてよ!」
和奏の口から“デート”という単語が出た瞬間、激しく振っていた俺の首の動きがピタリと止まり、そのまま首は“?”を表すかのように斜めに傾けられる。デート? 和奏はデートと言ったのか? 俺自身予想もしていなかった展開に、頭がついていけずに思考は止まって頭の中が“デート”という単語で埋め尽くされる。
「私とじゃ嫌なの?」
和奏は目にかかりそうな長さで切り揃えられた前髪を揺らしながら、俺に向かってそう尋ねる。まだ頭は状況の全てを理解しきってはいなかったが、それでもこの誘いを断ってはいけない事だけは理解できた。
「嫌じゃない!」
自分でもびっくりするぐらい力強く否定すると、和奏はそんな俺の返答を聞いて満足げに笑い、パタパタと俺の隣に立つ。
「明日が楽しみだね」
俺に向かってそう言う和奏の表情がなぜか悲しげに見えて、俺は瞬きを繰り返す。でも、改めて見た和奏はいつも通りの笑顔を浮かべていて。俺達は数m先にまで近付いたお互いの家に向かって歩き出す。後ろで何か物音がしたような気がしたが、デートの誘いで有頂天になった俺が足を止めることはない。和奏の足音だって後ろに聞こえている。何も変わりはない。
 この何でもない“日常”は、様々な刺激と退屈を含みながらこれからも続いていくのだろうと、本気で信じていたんだ。
「綾人!」
そう和奏の声がした、今、この瞬間までは。
 後ろから俺の名前を叫んだのは、和奏の声だと分かっていた。でも、それを理解することを頭は拒む。後ろを振り返りたくない、そこにある“光景”を見たくない。でも、見ない訳にはいかないのだろう。俺はなぜか“それを見なければいけない”という使命感にも似た感覚に駆られて、震える視線を後ろへ向ける。後ろを向いた俺の視界に和奏が映る。黒いパーカーを着て、そのフードで顔を隠した人物に、背後から“何か”で貫かれた和奏の姿が。
 和奏からゆっくりと何かは引き抜かれ、そこから真っ赤な鮮血が溢れ、地面へと落ちていく。その人物が和奏を支えていた手を離すと、和奏の体はあっけなく地面に向かってぐしゃりと落ちた。和奏が落ちていくのが酷く遅く見えて、俺はまた瞬きを繰り返す。
 何も、この視界に映る出来事全てを、俺は理解したくない。
目の前で、和奏は驚きからか恐怖からなのか目を見開いたまま静かに横たわっていて、その体はピクリとも動かない。気が付けば、パーカーを着た人物は姿を消していた。辺りを見渡して確認してみるが、やはりその姿はない。
 まだ、現実味がなかった。
今、俺の目の前で和奏は刺された。その事実を、頭がハッキリと理解しない。俺の思考は徐々に緩慢になり、俺の口からは声にならない叫びが溢れだして――

 数回、軽く瞬きをして俺は目を覚ます。上半身を起こし、緩慢な思考で必死に考えを巡らせる。今居るのは、自室のベッドの上。今見ていたのは、和奏が刺される現場。窓から射し込む光は明るく、今が朝であることを教える。ついさっきまで俺は夜道に立っていたはずなのに。
 力なく揺れる視線を枕元の時計に合わせる。
現在時刻は七時二十五分。そして今日は十一月二十三日だとその時計は表示している。俺は十二月二十三日を過ごしていたはずなんだ。数回瞬きを繰り返して、俺は目を閉じる。

 季節は冬の中頃を過ぎ、肌には冬の冷気が突き刺さる。
2013/09/23(Mon)00:28:07 公開 / タツキ
■この作品の著作権はタツキさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
お久し振りです。同じ名前で前にも投稿させて頂いていたのですが、描写面を少し変えたので投稿し直しました。アドバイス・感想等々、お待ちしております。

■続きはでき次第投稿します。
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