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『天使と守護天使』 作者:上条京介 / アクション 未分類
全角11890.5文字
容量23781 bytes
原稿用紙約35.75枚
闇の黒魔導師アーサー。十七歳の少年がこれから起こっていく戦い。数々の仲間と出会い、試練を乗り越えた先に見えてきたものは――
 魔法が当たり前のように使える世界、≪エンジェル・ワールド≫
 ここでは、いろんな人が魔法を生きるため、生活のために役立てている。そしてこの世界を支えている≪守護天使(プロテクト・エンジェル)≫と呼ばれている四人の魔法使いが、この世界で一番偉い人とされる人物たち。魔法使い、皆はそれを魔導師と呼び、≪守護天使(プロテクト・エンジェル)≫の四人は、凶悪で犯罪を起こしたり、問題が起きるとそれらを解決する魔導師たちだ。
 ≪守護天使(プロテクト・エンジェル)≫のメンバー、水の魔導師アリス、十四歳でありながら≪守護天使(プロテクト・エンジェル)≫に選ばれた魔導師。青く腰のあたりまである髪はツインテールで結び、お調子者の少女。そして炎の魔導師プラント・フォーバー、≪守護天使(プロテクト・エンジェル)≫一番の力持ちで、四十七歳の男で筋肉質な体つきに、黄土色の髪型は角刈りという、魔法をあまり好まず拳で勝負するのが好きな魔導師。そして地の魔導師オルザス。冷静に事を進める六十四歳のおばあさん魔導師で、松葉杖を引いて歩く、白くて肩まで伸びている髪はそのまま結ばずにいる。そしてその三人をまとめているリーダー、オルトギア・パルーム。時の魔導師。とにかく黒い服装で身を包む二十四歳のリーダー。謎の多い人物で、黒の髪は肩に届きそうで、左目を黒い眼帯で隠している男。
 この世界を守る≪守護天使(プロテクト・エンジェル)≫は、普通の人間で天使なんかではない。この名はリーダーのオルトギアが決めた名前で、深い意味はないようだ。
 そして、この世界を自由に旅する魔導師、アーサー・イヴァンナス。
 禁じられていた魔法陣を解き、自分の者にしたその魔導は、黒魔導師の証として体の全身に浮かぶ紫色の呪印。アーサーは、誰もが死んでいった黒魔導を身に付けた伝説の十七歳。その力はえらく膨大で、時には光をも喰う闇魔術。
 そのアーサーが今、≪エンジェル・ワールド≫の駅のホームを降りていく。


第一章 


 ≪エンジェル・ワールド≫で最大人口一五〇万人を占める国、≪ヒューガ≫。
 そして≪ヒューガ≫の東口にある駅のホームで、一人の少年が降りてくる。
「ああ〜。着いた着いた」
 俺の名はアーサー。
 誰も成功せず死んでいった黒魔導の儀式を成功させた、アーサー・イヴァンナスだ。そして、別名≪闇の黒魔導師サタン≫というのもある。体に浮かぶ呪印を見せるとたちまち町のみんながうるさくなるわけで、俺は常に全身を覆うような紺色のフードをかぶっている。≪守護天使(プロテクト・エンジェル)≫のメンバー、アリスとは仲が良く、よく向こうから来ることが多い。
 そして俺が≪ヒューガ≫にやってきた理由、それはアリスと会う約束しているからというわけでもなく、
「ここか?」
 見渡せばかなり大きい建物だ。そして俺が右手に持っているこの手紙を見て俺は来たわけだが……。さて、困ったことに、俺はどうすればいいのかわからない。とりあえずノックするのが基本だが、なぜ俺の居場所を知っていたのか、そしてなぜ俺を呼び出すのか、なんてことを考えている。
「まっ、なるようになれってな」
 基本俺は考えないことが取り柄なので、とりあえずドアを二、三回ノックした。
 そして数秒後にドアが開き、
「どちらさま?」
 ……なんというのだろう。
 相手は、俺と同い年くらいの女の人で、白銀の髪形を腰まで結ぶことのない可愛らしい子だ。……なのだが、まったく俺のタイプじゃない。俺に笑顔を振るまっても無意味だぞ、おい。
「あ、えーとこの手紙読んで来たんだけど……」
 とりあえずタイプでも何でもないので思わずため口になってしまったことを自重したい。初対面の人になんていう態度取ってんだ俺は! 嫌われても構わないがよく知りもしない子にこの態度はさすがにだめだろう!
「あなたがアーサーさん?」
「はい」
 名を確認されたので俺は答える。
 あれだな、女の人が突っ立ってて中の様子はよく見えんが……めちゃくちゃ広いのだ。この家? の中が。うーん、何畳あるんだろう、後で確認してみよう。
「ようこそいらっしぃました。私はミレイといいます」
 この人今噛んだな。
 俺はこの子……ミレイさんに「どうぞ中へ」と言われたので遠慮なく入り、そのままミレイさんの誘導で俺は奥のステージ? なんでこんなところにあるのかわからんがそのままステージのほうまで連れてこられた。何か芸が始まるのだろうか。普通話するなら上がらせてくれると思うのだがな。
「よく来てくれた……。アーサー・イヴァンナス」
 ステージの前でしばらく待っていると、奥の方から若い男の声が聞こえてきた。
「そりゃ、呼ばれてたし……近かったからね」
 俺はまたため口で言ってしまった……これは癖なので仕方がないと信じたい。
 まあこんなんで誰も怒るはずもなく、
「私は君が近くの町にいると聞いたから手紙を出したんだ」
「あー、それそれ。なんで俺がいるってこと知ったんだ? そしてなぜ俺を呼び出した?」
 ステージの上に立っている男はすらっとした背丈で、赤く燃えるような神のさらっとした髪型で、なんかこいつリーダーか? と思ってしまうくらい普通すぎる男だった。両方の腰に長い剣が一つずつあり、魔力的にはやばい感じがする……のだが。
「私の魔法は予知……つまり未来を予知できるのだよ」
 なるほど。察しがついたぜ。
 こいつは……この男は未来予知で俺があの町に来ることがわかっていたんだ。それで滞在期間中に手紙が届くよう仕向けたってわけか。しかしこいつリーダーとしていらねえ魔法だな。そういうの仲間とかが使うだろ、普通。でも……こいつの魔法は大したもんだ。こうもはっきり俺の予知ができるなんてな。
 こうも明確にはっきりと、これがリーダーなのか。
「そして、君を私たち≪星の天使(エンジェル・スター)≫に招待したい」
 単に戦力不足なのか、俺の力を欲してるのか。
 こういう輩は少なくもない、俺はいろんな奴に勧誘を受けている。俺の魔力を求めてる……要するに俺自身を必要としてない輩が。俺のこの魔力が俺以外の人間にあったとしたら、俺は必要とされないのだ。そんな奴らは俺が今まで潰してきた。
「お前は……俺の力を必要としてるのか? それとも、俺自身を必要としてるのか?」
 俺は問う。答えによっては俺はこのチームを潰さなきゃいけない。
「安心しなよ。私は君自身を必要としている。強さも評価しているが君は……人のことを真剣に考えてくれるいい奴だ」
 その答えに安堵を示す。
 やっと俺の事を評価してくれる奴がいたことに、俺はうれしかった。もちろんこんないいチームに入らないわけがない。納得して、俺は≪星の天使(エンジェル・スター)≫の一員になった。
「じゃあまずは自己紹介ね」
 そして、中央の場にみんなが集まり、俺はみんなの前に立つ。
 仕切りはミレイさんが進め、自己紹介となった。
「俺はアーサー・イヴァンナス。これからよろしく」
 まずは俺から自己紹介して、
「俺はビルディ・シンク、よろしくな」
「僕はジャゼラン、以後お見知りおきを」
「私はリーシャ・リトゥーネ! よろしくね」
「あたしはラクシ」
 このチーム少ないな。他のとこでも最低八人はいたぞ……? もしかして俺を呼んだ理由って人数が足りないからか?
 まあいいさ。右から順に紹介してもらった俺、ビルディ・シンク。黒い肌の筋肉が自慢で、黒く短い髪が目立つ。生き物以外を変化させる魔法が得意らしい。そしてジャゼランは、なんか紳士っぽい恰好をしている。黒いスーツ姿に奥が深い帽子、そして右目にだけかかってるメガネ。結界魔導師だそうな。結界を張れば移動も可能、守りも可能。そしてリーシャ・リトゥーネ、このチームでかなり役に立つであろう回復専門の魔導師でピンク色の腰まであるストレートヘアーはそれはそれは可愛らしい性格を表しているであろう少女。そしてラクハ、黒く二つ結んでいる黒髪を下し、なんか野生人っぽい。移動系の魔法が得意で、戦闘の役に立つときもあれば立たない時もあるであろう人物。
「そして私がここ≪星の天使(スター・エンジェル)≫のリーダークレハロンだ」
 さっきの男、リーダーも名乗る。
「で、リーダー。今回の仕事はなんだい?」
 簡単に話を切り上げてきやがったラクハは、不敵な笑みを浮かべながらクレハロンに聞いた。
「今回は大仕事だ。この街を北に出たところに広大な砂漠が広がっている。そこに化け物がいるそうだ」
「おっ、じゃあ今回の仕事って」
 クレハロンが答えると、ビルディが嬉しそうに言ってきた。いや、「そう」じゃなくてまんま嬉しそうだ。
 ここにきていきなり仕事か……そういやこいつら俺のこと知ってんのかな? 俺の体に浮かんでるこの呪印を見せたら……大変なことになるんじゃないだろうか。いや、でも俺を知ってて呼び出したってことだから知ってるだろ、きっと。
「ああ、化け物退治だ」
 クレハロンの言葉と同時に盛り上がった皆。
 俺はこの展開でなぜ喜ぶのかわからない、仕事はクリアしなけりゃ意味ないだろうに。
「うっし。じゃあさっそく行こうぜ」
 ビルディが張り切って建物を出ていくと、続いてラクハ、リーシャ、ジャゼランの順でビルディの後を追って建物を出た。張り切ってんなあいつら。さて、俺も行くかな。
 俺は目的地の砂漠に向け、歩み始める。そして十分くらい過ぎただろうか、それくらいで砂漠に着いた。フードをかぶってて正解だったな。≪ヒューガ≫の方は暑くなかったのに砂漠に出ると急に暑くなってきやがった。
「ここら辺のはずなんだがな……」
 砂漠に入ってどれくらいたったかは知らないがもう振り返っても町は見えなくなっていた。俺たちはリーダーを先頭にしてついていき、リーダーが止まると同時に俺らも足を休めた。
「結界を張っておきましょうか?」
 沈黙が続いた後に語りだしたジャゼラン。結界を張っておけば楽かもしれないな。いきなり砂から現れても問題なさそうだし、まあそうなったとしても対処はできるが相手にもよるからな。ここら辺で目撃される化け物……つまり魔物のことだがその種類は五体にも及ぶ。
 ワニにどことなく似てるワンバール、地面から現れるゼゼノグラン。足の速いゼギン、尻尾に毒を持つスコルーピン。大きな翼が自慢のウッパ。特に注意しなくてはならないのがウッパとスコーピオンである。スコーピオンは地面を自由に歩くことが可能で、さらには尻尾で刺されれば全身麻痺の毒がある。ウッパはこの地で最も強いドラゴン。爪は強力で、翼で砂嵐ができてしまうくらいだ。
 結界を張ったはいいが、一向に暴れている化け物が出てこない。
「……!? 気をつけろ、来たぞ」
 いち早く魔物の存在に気が付いたのはクレハロン。クレハロンが見つめる方向を見ると、地面がもこもこなっているのがわかる。地面から出てくるってことは……ゼゼノグラン、或いはスコルーピンだ。
 そして鳴き声もなく登場してきたのはスコルーピンだった。くそ、よりにもよって厄介なやつが出てきたな。
 普段の魔物は、旅人などを襲ったりはしない、だがなぜか以前やってきた旅人を襲った魔物がいた。それがスコルーピンか……。
「リーダー」
 クレハロンの右隣にいたミレイは構える。
「わかってる。ジャゼラン! 結界を解け!」
「了解しました」
 ジャゼランは命令通り結界を解く。
 不意打ち、なんてことはまずなくなったからな。これでスコルーピンを倒せばもう仕事は終わったも当然だ。皆はいつでも戦えるよう構えた。
「しかしスコルーピンはここの土地の中では一番大人しい魔物、なぜ人を襲ったんだ?」
 ビルディは首を傾げた。
 確かに、それも気になる、しかもあのスコルーピンは一匹しかいない。普通スコルーピンは小さい体という弱点を補うために群れで行動するはず。なのにあのスコルーピンは一匹。
「群れから離れたんだな、群れていないスコルーピンは容易い。皆行くぞ!」
 クレハロンは言う。
 ……何か引っかかる。スコルーピンが迷子なんてありえない。どんなことがあっても必ず群れで行動するのがスコルーピンだ。もし一匹が倒れれば、仲間であるスコーピオンがそれを助け、回復するまで決して歩みはしない。
 皆が突っ込んでいく中、俺は目だけで地面を見た。もし、地面にあと何体というスコルーピンがいれば……ありえるな。
「闇の波動魔法≪幻影の棒(ファントム・ロッド)≫」
 俺は右手に黒くて長い棒を魔法で出した。長さ三メートルと言ったところだろうか。俺はその棒を使って地面の砂に立てて突き刺し、
「≪地面の雷(グランド・サンダー)≫」
 地面の中で魔法を仕掛ける。これで俺の読みが当たってれば……
「な、なんだ……地面が動いてやがる」
「まさか追手か!?」
 よし、出てきた……。
「ふぅ、やみくもに突っ込んじゃあダメだよ皆」
 とりあえず一安心とばかりに、俺は額の汗を右手で拭う。
 スコルーピンは元から群れで行動していたんだ。まあ、大方あの一匹は囮みたいなもんだろう。スコルーピンなりには考えたんだろうけど、まだ甘かったな。せめて四匹ぐらい囮にすればまだ気づかなかったのかもしれないのに。
「こんなに隠れてたの……?」
 ラクハは地面を見ながら言う。
「アーサー君に助けられたわね」
 続いてミレイ、さらにはメンバーみんなからもお礼を言われた。まあなんだ……お礼を言われて悪い気はしないな。俺もみんなの役に立ててよかったよ。内心ホッ、としつつも、俺はそんなことを思っていた。
「流石だな……アーサー。君を私のチームにいれてよかった」
「んなことないって、俺もあんたの一員になれてよかったぜ。リーダー」
 さらにはクレハロンとも握手を交わし、皆で帰ろうと思っていた時だった。
「あれ、俺のスコルーピン共が死んでる」
 そんなことをつぶやいて登場してきた人物がいた。
 長い黄色の髪はかなり盛り上がっていて、砂漠だからなのか、上半身裸でジーパン男、年齢は俺より上か、下かはわからない。だけどただいえるのは……なんだ、こいつのこの魔力。気を抜くと立ちくらみしそうなこの魔力……。
「何者だ、お前」
 その男に、クレハロンが代表して声をかけた。
「俺? 別に名乗るほどのもんじゃないぜ? それよりさ、俺のスコルーピン共殺したのお前らか?」
 こいつと戦うのはまずい、俺の勘が告げている。でも回避できそうもない。だったら戦闘にならないようにしなければ。でも一体どうしようか。ここでははいと答えるべきか、いいえと答えるべきか。なんか嘘が通じなさそうなやつだよなああいつ。
「お前が飼っていたのか? それについては謝ろう、だが飼い主なら事情を知ってるんだろうな」
 クレハロンは相手の目を真っ直ぐに見て答える。さすがだな。俺はこんな魔力のやつ目を合わせるだけでもやっとかもしれないぞ。しかし……クレハロンと相手の魔力だったら微かにクレハロンが勝っている。
「チッ。……は〜あ、せっかく集めてきたやつらなのによお」
 すると男は、さっきのおとぼけ顔から一瞬で、目つきを変えた。
「集めてきた? 飼っているんじゃないのか?」
「誰が飼うかあんな雑魚。どんなに弱い人間でもあんなもん飼いやしねえだろ」
 態度も急激に変わった男。これは……戦うのか。しかし相手の言語に疑問を抱くのは俺もだ。あいつは、あの男はスコルーピンを集めてきたといった。この砂漠のスコルーピンを集めたというのか?
「お前、名前は?」
「おお? 闇の黒魔導師サタン様じゃありませんかー!」
「その名前で俺を呼ぶな!!」
 俺が相手に名前を聞いたのが間違いだった。
 あいつ、まったく名乗ろうともしないうえに、俺が不快に思ってる別名まで……俺は右手を前に握りしめた状態で突き出し、
「黒魔導第十二ノ魔法≪闇の突風(ダーク・ブラスト)≫」
 その魔法を唱えるや俺は強く握っていた右手をパッと開き、黒っぽい凶悪な風を相手に撃つ。相手と俺とじゃかなり距離があるため、むやみに相手に近づかないこの魔法を選んだ。黒魔導師が使える第十二ノ魔法の一つである。
 因みに第十二ノ魔法は全部で十二個あり、それ以外にも強烈な威力を誇る最高の魔法だ。この魔法≪闇の突風(ダーク・ブラスト)≫
もかなり強烈で、そしてこの魔法は特別範囲が広い魔法。この凶悪な闇の風からは、避けれない。
「おいおい、悪魔ってのはいきなり攻撃仕掛けてくるやつなのか?」
 確実に当てた。……はずなのに、相手はそれを右手だけで消し止めやがった。あの強風を片手で、しかも動くことなく、簡単に。やっぱりあの魔力は本物だ。
「じゃっ、少し遊んでやっかね。あー、俺の名前はゼノム。んじゃ、はじめっぞサタン」
 ゼノムとか言うやつは俺と戦う気があるようだ。
 俺はクレハロンに達に下がってもらい、俺は少し前に歩みでる。さて、どうするか。今のこの魔力じゃ、俺はゼノムに勝てない。というか……ゼノムってどこかで聞いたことがある気がする、それが何処だかはわからんが、結構重要だったかもしれない。まあそれは今言い、今は戦いに集中しなきゃな。
「あーあ。リーダーに怒られちゃうけどまあいいかー」
 その言葉を聞いた直後だった。ゼノンは俺の視界から消え、一瞬で俺の背後にやってきたのだ。こいつ、移動魔法を!? 
 俺は振り返るのが遅すぎた。振り向こうとした直後に、俺は回し蹴りを食らったのである。そしてある程度の距離まで吹っ飛ばされ、起き上がったはいいがゼノムの姿が見えることなく、
「ここだよ」
 再び俺の背後に現れ二度目の回し蹴りを食らう。
「この移動魔法……あたしより精度が違うじゃないか」
 途中、ラクハがそんなことを言っていた。
「ああ? 俺がお前より上なのは当たり前だろ」
 ゼノムはラクハに言うが、俺への攻撃を休めない。俺が起きればまた移動して俺の背後に回って、それの繰り返しだ。当然俺の体力は削られていくばかりで、ゼノムの魔力は尽きるところを見せない。
「このままではアーサーが!?」
 そう言ったビルディは一歩前に出る。
「変化魔法≪メタモフ≫」
 ビルディは両手を合わせてから地面につけ、砂の形を変えた。そしてその砂は無数の槍のような形になり、ゼノムに襲い掛かってくる。変化魔法。いろんなものを変化させ操ることができるいい魔法だ。俺の闇とは違う。これはさすがに片手で止められない。
 そんなことを思ったのもつかの間、ゼノムは俺に右手を添え、移動させた。
 そしてビルディの魔法で作られた砂の槍が俺の背中に突き刺さっていく。
「アーサー!!」
 目を大きく見開いた皆。中でも、声をかけてきたのはビルディだった。意識が遠のいていく。くそ、これっぽっちの傷で俺は倒れちまうのか。俺はうつ伏せに倒れ、砂には大量の血が滲み出る。こりゃまずいな……。
「ミレイ、魔法でアーサーをこっちに連れてきてくれ」
「はい」
 クレハロンの指示で、ミレイは魔法を使い、俺をクレハロンの近くまで運んできた。
「リーシャ、アーサーの治療を頼む」
「はい!」
 続いてクレハロンはリーシャに指示を出した。
「ジャゼラン、ビルディは私と一緒にあいつを倒す」
「「はい」」
 そして、ゼノムの前に立ちあがったクレハロン、ビルディ、ジャゼランの三人。三人ともかなり真剣の様子だ、俺のためにここまで……。こんなのは初めてだからわからないが、これが仲間という奴なのだろうか。
「今度はお前らが相手? んー、これ以上やっとリーダーに怒られるからなー。それに三対一とか卑怯じゃん」
「待て、拙者も参戦しよう」
 のんきに答えたゼノムの後ろからやってき青い忍者の恰好をしている男。背中には一本の長い剣ともう一本の小刀を吊るしていて、魔力はというとこれっぽっちも感じない相手だ。
「忍びモドキは下がってろっつうの」
「む、拙者はモドキではないでござるよ」
 ついでに、しゃべり口調も忍者だ……。今の時代にいるのか、こんな魔法しかないと思ってた世界に。こんな、魔力を一ミリも感じられないほどの忍者が。さて、それはそうとクレハロンたちはどう出る?
「ゼノム殿。相手は≪星の天使(スター・エンジェル)≫でござるな。リーダーの命令では、邪魔するものを消せ、との報告が」
「てことは……こいつらは潰していいんだな?」
「御意」
 相手忍者は顔も隠しているが、目つきが鋭い事だけはわかる。
 なんでだろうな、魔力はこれっぽっ地も感じないのに……ゼノムと一緒にいるからか、あいつもやばい気がする。意識が少し回復した俺は、うっすらとしか見えない。勝ってくれよ、リーダーたち。
「忍者……ですか」
 ジャゼランは忍者の顔を見ながら言う。
「拙者はピピロと申す。いざ尋常に勝負!」
 ピピロと名乗る忍者は背中にある長い剣を左手に、そして短い剣を右手に持って距離を置いてあるクレハロンたちのもとに突っ込んでいく。
 クレハロンたちはよけることなく、相手をじっと見ている。このままじゃ刺されるぞ……! 俺がそう思ったのもつかの間、ピピロがクレハロンたちに手前まで来て刺そうとしてた時、青くて四角い箱のようなものが出てきてピピロの攻撃をふさぐ。
「結界!?」
 驚いたのはピピロ。
 ピピロは攻撃ができないとみるやすぐに自分の立ち位置に戻った。切返しの速いやつだ、流石忍者だな。
「まずはゼノムを狙うぞ。……ビルディ、頼む」
「……はい!」
 クレハロンは右隣にいるビルディに小声で何かを伝えて、何かわかった世にビルディは両手を地面にたたきつける。これはさっきと一緒だ。まあもう身代りにするやつはいないからな。これが効果的なんだろう。
 そして砂の中から出てきた無数の槍。それらがすべてゼノムとピピロのもとへ矛を向けて向っていく。
「ジャゼラン! 今だ!」
 いつ作戦会議をしたのかはわからないが。ゼノムは相手の攻撃をよけた、避けたまではよかったのだが、避けたら避けたで、ジャゼランの結界に閉じ込められたのである。……そこで俺は思い出した。ああ、そういやクレハロンは予知魔導師だったな。大方それで逃げる方向を調べたんだろう。的にすると厄介な人物だな。
 そして結界の中に閉じ込められたゼノムは身動きが取れず、結界をバンバン叩いている。
「ゼノム殿!」
 ビルディの攻撃をよけたピピロが、空中で結界に閉じ込められているゼノムに気づき、助けようとしたのか自分もジャンプしようとしていた。
「させるか!」
 いち早く行動をとったのはビルディで、地面を両手にたたきつけるとピピロのいる近くの砂の中から巨大な壁が出来上がる。それでピピロは閉じ込められた。
「ナイスだビルディ」
 クレハロンがビルディに一声かけると、ビルディはにっこり微笑んだ。
「さて、どうします?」
 ジャゼランは問う。
「残念だが俺は同時の魔法を唱えられない」
 ビルディは本当に残念そうに答えた。閉じ込めたことによって少し考える時間を得たためか、かなり時間を食ってしまい、次第には結界を破壊され、砂の壁も破壊されてしまった。
「にゃろう、もう同じ手はくらわねえぞ」
「拙者もでござる」
 そもそもの話、ここにいるだれもが同じ手を食らいそうにないやつらだってのは分かっている。クレハロンが予知して動きを読み取れるとは言え、何か秘策考えてるに違いない。結界を破る方法も、砂の壁をぶち破る方法も簡単に見つけることが可能なのだから。さて、クレハロン、どうする? いや、もうリーダーでいいか。
 どちらも回避が得意なタイプか。
 ピピロから魔力を感じられないとはいえ、忍者ということはそれなりに足も素早いはず。そしてゼノムは魔力がピリピリ感じられる。移動魔導師は何度も見てきたがあんなに移動速度が速いのは初めてだ。
「…………」
 リーダーはあごに手を当て考える。
 くそ……俺の体がまだ動くことができれば参戦できたのに……。リーシャの回復魔法が遅いわけではない、俺の傷が相当深いのだ。そりゃ、背中に何本も刺されりゃそうなるのは当然だが。


 時は少し前にさかのぼる。
 ここは≪エンジェル・ワールド≫の天界。≪守護天使(プロテクト・エンジェル)≫の本拠地。
「アーサー・イヴァンナスが≪星の天使(スター・エンジェル)≫に!?」
 炎の魔導師、プラント・フォーバー。またの名を≪豪炎のプラント≫。
「うん! アーサーお兄ちゃん言ってた!」
 そして水の魔導師、アリス。幼い頃アーサーに助けられ、数年間共に旅をした経験がある。またの名を≪激流のアリス≫
「アリスが言うなら間違いないねぇ。まったくあの子には困った者じゃ」
 優しそうな印象を持つ地の魔導師オルザス。子供たちから好かれている心優しいおばあさんで、またの名を≪地底のオルザス≫
「闇の力は目覚めていない。……今のところはな」
 そしてチームを束ねる最強の魔導師。オルトギア・パルーム。時間を戻せば死の人間を生き返らせることも可能。またの名を≪時空の神≫
「目覚めてからじゃ遅いんですよリーダー!!」
「えー? お兄ちゃん優しいから闇の力なんて目覚めないよー?」
「アリスや。闇の力は感情で目覚めるものなんじゃよ」
 プラント、アリス、オルザスはそれぞれ話し合う。それを黙ってみていたリーダーは、勝手に話してろと言わんばかりに何も語らない。このリーダーは、仲間からも信頼を受けていないのである。三人をまとめてはいるが、プラントとは意見があったことがない。
「アリス、お前がまず行って……この争いを止めてこい」
 そして口に出した言葉は、命令だった。アリスはアーサーと会えるからか、喜んで「はーい!」と答えるが、
「こんな子供に行かせるんですか!?」
 プラントはというとやはり意見が合わない。
「私子供じゃないもーん。ベーッだ!」
 プラントの言葉に腹がたったアリスは舌を出してプラントに言い返した。
 リーダーは一度決めた言葉は決して曲げない。プラントとの相性が悪い分、余計曲げることができないのだ。もし自分の言ったことを曲げれば、プラントはまた同じことを繰り返すだろう、それは人間として当たり前の事なのだ。何言っても無駄、という意識を持たせて大きな意味がある、とリーダーは考えているのだ。


 そして、再び時を戻して、≪ヒューガ≫を北に出た先の砂漠地帯にて
「オラオラァッ! 本気だしてやったってのにその程度かァ!?」
 ゼノムの本気。それはとてつもない強さで、リーダーでさえ押されている。予知する時間もない速い攻撃。さらにはピピロとのコンビネーションもバッチリで、こっちは防戦一方の状態だ。当然、これが続けば必ずしもダメージを得る、だがこうすることしかできない、それが今のこの現状だった。ゼノムは砂漠の砂をも移動させ、目くらましなどをしたりと、また同様にピピロは両手にクナイを一本ずつ手にとって素早い攻撃をしている。
 リーダーたちもさっきとは大幅に動きが変わった。なんせこの暑さだ、疲労が早いのは当たり前だろうな。だけど相手は汗がでていない。普通あんな動きしてれば、大量に出る、何もしないで寝込んでる俺でさえ汗が出るんだから一つも汗が出てこないというのはおかしすぎるのだ。
「動きが鈍ってるでござる」
「フン、情けねえ奴らだな。んじゃ止めと行くか」
 ゼノムとピピロは距離大分位置で構え、話し合っていた。まずい、あんな動きで一突きされたら、避けようがない。
「ウラァッ!」
 先に手を出したのはゼノムだった。
 もうだめだと思ったその時。
「≪水の守護(ウォーター・プロテクト)≫」
 水でできた壁? がリーダーたちの前に出てきて、ゼノムの攻撃を防いでくれた。
「あ、アリス!?」
 俺は少女の姿を見るやすぐに起き上がり声を上げた。
「アーサーお兄ちゃん! 大丈夫?」
「あ、ああ……なんでお前がここに?」
「命令だってさ。この争いを止めるのっ!」
 ≪守護天使(プロテクト・エンジェル)≫の一人、水の魔導師アリス。かつて旅したこともあってか、非常に俺に懐いている。アリスがなぜ≪守護天使(プロテクト・エンジェル)≫の一員なのかというと、魔力がすごいからだ。十四歳の子供じゃ扱えない、その魔力があるから強引にでも俺がいれた。当然、俺もこの魔力だし一度は誘われたが、断ったのだ。
 アリスが仕事でこの争いを止めに来たってことか……。こんな小さい子に何やらせてんだと俺は思うが、まあ相手なりの考えがあるんだろうから、俺は何も口出ししない。アリスがピンチに陥った時は俺が助けてやればいいのだ。
「よーし! こっからは私がやるからみんな休んでて!」
 アリスはリーダーの前に仁王立ちで立つが、リーダーを見ているのではなく、ゼノムやピピロの方を見ていた。リーダーたちは一瞬俺に目を向け、大人しく従うことにした。
「今度はガキの御守りか?」
「ゼノム殿。気をつけくだされ、あやつは≪守護天使(プロテクト・エンジェル)≫の一員でござるよ」
「マジか……。あんな子供もいるのか」
 アリスを子ども扱いしない方がいい。なんて俺が言っても意味がないし。まあ放っておけばアリスはいいとこまで持ってけそうだが……。
2011/11/23(Wed)15:32:55 公開 / 上条京介
■この作品の著作権は上条京介さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
登場人物 ※途中変更アリ
≪守護天使(プロテクト・エンジェル)≫
アリス 十四歳 女 水の魔導師  プラント・フォーバー 四十七歳 男 炎の魔導師
オルザス 六十四歳 女 地の魔導師 オルトギア・パルーム 二十四歳 男 時の魔導師
≪星の天使(スター・エンジェル)≫
クレハロン 三十五歳歳 男 予知魔導師 ミレイ 十七歳 女 風の魔導師 
ビルディ・シンク 二十二歳 男 変化魔導師 ジャゼラン 結界魔導師
リーシャ・リトゥーネ 十九歳 女 回復魔導師 ラクハ 二十三歳 移動魔導師
アーサー・イヴァンナス 十七歳 男 黒魔導師
≪魔物の種類≫
ワンバール ワニ型 ゼゼノグラン モグラ型 ゼギン ハイエナ型
スコルーピン サソリ型 ウッパ ドラゴン型
≪???≫
ゼノム 男 移動魔導師 ピピロ 男 忍者

二作品目となります。
今回は魔法とかそういう系の物にしたいと思ってます。
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