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『紅い手』 作者:羽付 / ショート*2 ホラー
全角2075.5文字
容量4151 bytes
原稿用紙約6.6枚
もし大切なものを奪おうとする声が聞こえたら


「ねぇねぇ、知ってる? 紅い手の話」
「赤い手……話は知らないかも」
「ウソ、ウソ、ウソ〜」
 どこか嬉しそうに「ウソ」を繰り返すヒカルちゃんは、本当にバカっぽいけどとても可愛い。私の大事なただ一人の友達。
「どういうお話なの?」
「聞きたい?」
「うん、聞きたいよ」
 ヒカルちゃんの言って欲しいだろう返事をするように心がけている。だって大切な友達だから。
「だよね! ほらほら、この間さ、子供が寝ているママの手首を包丁だっけ? なんかで切り落とそうとした事件あったでしょ?」
「うん、あったね」
「その子供の友達っていう子が、ネットで流してるらしい噂なんだけどね」
 ここで言葉を切って、ためをつくる噂が大好きなヒカルちゃん。他にもネットに限らず、クラスの中や学校で流行っているものも教えてくれる。いつも興味なんて少しもなかったけど、友達の話だからちゃんと聞いてあげていた。
「事件の前、その手首を切ろうとした子がね、ママの手が凄く真っ赤でゴツゴツしてて、まるで鬼のような手になってるのに、ママ自身は全く気付いてないし信じてくれないって、ネットのカキコミした子に相談したんだって」
「……真っ赤な鬼の手……だから赤い手」
「そうそう、それでね。その手から更に声が聞こえてくるみたいなの!」
 言葉尻を大きめの声で強調したヒカルちゃんは、「なんて言ったか知りたいよね?」と大きくて愛らしい瞳で語りかけてくる。
 だから私は、もちろん期待に応えてあげる。友達だもの。
「なんて聞こえてきたの?」
「くれない……くれない……お前の母親をくれないか!!!」
「きゃっ」
 私はやっぱりと思いながら、小さく悲鳴をあげてあげる。ヒカルちゃんは無理に低い大声を出して、脅かそうとしてもいたから。
 それに私の反応に満足そうな顔をしている、友達を見るのは嬉しい。
「ふふふ、それでね。カキコミしてる子に、ママを助けるためには手を切るしかないって、事件の前の日に言ってたんだってー」
「そっか……そうだね」
「それでね、実は…………私も見えてるの!」
 突然に声のトーンを変えて、いつもの笑顔じゃない真面目な顔をするヒカルちゃん。なんだか面白くて笑いそうになったけど、それをどうにか堪える。
 それにやっぱり「見えてる」って、私の手が赤く見えていると言いたいのかな。ヒカルちゃんは徐に鞄から何かを取り出していて、あれはナイフだろうか? ……だとしたらヒカルちゃんも、私の手を。
 きっと見えているのだろう。真剣な顔はやっぱり少し面白いけど、とにかく友達の言う事は信じなければいけない。
「あなたの手を切らなくちゃいけないの! 助けるために必要なの、だからお願い。この辺は今誰もいないから、その紅い手を切らせてーーー!!!」
「いいよ」
「!!?」
 腕を振り上げて近づいてくるヒカルちゃんに、自分から腕を前に出す。逮捕される時みたいだなって思う。だけど、そこでヒカルちゃんは動きを止めてしまった。
 何か間違ったことをしたのかなと不安になる。お願いを叶えさせてあげようとしただけだけど、もしかして友達を怒らせてしまったのではないかと。
「ぷっ、ぷぷぷ、もう、いやだ、いやだ。冗談だよー。ほら、これも授業中にノートで作った紙のナイフでしたー。もう『いいよ』だなんて、怖がらせようとしたのに、こっちがビックリしちゃうよ」
「そっか、ごめんね」
「いいの、いいの。そうだ、駅前のケーキ屋さんへ寄ってこう。今日は甘いものが食べたい日なんだ」
 噂話のことなど、もうどでもいいように話を切り替える。ヒカルちゃんは思ったことはすぐ口にするし、実行しようとする素敵な子だ。
 こんな子が私の友達だなんて、みんなに自慢したくなる。

 ……くれない……くれない…………くれないか……

 なのに、なのに、そんなこと絶対に許さない。
 初めに気付いたのは、一週間前の下校の時だった。ヒカルちゃんの手が、全体的にほんのりと少し赤いなって。それから日に日に赤さが増していき、爪も黄色く伸びて節くれたった大きな手へと変化していた。でもヒカルちゃんは全く気にしていなかったし、周りもそうだったからお洒落でしているのかなと納得しようとしたけど……それと同時に聞こえていた声が、空耳程度からハッキリと聞こえるようになって無視できなくなった。
 だから私は鞄から、ダイヤモンド刃の糸鋸を取り出す。ヒカルちゃんは痛がるかもしれないし、嫌がるかもしれないけど仕方がない。
 でもきっと大丈夫、友達だから我慢してくるはずだ。

「……やっと切れたよ」
「…………」
「もう、これで安心だね。ほら、もうあの声も聞こえない」
 『くれない……お前の友をくれないか……』あげるわけがないのに、なんて図々しい手なのだろう。私の大事な、たった一人の友達を。
 けれど草の上には何故だか鬼のような手じゃなくて、いつもの見慣れた小さくて綺麗で本当に愛らしいヒカルちゃんの手が落ちている。
 その手は鮮血で赤く赤く染まっている……友達の紅い手だった。


―― 終 ――
2013/08/26(Mon)21:35:38 公開 / 羽付
■この作品の著作権は羽付さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 調子に乗って二作目を投稿してしまいました。
 まだまだ沢山の色があるというのに、早くも色かぶり申し訳ないです。紅白ではないですが、「あかいて」を考えていたので漢字も違うしいいかなと……(汗)
 でも紅白と書きつつ、縁起の良い話ではないのですが、もし読んで頂けたらとても嬉しいです♪
 八月も、そろそろ終わりですね。暑さも、落ち着いてくるといいだけどなぁ。

 ではまた♪
この作品に対する感想 - 昇順
おっと、今回は終始狸の予想どおりに、しかもショートゆえ実に速やかに話が二転三転してしまい、肝腎の『恐がる暇』がなかったと言いますか……。
このままのストーリー展開で恐怖を醸し出すなら、やはり主人公の心理をアヤしげにねちっこく描いたりして、「話がどう転がるのか」という不安そのものでジワジワ盛り上げる、そんな工夫をしたい気がします。ラストあたりでは、たぶん懸命に抵抗するであろうヒカルちゃんと、あくまで善意ながら実は独占欲の権化となっている主人公の噛み合わない会話を入れるとかで、かなり怖くできそうな気も。
つまり今回の着想は、ショートよりも短編向きではないか、と。あくまで狸の好みの問題かもしれませんが。
2013/08/28(Wed)21:03:570点バニラダヌキ

>>バニラダヌキ さん
 感想、ありがとうございます!
 途中から自分でつくった形で書いていながら、窮屈に感じていたので感想を頂いて確かにそうだなって。ショートや形に拘らずに、もっと自由に描写や会話などいれるべきでした。
 自信はないですが、こちらは短編に書き換えてみようと思います。もしかしたらショートを書いてから、そこへ肉付けしていく書き方が自分にあってるかもしれないので、色々と挑戦してみるのもありですね。
 とにもかくにもホラーになるように、ちょっとでも怖いなって思える部分ができるように! 読むのはジワジワと怖い方が好きなくせに、自分で書くと急いでしますんですよね。うーん、我慢強くなりたい。
2013/08/28(Wed)21:35:280点羽付
色被り超怖いw実は私も当初は“青”じゃなくて“赤”で書く予定だったので(汗
それにしても、じわじわ系はホントに我慢が必要ですよね。どうやったって急ぎ足になっちゃうんですよ……
読んだ感想としては、まあバニラダヌキさんと似たような感じです。私風に言うなら“狂気”分が足りない。
ショートにするなら主人公視点でヒカルちゃんの手が赤く見えて声が聞こえてーの部分を大幅カットしてそれとにおわせる文章に留めておいた方がぞっとしたかもです。
2013/08/29(Thu)17:11:070点浅田明守
通ぶってPCをmacに変えて、未だに使い方が良くわからない頼家です。作品を読ませていただきました!
不思議な雰囲気の作品ですね。短くテンポ良く進んで、とても読みやすかったです^^
ただ、もし羽付様が私の知っている「堕」の付く御仁ならば(違っていたら申し訳ないです)、以前の作品より少し雰囲気が薄い感じがいたします。なんだか、どう表現していいのか私の少なすぎる語彙では表現しにくいのですが、どこか白っぽいといいますか、灰色っぽいといいますか...これはこれで読みやすいのですが、もっと不気味な「どす黒さ」が出ると、とてもすばらしいと思います^^生意気に申し訳ありません。次回作も楽しみにしております!では、また
2013/08/30(Fri)20:21:030点有馬 頼家
 あ、頼家さんだ……おひさしぶりです。
 羽付さんもおひさしぶりです(笑)
 ホラーということで常時身構えながら読みました。何とか読み切りまして、かなり後味の悪いどきどきが胸の中に残っています。こういうのはあまり得意ではないので……。ゆっくり読んだので、ぼくとしてはちょうどいい展開スピードに思えました。これ以上ゆっくりされると読んでいられないかも……。ところで、羽付さんのお話にはこういうゆがんだ友人関係みたいなものがよく出てくるような気がします。冒頭のほうはその描写がくどく思われるのですが、後半でしっかり生きてきていてすごいなあと思います。
 鬼の手というと某漫画が思い起こされるんですが、そこから着想されたのでしょうか。鬼の手があの先生を侵食していく回(アニメ)がトラウマになっていて、いまだにあの漫画を敬遠しております。
2013/08/30(Fri)20:48:041ゆうら 佑
こんばんは。こちらも読ませていただきました。
「鬼の手」というと、確かにあの漫画を思い出しますね。連載が始まった時は、あんな人気漫画になるとは思いもよらなかったなあ。

さて、感想としては、バニラダヌキさんと似た感じになりますが、この長さで話が二転三転するのは慌ただしくてあらあらという感じでした。ただ、ラストの部分は結構怖かったです。この辺りはいかにも羽付さんらしい感じが出ていたように思いました。
2013/08/30(Fri)21:07:400点天野橋立

>>浅田明守 さん
 感想、ありがとうございます!
 本当に、なかなか我慢できないんですよね。ここは、もっとじっくり抑えていこうと思ってても、読み直してみると「あれ? アッサリしてる」なんてこと、よくありますし。この話は練習も兼ねて、ちょこちょこと短編くらいの長さになるようにしてみたいと思います♪
 “狂気”な雰囲気って難しいですよね。でも、そこをなんとか想像で書ききれるようになれたら、最高なんだろうなぁ。紅い手に見えていたかどうか分からないけど、行動や会話から主人公には『きっと』という感じもありですね。参考に、させて頂きます♪


>>有馬 頼家 さん
 感想、ありがとうございます!
 お久しぶりです♪ mac一度は挑戦してみたくもありますが、やっぱり使いこなすのは大変そうですね>< そして以前は「堕」がついており、同一人物でございます。人間に的に毒気が抜けて、前よりも優しくなれただろうか……なんてことはないのですが、逆に言いたいことを半分くらいは、言えるようになったから内面の黒さが薄れたのかもですw 
 「どす黒さ」がいいと言って頂けるのは、とっても有難いので、ここはもう一度負の感情を溜め込もうかななどと考えつつ、頼家さんの時代小説など含めまた読みたいです♪


>>ゆうら 佑 さん
 感想、ありがとうございます!
 ゆうらさんも、お久しぶりです♪ なるほどホラーなど苦手な方には、これくらいの文章量でも丁度いい場合もあるのですね。ここらへんの調整は、好みなどもあるので難しいんだなぁと感想頂いて思いました。ポイントまで頂いて、夏場のホラーとして少しでも楽しんで貰えたのなら嬉しいです!
 私自信の友人関係はたぶん普通なのですが、街中などですごく仲好さそうにしている人達を見ていると、心の中では互いをどう思ってるんだろうなぁって、穿った見方をしちゃうんですよね(汗) だから純粋な友情の話って、そういえば書いた記憶がないかもです。いつか挑戦してみたいなぁ。そういえば鬼の手の話ありましたね! 最終回まで見た筈なので、無意識にでも頭のどこかにあったかもです♪


>>天野橋立 さん
 感想、ありがとうございます!
 鬼の手の先生って、確かにいましたよね。映画化も何回かするくらいに、人気が出てたからなぁ。でも最終回まで読んだはずなのに、どんな終わり方か忘れてしまっているので後で調べてみとう思います。すいません。知っている漫画やアニメの話だと、ついつい長々と話てしまうんですよね。
 やはり詰め込み過ぎな部分もあったんだろうなと、もう一捻りと欲張っていって……拗らせてしまった感じかもです。それでもラストの部分で、少しでも怖く感じて頂けたのなら良かったです! 新の方も、ゆっくりと読ませて頂きます♪

2013/08/31(Sat)13:34:000点羽付
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