- 『tolaianguru』 作者:花音 / 恋愛小説 リアル・現代
-
全角1647文字
容量3294 bytes
原稿用紙約6.95枚
薫、浩二、愛は三角関係に。薫と愛の友情はどこへ?憎しみを包み込む事はできるのか?
-
ある写真に、油性ペンを滑らせる。
キュ、キュ、キュ、と心地よい音がなる。
「これでよし、と…」
ふぅ、と愛はため息をついて、テーブルに頭をつける。
「浩二、今頃どうしてるのかな…」
心配そうに愛は呟いた。
「薫に、取られちゃうのかな、浩二…」
薫の美しい微笑みを思い浮かべただけで心がザワザワと騒ぐ。
愛しい、浩二。
美しい薫に、取られてしまう。
薫は、浩二と共にある大学のサークルに入っている。
愛もその一員。
心に大きな僻みがこみ上げる。
がまん、がまん…
_イツマデソウヤッテガマンシテルノ?
頭の中をよぎった言葉に愛はブンブンと左右に頭を振る。
薫は私の幼馴染で凄く仲良し!
なんだから、浩二を奪ったりしないよね?
_ソンナコトワカラナイジャナイ
大丈夫よ!多分……
でも、この写真に油性ペンで書いてしまった。
もう、信じてないってことだな。
「……」
愛は1人、凄く不安になった。
「おはよ!浩二っ!」
「…おはよ」
あれ?浩二ってこんなにそっけなかったっけ?
浩二の態度に愛は首を傾げた。
「おはよう、愛、浩二」
「…おはよ、薫……」
「ようっ!薫!」
……!!!
何よ…この態度の違い。
私の時よりも全然元気じゃない!!
愛はこみ上げる怒りを心で押さえ込んだ。
…壊したのは、薫なの?
鮮やかな桃色の髪をなびかせ、薫は愛に言った。
「今日のサークル、来れないかも」
愛は、ふ〜んと曖昧に返事をした。
できる事ならこの怒りを今すぐ薫にぶつけたい!
そして愛は浩二の方を見つめた。
浩二の目は薫を追っていた。
くるくると動き回る薫を。
私を、見て______
思いは、届かない。
授業は着々と進み、予定より早く終わった。
愛は浩二に上目遣いで聞いた。
「今日のサークル、くる?」
「あ、わり。今日来れないわ」
「えっ何で?!」
「外せない用事があんだよ」
「何よ、それ!」
「うっせぇな、お前に関係ないだろっ?!」
「何よ…関係あるわ。私たち、付き合ってるのよ?!」
「…」
浩二は迷惑そうな顔をして愛に背を向けた。
「じゃ」
独りは、寂しいの。
_カオルノトコロヘイクンダ
違う!
_ソレシカナイジャナイ
ある!
_コウジハアイヲアイシテイナイノカモ
そんなっ!違う!
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!
こうなったら、浩二について行く。
「薫、お茶」
「うん!待って!」
白い可愛いエプロンを着て、薫はくるくる動き回った。
その姿を、愛しそうに浩二が見つめる。
「はい、どうぞ」
「サンキュー」
薫が入れた温かいお茶を、美味しそうに浩二は飲み干した。
(私が入れた時は、あんなに美味しそうに飲まないし、残すのに!)
その様子を、1人見ていた愛。
薫の家は、いつも窓から中の様子が見える。
「…」
携帯を開き、薫に着信をかけた。
冷たい部屋に交差する感情。
_イマコノバショデコタエテホシイ
『ピピピピピピピピピ』
薫の携帯がなりなじめた。
「もしもし」
「私」
「あ!愛。どうしたの?」
「どうしたのじゃないわよ!!この、裏切り者!!」
「え…」
「薫!」
「きゃっ」
いきなり浩二が後ろから抱きしめる。
耳に、ふぅっと息を吹きかける。
「あっ…やめてっ…」
(何やってるの)
そして、薫を押し倒した。
「…!」
カタ__ン___
携帯が、薫の手から滑り落ちる。
「んっ…やめて!」
「は?求めてるのは薫だろ?」
「あっ……」
浩二はいやらしく薫の首筋に口付けた。
_フタリトモ、イナクナレバイイ
どこにいても、私たちは嘘を重ねて、微笑んだままだった。
でも、もう限界。
_カメンノウラヲ、サァヒキハガシテ!!
「2人とも、お別れよ」
愛はライターに火を灯した。
「さよなら」
ボウッ
火は、薫の家を包み込み、激しく燃えた。
「いやぁぁぁぁぁ」
「うわぁぁぁぁぁ」
2人のかん高い悲鳴が愛の耳に刺さる。
「これで、終わった」
全てを奪う事ができた、と小さな声で呟いた愛の頬には、
涙がひとしずく、浮いていた。
-
2013/06/17(Mon)18:14:47 公開 / 花音
■この作品の著作権は花音さんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
皆さん、どうでしたか?!
結構短めですが、読みやすく書きました。
三角関係は、いけませんよ!