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『カルマゲノム』 作者:名高 刀 / ファンタジー 未分類
全角3382文字
容量6764 bytes
原稿用紙約10.45枚
英雄達は剣を手に取り戦った、新人類にその熱き脈動を継がせるために。正義と情熱をその胸に抱き、屍の山を築き上げて。始めに言っておこう、『この世界に主人公でないものはいない』これが『心将戦争』である
[ここは、どこだ?」
 男は困惑した。
 澄み切った空の下、目前に広がるは雄大なる緑の海、草原。後方に広がるは深く生い茂った木々の集落、森林。その穏やかな空気と草の匂いに、男は白球を追いかけて唯ひたすらに河川敷を走った輝かしき少年時代をぼんやりと思い出す。
「おっと、いかん。今はこんなこと考えてる場合じゃない」
 男は自身の記憶を辿ったが、彼の脳内データベースに斯様な場所など存在しなかった。しかし、自分が何故ここにいるか、記憶に無いにも関わらず、彼はその理由を知っていた。
「――心将、戦争――」
 新人類創造にあたり、新人類に受け継がせる感情を決めるため、『コア』と呼ばれる各々の感情は自らの器となる人間を選び取る。その者に『シンボル』と呼ばれる存在・概念の力と名を与え、それにより『心将』となった者たちが己の『コア』の存亡をかけて戦う。それが『心将戦争』である。
 男は自らに与えられた役割の大きさに心を震わせた。自分が新人類にこの熱き感情を伝えることができると考えると胸が熱くなった。
 ふと、男は思った。
(俺の『コア』は何なのか?)
 男には確信に近いものがあったが、それでも気にせずにはいられなかった。この気持は滑り止めで受けた高校受験の合格発表に近いものがあった。
 男は自らが何者であるのか、震える脳細胞でその答えを脳の奥から取り出した。
 
「『根性』の心将……不屈の闘志『ファイター』……」

 男の『コア』は『根性』、『シンボル』は『ファイター』であった。
 ファイターは心の中で歓喜し、ガッツポーズをした。確信が的中したのだ。生前、彼はその根性を以って母校の弱小野球部を甲子園優勝へ導き、やがて彼自身はメジャーリーガーとなって日本の、そして世界の球界を震撼させた。それ程までの根性を彼は兼ね備えていた。
 ファイターはふと自分が道着姿であることに気づいた。空手着だろうか。
 それはともかく、ファイターは自分の正体は分かったが、それだけでは不十分である。自分は一体どれほどの強さを備えているのか。それもまた重要なことであった。
 心将戦争の戦闘における重要な要素は以下の三つである。汎用攻撃に使用する武器等の武装『装備』、特殊攻撃を行う能力『スキル』、常時発動する能力『特性』。更にそれらは基本的に以下の三つに分類できる。『コア』より与えられる能力『核心能力』、シンボルより与えられる能力『象徴能力』、心将自身の感情が具現化した能力『固有能力』である。
 ファイターは期待を胸に再び脳内を探った。
 しかし、ファイターは失望した。彼に与えられた能力は以下の通りであった。
 
 装備  無し
 スキル 無し
 特性  成長(象徴):戦闘を重ねるたびに基本能力が上昇する
     千本の苦難(固有):幾多もの攻撃に耐える

 装備・スキルがない、これはあまりに致命的だ。素手で戦えというのである。しかし、ファイターは発想を逆転させた。彼はポジティブ思考も得意である。
 脆弱な能力・『成長』と『千本の苦難』の特性・シンボル『ファイター』。そこから導き出されたものは……
(あれ、これ……もしかして、俺、主人公ポジションじゃね?)
 ファイター主人公説が突如浮上した。
 だが、その考えは間違っていなかった。実際、彼は、ファイターは主人公である。
 ファイターは気味が悪いことに、ニタァといった表現がふさわしいかのような下品な微笑みを浮かべた。しかし、彼の顔は戻らない、戻せない。気味が悪い。
 彼は自分が数多くの強敵を打ち倒し、戦いの末に新人類に根性の精神を伝える妄想を浮かべつつ、ニタァ顔を浮かべつつ、取り敢えず、森の方へ行ってみることにした。

 
 
 ファイターがしばらく森の中を歩いていると、異様の者と出くわした。
 まず第一に怪しげな仮面が目についた。普通なら明らかに不審者である。道着姿のファイターも人のことは言えないが。
 その者は肩まで掛かるほどの長さの赤い髪をしており、ファイターより一回り小さい体に中世ヨーロッパ風な服を着ていた。そして何より……
(いきなり『剣』が相手かよ……)
 その者の両手には刃渡り130cm程の片手剣が握られていた。片手剣ではあるが両手持ち、重そうである。剣を目前にしたファイターに緊張が走る。
 異様の者は重々しく口を開いて言った。
「貴殿の名を問いたい」
 ファイターは緊張に臆することなく堂々と告げた。
「俺は、不屈の闘志『ファイター』! 根性の心将だ!」
 それに対し異様の者は告げた。
「私は、輝ける十字架『パニッシャー』、コアは罪過だ」
(成程、パニッシャーか……、分からん)
ファイターは無学であった。パニッシャー、処刑人、その怪しい風貌も納得である。
 そして、パニッシャーは緩やかに剣を横に構えて告げた。
「その命、頂戴するッ」
 繰り出される初撃は横薙ぎ、パニッシャーの構えからそれを予想していたファイターは身を屈めてこれを躱す。無学でも流石はメジャーリーガー、運動はできる。パニッシャーの剣は空を切る。
(怖えぇぇぇぇぇ)
ファイターは躱したが、相手は剣だ。一撃でも受けたら致命傷。そして、追撃により殺されるだろう。ファイターは殴り合いの喧嘩は何度かしてきたが、殺し合いなどしたことはない。
 しかし、パニッシャーの剣は既に後ろ。前に残るはパニッシャーの土手っ腹。ファイターは拳を握りしめ、パニッシャーに強烈な一撃をお見舞いしようとした。
 その瞬間、
(痛デェッ)
 予想しなかったことにパニッシャーの足がファイターの顎を蹴りあげた。剣にだけ意識を向けていたファイター、不覚である。しかし、千本の苦難、地獄の千本ノックに耐えた不屈の闘志、ファイターにとっては大したことのない一撃であった。蹴りにより仰け反ったファイターはすぐに前傾姿勢に戻り、天に向いた視線をパニッシャーに引き戻す。
 だが、時既に遅し。
 パニッシャーの剣はファイターの額と一体になっていた。パニッシャーは重心を後ろ足から振り上げた前足へ移し、振り下ろすことにより生じた体の捻れを勢いに変え、剣を振り上げ、そして振り下ろしたのだ。奇しくもその様子はファイターが生前、ピッチャーをしていた時の投球フォームに通ずるものがあった。
 その一撃は片手剣ではあったが、両手により十分に力の掛かった金属による鈍重な一撃、豪の一撃であった。
 して、次の瞬間、
 ズジャアァァァァッ
 パニッシャーの剣はファイターの頭蓋骨を打ち割り、彼の頭を一刀両断。彼の頭から、大量の血液が、凄まじい勢いで、飛散する。『千本の苦難』で耐える余地も与えられなかったファイターは崩れ落ち、彼の脳髄がこぼれ出る。無論、彼の頭からは未だに激しい血飛沫が上がっていて、柔らかな新芽の生える大地を彼の鮮血で染めている。
 ファイターには走馬灯が駆け巡る余地でさえも与えられなかった。朝練で毎日朝早くに起きて、お弁当とおにぎりを作ってくれた母への感謝も、メジャーリーガーになる約束を果たし、ついには結婚まで踏み入ったマネージャーの顔も、甲子園で優勝した、大切な仲間たちと分かちあった、あの夏の感動さえも、ファイターは思い返すことができなかった。
 ファイターは果てた。穏やかな森の中、澄み切った空の下、雲ひとつ無い空の下、彼の淡く漠然とした期待はパニッシャーの『正義の剣』のもとに消え失せた。コアである『根性』という感情と共に。
 屍体と成り果てた哀れな男にパニッシャーは跪き、十字架を掲げ、淡々と、しかし優しく、こう告げた。
「我は汝に永久の生を祈らん」
 パニッシャーはしばらくの間、祈り続けていた。

 そういえば、先ほど、彼は主人公であると言ったが、あれは決して嘘というわけでない。彼は死んだが確かに主人公であった。
 だが、一つ言っておきたい言葉がある。とある男の言葉を借りて、一つ言っておきたい。
 
『この世界に主人公でない者はいない』と。
 
 その男の『この世界』の指し示す意図は分からないが、少なくとも、この『心将戦争』の世界においては事実である。この世界に集う心将たちは例外なく主人公である。喜劇であるにしても、悲劇であるにしても。そこのパニッシャーとて例外ではないのである。
 
 これが『心将戦争』である。
2012/05/26(Sat)10:49:26 公開 / 名高 刀
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■作者からのメッセージ
 はじめまして。上から読んでも、下から読んでも名高 刀です。
 入院中に暇だったので、妄想して楽しんでいたら案外良さ気な出来だったんで、ちょっくら小説書いてみました。取り敢えず初作品です。
 この話は6章32節+2節からなる長編物の第0節を想定しています。
今のところ、連載はあまり考えていません。自分の文章力が知りたかっただけなんで。気が向いたら序章・1章くらいまで書くかもしれませんが。
 ご指摘・ご感想等あれば、どうぞ遠慮なく仰ってください。筆者の励みになると思います。後、思い浮かんだパニッシャーの人物像(姿形も含めて)も書いて頂ければ幸いです。
 それでは、機会がありましたら、また。
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