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『呪いの匙加減 【三】』 作者:羽付 / リアル・現代 ファンタジー
全角25045文字
容量50090 bytes
原稿用紙約73.1枚
もし「あなたは呪われている」と言われたら、あなたはどうしますか?
 どうも初めまして、僕の名前は舞島 妹乃助(まいじま まいのすけ)と申します。
 所で、あなたはご存じだろうか? いや知っている訳ありませんでしたね。
 おっと失礼。別に、あなたを馬鹿にしている訳ではありませんよ。ただ今まで、この事について知っている人に会った事がないので、きっと知らないだろうと思いまして。
 この事とは、ですね。呪いについてなんです。あっ! 呪いと言っても大したモノじゃありませんよ。本当に些細なモノばかりですから。
 実はですね。人間は生まれてくるときに一人一つずつ、呪いを持って生まれてくるのです。でも先程も話した通り、大抵の場合は本当に大したモノじゃありません。
 例えばですね。普通の人が十回転ぶうちに、十一回転んでしまうとか、普通の人が忘れ物を十回するうちに、十一回忘れ物をしてしまうとか、普通の人が十回怪我するうちに、まあ後は同じです。
 ほら忘れ物が多い人など周りにいませんか? その人は多分、忘れ物をしやすい呪いに掛っているのだと思います。でも同じ忘れ物をする呪いでも、程度に差があったりするのですよ。先程の例を使うなら、十一回の人もいれば、十五回の人、二十回の人と、効力とでも言えば分り易いのでしょうか? とにかく差があるのです。
 おっと、いけない。今は悪い例ばかりを出してしまいましたが、逆に当たりを引きやすい呪いや、危険を察知しやすい呪いなどもあるのです。もちろん、こちらにも効力に差があるので、何をしても上手くいく人というのは何か強い呪いのせいなのかも知れませんよ。
 それにしても呪いを誰が人間一人ずつに与えているのかは僕も知らないのですが、まあ不公平ではありますよね。
 そうそう不公平と言えば、この僕が持っている呪いも相当に不公平だと思いますよ。ほらよく「何でも願い事を一つ叶えてあげましょう」というモノに、「願い事を十回叶えて下さい」と願っても欲深いとかで叶えられない事があるじゃないですか? でも僕の場合は反対とでもいうのか、一人一つずつしか持てない呪いを沢山持てるというか持たされる呪いなのです。
 しかも何十年かに一つ二つ僕の意思に関係なく、かってに増えて行くのですよ。それも特別な呪いばかり。
 おっと話し忘れる所でした。本当に極僅かなのですが、時たま僕のように特別な呪いを持っている人もいるのです。それは呪いの起こる状況が複雑過ぎて一生のうちに一度も呪いの影響を受けない人や、普通の人間では不可能と思われる事が出来てしまう呪い、自分以外の物や人に影響を与えてしまう呪いなどですね。
 まあ、そんな人は滅多にいないですし、僕も出会った人数は多くないので詳しくはまたの機会にしましょう。
 さてやっと本題なのですが、僕の呪いの一つに見ただけで他人の呪いがどんなモノか分かるというものがあります。その呪いで見つけた面白そうな呪いの持ち主に、僕の持つ別の呪いを使ってから観察するという趣味があるのですよ。
 悪趣味だと思われましたか? でも余りにも暇な僕のささやかな趣味だと、お許しください。それに持ち主の方には、呪いをほぼ失くす事が出来る機会も与えるのですから。
 とにかく、それでですね。今まで僕の出会った面白い呪いの持ち主の話を、特別にあなたにして差し上げようと思うのです。どうしてかって? 別段に深い意味はないのですが、一人で楽しむのも飽きてしまったからとでもお思い下さい。
 そうですね。では先ず、彼女の話にしましょうか。



  【 左の幸運と右の不幸 】


 何て腹立たしいんだろう。こうなったら、やけ食いしてやるんだから!
 十月も半ばのオフィス街に、スーツ姿のサラリーマンや制服の上に軽くカーディガンを羽織ったOL達が、昼食をとる為にビルの中から出てきている。
 私も、そんな中の一人だけど昼休みのウキウキ感など少しもなくて、ただただ腹が立っていた。
 総合職として入社して五年、やっと私の企画した商品案が通りそうだったのに。どうしてミニスカートで媚売るしか出来ない様な二年も後輩の、あんなどうしようもない案が採用されるのよ!
 課長も、どうかしているんじゃないの! それに「サポートしっかりと頼むよ」って、どういう事よ。後輩の手柄の為に頑張れとでもいうの? ふざけないで!!
 私はふと一階がガラス張りのロビーになっているビルの前で足を止めて、そこに映る自分を見つめる。
 見た目も大事だとダイエットして痩せた体、お化粧の仕方もプロに習いに行って、二週間に一回はエステと美容院にだって。だけど明るく笑う後輩の笑顔と、スラッと伸びたしなやかな足……自分が勝っている所が、どこにもないような気がした。
 そして今度は仕事まで、何だか笑いたくなってくる。その時、彼の顔が頭に浮かんだ。
 彼と言っても付き合っている訳じゃないし、面識も殆どない会社の先輩。三十代前半で背も高くて格好良くて控えめな性格なのに、仕事ぶりは有能だと聞いた事がある。女性社員の中で彼を狙っている人は多い。
 もし私に彼みたいな恋人がいれば、少しは自信がもてるのだろうか? 仕事も上手くいくんじゃないだろうか?
 ガラスに映る私は、頭を横に振っていた。そうだよね……自分で何とかするしかない。今までだって、そうしてきたのだから、それに彼が私の恋人になる事なんてないもの。
 私が溜息とも深呼吸ともつかない物を一つして歩き出そうとした時、軽い衝撃と共に道路に尻もちをついてしまう。
「痛ッ……」
 何てついてないの、物とかじゃなくて人にぶつかった感触だった。近くに人がいたのに気付かないで、歩き出してしまった私がいけない。
 とにかくいつまでも道路に座っている訳にもいかないし、ぶつかった人にも謝らなくちゃと顔を上げたら目の前に手が差し出された。
「大丈夫ですか?」
 その声は心に響くような不思議な音色に聞こえた。
 手の先にある顔は太陽の逆光で見えないけど、黒く長いマフラーが印象的だ。たぶん私がぶつかった人なのだろうけど、その見知らぬ人の手を取るのは躊躇われる。
「ほら、手をどうぞ」
 そんな私の気持ちを察したのか、その彼の二言目で私は素直に手を取ってしまう。
「すみません。ありがとうございます」
 そう言いながら立ち上がり相手の顔を見ると、背は高いけど高校生か中学生ぐらいに思えた。短くも長くもない黒い髪に力強く意思の強そうな黒い瞳と眉、それとは対照的な柔らかそうな口元に、その間の高い鼻と、今時ではないけどモテそうなルックスをしている。
「怪我とか、ありませんでしたか?」
 その問いかけにスカートについた埃を払いながら、簡単に確認する。
「ええ、大丈夫です。それより私の方こそ、不注意でごめんなさい」
「気にしないで下さい。僕は頑丈なんで、所で一つお話させて頂いても宜しいでしょうか?」
 もしかしてナンパ……あれ? 私、目の前の彼の話を聞かなくちゃいけない。突然に、そう思った。
「もちろん、いいですよ」
 自分の意識はあるのに口がかってに答えた様な、そんな気がする。
「あなたは呪いを一つ持っています。でも安心して下さい。誰でも一つは持っているモノですから」
 何を言っているんだろう? 怪しい宗教か何かだろうか? こんな事……聞かなくちゃいけない。どうしてなのか、そう思わずにはいられない。
「それで大変に申し難いのですが、あなたは僕の手に触れた事によって、その呪いの効果が最大限になってしまいました。ですから、あなたがどんな呪いに掛っているか、教えて差し上げますので十分にお気を付け下さい」
 全く理解できないけど目の前の男のせいで、私は凄くよくない状況にいるんだと理解する事にした。だけど、とにかく黙って続きを聞かなくちゃいけない。
「よーく、覚えといて下さいね。あなたの呪いは、後ろから名前を呼ばれた時に、向かって左に振り返れば幸運が、向かって右に振り返ると不幸が訪れるというモノです。でも三日後に、またあなたに会いに来るので、その時に呪いが必要ないと思うのなら僕の手に、もう一度触れて下さい。そうすれば、あなたの呪いは今とは反対に、殆ど効力を失くします。話は以上ですよ」
 その瞬間、何か解放されたような気がした。実際に解放されたのかもしれない。私は急いで、その場から怪しい男から離れるように駆けだす。
「絶対に右に振り向いちゃ駄目ですよ」
 後ろから声を掛けられたけど無視して逃げるように走り続けて、息が苦しくてどうしようもなくなるまで足を動かした。
 それから立ち止まって息を整えながら、あの男に私は操られていたんじゃないかと怖くなる。言っている事も突拍子もなくて、とにかく関わっちゃいけないと思った。
「園山(そのやま)さん?」
「嫌ぁ!!」
 私は首の左側当たりを触られた様な気がして、また先程の男が追って来たのかと叫び声を上げて振り返る。
「大丈夫、園山さん?」
 そこに居たのは思っていた人物ではなくて、会社で女性社員達の憧れの彼、野田 祐樹(のだ ゆうき)だった。
「えっ? の、野田さん」
「うん、大丈夫? 驚かせちゃったかな? ごめんね」
「いえ、違うんです! ちょっと変な男に、つけられているかと思って」
 名前を呼ばれて肩を叩かれただけなのに、叫んだりして恥ずかしい所を見せてしまって顔が熱くなる。昔から興奮したり怖い事があると冷静に何も考えられなくなる悪い癖があって、そういう時こそ本当は落ち着かないといけないのに。
「そうなの? 最近は物騒だからね。じゃ一緒に会社まで戻ろうか」
「いいんですか?」
 昼食はまだだったけど、短い距離でも野田さんと一緒に歩けるのが嬉しいと思った。それに私の存在と名前を知っていてくれた事が嬉しかった。
「当たり前だよ。園山さんは綺麗だから、注意しないと」
 そんな彼にとっては何でもない一言に衝撃を受けている自分がいた。だって、こんな面と向かって男性に綺麗だなんて言われたのは、初めての様な気がする。今まで付き合った人は何人か居るけど、こんな風に混じりけを感じさせずに言ってくれた事はない。
 この一瞬で魔法でも掛けられたように憧れから、本当の好きになってしまった。自分の気持ちを、こんなハッキリと自覚するのも初めての経験な気がする。
「綺麗だなんて、そんな私より」
「ううん、綺麗だよ! 前から、そう思っていたけど、なかなか声を掛けられなくて、今日は勇気を出して良かったよ」
 きっと私が自分を否定するような事を言おうとしていると分ったから、それを遮るようにして言ってくれたんだと、その言葉がとても嬉しい。そう言って笑う彼の顔が、とても眩しくて素敵だった。
 今日一日の不幸が吹っ飛んだような気がする。こんな幸運が訪れる……あの男の言葉が蘇る「左に振り返れば幸運が、右に振り向くと不幸が」、あの時は咄嗟だったから左肩に触れられた手を振り払おうとして、たまたま向かって左に振り返っていたけど。この幸運は本当に呪いのせいなの?


 呪いの話をした男と出会ってから三日、私は自分の部屋で今日までの幸運を振り返っていた。
 一つは野田さんと話を出来る様になった事、それに実は今日デートに誘われている。もうすぐ車で迎えに来てくれる筈だ。会社のエレベーターホールで待っている時に後ろから「野田さん」と声を掛けられ、今度は意識して左から振り向いたら誘ってくれた。
 あと後輩にとられた仕事も自分のデスクに座っている時に、課長に名前を呼ばれ左から振り向いて話を聞きに行くと、部長の意向で私の案が採用される事になったと言われた。
 そして決定的だったのが昨日。私には持病があって余り外に出られない母が実家に居て、その母に会いに行き、わざと背中を向けて名前を呼ばれるのを待った。

「貴美(きみ)ちゃん」
 その声を聞き向かって左から振り返ると母は泣いていた。
「脳の腫瘍を取る手術をして貰えるの」
 と消えそうな声で母は呟く。難しい位置にあって、どの病院でも手術を断られ続けて、大きくなり命を奪われるのを待つだけだと諦めていた腫瘍なのに。
「本当に? 本当なの、お母さん」
「ええ、本当よ。すぐにでも、いらっしゃいって」
 まだ手術が成功すると決まった訳じゃないけど、私の力があれば大丈夫だと思った。最近は手足も上手く動かなくなってきたと言っていた母が、治るかも知れないそう思うだけで涙が溢れてくる。

 この三日間、とても幸せだった。一生分の幸せを使ってしまったんじゃないかと、不安になるほどに。
 そんな事を考えている時、玄関のチャイムが鳴った。私は野田さんが迎えに来てくれたのだと、急いで鞄を手にとり玄関の扉を開く。
「三日ぶりですね。さて、どうしますか? 呪いは、いらないですか?」
 玄関に立つ男は、あの時と同じ黒いマフラーをして右手で握手を求めるように差し出してくる。私は反射的に両手を後ろに隠していた。
「なるほど。それが、あなたの答えですか。では最後に、もう一度だけ忠告させて頂きます」
 そこで言葉を切ると男は黒い瞳で私の目をじっと見つめ、三日前に背中から掛けられた言葉を繰り返す。
「絶対に右に振り向いては駄目ですよ」
 それだけ言うと男は自ら扉を締めた。
 私はその場から動けなかったし、何も言えなかった。ただ、今この力を失う訳にはいかないと心の中で叫ぶ事しか出来なかった。



 あれから三年の月日が流れた。あの男と出会ったのは、今でも昨日の事にように思いだせる。だけど今の私とあの時の私は、まるで別の人間のような気がする。
 憧れだった祐樹とは結婚する事が出来て仕事も順調、母親も今では元気にハワイアンダンスに夢中だ。
 この三年間、私は名前を呼ばれなくても振り向く時には左側からにしている。右側を向いた時の不幸なんて想像もしたくない。だけど、この力を使い続ける事に少しの躊躇いもあって、後ろを気にする癖がついた。そうすれば先に相手を見つけて、名前を呼ばれる前に自分から話しかけられるから。
 だけど最近少しだけ祐樹の束縛が不満で、私を愛してくれているのは嬉しいけど独占欲とでもいうのか、とにかく私の全てを知りたがるのが嫌だった。
 そして毎朝のように聞かれる「貴美は、僕だけのものだよね」と言う問いも、最初は嬉しかったが今では滅入る……イラつかせる。
 もしかしたら私には、もっと相応しい相手がいるのかも知れない。そんな事を考えてしまう。
 だから鏡の前でメイクをして出社の準備をしていると時に、後ろでドアを開ける音がして祐樹が入って来ても、いつものように自分から振り返る事をしないで名前を呼ばれるのを待った。
「貴美」
 私は、ゆっくりと左から振り返る。この次にくる言葉は普段なら「僕だけのものだよね」だけど、今日は違うはず。
「今度の日曜日、山にでも行かないか?」
 いつもと違う言葉がくると分っていても、少し私は驚いてしまう。
 結婚してからというもの彼は家で過ごす事を優先させていたから、外に出掛けるのなんて本当に久しぶりだ。
 山というか自然は好きだったし、最近はお洒落な登山服などもあって一度着てみたいと思っていたから、私はすぐに返事をしていた。
「うん。行きましょう!」
 彼との関係も、また良い物に戻るような気がした。


 やっぱり山の中は空気が美味しい。
 月並みな事しか思えない自分に少しがっかりもするが、それでも自然に囲まれていると気持ちが良い。家からも余り離れていない所にあって高さも丁度いいから、ゆっくりと出掛けて来たのに余裕を持って山頂に辿り着けた。
 日曜だったけど穴場なのか、綺麗な登山道がある割に人は少ない。
「やっぱり高い所からだと眺めもいいし、マイナスイオンで元気になれる気がするね」
 そう言いながら祐樹は深呼吸をして、私もつられる様に大きく深呼吸をした。
 空気なんて味も何もないと普段の生活だと思っているけど、山の中だと濃さを感じる事が出来るから不思議。
「そうね。今日は来て良かった」
 それから山頂で休憩も兼ねて、ゆっくりと楽しく会話を続けた。こんな気持ちで祐樹と会話が出来たのは、ここ最近なかったから新鮮で時間はあっという間に過ぎていく。

「……ごめん、貴美。何か胸の当たりが苦しくて、歩けそうにない。悪いけど下山して人を呼んできてくれないかな?」
 頂上から下山を始めてすぐに祐樹は、そう言って木に凭れる様にして座り込んでしまった。山頂では普通だったのに、今は本当に胸の辺りを押さえて苦しそうにしている。誰か助けを呼びたいけど、私達が下山を始めた時に山頂には誰もいなかったはず。
 あと最近は携帯電話の使える山も多いらしいけど、この山では使えなかった。
 祐樹を見ていると苦しさが伝わってきそうな程で、死んでしまうんじゃないかって目の前が一気にぐらぐらと揺れだす。
「わ、分ったわ。すぐに呼んでくるから!」
 下山して誰かを呼びに行くしかない! そう思って走りだそうとした時、彼は私の腕を掴んで来た道と違う茂みを指さす。
「ここが近道だから、頼んだよ貴美」
 とにかく早く彼を助けたい! 誰かを呼びに行かなくちゃ、そう思ったから私は彼の指示通りの道を行く事にした。
 確かに、そこには獣道のような草と草の間に筋のように切れ目があって、無我夢中で私はそこを出来るだけ早く歩いた。

 だけど何時まで経っても登山口は見えてこなくて、どんどんと緑も深くなって山の奥に入っているような気さえしてくる。どこかで道をそれてしまったのかな?
 当たりは既に薄暗く周りの景色もよく見えなくなってきて、不安と緊張感だけが募っていく。こんな所で、もたもたしている場合じゃないのに。祐樹、大丈夫だよね?
 その時、近くで何かが動くような音がして辺りを見まわす。
「誰? 誰かいるんですか?」
 恐る恐る声を出すが、反応はかえってこない。でも、これ以上の大きな声を出す勇気も出てこなくて、この場を離れる為にも祐樹の為にも進むしかないと歩くのを再開した。
 だけど今度はハッキリと後ろの草むらで何かが動く音がして、それが私に近づいてくるような気が……実際に近づいてくる!
 声にならない悲鳴を上げて、私は走りだしていた。必死だった。あそこに何が居たのか分らないけど、怖くて怖くて堪らない。もう嫌だ! 誰か、誰か助けてよ。
 もう走るのも限界が近づいていたけど、止まる事も出来ないし後ろを確認するのも怖い。
 だけど……ごめん祐樹、私もう。
「貴美」
 首の右側によく知っている心地良い指の感触と聞き覚えのある彼の声、緊張の糸が切れる様に私はただ手に縋るように振り返っていた。
 その瞬間、胸に凄い衝撃があって……痛いと思うより熱いと感じた。私の体は後ろに仰け反る様に倒れそうになる。
「おっと傷ついてしまったら、台無しだ」
 優しい祐樹の声と同時に私の背中に手を入れてくれて、ゆっくりと枯れ葉が積もり始めたばかりの地面の上に寝かしてくれた。だけど凄く息苦しくて、「ありがとう」も何も言えない。
 目だけを動かして熱くて堪らない胸を見ると、そこには鉄の棒のような何かが刺さっていた。
 誰、誰がしたの? 何だか体が一気に重くなって、目を開けているだけでも辛い。
「欲しい物は手に入りましたか?」
 祐樹とは別の声がした。だけど、この心に響く様な不思議な声には聞き覚えがある。
「君か、脅かさないでくれよ。えっと何年ぶりだったかな? それより見てくれ、やっと手に入った。この首は俺だけのもの。やっぱり欲しい物を手に入れるのは最高だ。この呪いを失くさなくて良かったよ」
「それは良かった。お役に立てたのなら、僕も嬉しいです」
 こんな嬉しそうな祐樹の声を聞くのは、初めてな様な気がする。それに呪い? 祐樹も呪いを? まさか、この鉄の棒は祐樹が?
「どうして、ここに? まさか君は警察に言ったりしないだろう」
「もちろんです。あなたの呪いを最大にしたのは僕なんですから。少し様子を見に来ただけなので、もう失礼させて頂きますよ。どうぞ、ゆっくりお楽しみください」
 熱い……死にたくない……私死ぬの? いや、いやよ!! だって幸せだったのに…………だけど今は少し休まないと、その時あの男の声が聞こえてきた。
「だから、右に振り返っては駄目だと言ったのに」



 さて、如何でしたか? なかなか面白い話だったでしょう。えっ? 彼の呪いですか? 彼の呪いは、欲しい物を手に入れたくなる呪いですよ。
 実は彼女と出会う、ほんの少し前に彼にも出会っていまして、同じく呪いを最大限にして差し上げたのですよ。ただ彼の呪いは微々たるものでしたから、今まではずっと我慢していたのでしょう。女性の首が欲しいという欲求を。ちなみに彼の趣味は、呪いのせいじゃありませんよ。
 だけど相当の忍耐とストレスだったと思います。はい? 何ですぐに彼女から首を奪わなかったかですか? 彼の呪いは自分の物にしたいというモノで、人を殺したいとかではないんですよ。
 だから結婚という形で自分の物にしたと満足していたのかも知れないですし、この三年間を使って捕まらずに首を手に入れる案を練っていたのかも知れません。もしも捕まって押収でもされてしまっては、彼の物では無くなってしまいますからね。この後に彼が、どんな事をしたのか知りたいですか? でも、それは彼の話であって、彼女の話ではないので秘密です。
 代わりに、もう一つ? 何でしょう。もし彼女が、あの時に左を向いてたらですか? さあ、それは僕にも分りません。何せ彼女は右を向いてしまったのですから。
 では今回の話は、ここまでとしましょう。また機会がありましたら、別の方の話をして差し上げますよ。
 それとも今ここで、あなたが僕の手を握って下されば、あなたの呪いについてお話して差し上げますが。あなたも、なかなかに面白い呪いをお持ちのようだ。



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 お久しぶりです。舞島 妹乃助(まいじま まいのすけ)です。
 何ですか、その顔は。もっと嬉しそうな顔をして下さいよ。また特別にお話をして差し上げようと思い、わざわざ出向いて来たというのに。えっ? 頼んでない? なるほど遠慮されているのですね。宜しいのですよ、これは僕の趣味でもあるのですから。
 さて今日は、どなたのお話をしましょうかね。はい? その前に聞きたい事があるのですか。ええ、どうぞ僕で答えられる事なら何でもお答えしますよ。
 ストーカーの僕の事が知りたいと……止めて下さい、ストーカーなんて呼ぶのは。ただ親切心で、あなたにお話ししようと来ただけで、常日頃から付きまとったりしていませんから。
 まあ、それはいいとして。そうですね、僕の事を少しお話しましょうか。先ず生まれたのは今から、おおよそ二百年ぐらい前になります。若く見られがちですが、結構な歳なのですよ。ちなみに、もうお気づきかもしれませんが、これも僕に増えた呪いの一つのようです。不老というモノですね。二百年も生きているので、もしかしたら不死かも知れませんが、命に関わる様な事はしないので自分でも分りません。
 他人の呪いなら、この目で見るだけ分るのですが、多くの呪いを持っているせいか自分を見ても何も分らないのですよ。ですから自分自身でも気付いていないだけで、まだ他にも色んな呪いを持っているのかも知れませんね。以前にお話しした沢山の呪いを持てる呪いというのは、実際にそうなので合っていると自信はあるのですが、もしかしたら間違った解釈の可能性も否定は出来ないのです。
 とにかく生まれたのは二百年ぐらい前で、貧しい農家の家に生まれました。自分で言うのも何ですが、明るくて元気な子だったと思いますよ。それから成長と共に呪いの存在に気付いて、ある人物と出会って金銭に不自由しない暮らしをさせて頂いております。で、今に至りますね。
 えっ? はしょり過ぎですか? いや僕としては細かく説明させて頂いたつもりなのですが、うーん、そうですね。ある人物というのは既に亡くなっていますし時間も余りないので、この話の続きはまた次の機会という事に。
 では改めまして、僕の出会った若い女性の話をして差し上げましょう。



  【 捨てるモノと失うモノ 】


「ねぇ聞いてよ。真美(まみ)がね、学校に来ないでって言ったのに、今日も来てて思わず蹴飛ばしちゃったの」
 そう言いながら幼馴染の里桜(りお)は笑っている。なんて下品な笑い方なんだろう……声以外にも何か別な物が出ているに違いない。じゃなきゃ笑い声を聞いただけで、こんなに不愉快な気持ちになる訳がないもの。
「そうなんだ。災難だったね」
 そして同意の返事をしてしまう自分も、きっと下品な仲間なんだ。だから本当は、里桜の事を不愉快に思える立場なんかじゃないのに。
 だけどクラスの中心の里桜に逆らって自分がイジメられるのは、絶対に嫌だから……仕方がない。本当は里桜との関係なんて捨ててしまいたい、家が近いからと言うだけ一緒に登下校なんてしたくないのに。
「そうだ! 優子(ゆうこ)にお願いがあるんだけど、いいかな? 真美に明日は絶対に学校に来ないように言って欲しいの。言ってくれるよね? だって優子は友達だもの」
 学校の帰り道、振り返って両手を合わせてお願いする里桜の姿は、男子ならきっと「いいよ」と即答してしまうぐらいに可愛いのだろう。緩くウェーブの掛った肩ぐらいまである髪は綺麗にカラーリングされていて、目も大きくて他のパーツもしっかりしているから、少女漫画に出てくるヒロインのようだった。
 でも、それは外見だけ。中身は醜悪で、目を背けずにはいられないぐらいに汚い! 生ゴミと一緒に捨てても、きっと負けないぐらいに悪目立ちすると思う。
「でも私、真美の携帯の番号知らないし、私なんかが言っても」
「大丈夫だよ! 私、番号しってるから……それとも私のお願いなんて聞けないかな?」
 怖い! 怖い、怖い……いつもと同じ笑顔、吐き気のする様な笑顔。私に尋ねているんじゃなくて、これは命令のなだから逆らっちゃダメ。言う事を聞かなくちゃ、電話なんてしたくないけど、「来るな」なんて言える訳ないけど、ここで断る事なんて無理だもの。
「そ、それなら、私、お願いしてみるよ」
 何とか、それだけ言う事が出来た。もしかしたら声が震えていたかもしれないけど、里桜は気にしないに違いない。私が自分の言う事を聞いてくれる、それだけで満足なのだから。
「やっぱり優子は友達だよね! じゃ今、番号送っちゃうね」
 そう言うと里桜は学生鞄の横のポケットに入っている綺麗にデコレーションされた携帯電話を取り出して、慣れた手つきで操作しだす。
 そして数分もしないうちに、私の携帯にメールの着信音がなる。

――これで明日は真美、学校来ないよね? ありがとう! 優子。

 真美の電話番号と一緒に、そう書かれていた。もし真美が明日、学校に来たらどうなるんだろう? もの凄い不安感が胸の中を駆け巡る。どうしよう、どうしたらいいんだろう。
「お願いね。優子」
 里桜の目が獲物を狙うような、それになっているように思えた。もしかして次は、私なの? そんなの絶対に嫌!
「うん、任せて」
 真美が来なければ大丈夫、そう真美さえ来なければ、それで大丈夫なんだから。


 私は家につくと手洗いなどもしないで、自分の部屋に入る。お母さんが「お帰りなさい」と言っていたけど、それにも答えなかった。
 部屋に入るとすぐに、窓際にあるベッドを背もたれにして床に座り込む。それから制服のポケットに入れていた携帯電話を取り出して、握りしめながら赤いそれを見つめる。何だか息苦しくなってきて、自分の部屋にいるのに緊張で身体が重く固くなるようだった。
 その時、ふと携帯電話についている物が目にとまる。里桜が友達の証だと言って、お揃いで買ったキラキラ光るシルバーの小さなクマがついたストラップ。
 中学生の頃に、買ったんだっけ? あの頃は本当に仲が良かったような気もする。ううん、あの頃から里桜は里桜だった。逆らっちゃいけない相手で、対等な友達なんかじゃかったように思う。そう言えば里桜の携帯電話には、ついていただろうか? 思いだそうとしても、あの笑顔がしか浮かんでこない。私は今、追いつめられているんだと再確認してしまう。早く、こんな事から解放されたい!
 真美に電話しなくちゃ、そうするしかないんだから。アドレス帳を開こうとした時、
「嫌っ?!」
 突然に携帯電話が鳴りだして、思わず携帯電話を床に落としてしまう。でも座っている状態だったから壊れたりはしなかったようで、着信音が鳴り続いている。
 誰だろう? 私は携帯電話を拾って、恐る恐る液晶画面に映る着信相手の名前を確認する。晃(あきら)だった。すぐに通話ボタンを押す。
「もしもし、晃?」
『どうした? 何かあったのか?』
 高校生になる頃から付き合いだして、もうすぐ二年になる大学生で年上の晃。いつも優しくて、その声を聞くだけ涙が出てきてしまう。
『おい、大丈夫かよ。今から、そっちに行こうか?』
「ううん、何でもない。大丈夫だよ、それより電話」
 もしかしたら電話を通してでも、泣いているのが分ってしまったのかもしれない。だけど、こんな事で晃に心配をかけたくなかった。話してしまえば楽に、どうにかしてくれるかもしれないけど、そんな事はしたくない。自分がイジメられるかもと悩んでいるなんて、晃には知られたくなかった。
『本当か? いや、これからバイトだからさ、その前に優子の声が聞きたくてさ。って、俺、気持ち悪いかな?』
「そんな事ない! 嬉しいよ。私も晃の声が聴けて、凄くうれしい。ありがとうね」
『そっか。そうだ、今度の日曜日さ遊園地か、どっか行こうぜ。バイト代も出るからさ、どこでも連れてってやるよ』
「うん! 絶対に行く。どんな用事があっても行くよ」
 今までの気持ちが嘘みたいに消えていて、幸せな気持ちで一杯になる。大丈夫、何でも上手くいくような気がした。
『おう! また後でメールか電話するから、じゃあな』
「うん、じゃあね」
 幸せを噛みしめるように携帯電話を見つめる。晃、私一人で何とかして見せるから、心配しないでね。
 さっき登録したばかりの真美の番号をアドレス帳から選んで、ゆっくりと決定ボタンを押す。不思議と息苦しさはなくなっていて、ちゃんと話せば分ってくれると思った。五回ほどコール音がしてから真美は、電話に出てくれた。
『どちら様ですか?』
 どこかオドオドとした雰囲気のある声で、ついさっきまでの自分の声を聞いている様で変な気分になる。
「あっ私、同じクラスの優子だけど」
『雲井(くもい)さん?』
「うん、そう」
 真美とは、それほど言葉を交わした事もない。里桜が真美に何かしている時には、出来るだけ関わらないようにしていたから。
『私に何か用?』
 いつも里桜と一緒にいる私からの電話なのだから、警戒して脅える様な声になってしまうのは当たり前なのかもしれない。
「あのね、お願いがあるの。明日はね、学校を休んで欲しいんだ」
『ごめんなさい、それは無理なの。約束だから』
 すぐにハッキリとした答えが返ってきた。脅える様な感じもなくて、それは決定している事で変えられないと言われている様な気がした。予想をしていなかった答えに、私は急に焦ってしまう。だって絶対に「いいよ」って、言ってくれると思っていたのに。
「ど、どうして? 明日一日だけ休んでくれればいいの。お願いだから、そうしてよ」
『私にはお母さんとの約束があるから……だから学校は何があっても行かなくちゃいけないの。ごめんなさい』
「ちょっと、まって、もしあなたが休まなかったら、今度は私の番かも知れないの。だからお願い! どんな約束か知らないけど一日ぐらいいいでしょ?」
 沈黙が続いていたけど、きっと考え直しているんだと思う。自分のせいで誰かがイジメらるかも知れないなんて聞いたら、きっと悪いと思って休んでくれるに違いない。
『あなたも同じだね、あの女と。自分の事しか考えてなくて、私の気持ちなんて少しも考えてない。一日くらい? ダメに決まってるでしょ! 毎日、行かなくちゃ意味がないのよ』
 今までとは別人のような大きくて、攻撃的な声だった。私は吃驚して、何も言えなくなってしまう。
『良い事聞いたわ。明日も学校行けば、今度はあなたなんでしょ? だったら余計に休む訳にはいかなくなちゃった。あの女と、もっと仲良くなれると良いね』
 そう言うと真美は電話を切ってしまう。どうしよう……私は何て馬鹿だったんだろう。正直に話せば分ってくれるなんて、どうして思ったんだろう。それに怒っていた……どの言葉が彼女を怒らせたか分からないけど、すごく伝わってきた。
 どうしよう、どうしよう、どうしよう! そうだ、とにかくもう一度、電話をしてみよう。なかなか上手くボタンを操作する事が出来ない。手が凄く震えているからだと気付く、自分でも知らないうちに体中が震えていた。

 何度も電話を掛けているのに、真美は出てくれない。そして今は着信を拒否されてしまったようだ。
 もう、どうしたらいいか分からない。でも何とかしないと、明日には私が……そんなの考たくない。ずっと真美がイジメられていればいいのに、どうして私が!
 晃の優しい笑顔が浮かぶ、やっぱり相談してみよう。私は携帯電話のアドレス帳の最初に登録してある晃の番号を選んで、そして後もう一度ボタンを押せば電話を掛けられるという所で指を止める。
 ダメ! こんな事、やっぱり相談出来ない。もし晃に知られたら絶対に嫌われる。晃に嫌われるのなんて、死んでも嫌だ! じゃあ、どうしたらいいの、もう分らないよ。気持ち悪い、胸の辺りがモヤモヤして、何もかも吐き出したくなる。
 その時、連絡網の事が頭に浮かんだ。そうだ、あれには住所も載っていたはず。私は立ち上がって、壁際にある机の一番上の引き出しを開ける。
 あった……殆ど使う事がなかったけど、これで真美の家が分る。もう直接、会いに行くしかない。会って、そしてどうすればいいんだろう……分らないけど、でも、とにかく行こう。


 平屋建ての一軒家が見える電柱の陰で、隠れる様にして私は待っていた……その家から真美が出てくるのを。初めはチャイムを鳴らそうと思ったけど、居留守を使われるような気がして待つことにした。どうしても直接会って、学校へ行かないと言わせなくちゃ。
 もうそろそろ夜七時になろうとしている。もしかしたら今日は、もう出掛けないのかもしれない。だったら学校に行くときに邪魔をすればいい。里桜の機嫌を損ねるぐらいなら、ここで朝まで待つのなんて何でもない。
 そんな事を考えていたら部屋の電気が消えて、こんなに早く寝るのだろうか? と思った時に、玄関の扉が開き真美が出て来て鍵を閉めていた。真美は紙袋持っており、きっとこれからどこかへ出かけるのだろう。
 何て声を掛ければ、いいんだろう? さっきの電話で怒らせてしまったから着信拒否もされたのだろうし、次は私がイジメられればいいと言っていた。きっと嫌われている。
 私は何もしていないのに、私の簡単なお願いも聞いてくれないのに、一方的に嫌われて避けられるなんて意味が分らない。だんだんと腹が立ってきて、真美が里桜にイジメられるのは当然なように思えてくる。
 どうしよう、きっと普通に話しかけても私の話なんて聞いてくれないに違いない。もう……やるしかない。
 ここに来るまでの間に震えは止まっていた。きっと無意識にでも分っていたから、ここへ何をしに来たか。そうすれば明日、確実に真美は学校に来たくても来られない。それで全て解決するって分っていたから、もう怖がる事なんて何にもないんだ。
 私は真美の後をバレないように追う事にした。チャンスを見つけ、それを実行しなくちゃいけない。

 それはすぐに来た。大きな道路の上に架かる歩道橋を真美は登っている。もともと人通りも少なくて、今も歩道橋には真美以外に誰も居ない。私も急いで後を追う。
 真美は仕切りに時計を気にしていて、時たま小走りになって急いでいるようだったから後ろを振り向く事もなく、私には全く気付いていなかった。
 だから私は簡単に真美の真後ろに立つ事が出来る。大丈夫、階段から落ちたって死んだりしないし、きっと大怪我だってしない。明日、学校を休むぐらいの怪我をするだけ、そう自分に何度も言い聞かせる。
 だって、しょうがないんだもの。私のお願いを聞いてくれないんだから、こうするしかない。あなたの代わりになるなんて、絶対にごめんなのよ! ずっと、あなたが犠牲になっていてくれれば、私は里桜の笑顔に耐えるだけで良いんだから!
 私は階段を降りようとしている真美の背中を、思いっきり突き飛ばしていた。


 パシャ!

 決定的な瞬間を撮ちゃったなぁ。でも、これでやっと捨てられる。
「こんな捨て方も、あるのですね」
 私は、ゆっくりと声のした方に視線を送る。そこには想像通りの人物が立っていた。黒のパンツと、白いワイシャツに黒のブルゾン、そして長い黒のマフラーが一番に目を引く。
「やっぱり、見てたんだ。こっそり見て楽しむ悪趣味な人だろうって思ってたから」
「私のただの趣味ですので、お許しください」
 私とおなじぐらいの歳にしか見えない男だけど、言葉遣いだけじゃなく雰囲気がそうじゃないと思わされる。
「そっか、今日で三日目だったんだ。あなたに会ってから」
「ええ、それで返事を聞きに伺いました」
 三日前に、この男に会った時に言われた言葉を思いだす。
 人一人が一つずつ持つ呪いを、この男と接触する事で最大限の効力になってしまうという事だった。そして三日後に、もし必要なければ呪いの効力を最小限にしてくれると言っていた。
「あなたの、おかげで沢山のモノを捨てる事が出来たわ」
「その写真は、どうなさるお積りなのですか?」
「もちろん、警察の持っていくの。これで優子と、もう会う事もなくなるだろうし、やっと捨てられたって感じかな」
 そう幼馴染の優子。私はずっと友達だと思っていたけど、あなたの気持ちに気付いてしまったから、そんな友達は要らないの。
 私の呪いは……
「手を出してくれる?」
「はい?」
 男が首をかしげているので、私は自分から手を伸ばして彼の手を握る。すると不思議な事に、今の今まで優子との関係を絶対に捨ててしまわないと思っていたのに、その気持ちが薄れてくるといよりは、無くなっていくと言った方いいかも知れない。そしてポッカリと空いた場所を埋めるかのように、別の感情が私の胸の中を埋め尽くしていく。
「これが、あなたの答えなのですね」
「ええ」
 呪いなんていらないって思った瞬間、もう男の手を握らずには居られなかった。
「どうして泣かれているのですか?」
「さぁ、私にも分らないな」
 哀しい……きっと、この気持ちは、そうなんだと思う。優子を捨てた事が哀しいんだろうか? それとも友達じゃなかった事が哀しいのかな。でも今更そんな事は、どうでもいい事なんだと思う。
 私はデジカメを警察に持っていくし、優子を捨てるのを止めるつもりも無い。
「もしかしたら捨てたのでは無くて、もっとずっと前に失くしていたのではないですか?」
「そんな事ないよ。私が捨てるの」
 鞄のポケットにある携帯電話を取り出して、そこに下がっているキラキラのクマがついたストラップを取り外す。そして足元の排水溝へと落とすように捨てる。
 そう私は捨てるの。いらないモノは全部、捨ててしまう。この胸の中に広がる哀しみだって、すぐに捨てるの。呪いが弱くなったせいか、この三日間みたいな捨てたいという強迫されているような切羽詰まった気持ちは起こらなかった。
「警察には、何と言うのでしょうか?」
「そうね、友達を見かけたから驚かせようと尾行して、証拠に写真を撮ろうとしたら、偶然に突き落とす所が撮れたとか、それぐらいでいいんじゃないかな」
「なるほど、確かに、そうですね。では僕は、これで失礼します」
 そう言うと男は消える様に居なくなった。
 私は涙を拭いてから、携帯電話で救急車を呼ぶ。そしてまだ歩道橋に立ち尽くす優子を見る。
「さようなら。優子」
 私は、ゆっくりと警察署の方へ歩き出す。



 さて、如何でしたか? なかなか面白い話だったでしょう? えっ? 彼女の呪いですか。彼女の呪いは、捨てたい物を捨てずにはいられなくなる呪いですよ。部屋の掃除など荷物を整理するには、便利な呪いかもしれませんね。
 それにしても捨てると一言で言っても、色々とあるのだと彼女を見ていて分ったような気がします。友達のような目に見えないモノでさえ、人は捨てる事が出来るのですから。
 はい? 何でしょう。僕の友達ですか? そうですね。しいて言えば、あなたでしょうか? また、そんな嫌な顔しないで下さい。冗談ですよ。子供の頃には、それは沢山いました。でも周りと違う時間を生きるようになってからは、なかなか友人と呼べる仲にはなれないものです。
 先程話した、ある人物ですか? 確かに友人と言えば、友人なのかも知れませんね。そんなに興味があるのでしたら、次に来た時には彼の話をして差し上げましょう。
 えっ? もう来なくてもいい? 本当に遠慮深い人だ。より一層に話をして差し上げたくなりましたよ。
 そうだ、あなたの呪いが何なのか、お教えしましょうか? それはいいのですか、まぁ、その方がいいかも知れませんね。いやいや、深い意味などありませんから。
 ああ、そうだ。まだ少し時間があるので、この呪いを誰が人に与えているのか私の考えをお聞きいただけますか? 別にいい? 遠慮も過ぎると人を不愉快にする時もあるので、お気をつけた方がいいですよ。僕は、全く気にしていませんけど。
 僕の考えでは二人いるのだと思うのです。一人は人が嫌いで不幸にしようと、もう一人は人が好きで幸運を与えようと、その二つの呪いが混ざって一つの呪いとして人にかかるのじゃないかと。しかしそれは均等に半々ではないから、不幸ばかりが目立つ呪いや、幸運ばかりが目立つ呪いなどが出来てしまうのではないかなと僕は思っています。
 そう言う意味で僕の呪いは、どちらになるのか曖昧ですから丁度半々なのかもですね
 さてと、そろそろお暇させて頂きます。ではまた、お会いする日まで。



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 お待たせして、しまいました。舞島 妹乃助(まいじま まいのすけ)です。
 えっ? 待っていなかった? ああ、これが噂に聞く、ツンデレというものなのですね。なるほど、なるほど、本心とは裏腹なことを言わずにはいられない病だとか。大変なもの罹ってしまいましたね……でも安心して下さい! 僕は、あなたの気持ちをしっかりと理解しておりますから、何も心配することなんてないのですよ。
 勘違い? 病なんかには罹ってなどいなくて、本心だと言うのですか……これは相当に重症なようですね。分かりました! ここは僕の話を聞くという治療を行いましょう。もちろん遠慮など必要ないですからね、いつも言っているでしょう?
 何で僕の話を聞くのが治療になるかですか? それは、あなたの胸の中に答えがあるのではありませんか? えっ? 全く心当たりがない? あっ! なるほど、それも、そういうことですか、本当に厄介な病ですね。
 とにかく僕の話を聞けば素直な気持ちが溢れ出して、そんな病など吹き飛んでしまいますよ! さて、どなたのお話をしましょうかね?
 はい? その前に聞きたいことあるのですか? ええ、もちろん何でもお答えいたしますよ。ああ、この腕の包帯ですか、これはつい先程に何者かに襲われて切り傷ができてしまいましたので、自分で巻いたのですがなかなか上手いものでしょう? 誰に襲われたかですか? さぁ僕も特定は出来ないのですが、この呪いの力を利用したい誰かだと思いますよ。僕は存在を隠したりしていないので、たまにこんな事もあるのです。
 心配して下さるのですか! おお、これがもう一つの症状という訳ですか。いいのですよ、そんな否定しなくても全て分かっておりますから、それから怪我も不老のせいか時間は掛りますが傷一つ残りませんので安心して下さい。でも、どうせ治るのなら一瞬で治ってくれれば、痛い想いし無くて有り難いのですけどね。
 さて! そろそろお話をしないと、本当に時間がなくなってしまうかも知れません。
 何でしょう? 前に会った時に話していた、ある人物についてですか……そう言えば次に会った時に、お話するお約束でしたね。分かりました! では、そのお話をしましょう。
 時代は明治の中頃で僕は百歳ぐらいになっていましたが、見た目のまま中身もまだ子供のままでしたね。あの頃は不幸だと嘆くばかりでしたから、いつまでたっても成長しないのは当たり前だったのかもしれません。
 そんな時に出会ったのが彼でした。少し古い話ですが、お話して差し上げましょう。



  【 正しい選択と大切な選択 】


 何もする事がなかったから道端に座って、ただそれを眺めていた。そこを歩いている人の多くは、洋服という西洋の物を着ている。僕といえば薄い着物一枚だけたったけど、風邪や病気になったことはないから問題ない。
 その時、空から細かい何かが降ってくる。雪か……掌にのった白い粒が溶けていくのを見ながら、やっぱり寒いなと思う。一緒に雪遊びをした友は、皆とうの昔に死んでしまった。こんな物が降ったからといって、何があんなに嬉しかったのだろう? もう思い出せない……いや、初めから答えなど知らなかったのかもしれない。
 ふいに何かが首に掛けられて、それは黒くて長くて温かい物だった。掌を見つめていて、目の前に人が立ったのに気付かなかったようだ。僕は慌てて手を自分の背中に回して、目の前の人物に触れないようにする。
「寒くないのかい?」
 目の前に立っていたのは男で、僕の見た目とそう変わらない歳だろうか? 太い眉と力強い目が印象的だった。それにしても、何て間抜けな問いかけなのだと思う。
「寒いに決まっている」
「そりゃ、そうだな」
 僕の答えに男は笑って、そう返してくる。黒い山高帽と仕立ての良い羽織と袴に、確かマントという物だったと思うが、それを肩に掛けていた。
「私の家に来るといい、温かいからね」
 僕は男を見つめた。きっと――僕には不思議な力が……呪いが幾つかあって、その中に人が生まれた時から必ず一つ持っている呪いが、どんなモノか見ることが出来た――この男は困っている人をほっとけない呪いにかかっているのだろう。今までの経験から、きっとそうだろうと思った。
 しかし僕の目には、想像していたモノと違う呪いが映る。
「家はすぐそこだ。遠慮なんてしなくていいよ、さあ」
 そう言う事か……だったら僕は、この男について行こう。
 座っている僕に差し出された男の手を、僕は何の迷いもなく握り返した。この男の呪いが僕の呪いを――幾つかの一つ、手を握った相手の呪いの力を一度目は大きく、そして二度目には小さくする――望んでいるのだろうから。
「背丈が高いね。異国の血が混じっているのかい?」
「そんな事はない」
 立ち上がった僕を見て、同じ事を言う者が最近たまに居る。子供の頃から背は高くて、その時には「鬼の子だ」と言われたりしてあまり良い思い出はない。
「そうか、だけど背丈が高いのは良いことだよ。異国相手の商売では、見た目も大事だからね。そう言えば、まだ君の名を聞いていなかったね?」
「……僕の名は、妹乃助だ」
 背の事を褒められたことなんてないから、少しだけ戸惑ってしまう。
「妹乃助君か、良い名だね。それに君は自分のことを『僕』と言うんだね」
「可笑しいか?」
「いや、君に似合っているよ」
 少し前に道で話しをしていた学生たちの中で自分のことを『僕』と言っている者がいて、それが何だかとても格好良く思えたから自分でも使い始めたのだ。
 僕より頭一つ分ぐらい小さい男は「さぁ行こうか」と言って、どんどんと歩き始めてしまう。遅れないように僕も、それに続いて歩き始める。
「なあ、まだあんたの名を聞いてない」
 男は立ち止まると、少しだけ驚いたような顔で自分の頭を軽く叩いた。
「いけない、いけない。そうだったね。私の名は舞島 勘十太(まいじま かんじゅうた)だよ。家は異国を相手に商売をしていてね。そこの十男坊だったが家系なのか父親も兄達も皆、早死にしてしまって今は私が商売のあとを継いでいる」
 とても寂しそうな顔をしていた……何十年も前だけど僕も同じように親や兄妹の死を見てきて、今でも消えぬ辛い想いがある。きっと同じなのだろうと思った。
「そうか……寒いから早く家に行きたいな。もしかして金持ちなのか? だったら、あの蒸気自動車は持っていないのか?」
 僕は話を変えるように道を、このところよく走っている乗り物を指さして聞いてみる。
「すまないが、まだ持っていないのだよ。だけどすぐに手に入れて、妹乃助君を乗せてあげるよ」
「楽しみだな」
 その時、風が吹き抜けて行き、思わず首に掛けられた物を握りしめていた。
「ああ、これは返すよ」
「いや君にあげるよ。商売相手から貰った襟巻なのだけど、私にはどうにも長いのでね。だけど君には丁度いいようだし貰ってくれ」
 僕にも長いような気がするが……自分の首に掛る黒くて長い襟巻の端を手に持って、誰かから食べ物や寝床以外の物を与えられるのはいつぶりだろうと思う。普通の人よりも長く生きてきたのに、この言葉を言うのはいつぶりだろう。
「ありがとう」


 勘十太と出会ってから十年以上の月日が流れた。最初は一日だけ世話になったら出て行くつもりだったが、勘十太に何だかんだと引きとめられて、結局こんな長い間を一緒に過ごしている。それでも出て行こうと思えば出来たにだが、それをしなかったのは居心地が良かったからだ。
 年号は明治から大正へと代わって、街並みも様変わりしていた。だけど僕は屋敷の中で過ごすことが多くて、外のことはよく知らない。勘十太の仕事は順調なようで、あの日の約束通りすぐに蒸気自動車にも乗せてもらったけど、僕は人力車の方が好きだなと思った。
 大きな戦争などもあって勘十太は、それを上手く利用したのだろう。あれを境に屋敷も、どんどんと大きな所へと移っている。しかし勘十太は、ここで一緒には暮らしていない。家柄の良い娘と結婚をして、子供も出来て今は別の大きな屋敷にいる。さらに最近は忙しいようで、あまり顔を見せにも来ない。
「妹乃助さんは、外へ遊びに行ってよろしいのよ」
 そう声を掛けてきたのは、寝台で寝ていた勘十太の母親だ。僕が一緒に暮らす事になったばかりの頃は元気だったが、何年もしないうちにほとんど寝たきりの状態になってしまった。
「僕は、この部屋にいるのが好きなので、大丈夫です」
 とても優しい女性で他人の僕に、ずっと自分の息子と同じような接し方をしてくれている。それに僕の母親に少し似ている所もあって、傍に居るだけ何だか落ち着くような気がした。
「それならいいのだけど。そう言えば、勘十太さんは元気なのかしら?」
「あいつは元気ですよ。ここへも、もっと来るように僕から伝えときます」
 彼女からは読み書きなども教えてもらった。何かを知るというのは、とても楽しい事だと知ることが出来たのも彼女のおかげだろう。
「そうね、出来れば今日はお会いしたいけど、いいのよ」
 いつも自分のことを優先したりしない、一緒に暮らすようになってから彼女が誰かに何かを頼んだりしたのを見たことがない。
「あの子は忙しいのでしょうから、元気だって分かればそれだけ十分」
 そう言って目を閉じた彼女から、微かに寝息が聞こえてくる。とても綺麗な顔をしていたが、部屋の中での暮らしが長いせいで白くなり過ぎた肌の色が、美しさよりも病人の印象を際立たせている。とくに最近は調子が悪いようで、浅い眠りと目を覚ますのとを繰り返しているようだった。僕は座っていた寝台近くの椅子から立ち上がって、そっと音を立てないように部屋を出る。
「母さんの様子はどうだい?」
 部屋を出ると、久しぶりに見る勘十太が居た。眉が太く意思の強そうなさ瞳は相変わらず若々しかったが、昔よりも少し太って皺も増えた分、貫禄は出たような気がする。あと洋装姿も板に着いてきたようだ。
「相変わらずだよ。今、眠ったところだけど、すぐに起きるだろうから」
「そうか、でもまた出掛けないといけない。会うは、また今度にしよう」
「自分の母親なのだから、少しぐらい時間を作ってもいいだろう?」
 僕の声は自然と大きくなって、勘十太にそう言った。
「それは出来ないよ。妹乃助、お前が一番分かっているはずだ」
 病弱な母親の傍に居るだけ、それを勘十太は出来ないのだ。僕は知っている……だったら!
「止めてくれ! まだお前に触れられる訳にはいかないのだ。まだ足りない、まだ先が私にはある」
 勘十太には呪いについて話していた。この十何年で全く変わらない僕の姿が、それを本当だと証明したとも言える。いや勘十太は最初から信じていたな。
「何故だ? もう十分にお金なら手に入っただろう? 愛する者の傍にいても、いい頃じゃないのか!」
「私は、こんなものじゃない……そろそろ時間だな」
 懐中時計を確認してそう言うと、そのまま僕に背中を向けて廊下を玄関へと向かって行った。
「勘十太……」

 その日の夜、勘十太の母親の容態は急変して「今夜が山だろう」と医者に言われた。
「妹乃助さん」
「はい、ここにいます」
 彼女の瞳は何かを探すようにさ迷っていて、近くに居る僕の顔が見えてはいないようだった。今この部屋には多くの使用人と医者に看護婦、そして僕だけで勘十太はいない。
 それと、この部屋に彼女の病気を治せるような呪いを持つ者もいなかった。いや今まで病気を治す呪いなど見た事がないのだから、もともと存在しないのかもしれない。
「お願いがあるのです。最後に私の手を握ってはくれませんか?」
 そう言って彼女は、弱々しく手を布団の上から持ち上げる。今にも折れてしまいそうな枯れ木のような腕で、それは細かく震えていた。使用人の中には我慢が出来なくなったように、嗚咽する者もいる。
 僕の目に映っていた彼女の呪いは……だけど、そう思ったのも一瞬で彼女の手をしっかりと握る。
「ありがとうございます、妹乃助さん。もう一つだけ、私の願いを聞いて下さい。どうか、あの子の勘十太さんの傍に、ずっと居てあげて」
「分かりました。勘十太の傍にいます」
「あり……がとうね……妹乃助さ……」
 力を失った彼女の手を、ゆっくりと布団の上へと下ろす。呪いの事を話してはいなかったけど、きっと気付いていたのだろう。そして自分の呪いについても少なからず……口にした願いを相手に守らせる呪い。僕は彼女の願いが分かっていた、いや心のどこかでそう言って欲しいと願っていた。
 出会った頃の勘十太と今の勘十太、変わってしまったのかは分からないけど、それでも傍に居たいと思った。この想いは彼女の呪いのせいばかりでないはずだ! 何故なら彼女の言葉を聞く、その前から思っていたのだから。
 彼女が亡くなった日、勘十太は、とうとう屋敷に戻って来ることはなかった。


 あの日から時は、あっという間に流れていった。大きな災害、大きな幾つもの戦争があり、そして昭和という年号になって数十年の時が経つ。勘十太の会社は、その度に大きく成長していった。まるで全ての出来事を予測していたかのように、避け退け利用して。
 僕は勘十太の養子となり、舞島妹乃助となった。
 そして、これは直感と言ってもいいかもしれないが、とうとうこの日がきてしまったんだと感じる。
「母さんにも、こうしてずっと傍にいてくれたのだね?」
 病院の豪華な個室のベッドの上で眠る勘十太は、窓際に立つ僕に声を掛けてくる。
「ああ、僕はあの人が好きだったから」
 白髪で太い眉もすっかりと白くなって、目の力強さにも陰りがある。自分以外の者たちは歳を重ねていく中で、どんどんと取り残されていく寂しさ……慣れる事など、きっとないのだと思う。自ら死のうとした事も昔はあったけど、結局は出来なかった。もし死ねなかったら、その絶望から目を背ける為にも死なないだけだと思いたかったのだ。
「では、私も好かれているということかな?」
「どうだろう。お前は知っているのだろう? お前の母親と僕との約束を」
「ああ、知っているよ。だけど、それだけじゃないと私は思っている」
 勘十太の言葉を聞き、ふと自分の首に掛る黒く長いマフラーを見つめる。これを掛けられた時から、勘十太という人物を好きだったのかもしれないなと思う。それに人の為に、この呪いの力をこれ程までに使ったのは初めてだった。
「そうかもしれない」
 僕の答えに勘十太は微かに笑ったようだった。
「妹乃助、私の手を握ってくれ」
 その言葉に、少なからず僕は驚く。勘十太の呪いから考えると、そんな言葉が出てくるはずがないのだから。
 だが目の前に差し出される勘十太の手には、何の迷いもないような気がした。何十年も前のあの日が昨日のように思い出される。
 僕は、ゆっくりと自分の手を伸ばして勘十太の皺だらけの手を、しっかりと握った。それと同時に勘十太の瞳から、大粒で綺麗な涙が溢れてくる。もっと早くに、この手を握っていればと思ったのは一度や二度じゃない。勘十太が容赦なく切り捨てていったものは余りに多くて、その分だけ勘十太は傷ついていたように思う。
「やはり僕のせいだったのかもしれない。すまない勘十太」
「何を言っている。全て私の選択だ。愛する彼女よりも今の妻を選んだのも、病気の母親の傍にいなかったのも、それにお前と出会う前から私は、父や兄たちに……うっ」
 小さく呻いてから咳き込んでしまう。僕は自然と握っていた手に力が入る。
「妹乃助、私の最期の願いをきいてくれないか」
「何だ?」
「私が死んだら、この舞島の家を見守って欲しいと言うつもりだったが、それは止めだ。私が死んだら、お前は自由に生きて欲しい。色々な人と出会い、触れ合い、そしてお前が望むように」
「本当に、それでいいのか? お前の大事な舞島の家や会社に、ずっと僕の力を使ってもいいんだぞ」
 勘十太は首を、ゆっくりと左右に振る。
「お前が生まれた意味が必ずあるはずだ。お前の求める答えが」
 気付いていたのかと、また驚かされる。僕は自分の存在が疑問だった……でも勘十太と出会い、こうして誰かの為に生き続ける事が、存在する理由だと思い込もうとしていた。だけど心の奥で、そうじゃないという声がずっと聞こえていた。
「ありがとう。勘十太」
「私の方こそ、今まで、ありがとう……そろそろ時間のようだな」
「勘十太!!」
「やっぱり……その襟巻はお前に……よく似合って」
 母親と同じ、優しい笑顔だった。



 さて如何でしたか? やはり自分の話をするというのは、なかなか恥ずかしいものですね。はい? 舞島の家が今は、どうなっているかですか? もちろん、ちゃんとありますよ。シスダンという会社をご存じありませんか? そうです! その名前は聞いたことあるけど、何をしているかよく分からない日本を代表する会社です。現状を見る限り、僕の力など本当に要らなかったようですね。
 交流ですか? 今でも舞島の性で戸籍もありますし、口座にはそれなりの金額が毎月振り込まれていますね。彼が色々と亡くなる前にはからってくれたようです。もしかしたら最初から、舞島の家を見守らせるつもりはなかったのかもしれませんね。まあ、せっかくなので有り難く使わせて頂いておりますよ。
 答え? それを聞かれますか。あなたも人が悪いですね……残念ながら、まだ何も分かっていません。でも、こうして呪いの力を使い、そして呪いの力を使う人々を見ていれば、いずれそれに近づけるのではないかと思っています。
 もしかしたら、あなたが僕に、その答えをくれる人なのかも知れませんね。冗談ですよ。手を隠したりしないで下さい。
 大事なこと? ああ彼が、どんな呪いを持っていたかですか。それは、自分の得になる選択をする呪いですよ。しかし、この得というのは金銭的な得のみだと思っていたのですが、最期に彼が、どうして呪いを失くす選択をしたのか、それは今でも分からないのです。もしかしたらですが、僕は彼の呪いを見間違っていたのかも。
 ああ、すいません! 少し、しんみりしてしまいました。今度来る時には、明るい話でもしましょうかね? えっ? もう来なくていい? 本当に冗談がお上手だ。と言うか、まだツンデレの病は治っていないようでね。そう言えば僕にも、病を治す呪いは備わっていませんでした。
 ああ大丈夫ですよ、そんな説明をしようとしなくても、先程の「来るな」が冗談だって分かっておりますから。
 では、そろそろお暇させて頂きます。僕もこれで、なかなか暇つぶしに忙しいのですよ。ではまた、お会いする日まで。


―― 完 ――
2012/04/12(Thu)14:41:35 公開 / 羽付
■この作品の著作権は羽付さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めましての方、初めまして! お久しぶりの方、お久しぶりです!
羽付という者です♪

 時間が経ってしまいましたが、こちらもいずれは完結させたいと思っております。

であであ( ̄(エ) ̄)ノ


2010/10/8  投稿
2010/10/8  誤字脱字の修正
2010/10/11 誤字脱字の修正&微修正
2010/11/26 【二】を投稿
2011/01/15 【三】を投稿
2012/04/12 名前変更による更新(内容の変更は無し)
この作品に対する感想 - 昇順
 ライトノベル物書きのakisanです。読ませていただきました。
 まず、丁寧で読みやすい一人称と奇麗な言葉選びに胸を打たれました。
 こういう教訓を交えたホラーは好きです。物語の呼吸としては一時間枠で、一話三十分二本立てのミニドラマ風味でしょうか。
 個人的な好みとしては、男性側の呪いにも何か条件をつけておいて、女性が振り返ってはいけない方を振り返ることと男性側の呪い発動条件と合致したので、不幸が訪れるほうが、後の驚きが大きいのかも。
 では、次回作楽しみに待っています。
2010/10/08(Fri)20:19:101akisan
 久しぶりの羽堕様の作品ということで、ワクワクしながら拝読しました。いやー、期待を裏切らない面白さでしたね。テンポと作品の長さがちょうどよく、ストーリーもいい意味で分かりやすくて、読後に「腑に落ちる」スッキリ感がありよかったです。羽堕様の作品には、モヤモヤ感が残って、それが味わいになっているものもあるのですが、こういうオチがハッキリしているものもいいですね。
 しかし舞島君は、いったいどれだけ呪いを持っているんでしょうか。見た目は若そうなのに、暇を持て余すとか言っているところをみると、そうでもないようですね。是非シリーズ化して頂きたいです。ちなみに私にはたぶん「不注意」の呪いがかかっているに違いありません。
2010/10/08(Fri)22:14:331玉里千尋
 こんばんは、羽堕様。上野文です。
 まったく切れ味が落ちていない…
 幸せと裏腹の業というか、左を向いたら結末は変わってたんじゃないか、というやるせなさ、望んだから首を得たという晴れやかなまでの呪わしさ。
 凄い、と圧倒されました。面白かったです。
 私の呪いは「そそっかしい」か。シクシクTT
2010/10/09(Sat)01:01:571上野文
 お久しぶりです。作品読ませていただきました。
 いかにも羽堕さんらしい、ちょっと皮肉を含んだホラー小説だなあと思いました。いつ右を向いてしまうのだろう、右を向いてしまったらどうなるだろうとどきどきしながら読みました。結末も、意外性があって良かったと思います。
 他の方もおっしゃってますが、雰囲気的にはシリーズものになるのでしょうか。羽堕さんの本格復活に期待しながら、次作をお待ちしたいと思います。
2010/10/09(Sat)20:03:580点天野橋立
羽堕様こんばんは!頼家です。作品を読ませていただきました。
いいですね〜……この、上昇していってからの、一転急落下!まさにホラーの王道ですね♪羽堕様の何時もの、詰将棋のような絶望感溢れる作品も良いですが、こういったホラーもまた、非常に読んでいて面白いです♪世にも奇妙な〜とか、笑うセールスマンで実際にありそうですね^^他の方もおっしゃっていましたが、最後彼女が左を向いていたらどうなっていたんだろうか??その場合はやっぱり彼の『呪い』は無効になっていたのかしらん?などと、考えてしまいますね……
それでは、短いですがこの辺で。次回作を心よりお待ちしております!
2010/10/10(Sun)00:31:130点有馬 頼家
 お久しぶりです。浅田です。
 相変わらずの作風、おもしろさ、まさに感服です。
 個人的に羽堕さんの皮肉に満ちたホラー風の作品は大好物でして、今回も最後まで楽しませてもらいました。
 最後に脱字?を発見したのでご報告を
「とにかくいつまでも道路に座っている訳にもいかないし、ぶつかった人にも謝らくちゃと」
→「ぶつかった人にも謝らなくちゃと」
2010/10/10(Sun)15:36:221浅田明守
ハジメマシテ(´・ω・`)
なかなか考えさせられる作品でした。幸不幸のアッパーとボトムの対比も見て取れるし、運勢というものの姑息さを皮肉った作品とも言えますね。ホラー小説としての怖さ・気持ち悪さはあまり感じませんでしたが、けして単純な話ではないと思います。大まかな流れに違和感はなかったのですが『この後に彼が、どんな事をしたのか興味がなかったので知らないのです』だけは削ったほうがいいかもしれません。この部分ってけっこう想像力をかきたてられるんですが、想像するに当たってのとっかかりがないため消化不良な感じが残ります。三年間夫婦を監視し続けたであろう少年の心理とも合わない気がしますし。
以下、脱字報告(つ`・ω・)つ
『あなた呪いを最大にしたのは僕なんですから』
『だから結婚という形で自分の物したと満足していたのかも知れないですし』
2010/10/10(Sun)15:56:170点鼻歌60デシベル
拝読しました。水芭蕉猫です。にゃー。
おかえりなさい羽堕さん! 遅くなってしまいましたが、感想をば。私もいつ右を向いてしまうんだろうとわくわくしながら読みました(おい)右を向いたらどんな不幸が巻き起こるのかとね。うん。左を向いていたら、もしかしたら助かっていたかもしれない。でも助かってても助かって無くても、一生同じ方向を向き続けるというのは至難の業ですので、遅かれ早かれこうなっていたのかなーと思わないでもないです。何かを気にし続ける一生も、それはそれで「呪い」だよなぁと思うと不思議な面白さがこみ上げてきますね。
何となく世にも奇妙な〜を思い出してしまいました。面白かったです。
2010/10/10(Sun)23:12:101水芭蕉猫
>>akisan 様
 感想とポイント、ありがとうございます!
 僕もライトノベルは大好きです。なので読みやすいと感じて頂けたのは、とても嬉しいです。これを元に、どんな演出が出来るかなど考えるのも楽しいかもなぁ。うーん、かってに配役など考えて遊んでみようかと思ってしまいました。。
 男側との合致してというのは、なるほどなと思わされました。それで色々と考えたのですが、上手くハマる物がなくてまだ修正は出来てませんが、引き続き考えてみたいと思います!


>>玉里千尋 様
 感想とポイント、ありがとうございます!
 こちらでは、お久しぶりです! 僕は持続力が足りないようで、この長さがあってるようです。でも上手く働いたようで安心しております。それと今回はオチまで分り易くしようと思っていたので、次にはモヤモヤ感を出せたらなぁと。よくないのかもですが、気持ち悪いモヤモヤ感は好きなのです!
 実は、この形ならまた書けるかなという想いもあったので、お言葉嬉しかったです。「不注意」をネタにして考えてみようかな。


>>上野文 様
 感想とポイント、ありがとうございます!
 またお読み頂き、そしてそう書いて頂けるのは嬉しいです。感想を読み返しながら、ふと思ったのが彼女の望みが死ぬ事だったら、例え右を向いていても違う形の不幸が訪れたんじゃないかなと。
 自分で考えときながら、今更のようにこういう事だったのかと思ったり。本当にまだまだですが、またお付き合い頂けたら喜びます! 読む筈じゃなかったのに、そそっかしく読んでしまうとかw なんて、ごめんなさい。


>>天野橋立 様
 感想、ありがとうございます!
 ご無沙汰しております! そう思って頂けただけで、嬉しいです。結末は、もっと皮肉めいたものでも良かったのかなと思いつつも、きっとまとめられなかっただろうから、感想頂いてこれで良かったのかなと少し安心しております。
 そうなんです。僕の中ではシリーズものにできたらと想い、この形で書き始めさて頂きました。以前のようにはいかなくとも、少しずつでも読んだりも出来たらなと思っております。


>>有馬 頼家 様
 感想、ありがとうございます!
 やっぱり幸せがあるからこその不幸なのかなと思い、この呪いを考えたのですが、面白いと少しでも感じて頂けたらな嬉しいです! 世にも奇妙な〜は好きなので、やっぱりホラーを書く時には、影響を受けていると思います。
 もちろん、ドラマになる程の完成度はまだないのですが、いずれはあっても可笑しくないと思われるぐらいになりたいです! それと左を向いていれば、彼女にとっての幸せはあった筈です、きっと。


>>浅田明守 様
 感想とポイント、ありがとうございます!
 お久しぶりです! またお読み頂き、もったいないお言葉まで、とても嬉しいです。どうしてもホラーよりの話を考えると、こういった感じのオチへと向かってしまいます。
 もっと「怖っ!」と思って貰えるような話しも、考えられるようになれたらいいのですが。それと誤字脱字の報告、助かります! 自分だと、そう書いてあるって思ってしまって、なかなか見つからないのです。


>>鼻歌60デシベル 様
 感想、ありがとうございます!
 ホラーに大切なジワジワとくる怖さや、何が起こったのか分らないような気持ち悪さなど、もっと沢山と読んで書いたりして勉強していきたいなと思います! でも呪いの効果は、上手く話に入ってたようで良かったです。
 暇つぶしで気まぐれなという雰囲気で書いたのですが、確かに語り手の心理とぶれる部分もあるのかと想い、修正さて頂きました! それと誤字脱字の報告、助かります。本当は駄目なのですが、なかなか見つからないのです。


>>水芭蕉猫 様
 感想とポイント、ありがとうございます!
 ただいまです! いえいえ、こうしてまた読んで頂けて感想を頂けるのが、本当に嬉しいです。やはり、ここで一度も右を向かずに終わるというのは、今の僕では怖くて出来ませんでした。だけど、それはそれで面白いのかな?
 感想を読んで思ったのが、些細な不幸があったとしても、それは知らなかったら呪いではなかったんだろうなと、呪いを「呪い」だと理解する事で呪いになってしまったんじゃないかなって。次には、そこら辺も上手く使いたいです。

2010/10/11(Mon)13:11:300点羽堕
 遅れましたー(泣)
 さっき気が付いたもので・・・もっと早くに読むべきでした。
 相変わらずの読ませる文章でしたので、ぐいぐいと物語に引き寄せられ、気付けば震えながら最後の一文を読んでいました。冒頭での「人間は生まれてくるときに一人一つずつ、呪いを持って生まれてくるのです」という言葉の真意が、読み進める内に浮かびあがってきて、「なるほどなぁ」と思わず唸ってしまいました。やっぱりすごいですなぁ。
 それにしても、寝る前に読むべきではなかったですねw 最後の山の件が夢に出てきそうです。俺にかかった呪いは悪夢かな^^; 夢では右を向かないようにしますねw
 羽堕さんの久々のダークな世界観に触れられて嬉しかったです。
 それではー。 
2010/10/14(Thu)01:35:271湖悠
お久しぶり&お帰りなさい。
どうも鋏屋でございます。スミマセン、もっと早く読めば良かったのですが、感コメ遅くなって申し訳ないです。
インターバルを感じさせないキレで良かったです。久しぶりの羽堕ホラーを堪能しましたよw
読んでいて「ああ、羽堕殿の話だ〜」って思いました。やっぱり書き手の色って出るもんなんですねw しかもブランク全然感じないし…… 羨ましい。私はちょっとスランプ気味です。まあ今書いてるのは楽しいんですけど、果たして受け入れられるか心配w 何せ趣味全快で特定の人種には反応するような感じですし(マジ大丈夫か?)
ちなみに私の呪いは「家庭」かな? いやそもそも「結婚」か? まあどちらにせよ呪いであることに変わりないかと……
それでは次回作も楽しみにしています。
鋏屋でした
2010/10/14(Thu)20:26:261鋏屋
>>湖悠 様
 感想とポイント、ありがとうございます!
 こちらでは、お久しぶりです。いえいえ、こうして読んで感想まで頂けて嬉しいです! 僕自身、すごいネガティブな事が多いので、これって呪いのせいなんじゃ? と思う事があって、この話を思いつきました。実は僕も理由はないのですが左を振り向くようにしているので、今回左が幸運になっております。
 山の場面なども、もっとジワジワと書けたら良かったのですが、やっぱり難しいですね。でも感想を頂いて、オチとしては大丈夫だったのかなと胸をなでおろしております。呪いと夢、おぉ! またヒントを頂いてしまいました♪


>>鋏屋 様
 感想とポイント、ありがとうございます!
 はい! こちらでは、ご無沙汰しております。いえいえ、本当にどのタイミングでも、読んで感想を頂けるだけ有り難いです! 文章など前より酷くなっていないようなので、良かったです。やっぱり久しぶりの投稿で、前でも緊張してたのに、より緊張してしまいました。鋏屋さんの文章は凄く読みやすいなぁと、いつも思っているので趣味全開だとしても誰でも入りこめるんじゃないかなぁと思います!
 もちろん僕には想像できないような事が色々あると思いますが、幸せな呪いはやっぱり羨ましいですよ♪

2010/10/15(Fri)11:03:200点羽堕
作品を読ませていただきました。これは呪いなのかなぁ。呪いと言うより「欲」の拡大解釈って印象を受けました。冒頭部で説明していた呪いは面白いと感じましたが、本編における呪いが非常に曖昧で同時に御都合主義のように感じられました。また、呪いとは本来、AがBを呪うと言うように他人にかけるものであり、Bが自分の意志ではどうすることもできないものではないでしょうか。さらには因果律により呪いはAに戻ってくるもの。まさに「人を呪えば穴二つ」。では、作品における呪いは最初は誰が呪うのでしょう? 神様でしょうか? 呪いは誰かを呪いたいと思う人間が存在しないと発生しない「行為」です。
ま、呪いの解釈はおいて。作品そのものは読みやすかったですが、全体として感情面が弱かったように感じました。「幸運」を導く方法を知りハッピーな気分になること、「幸福過ぎて」起こる不安、山の中での焦燥と、その後のどんでん返しでの絶望。それらがすべて簡単に書かれている印象でした。
辛口の感想で失礼しました。では、次回作品を期待しています。
2010/10/18(Mon)00:23:250点甘木
>>甘木 様
 感想、ありがとうございます!
 いつも丁寧な感想を書いて頂けて、ちゃんと活かせていない様な気がして申し訳ないです。だけど、こうして感想を頂けるのは嬉しいですし、次への活力と、次こそは活かせるように努力したいと思います!
 呪いの解釈については、とても参考になりました。今後も、このシリーズは書いて行こうと思っていて、多分今回頂いたアドバイスと食い違ってしまう部分など、きっとあると思うのですが出来るだけ擦り合わせていきたいです。なのでまたお付き合いして頂けたら幸いです。感情面については、本当に全て書ききれてないなと思うのですが、なかなか文章として出てこなくて、読んで頂いてる方に納得して貰える様な、ぐっと書けるように頑張りたいと思います!

2010/10/18(Mon)16:19:390点羽堕
 お久しぶりです。読ませていただきました。文が洗練されてレベルアップした印象を受けました。特に無駄なことを一切書かないところが、女性の呪いに関しては説明しても、男性の呪いに関する説明がないところなど、読み終わった後、こちらの想像を掻き立てます。どんな呪いだったのだろうかとか、どんな条件が付いていたのだろうかなど、いろいろ考えてしまいます。でもおもしろかったです。強いて言えば、呪いが幸から不幸に転じる時のきっかけ、男性のうざさがもう少し強調されればよかったかなーと思います。でもそれを書き出すと文章がうざくなるかも。次を期待してます。呪いについては、現代的解釈なのかなと思いました。だって今の殺人って、恨みがあると言うよりもは、そこにたまたま居たというだけで殺されてしまうのですもの、運命(これこそ呪い)としか言いようがありませんよね。
2010/10/19(Tue)00:11:580点土塔 美和
>>土塔 美和 様
 感想、ありがとうございます!
 お久しぶりです! 最近は読む時間などなくて更新されているのは分っているのですが、なかなか読めていなくて申し訳ありません。そして、こちらに勿体ないお言葉まで頂き、まだまだですがやっぱり嬉しいです。
 男性側については色々と考えてはいるのですが、やっぱりバチッとくるものがなくて、今の形になっております。だけどまとまらないうちに中途半端に書くよりは今の形がいいのかなと、感想を頂いて思いました。それと男のウザさみたいなものは確かに、あっても良かったのかもですね。最近の殺人事件の中には、理由のない物とか多いですよね。

2010/10/20(Wed)14:52:460点羽堕
 ライトノベル物書きのakisanです。

 女の子側からの視点はやはり自分には新鮮です。特に「彼氏に嫌われたくない」のくだりと、「自分のために学校を休まないあいつのほうが悪である」って心理のところ面白いです。というか、学校を休めと命令させるっシチュエーションを思いつくのが凄いな。

 いまさらですけど、自分にかけられた呪いは視野狭窄ですかね。せっかく森を見ることが出来ていたのに、熱くなりすぎて木を見始める。もったいないもんです。
2010/11/26(Fri)19:58:020点akisan
 こんばんは、テンプレ物書きの浅田です。
 最初は優子視点での話だったのでてっきり優子の呪いについての話だとばかり思っていたらまさか里桜の方だったとは……予想外の展開に最後まで楽しく読ませてもらいました。
 しかし女性のイジメは怖いものですよね。肉体的苦痛を伴わない代わりに精神的にじわじわと責めるイジメというのは根が単純な男にはあまりない発想ですよ。
 個人的な感想としては、優子が真美に対して否定的な感情を抱くようになった過程についてはもうワンクッション、例えば直接接触して拒絶される的なイベントを挟んだ方がいい気がしました。あの程度でそこまでの悪意を抱くのは少し唐突過ぎるかな、と。まあそれは私が根が単純な男だからそう感じるのかもしれませんがww
2010/11/28(Sun)01:29:140点浅田明守
 こんばんは。作品、読ませていただきました。
 このような、人の嫌な面というか、マイナスの感情を描写されるのがうまいなあといつも思います。「声以外にも何か別な物が出ているに違いない」というフレーズなど、禍々しい感じが実感を持って表現されているように思いました。
 ただ、里桜が優子を捨ててしまおうと思うに至る心情が、もう少し書かれていたら良かったかなと思います。次々と周囲の人間を粛正していく独裁者の孤独、みたいな感じなのかなと想像しました。
 
2010/11/28(Sun)23:47:330点天野橋立
 こんばんは、羽堕様。上野文です。
 御作を読みました。
 ホラーじゃない、かもしれない。

 でも、むっちゃ心痛いわ! 

 たんたんと語ってしまう舞島妹乃助氏の存在がホラーなのかも。
 ただ、以前の話で出てきたような本当の怪物じみた存在と違って、人間の枠にいるからこそ、登場人物たちが悲しい。面白かったです!
2010/11/28(Sun)23:58:161上野文
おー、やっぱり舞島氏は若造じゃなかったのですね! 続編が読めて嬉しいです。
うん、うまいですね。何がうまいって、この女の子特有のベタベタドロドロした感情の描写がうまい! ちょっと優子が高校生にしては幼いかなって気もしたのですが、かなりアルアル感満載でした。本当に羽堕様、男性ですか? ――っと逆セクハラ発言ですね。すみません;
舞島氏、今回はかなり多弁でしたね。よっぽど暇なのでしょうか(笑。しかも、いつの間にか彼にストーキングされていたとは……。でも美形だからちょっと嬉しいかも♪ また彼に会えるのを楽しみにしています!
2010/12/02(Thu)18:00:291玉里千尋
返信が遅れてしまい、申し訳ありません。


>>akisan 様
 感想、ありがとうございます!
 そう言えば最近、なぜだか一人称を書く時には女性視点が多いかもしれません。意識的にそうしている訳じゃないのですが、ついつい女の子が主人公の話が頭の中に浮かんできます。
 誰にも知られたくないというのは、虐められっ子の心理なのかもです。大切な人に助けて貰うよりも、知られたくないって気持ちのが強かったような実体験も踏まえつつですが。今思い返すと笑い飛ばせるような事ばかりですw
 視野が狭くなると言うのは、人間、誰でもそうなんじゃないかなぁって思います。感情に左右されない物差しを持つのは、本当に大変です。還暦過ぎても、きっと無理な気がしますよ。


>>浅田明守 様
 感想、ありがとうございます!
 本当は優子も呪いの強化がされる描写などを入れようかと思ったのですが、でも人って追いつめられると予想外の事をしてしまうから、呪いのせいじゃなくても大丈夫かなと今回の形になりました。
 最近のニュースなどを見ていても、精神的なイジメには大人は介入しずらいのかなと。青春な感じの殴り合ってとか喧嘩して親友になるのなんって、もう少ないのかなぁとしんみりと思ってしまいます。
 なるほど、優子が追いつめられる過程として真美との接触、確かにあった方が真美の表情とかも入れられて良かったかもですね。まだまだ物語を急いで書いてしまっているようです。


>>天野橋立 様
 感想、ありがとうございます!
 基本的にはないつもりなのですが、それでも実生活をしていると生理的に嫌という相手は、どうしても出てきてしまいます。会った瞬間というのは無くとも、会話をしていて垣間見える一瞬とかで。
 嫌と思った時から全てが息さえ否定したくなる気持ちなど、思い出しながら書いたかいがありました。でも良い所を見つけて仲良くなれる人になりたいです。思い込みの激しい所も治さなければ……。
 里桜と優子については、何か回想の様なものを入れるべきだったかもです。それと独裁者の孤独というのは、確かに里桜の心情に近いんだと思います。
 

>>上野文 様
 感想とポイント、ありがとうございます!
 そうなんですよね。自分の中でのホラーとも、やっぱり違うなぁと思っているので、次回からはファンタジーに……って、これも違いますよね。すいません。ジャンルで決める方もいるだろうから、次の更新で変えます!
 そう感じて頂けたのなら、本当に書いて良かったなぁと感じております。それぞれに弱い部分と譲れない部分、そんな所が上手く噛み合う事の方が少ないだろうけど、それでも歯車は回さなければいけなくて、普通ならそれでも回り続けるのだろうけど、今回は上手くいかずに壊れてしまったのかなと自分で書きながら思ったりしました。
 次の話では妹乃助の過去について書きたいなと思っております! 時代が上手く書けるか心配ですが。


>>玉里千尋 様
 感想とポイント、ありがとうございます!
 そうなのです! 妹乃助の中では重い方の呪いだと僕自身は思ってたりします。歳をとらないって憧れますが、実際はどうなんだろう? って考えると50年以上変わらなかったら、凹み出すんじゃないかなって。
 いえいえ、そう書いて頂けると嬉しいです! ネットだとよく女性に間違われる事あるのですが、残念ながら「ボクっ子」ではなくて、男なのですw でも文章から、そう感じて頂けたなら本望ですよ。
 いつでも、あなたの後ろに! なんて。次回も妹乃助は暇なようなので、自分の過去についてバシバシと語って貰おうかなと思っております。でも頭の中で、思わぬ方向に進んでいたりもします。

2010/12/04(Sat)12:59:060点羽堕
羽堕さん、おひさしぶりです!
作品読みましたー。呪いに関する考察が面白かったです。忘れ物の呪いにドキ、としました。僕はきっと重度の忘れ物をしてしまう呪いにかかってるに違いない!と読んで思いました。まったく、誰がこんな呪いをかけやがったんでしょうね。
あと、呪いなのに当たりくじを引いてしまう呪いなんかもあり、清濁合わせ持つ呪いの設定が、いいなー、と感じました!できるなら、僕もこっちをかけてもらいたかった……なんて思ったのですが、これだと、嫌な役職のくじなんかも当たりを引いてしまう!という事になってしまいますね、やっぱりそんなのいらないです。
さて、話の展開が進むに連れて、呪いについて、ちょっとずつ分かってきたのですが、絶対叶うジンクスみたいな感じなのですね!もしそうなら、やり方さえ守れば、きちんと対処できし、それを活用できる、なんて思っちゃうのですが、それができないのが人間ってやつですよね。
しかし、舞島がドSすぎるように思いました。むちゃくちゃ悪趣味ですよね。それが不幸に続く力だと知りながら放置するなんて……。そこが、この話の魅力の一つなのですけど。
二話目のいじめの話がリアルで、いろいろ感じるものがありました。「余計休むわけにはいかなくなった」という一言が特に胸にくるものがありました。エゴとエゴのぶつかり合いの描写が巧みでした。
捨てたくても、そこで踏みとどまるからこそ、保たれているものって、ありますものね。そこで、我慢できる理性があるから、関係が壊れずにすむという感じに。そのタガをはずすやくめが今回の呪いというわけですね。この話は、優子が同じ呪いにかかってしまっていたならば、逆のこともありえた、と思わせられるところがいいと思いました。本当に人間関係というものは結構危ういバランスによって保たれているものですからね。そのバランスを壊して楽しむ舞島は、やっぱり外道だな〜、としみじみ思いました。
次回では、どんな外道な展開が見られるのか、それとも今度は呪いを克服するような展開が見られるのか楽しみです。長文失礼いたしました、ではでは。
2010/12/05(Sun)16:19:211白たんぽぽ
 続きを読ませていただきました。
 こういう嫌らしい痛さはいいなぁ。イジメという事象を上手く書いていて読んでいる人間に不快感を与えるような静かなインパクトもありました。さらにはラストの作りも良かったです。
 でも、ちょっと物足りない。イジメの切迫感がもっと欲しかった。読者の視線を完全に釘付けにしてから、あのラストを持ってきた方がインパクトは大きかったと思います。それとラストに到るまでワンクッションが欲しかったです。やや唐突感が残りました。
 では、次回作品を期待しています。
2010/12/05(Sun)22:41:080点甘木
拝読しました。水芭蕉猫ですにゃーん。
おお、これは中々……女同士の世界は魔窟です。パンデモニウムです。そんなドロッとした雰囲気がよく出ていたと思います。簡素すぎる感想で申し訳ありませんが、これにて;;
2010/12/08(Wed)21:54:140点水芭蕉猫
また返信が遅れてしまい、申し訳ありません。


>>白たんぽぽ 様
 感想とポイント、ありがとうございます!
 知人に一緒に出掛けると必ずと言っていいほど、何か一つ忘れ物をしてくる方がいまして「呪われているんじゃない?」なんて冗談で言っていたのが、元々のヒントになっていたりします。
 くじの話は次回ぐらいに出そうかなと思っていたので、ドキッとしてしまいました。当たるという呪いって、すごく良い様に感じますが、無差別だから大変な事にもなるんじゃないかと僕も思っております。
 そうなんですよね。人ってルールを守る事も出来るのですが、破る事もまたしてしまうんですよね。大勢との約束事はしっかり守れても、自分自身との約束はすぐに破ってしまったり。難しいです。
 感想を頂いて、そっか妹乃助ってドSだったのかぁと気付かされた気がしますw 確かに言われてみると、どうなるか分かってしている節はあるかもですね。でも、もしかしたら、どこかで期待しているのかも知れません。と書いてる本人にも分らなかったりします。



>>甘木 様
 感想、ありがとうございます!
 イジメの嫌な部分が少しでも表現出来ていたようで、感想を頂いてホッとしております。イジメをしていた人は、大人になって自殺する人が多いと聞いた事があるのですが、している時には自分中心で周りなんて関係なくなってしまうんだろうなって、だから里桜は真美について全くといっていい程、感情が動かなかったんじゃないかなって。
 やっぱりラスト前に、真美と優子での対話などあった方が、感想を色々と頂いて盛り上がりがあったなと感じております。どうするんだろう? 何をしてしまうんだろう? と読者の方に感じて貰える隙を作った上で、ラストを持ってくるような書き方など考えてみたいと思います!


>>水芭蕉猫 様
 感想、ありがとうございます!
 こうして感想を書いて頂けただけで、とっても嬉しいです!
 女性の知人などと話していると、思いがけない話題が出てきたりする時があって、そんな風に思ってたのかぁみたいな。男性とだと、だいたいは「やっぱりなぁ」なんですけどねw 良くも悪くも女性同士の世界というのは、あるんだろうなって思ってしまいました。少しでも、そういう雰囲気を感じて頂けたらなら良かったです!

2010/12/11(Sat)15:31:270点羽堕
一番最初の一行でまず、惹かれました。たくさんある作品の中でこういう最初の文章はとても大事ですね。とりあえず読んでみようと思いました。そして物語の設定。面白いです。よく考えられているなと感心しました。まぁ、よくあるパターンではありますが。プロではないので、そこまで望むのは酷というものでしょう。ストーリーテラーも何処かで聞いたことのあるようなキャラクターでしたね。最近の世にも奇妙な物語の作家レベルといったところでしょう。
2011/01/16(Sun)15:49:320点毒舌ウインナー
 おお、妹乃助の過去が明らかに! これでちょっと彼の不気味さは減りましたけど、色々分かってきて満足です。なるほどあの黒いマフラーはそんなに年代物だったのですか。
 妹乃助の呪いは呪いというより超能力みたいなものですね。妹乃助も誰かに襲われたりしているし、彼の他にも呪いの力が強い異能力者がたくさんいそうで、そういう人物がこれから登場してきたりするのでしょうか。いや、登場してきてほしい! そして妹乃助が自分の存在の意味をみつけることができるのか。……楽しみがまた増えました。続きをお待ちしています!
2011/01/16(Sun)17:40:180点玉里千尋
 第三話読みました。今まで語られなかった妹乃助の過去の話で、とても興味深かったです。
 今回の呪いも、中々割り切るのが難しい呪いですね。自分の得になる選択をする呪い、この得というのは、損得感情のうち得が少しでも上回るものを選ばずにはいられない、という感じなのですよね。この呪いから考えると、始めの出合いの場面も、それが得となるからやった、とも考えられるのですが、最後のところを読むと、そうじゃない部分もちゃんとあったのだということが強く感じられました。
 勘十太は、本当にいいやつですね。父や兄妹達から残された家の商売を無下にすることなどできないから、それ以外を切り捨てる選択をしたのですから。他人のためにがんばっているはずなのに、他人を思いやることができない苦しさは相当だったと思います。
 妹乃助が生まれた意味、難しいテーマですね。それを明らかにさせるために、力を使っているのでしょうが、個人的には、妹乃助が呪いを増幅させる相手に関してはもうちょっと選んでほしいな、と外野の自分は思ってしまいます。なんというか、破滅するだろうと予測される相手に対して呪いを増幅させる行為は、やっぱり明らかにそうなることを望んでいるように感じられるのです。いや、それでもやってしまうドSっぷりがこの作品の魅力の一つだと思うのですが、ううん、どうなのだろう。
 次回の更新では、どんな呪いが出てくるのか、そしてそれがどんな形で増幅されることになるのか、とても楽しみです。執筆頑張ってください、ではではー。
2011/01/16(Sun)18:08:441白たんぽぽ
今の世にも奇妙な物語の作家レベルという発言を3話を読んで撤回します。上記の感想は2話まで読んでの感想でした。私も過去にストーリーテラーを途中からストーリーの中心に持ってくるという手法を使っていたのですが、やはり良いですね。私の好みです。今後、テラーの敵が現れたりテラーと関わってきた人々が助っ人になったり、するのでしょうか。私の想像を良い意味で裏切る展開、期待しています。
2011/01/16(Sun)19:16:170点毒舌ウインナー
 こんばんは、浅田です。
 今回は少ししんみり温かな感じで、個人的にはぐっときました。話しが更新される度に妹乃助のウザさがバージョンアップしている気がしますがまたそこがイイw
 特に今回は話の中での妹乃助と話している妹乃助とのキャラのギャップが激しくて、あんなキャラだけど実は何か裏があってわざとウザいキャラを演じているのかな、なんて考えてしまい、そこに萌えてしまいました♪
 それでは次回も楽しみにしています^^
2011/01/16(Sun)23:33:481浅田明守
毎回、返信が遅れ気味で申し訳ありません。


>>毒舌ウインナー 様
 二度の感想、ありがとうございます!
 出だしで読む読まないを決めるなどあると思いますので、その部分をクリア出来ていたのであれば良かったです。それと世にも奇妙な物語にありそうなという感想は、他の方にも何度か頂いた事がありますので、多分その通りなんじゃないかなと思います。テレビの放送なども、だいたい見ているので少なからず影響は受けて、雰囲気など近いものになっているのかもしれません。もちろん僕の方は、まだまだなのは分かっているのですが。
 今後の展開で良い意味で期待を裏切れるか分かりませんが、少なくとも期待に添えるよう頑張りたいと思います。


>>玉里千尋 様
 感想、ありがとうございます!
 はい! 今回はちょっと過去に触れる話が書きたくなったので、このような展開になりました。黒いマフラーの劣化なしについては考えていたのですが(簡単に書いてしまうと呪いの影響)、挿入できていないので次回に入れられたらと思います。
 ここら辺から妹乃助を巡る駆け引きなどを出して行けたらいいなぁと思うのですが、ご指摘の通りだんだんと超能力により近づいてしまっているのが悩み所ではあったりします。出来る限り楽しんでもらるような展開を書きたいと思っております! 次回は一旦、クッション的に明るい話を入れられればと考えてるのですが、なかなか浮かんでこないです。


>>白たんぽぽ 様
 感想とポイント、ありがとうございます!
 そうなんだと思います! 損に傾いたら、それはしないといよりは出来ない呪いになるんだと。それと出会いの場面については書きこもうか迷ってやめたのですが、その通りなんです。勘十太は、もともと呪いの力が強めに働いていたので、あそこで妹乃助に声を掛けマフラーを渡したのは呪いの影響を否定できないけど、それでもと僕も思いたかったので!
 勘十太については、そういう見方をして貰えるとは、ちょっと嬉しかったです。妹乃助視点で話が進むので、どうしても自分の欲望の為にやっている印象が強くなるかなと思っていたので。
 言われてみると確かに、ドSな相手選びのようになっているかもですね。次には、そういう事のない展開を書きたいと思っているのですが、とにかく頑張りたいと思います。


>>浅田明守 様
 感想とポイント、ありがとうございます!
 後味の悪い終わり方の事が多いので、こいう話も書いてみたいなと思ってたのですが、気に入ってもらえたのなら嬉しいです! 最初は、そうでもなかったのですが書き直しをしているうちに、ウザくなってしまいました。自分だったら、こういう言い方かなと感じで書いた部分もあるので、これはまさか自分自身のウザさっだたり(汗)
 勘十太の死から50年ぐらい経っているので、色々と人と出会う間にだんだんと変化(対応)していったのかなと思っているのですが、そこらへんも今後、考えていけたらいいなぁと思いました。

2011/01/19(Wed)18:30:000点羽堕
拝読しました。水芭蕉猫ですにゃーん。
妹乃助の過去が明らかに……ちょっとしんみりした良い話でしたね。妹乃助がそれから何を思い、どう生きているのかもこれからちょっとずつ明らかになるのかなーと少し興味が湧いてきました。そしてこの勘十太がとても良いキャラ。自分の得になる選択をするって、人間としては割と当たり前なのですが、有無を言わさずそうなるってちょっと寂しいですね。で、最後はちょっとにやっとしてしまいましたが、やっぱり何だかしんみりで、妹乃助には本当に幸せになってほしいなと思ってしまいました。妙な感想ですが、これにてです。
2011/01/20(Thu)22:45:360点水芭蕉猫
 こんばんは。遅まきながら、第三話読ませていただきました。
 うん、僕は今回の話が一番好きですね。良い話だなってのは置いておくとしても、「得になる選択をする呪い」という設定は、今までの呪いの中で一番納得が行きました。例え愛する親の死に会えなくなるとしても、利益を追い続けずにいられないというのは、確かに「呪われてる」と言えますよね。なぜ最後にそれを失う選択をしたのか、そこが明かされてないのも色々考えさせられて良いなと思いました。
 あと、僕は明治や大正の雰囲気も好きなので、そこが舞台というのも良いなと思ったのですが、もうちょっと時代の雰囲気が出るように書かれてるともっといいな、と個人的には思いました。なお、これはファンタジーでしょうから考証がどうこういうのは野暮と知りつつ、「蒸気自動車がよく走ってる」っていうのは少々気になりました。日本でそこそこ自動車が走り始めたのは、ガソリン車のT型フォード辺りからじゃないかな、とか。スチームパンクっぽい線で、わざと狙われたかなとも思うのですけども。
 では、また次回も期待しています。
2011/01/21(Fri)21:57:400点天野橋立
 こんばんは、羽堕様。上野文です。
 やられたTT
 勘十太は、ある意味で妹乃助とは真逆の、相対できる存在だったのですね。
 彼がいたからこそ、妹乃助は答えを知りたいと今も足掻いているのかもしれないと、目頭が熱くなりました。とても、良かったです!
2011/01/23(Sun)20:11:561上野文
また返信が遅れて申し訳ありません。


>>水芭蕉猫 様
 感想、ありがとうございます!
 今回は妹乃助にとって最初の友人たちや両親との別れを経て、どこか諦めてしまっているところでの出会いで、親しくなった者との二度目の別れが前向きな別れになればと思って書き始めました。それと今の妹乃助のスタイルなども少しずつでも、書けたらなと思います。
 本当に自分が得になるようにって、意識していない限りは多分、そうしているんだと僕も思います。逆に意識すると結果、得じゃない方選ぶことも人は多いのかなと。だけど幸せになって欲しいと書いて頂ける妹乃助は、幸せ者な気がします!


>>天野橋立 様
 感想、ありがとうございます!
 そう感想を頂けて、とても嬉しいです。どんな呪いにしようかと毎回、色々と考えるのですが、もともとの発想力が貧弱なのか、いいアイディアがなかなか出てこないです。いつも呪いのアイディにそって物語を考えるのですが今回のは、どちらかといえば後付け的に考えた呪いでした。勘十太のエピソードは、どうしても入れときたかったので、そこに何とか呪いの方も、上手くハマっていたようでホッとしております。
 時代の雰囲気作りは、やはりまだまだなのは分かっていたのですが、今回はこのまま投稿させて頂きました。蒸気自動車など初輸入の年だけみて結構もう走ってる年数かなと想像で書いてしまったので、ご指摘ありがとうございます。スチームパンク的な話も好きなのですが、取り入れるのは難しですよね。続きも頑張ります!


>>上野文 様
 感想とポイント、ありがとうございます!
 いつも有り難い、お言葉を頂けて感謝しております! 勘十太と妹乃助の関係は、確かにそう言えるのかもしれないです。勘十太は選ぶ側で、妹乃助は選ばれる側。掴みとる大変さはあるだろうけど、また喜びも大きいでしょうから、有無も言えずに与えられたモノとは全く違いますからね。そして長い間を一緒に過ごす事で、互いに影響しあい、それぞれの選択になったんだと僕も思っております。
 妹乃助に答えを用意してあげらるのか、正直には自信がないですが何とか続きを書きたいと思います!

2011/01/24(Mon)16:23:040点羽堕
 羽堕様。
 初めまして、ピンク色伯爵という者です。普段はライトノベルを書いています。
 御作を拝読しました。
 うまく、綺麗にまとめられているな、というのが僕の感想です。さすがは古参の方だけあって、おどけた(?)調子の一人称なのにとても読みやすかったです。ところでこの小説はライトノベルになるんでしょうか。それとも文学なのだろうか。あるいは他に分類すべきジャンルがあるのでしょうか。ちょっとした疑問でした。
 第一章。もうなんか嫌な予感しかしなかった。やっぱりクビポロですか。なんか僕、最近こういう話ばかり見ているような気がします……。うーん後味悪いにょー。とりあえず、ナレーションの男がラスボスでOK? って思っていたんですが、第三章読んでビックリ。こいつ別にそこまで悪い奴じゃなかったのかと思いなおしました。うおー、なんか単純な感想だ。脳足りんが感想書くとこうなるのであります; しかし得になることしかできないって難儀なものですな。うまく立ち回ればその呪いの裏をかけるような気がしないでもないですが。
 正直に言いますと、自分、このようなほろりとして少しハートヲーミングな話はあまり好きではないんですよね……。でも貴方の小説は最後まで読めた。これはきっと貴方の紡ぐお話がよかったからなんだろうなー、と。
 青二才ピンク色には特に突っ込むところもなく、非常に興味深いお話でした。
 こんな感想でよかったのかなぁ; 次回をお待ちしております。
2011/01/24(Mon)21:36:030点ピンク色伯爵
>>ピンク色伯爵 様
 感想、ありがとうございます!
 そう書いて頂けると有り難いです。僕は、どちらかというとライトノベルと呼ばれるものの方を多く読んでいるので、影響を受けているとすればライトノベルになるんじゃないかなと思います。電撃文庫ですとダブルブリットや高畑京一郎さんの作品など読んでいたりします。でも最近は全然、読めていないので、また読みたいなと思っております。
 ナレーションの男である妹乃助はラスボスではなかったのですが、どういう終着点にすればいいのか、自分でより悩んでしまってたり。それと感想を頂けるのは嬉しいですし、有り難いです!
 第三話まで、どうにかお読み頂けてホッとしております。また更新したさいにお付き合い頂ければ幸いです!

2011/01/25(Tue)13:22:260点羽堕
作品を読ませていただきました。これまでの日常と非日常の境界のような作品世界から方向が変わりましたね。妹乃助の正体紹介とは言いませんが、過去に触れてくるとは思わなかった。私的には妹乃助はエニグマのままでいってほしかったなぁ。
今回の話しは時代(もしくは時の長さ)というものを生かし切れていなかったように感じられました。もっと行数が増えても良いから時代と共に変わっていく人(もしくは呪い業)というものを読ませて欲しかったです。でも、全体を通して流れる柔らかいような感じは文章を読みやすくさせていてよかったです。
では、次回更新を期待しています。
2011/01/26(Wed)00:03:520点甘木
>>甘木 様
 感想、ありがとうございます!
 エニグマな存在のままミザリーのように物語の案内役でいてもらおうとも思ったのですが、完結させるのには妹乃助の過去に触れて物語の中心にしないと無理かなと、この方向になりました。でもここから、どう物語を動かして行こうかなと悩み中だったりします。
 そうですね時間の流れは何十年と過ぎているのに、それをアッサリと書き過ぎていたので、どう変化していたかなどもじっくりと確かに書きこめていけたら良かったですね。どうしても急いでしまいがちなので、ご指摘ありがとうございます! 文章に読みやすさを感じて頂けたのなら、嬉しいです!

2011/01/29(Sat)17:23:130点羽堕
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