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『そんなシンメトリーな彼らたち』 作者:ayahi / リアル・現代 未分類
全角8195文字
容量16390 bytes
原稿用紙約25.75枚
 今日もまた少女は一人でブランコと遊んでいる。ずっとブランコを揺らし続ける。目的もなく揺らし続ける。少女の漕ぐ力はとても小さかった。だからブランコが少女を揺らしているのかもしれない。
 ゴツン
 どこからか飛んできたサッカーボールがブランコに当たった。幸い少女には当たらなかったが、ブランコの揺れは止まってしまった。
 少女はブランコから離れて、サッカーボールを手に取る。
「あの、ごめんなさい」
 誰かに声をかけられた。おそらくこのサッカーボールの持ち主だろう。振り返るとやはりそこには泥で汚れた服を着た少年が申し訳なさそうに立っていた。
「……」
 少女は黙ってサッカーボールを渡した。少年は少女が何も喋らないので戸惑っていた。
「ひ、一人で遊んでるの?」
 コクリ
 少女は何も言わずに首だけを動かして肯定を示す。
「さびしくない?」
「……」
 少女は答えが見つからなかった。自分がはたして寂しいのか、考えれば考えるほどよくわからなくなってきていた。
「お名前は?」
「……」
 少年はこの子は喋れないのかもしれない、と察して話題を変えた。
「そのウサギの髪飾り、かわいいね」
 コクリ
 少女のつけている髪飾りはお母さんからもらった大切なものだ。本人もとても気に入っているので、毎日つけている。
「じゃあ君のお名前なウサちゃんにしよう」
 ……コクリ
 うなずいた。そして初めて笑った。少年もウサちゃんの笑顔を見れてとても嬉しそうだった。
「あのシーソーで遊ぼうよ。ねぇ、ウサちゃん。ねぇ、……サちゃん。ねぇ、……ちゃん。……」

「ねぇちゃん、ねぇちゃん!」
 目を覚ますと見慣れた天井が見えた。横を向くと真っ白なカーテン。そしてかすかにさしてくる光。そしてベッドで寝ている少女、倉本彩華の上に乗って必死に起こしている一人の男の子。
「ねぇちゃん、今日は何の日!?」
 男の子は彩華を上下左右に乱暴に揺らしながら問いただしてくる。だから少女は仕方なく答える。
「……中学校の入学式?」
「じゃあ入学式の日くらい弟の力を借りずに起きようか。今日から中学生なんだからしっかりしてくれ」
「……すいまひぇん」
 今日は弟の言うとおり彼女のこれから通う中学校の入学式だ。彼女は今日から初々しい心を持ったピュアな中学生になるのだ。
 弟が呆れるようにため息をついてから部屋を出た。その姿を見てから彼女はカーテンを勢いよく開ける。
「うむ、いい朝だ」
 日光を存分に浴びた彼女は、ふと机の横にぶら下がってるボロボロのランドセルを見る。そして目線を新品の中学校の制服に変える。
「そうか、私は今日から中学生なんだ」

 中学校の近くで彩華は母親と別れた。母親は保護者控え室へと向かっていった。
彩華はドキドキしながら中学校の校門にたどり着いた。そこにはクラスの振り分けが書かれた掲示板がドッシリと真ん中に置いてあった。仲良しの友達と一緒のクラスになって喜ぶ者も入れば、離れ離れになって悲しんでる者もいた。
 入学生の八割方が同じ小学校出身なので、新鮮味は少し薄れているのが現状である。しかし新しい環境であることには変わりない。
「あ、彩華ちゃん」
 遠くから彩華の名前を呼んで近づいてくる少女が一人。
「ちゃんと遅刻せずに来れたんだね、偉い偉い」
「いやー、弟に起こしてもらったから大丈夫だったよ」
 遅刻しなかったことを褒めている少女は、彩華の昔からの親友である三橋優以。彩華の保護者的役割を学校では常に果たしていた。そして中学校でも彩華は優以にお世話になるであろう。
「クラスの振り分け見た?」
「いや、まだだよ。早く見に行こうか」
 二人は掲示板の前に出来てる人ごみの中に消えていった。

 先ほど入学生の八割方が同じ小学校出身だと言った。なので二割はさまざまな別の小学校から編入のように中学校に入学してくる。
 大木の陰に隠れてずっとうつむいている少女もそのうちの一人だった。
 彼女は人ごみのせいでクラスの振り分けが貼ってある掲示板に近づけないでいる。なので自分のクラスもまだ確認できていない。人ごみがなくなってからゆっくり確認しようと彼女は思っていた。
 しかし人ごみがなかなか消えなかった。おそらく自分のクラスを確認してるのに、掲示板の前でなんとなく立ち話している人たちがたくさんいるのだろう。
 彼女は性格的に人混みの中に入っていくのが苦手である。陰でひっそりと生活していたい、その方がこの世界にとっても最適なんだと彼女自身が思っている。
 だが自分がどのクラスなのかは早く知りたい。彼女は知り合いは少ないほうだが、いたほうが何かと落ち着いて学園生活を送れるからだ。そんな複雑な気持ちを抱いたからなのか、彼女は何かオドオドしてる感じであった。
「どうしたの?」
 ビクッ
 彼女は急に後ろから声をかけられて反射的に身体が反応してしまった。
 恐る恐る声の正体の方を振り返ると、長身のちょっと爽やかな男の子がいた。笑顔を振りまきながら彼女を見つめていた。
 世間一般から見て、イケメンと呼ばれる部類に入る男だろう。
「い、いえ。なんでもないですよ」
 彼女は慌てて手をパタパタとさせながら否定した。
「でもさっきからオドオドしてたから」
 彼にそう言われてから彼女の顔が少し赤くなった。さっきから見られていたという事実があるだけで彼女にとってはとても恥ずかしい事に値するらしい。
「いや、本当になんでもないですよ」
 彼は彼女から人ごみへと視線を変えた。
「なるほど、混んでいて見れないわけか」
 ある意味正解ではある、それが原因でオドオドしていたのだから。しかし先ほどなんでもない、と言ってしまったので彼女の中で戸惑いが生じている。
 そのためか彼の顔を見ずに話を続ける。
「俺、一応背が高いから君がどのクラスか確認できなくはないけど」
「いや、いいです……自分で見ますから」
 親切心を断って掲示板の前の人混みに向かおうとした彼女だが、手で制された。
「名前」
「……え?」
 彼女は背の高い彼の顔を見るため首を少し上げた。まださっきの笑顔が続いていた。
「名前わからないとクラスもわからないじゃん」
「て、手城川奏です……」
「珍しい苗字だね。苗字の漢字わからないから『奏』で探した方が効率良さそうだ」
 そう言いながら彼は人ごみに近づき長身を活かして彼女の名前を探し始めた。
 奏は今の状況をあまり理解できておらず、ただ彼の姿を遠くから見つめていた。そして彼はすぐに奏の元に戻ってきた。
「C組の18番だったよ。あと俺と同じクラスだね」
「あ、ありがとうございます……」
「おっと名乗り忘れていたね。西堀瑞希って言うんだ、よろしく。じゃあ先に行ってるからー」
 瑞希は手を振りながら玄関を通り抜けていった。
 奏は人から自己紹介をされたことなんてほとんどなかったのでまともな対応ができなかった。彼女自身もそのことについて少し後悔していた。
 しかし奏はずっと瑞希の後ろ姿を見続けていた。理由なんて特にない、ただなんとなく特別な存在になる気がしたから自然と見つめていた。
 そんなシンメトリーな二人の学園生活がここからスタートする。

 優以と彩華は二人共B組になった。
 そして入学式が無事に終わり、教室で各々の自己紹介をしているところである。
「はい、次は岸くんですね。自己紹介お願いします」
 このクラスの担任のベテラン女先生が彩華の前の席の生徒を指名した。
 岸は音も立てずに静かに起立した。
「霧島小学校から来た岸裕介です」
 感情を一切入れずに手抜きな自己紹介を終えて、いかにも起立しているのが嫌だったのかをアピールするように素早く着席した。
 霧島小学校は先ほど説明した多数派の学校ではない小学校だ。だから知り合いもすくないのも当然である。
「あのー、岸くん。趣味、入ってみたい部活も話してくれないかな?」
 担任は黒板に書かれている自己紹介の仕方の文字を指しながら言う。きっと緊張して間違えてしまったのだろうな、と担任は思っていた。しかしそんな予想はかすりもしなかった。
 岸はもう一回静かに立ち上がる。
「……俺の趣味とか聞いてどうするんですか?」
 岸は面倒くさそうにそう冷たく言い放った。その瞬間クラス全体が凍った。
「だってこれから仲間になるわけだから、ね?」
 担任が必死に岸をなだめる。ベテランなのでこういう事態には慣れているのだろうか。
 しかし岸には逆効果だったのかもしれない。
「……ただ単に同じクラスになっただけで仲間と思われるのはとても心外です」
 そう言い終わるとさっきと同じく静かに座った。クラスの視線が岸へと注がれる。入学式早々こんなバカげたことを言って何の目的があるのだろうか、みんながそう思っているだろう。
「え、えーと次は倉本さん。お願いします」
 担任は岸を無視して自己紹介を続行させた。
 彩華はこの時思った。この暗い雰囲気をどう変えたらいいのだろうか。少しの間、考えてから立ち上がった。
「私は倉本彩華。趣味は愛犬のピィと戯れること、どこかの部活に入ってエンジョイしちゃいます! 気軽に『あやぴぃ』って呼んでね♪」
 教室にさっきとはまた違う静寂が流れた。彼女もやっちゃったな、と自覚していたが、すぐに教室は笑いに包まれた。
 同じ小学校の顔見知りから「あやぴぃ〜」と歓声が沸き起こる。
 彩華は明るい雰囲気に戻って良かった、と照れながら満足していた。しかし岸は一切笑わずにどこか一点を見つめていた。
 着席してからそんな彼を彩華は見続けていた。理由なんて特にない、ただなんとなく特別な存在になる気がしたから自然と見つめていた。
 そんなシンメトリーな二人の学園生活がここからスタートする。

 ここ一帯の給食は火曜日が休みである。だから火曜日に生徒はお弁当を持ってこなくてはならない。
 入学式が日曜日だったため、三日目にその火曜日が到来した。
 給食の時は自分の席から離れて食べてはいけないというルールがあるので仲良しの友達と一緒に食べることはできないケースが多い。
 しかしお弁当の時はそのルールはないらしい。つまり仲良しの友達と一緒に食べれるチャンスなのである。
 そんな日でも奏は一人でお弁当を食べようとしていた。
 学園生活がスタートして三日目。彼女はあまりクラスに馴染んでいなかった。休み時間に楽しく喋る相手もいなかった。
 一人の男を除いては。
「弁当、一緒に食べない?」
 瑞希が奏の前の席の椅子を借りて目の前に座った。そして返答も待たずに弁当箱をあけて、嬉しそうに鳥のから揚げに手をつけようとしていた。
「な、なんで?」
 奏がそう聞くと瑞希の箸が一時停止した。そして鳥のから揚げを一旦弁当箱に戻した。
「なんで私なんかに話しかけてくるの?」
 ずっと疑問に持っていた。こんな暗くて話しても楽しくない私と一緒にいるのか、とずっと疑問に持っていた。彼女が今まででこんなに誰かと仲良くしたのは無い。
 口を開けて驚いている瑞希だったがすぐに笑顔に切り替わった。
「仲良くするのに理由なんてないでしょ、さぁ食べましょ食べましょ」
 そう言って瑞希は再び鳥のから揚げを持ち上げて口に入れた。
 そのあとも彼は男らしくガツガツとお弁当をほおばっていく。そんな姿を見て、奏はつられてお弁当を食べ始める。
 昼食中、瑞希がひたすら話続けていた。奏はとてもくだらない話を延々と聞かされていた。忘れているのか最初に話した事を五分後にもう一度話していることもあった。奏は適当に相槌を打ちながらゆっくりお弁当を食べていた。対応はとても面倒だろう。
 でも何か嬉しかった。彼女にとっては今まで経験したことない時間だったからだ。
「西堀」
 瑞希がお弁当を平らげて、小学校の時に学校のトイレで体験したバカ話をしていると後ろから数人の男子に話しかけられた。
 彼らの手にはバスケットボールがあった。
「あんまり時間ないけど、体育館でバスケしに行かない?」
「あぁ行きたいけど……」
 瑞希はちらっと奏の方を見た。数人の男子も奏を見る。
「悪い、話はまた今度聞かせてあげるから」
 瑞希は急いで弁当箱を片付けた。
「あ、いいですよ。行ってきてください……」
 瑞希も体育館に行くと決まると、数人の男子は教室を去っていった。そして瑞希は「本当にごめんな」と言い残して彼らの後ろをついていった。
 奏は一人になった。まだお弁当が残っていたのでまたゆっくり食べ始めた。
 寂しかった。
 奏は小学校の遠足も一人でお弁当を食べていたからこんな状況慣れているはずだった。
 だけど寂しかった。

 彩華は優以と向かい合ってお弁当を食べていた。
「あのさぁ、岸くんってどんな人なの?」
 優以が唐突に彩華に小声で聞いてきた。教室内には岸がいるのであまり大声では喋れない。彩華は箸を止めずに質問に答え出す。
「さっきの授業つまんなかったからそいつの事ぼーっと観察してたのよ」
 まだ授業らしい授業が始まってないのにすでにやる気のない彩華の話は続く。
「そうしたら隠れて読書してたわけ」
「いかにもやりそうね。でも文学好きとは思えないな」
 そう話している間も岸は自分の席で読書を続けている。
 その集中力から彼が周りとは違う世界に入り込んでるようにも見えてしまう。
「それがね、文学とは程遠いものをお読みになっていて」
「程遠いってどういうこと? まさかエッチな本か!」
 優以がなぜか興奮しだしたが、彩華があっさり否定する。
「実用書、だったかな」
「実用書読んでる中学生なんて変わってるね、まぁ変わってるとは入学式のころから思ってたけど。それで何てタイトルの本?」
「えーとね、確か『人を堕とす10の法則』だったかな」
「……」
 返す言葉がなかった。まずそんなえげつない本が日本で売られていたのか、という疑問が優以に突き刺さった。
「やっぱり関わらない事が一番だね」
「そうかなー」
 彩華が急に考え始めた。
「あいつから何かを感じるんだよね……」
 そして意味深なことを言い始めた。それを聞いた優以はすぐさま答えを出した。
「感じるものって言ったら、不快感でしょ」

 昼食の時間とは別に休み時間がそのあとにある。食べ終わった生徒たちが廊下で楽しく話したり、バカな男子たちが鬼ごっこして先生に怒られている。
「なぁ、西堀。あの女子と元から仲いいのか?」
 にぎわう廊下にて、瑞体育館に向かう男子数人の中の一人が瑞希に唐突に質問した。瑞希は華麗にバスケットボールを指の上でクルクル回しながらさっと答える。
「いや。入学式で初めて話した」
「よくあんな暗くて地味な女と気軽にしゃべれるな。もしかして惚れたのか、あんな女に?」
 男子たちが瑞希をからかい始めた。奏のことを悪く言われた瑞希だったが怒る様子がなく、依然冷静だった。
「よくわかんね。まぁ仲良くするのは良いことじゃんか」
 瑞希が強引に話を終わらせた。
 なぜ教室の隅っこにいるような奏と教室の中心にいるような瑞希が仲良くしているのか。誰もが少しは疑問に思うはずである。
 そこには瑞希と関係する深い理由があった。

 入学式の次の日に部活紹介が体育館で行われた。そしてその次の日から新入生の部活見学が解禁される。
 つまり今日が解禁日。
 彩華は部活のポスターがたくさん貼られた体育館前の掲示板前でどこの部活に見学しに行くか迷っていた。
「うーむ、ここは無難に吹奏楽かな」
「吹奏楽って無難なんだ……」
 隣で優以がツッコミを入れていた。
 優以は絵を書くのが好きなので美術部に入ると決めていた。しかし彩華は絵の具アレルギーとか謎の事を言い出すくらい絵を書くのが好きじゃないので他の部活を探している。
「でも何かチャレンジしたいよね、チャレンジ!」
 チャレンジ。いい響きだが今の生活を考えると大体の行動がチャレンジに当てはまりそうな気もする。
「チャレンジって具体的には?」
「……わからないや」
 漠然とした目的すらなかった。彩華はとりあえずチャレンジって言いたかったのだろう。
「運動部とかはどう?」
「いや……疲れるからやだ」
 彼女の中のチャレンジ精神とはなんだったのか。
「何かダラーとしてて、入ってるとモテる部活ないかなー」
 もう帰宅部でいいじゃん、と優以は思ったが心の中にとどめておいた。
 彩華の扱いに慣れている優以でも彩華に疲れる時があるのだ。
「あー、誰かスカウトとかしてくれないかなー」
 よくわからないことを言ってる彩華の後ろから一つの人影がゆっくりと近づいてくる。
「そんなあなたに嬉しい知らせがありますよー」
「わぁ、びっくりした!」
 誰かが優以と彩華の間から割って入ってきた。優以も気づいていなかったので彩華と一緒に驚いていた。
 割って入ってきた正体を確認すると、背が高めの男子生徒だった。しかし顔がよくわからない。こんなに近くにいるのに顔が確認できない。
「あの、なんでお面かぶってるんですか?」
 優以が男子生徒のかぶってるお面を指差しながらツッコミを入れた。廊下を歩いている他の生徒も彼を不思議そうに見ながら通り過ぎていった。
「この方がインパクトあるからね。インパクトって大事じゃん、ははは」
 お面少年は高らかに笑っていた。
 彩華たちはこの人と関わらないほうが身のためではないか、と思っていたがさっきの彼の言葉が気になったので逃げることもできなかった。
「あの、嬉しい知らせってなんですか?」
「よくぞ聞いてくれた。実は新しい部活を作ろうと思っていてねー。部員バリバリ募集中なのさ、ははは」
 お面少年は理解しがたいジェスチャーと共に嬉しい知らせを説明してくれた。そして最後にはさっきのように高らかに笑っていた。
 しかもなかなかの大声でしゃべっているので、廊下を歩いている生徒がチラチラ笑いながら通り過ぎていっている。そのため一緒に話している彩華たちまで恥ずかしくなってきた。
「それでどんな部活なんですか?」
 彩華は念のため詳細を聞いてみることにしたが、こんな彼がつくる部活に進んで入るような無用心ではない。
「そうだね、この学園を幸せにする部活だね、ははは」
 活動内容が漠然としていた。こういう部活は基本地雷である。きっと部室で携帯ゲーム機を家から持ってきてダラダラゲームし合っていたりお菓子食べてくつろいでいるのだろう。
「でもなんか面白そうだね!」
 彩華は興味を示しだした。優以はそれを見て危険を察知したのか、少しお時間をください、とお面少年に言ってから彩華を廊下の隅っこに移動した。
「ちょっと彩華、あんな訳のわからない人の部活に入るつもり!?」
 そして優以は咎めるように彩華を説得しはじめた。お面少年は二人の会話に介入せずにじっと遠くから見つめていた。
 優以には彩華を危ない事に関わらせないという責任を持っていた。彩華の母親からも、この子はおっちょこちょいなのでどうかよろしくお願いします、と言われている。
「これこそ私の求めていたチャレンジしたいことだよ!」
 彩華はここぞとばかりにチャレンジ精神をさらけ出す。
「……まぁ嫌だったらすぐやめれば良い訳だし、いいか」
 優以から許可が出た。別に許可をもらわないと彩華は部活に入れないわけではない。
「さて、ボクと青春を送らないかい?」
「はーい、試しに入ってみますー」
 私は入りませんからね、と優以はボソッと否定した。勘違いで入れられたらたまったもんじゃないからだ。
「じゃあさっそく部室に来てもらおうじゃないか」
 お面少年は喜びを表すかのようにクルクルと踊りながら部室へと歩き出した。
 ここで彩華と優以のお別れである。
「まぁ頑張りなさいよー、最後の手段に美術部もあるからねっ」
 優以はそう言い残して美術室へと向かっていった。
 お面少年は踊り疲れたのかピタッと立ち止まって普通に歩き始めた。
「そういえばまだ自分の名前を名乗っていなかったね」
 静かにお面を顔から外した。そこにはさっきの言動や行動からは想像できないほど爽やかなイケメンな少年がいた。
「西堀瑞希です、よろしく」
2013/03/29(Fri)14:37:31 公開 / ayahi
■この作品の著作権はayahiさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どうも、大学に無事合格したayahiです。二つあった原案を合体させた作品です。感想、意見などをくれたらとっても嬉しいです。
この作品に対する感想 - 昇順
 おめでとうございます!
 二組の男女がどういうふうにシンメトリーなのか大いに気になるところですが、それは続きを楽しみにしたいと思います。
 ちょっと気になったのは、地の文が安定していないことです。ぼくも人に言えたものではないんですが、地の文の視点があっちへ行ったりこっちへ行ったり、口調が堅くなったり軽くなったり、というように常に不安定なんですね。もう少し統一していただけると読みやすいかなあと思います。
 それではまた。
2013/03/29(Fri)22:24:070点ゆうら 佑
 読ませていただきました。
 地の文の件に関してはゆうらさんがおっしゃてますが、自分も同意ですね。ちょっと落ち着きがないというか、ふらふらしていると思います。三人称なら三人称で、しっかり口調を統一すべきです。混乱してしまいます。この枚数にしては視点がよくかわる、それは別に全く、問題ではないんですが、切り替わるときにもっとわかりやすくして欲しいというのも。おまけ程度の行間だけでは足りないと思います。すぐに「あ、視点かわった」という目印が必要かと。
 内容について。シンメトリーって確か、左右対称って意味ですよね?(英語苦手ですから自信ない) この物語でシンメトリーと紹介された二人組は、そうは見えないんですよね。だから、どこかこれから似ているところがでてくるのあなって感じですね。いかんせん、冒頭だけだからコメントしづらい。
 しかし、やっぱり「どこがシンメトリーなんだろう」「どういう部活を作るんだろ」という疑問は出てきて、冒頭としたら成功ですね。キャラは一人一人しっかり作られてますし、今後をたのしみにしています。
2013/03/30(Sat)23:33:230点コーヒーCUP
ゆうら佑さん、コーヒーカップさん、感想ありがとうございます。実は推敲をまともにせずに投稿した作品なので、とんでもない出来となってしまいました。そしてタイトルも思いつかず適当につけたので、シンメトリーはあまり重要なワードではありません、たぶん・・・
これから、しっかり直してから投稿しますのでどうかもう一度読んでください。
2013/04/02(Tue)14:55:140点ayahi
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