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『セラフィンゲイン 最終話〜エピローグ』 作者:鋏屋 / リアル・現代 ファンタジー
全角48808.5文字
容量97617 bytes
原稿用紙約146.5枚
分割投稿2回目です。今回はあらすじ&キャラ紹介がありませんので、ここから読まれる方は、前回分割分のあらすじなどを参考にして頂けると幸いです。
第32話 『魔人と堕天使』


「アザゼル因子を持つガーディアンと、それを狩る為のルシファーモード……」
 鬼丸は静かに呟いた。
「そのルシファーモードを発動させる条件は、ガーディアンであること。そして安綱を装備し、それを使いこなせること……」
 それは以前メタトロンから聞いた事だった。
「そしてもう一つ、重要な要因があるんだよ。ルシファーモードを発動するために必要なトリガーが」
 鬼丸はそう言って薄く、そして静かに続けた。
「一方向に偏った強い感情…… ガーデイアンの肥大増殖したシナプスから発せられる生体電流。感情という化学変化で発生した情報の電流がルシファーモードを発動する決定的なトリガーなのさ。プラグラムで統括管理されたこの世界の規則性をねじ曲げるほど強い感情…… 言い換えるなら、『人の意志の力』ってところかな。
 だが人間は絶えず何かを考えてしまう。なかなか『一方向』に感情を向けられない生き物だ。たとえ何かを決意したとしても、迷い、恐れ、躊躇う。容易には一つの感情に支配はされない。俺を消去するためにここに来たはずのスノーが、俺の姿を見て、その決心が揺らいだのがいい例さ」
 鬼丸はそう言いながら、チラリとスノーを見て口元を歪めた。その鬼丸の仕草を見た俺の中に、先ほどからくすぶり続ける嫌な気持ちの炎が勢いを増すのを感じていた。
「迷って当然だろ! 人間なんだからなっ!」
 俺は怒気を込めてそう怒鳴った。ここに来る前に、スノーの告白を聞いた今では、彼女の気持ちがよくわかる。その事で、スノーがどれほど苦しんだのかも……
 損得を抜きにして、自分のためについてきてくれた仲間を巻き添えに出来ないと言って涙を流したスノーの気持ちを…… 地獄に堕ちても良いと決心せざるを得なかった、たった一人の妹の心を…… 兄であるあんたが笑うのかっっ!!
「その通りだ。だが、ある部分を突いてやれば、人は簡単に『一方向』に感情を誘導できるんだ」
 人を惹きつけて止まない、あの極上の笑顔が、今は酷く冷たく見える。もしこの世に本物の悪魔ってのが居るとしたら、きっとこんな笑顔を見せて近づいてくるのだろう。
「憎悪だよ。何かを憎む心が、人の感情を支配するのにもっとも効率的で即効性がある。憎悪って感情は、人間の中で一番原始的な感情の一つだ。人が何かを憎むのは遺伝子に刻まれた『条件反射』と言っても良い。知ってるか? 『平和』とか『共存』とかって状態は生物学的に言うと、人間つー生き物にとってはとても不自然な状態なんだぜ?」
 その鬼丸の言葉に、先日の初めてルシファーモードを発動したバルンガモーフ戦を思い出す。
 確かに俺はあの時、メタトロンを、バルンガモーフを…… いや、何より誰も救えない自分自身の不甲斐なさを、『憎い』と思った。そしていま、この目の前で笑う鬼丸に向けつつあるどす黒い気持ちも……
「お前がルシファーモードを起動出来ないのは、それが欠けているからだよ。だからさ、俺が手伝ってやるよ……」
 鬼丸がそう言った瞬間、目の前から鬼丸の姿が消えた。いや、そのスピードに目が付いていかないだけだ。
「こういう趣向はどうだ?」
 瞬きするほどの一瞬で、後方から聞こえる鬼丸の声に、反射的に振り向いた。そして次の瞬間、目に飛び込んだ光景に一時的に思考が停止する。
「あ…… お、お兄……さ……」
 胸の下あたりから、怪しく光る太刀の刃を生やしながら言葉を発したスノーだったが、肺を満たし、口からあふれる血に言葉にならず、その純白のローブに紅い花を咲かしている。手にした杖がゆっくりとその細い指を滑り落ち、妙に乾いた音を響かせる頃、背中からゆっくりと引き抜かれる刃にすがるように崩れ落ちるスノーの姿が目に焼き付いた。
 そして床に蹲るスノーの純白のローブとは対照的に、太刀を手にして立つ深紅の鎧姿……

『だからお願いよ、シャドウ! 鬼丸を…… 兄の意識を、完全に消去して』
 俺の左手にすがるようにして、涙を浮かべて哀願する顔

『沢庵でビネオワ…… つきあえよ? スノー』
『うん、ありがとう…… シャドウ』
 俺の軽口に、まるで憑き物が落ちたような優しい笑みを浮かべる顔

『みんな、ありがと…… 私、間違いを犯さなくて良かった……』
 そう言って言葉を詰まらせながらも微笑む泣き笑いのような顔

 このクエスト開始から見てきたスノーの表情がくるくると脳裏をよぎる。その表情のどれもに鬼丸という兄への想いがあったのを、俺は知っている。
 人間らしい生活を送れなかった兄に、せめて人間らしい死を迎えさせてあげたいと、スノーは言った。その想いだけで、自分の大切な物全てを捨てようと決心した兄に……っ!!
「てめえぇぇぇぇ――――――――――っ!!」
「この外道がぁぁぁ―――――――――っ!!」
 リッパーが残った左腕で、それと同時にドンちゃんが怒りにまかせて至近距離で撃滅砲をぶっ放す。だが鬼丸はそれを悠々と交わすとアスファルトを蹴り後方に飛んだ。しかしドンちゃんは尚も撃滅砲を連射する。凄まじい連射スピードだ。
 俺はその隙に倒れているスノーに向かってダッシュした。膝関節に刺すような痛みが走るが構うことはなかった。そしてスノーの横に滑りこみ、彼女を抱き起こした。
「おいっ! おいスノーっ!!」
 俺の言葉に反応して、スノーはうっすらと目を開ける。その瞳はいつもの彼女の瞳の色とは違い、やけに色のない瞳だった。
「シャ…… ド……ウ……」
 声が細すぎてよく聞き取れない。恐らく気管にまで血が流れ込んでいるんだろう。顎下が口から零れた血で真っ赤に染まっている。俺は安綱をアスファルトに置き、右手のグローブで顎下の血をふき取った。
「やっぱ……り…… 私…… お…… にい…… で…… き……」
 何かを必死に喋ろうとして咳き込み、また口から血が零れてしまい、せっかく拭った口周りがまた紅く染まった。俺はそれを再び拭いながら声を掛ける。
「もういい喋るな! 綺麗な顔が台無しだぞ」
 スノーを元気づけようとして口をついた言葉は、情けないほど陳腐な気がした。だが、スノーの口元が少し緩んだ。それを見ながら、俺は回復魔法『ミィケア』を唱えようと詠唱を始めるが、スノーの右手が震えながらゆっくりと俺の口を押さえる。
「た……ぶん…… むり……よ」
 そう言ってスノーは左胸下の傷口から、押さえていた左手を外す。すると真っ赤に染まったローブの中央から、細かな光の粒子が空中に霧散していくのが見えた。
「デリート現象…… くそっ、イレーサーかよ!」
 俺はそう吐き捨てた。腕や足なら、多少痛いが『フレイヤ』で傷口を焼けばデリートは止まるだろう。だが、この位置では間違いなくデッドしてしまう。通常システムとリンクしていないこの聖櫃でのデッドがどういう扱いになるのか不明な今、そんな賭けに出るわけにはいかない。ちくしょうっ! 鬼丸っ! あんたは……っ!!
 噛みしめる奥歯がみしっと軋むのが聞こえた。
「ごめん…… ごめん……ね わ……たし……リーダー…… 失格……だね」
「そんなことは…… そんなことはないっ! あんたは立派なリーダーだ。あんなに濃いメンバーの俺達を、てんでバラバラだったみんなを、高々数ヶ月でここまでこれるチームにしたじゃないかっ! あんたほどカリスマのあるリーダーはそうは居ないし、そもそもあんたは、俺が鬼丸以外で初めて、太刀を預けても良いと思ったリーダーなんだ。俺達『チーム・ラグナロク』を率いることの出来るリーダーは、あんた以外には考えられないだろっ! だから…… だからそんなこと言うなよ!」
「ありがとう……」
 俺のその言葉にスノーは薄く微笑んだ。
「ね、え…… シャドウ…… 兄…… を…… おね……が……い……」
「ああ、ああ、わかってるよ。だからもう喋るな。妹であるあんたに義務があるように、俺にも義務がある。あいつがどう思っていたかなんて関係ない。俺にとって鬼丸は、紛れもなく『友』だったんだから…… それが友だった俺の義務だ。だからもう迷わない!」
 俺の言葉に頷いたのか、それとも咳き込んだのかわからなかったが、スノーは苦しそうに目を閉じた。
「少しだけ…… 待っていてくれ……っ!」
 尚もチリチリと銀色の粒子を霧散させる傷口と、激しく上下している胸を確認して、俺はスノーの頭を静かにアスファルトの上に降ろし、傍らの安綱を握りしめた。そのとたん、胸の中で沸々とくすぶっていた感情が一気に膨れあがり、頭痛を伴う耳鳴りと共に、安綱が激しく震え出す。
 鬼丸…… 許さねぇぞ、この馬鹿兄貴がぁっ!!
 膨らみ続けた負の風船が、体のずっと奥の方で破裂する。心と意識が一気に塗り替えられていく。赤と黒が渦を巻いて攪拌される感覚。画用紙が無数の黒いクレヨンで塗りつぶされていくビジョン。人間のもっとも原始的な感情に、もっとも単純な衝動が呼応する。
 憎悪…… そして破壊衝動……
 安綱…… もっとだ…… もっと持ってけ。俺の中から洗いざらい持っていけ…… そしてあいつを…… 人の姿をしたあの鬼を、お前の異名である『童子切り』の伝説のように食らい尽くせっ!!
「うぐぉぉぉっ!」
 全弾打ち尽くし、手にした撃滅砲で殴りつけようとしたドンちゃんが、鬼丸に腹を刺され呻きながら崩れ落ち、飛び込んだリッパーがメガフレアの爆発で吹っ飛ばされていく。そしてその向こうに、メガフレアの残り火に煽られた鬼丸の紅い鎧姿が、まるで陽炎のように揺らぎ立つ。
「鬼丸ぅ――――――――――っ!」
 熱風で歪む鬼丸の姿を睨みつつ、俺は溜まりに溜まった感情を言葉と共に吐き出した。

―――――カチリ

 その時、俺の中のどこかずっと奥の方で、何かが繋がる音がした……

《脳波一致、Pf.tomotikaであることを装備Yasutuna承認。
 同調値起動レベルをクリアー…… 全活動プログラム、ノーマルからガーディアンに移行します……》

 頭の中に、あの時と同じように無機質な電子音声が流れ出し、それに呼応して耳鳴りがそのボリュームを上げ鼓膜が悲鳴を上げる。絶え間なく襲う頭痛に、食いしばった歯の隙間から獣のようなうなり声が漏れだした。

《プログラムダウンロード…… ロード率、60%……70……80……90……ダウンロード完了》
《起動スタンバイ……》  

 相変わらず一つプロセスが実行されるたびに頭の神経が焼き切れるような激痛が走り、その都度意識をつなぎ止めておく糸が、ギリギリと音を立てているようだ。そして、その時は唐突にやってきた。

《―――――Starting The Lucifer mode…… 》

 一瞬の意識の消失、そして俺の全てが右手に握る安綱に吸い取られる感覚。
 鼓膜を叩くのは、耳鳴りではなく歓喜の歌。
 破裂し行き場を失って体中を駆け回っていた憎悪は、痛みにも似た快感と狂気のデュエット。
 肥大し、増殖したニューロンを狂気と歓喜が爆走し、全身の細胞と筋肉に鞭を入れる。
 背中に纏う黒いマントが、数枚の翼のように大きくはためき、夕暮れのアスファルトに長く黒い影を落とす。
「やっと現れたか。待っていたよ、シャドウ」
 手にした妖刀『鬼丸國綱』を構え直し、不敵な笑みを浮かべる鬼丸。
「スノーは最後まで迷った…… さっき言ってたろ? マジで迷っていたんだよ。何故かって? そんなこと、言わなくてもわかるはずだ。ましてやあんたは実の兄貴だ、わからないわけはない。だがあんたはそんな彼女の気持ちをわかっていながら鼻で笑いやがった! 彼女の一言がきっかけで、その願いを叶えるためにこんなシステムを作ったんじゃないのか? 誰よりも…… 誰よりも身体的に不自由な人間の気持ちを酌み取れるはずのあんたが、それに唾を吐いたんだっ!!」
 くすぶり続けてきた感情が一気に口から迸る。
「けどさ、今のでハッキリした…… わかるはずがない…… わかるはずなかったんだ!
 自分を信じてついてきてくれる仲間と、あんたを想う気持ちに挟まれ、悩み続けた彼女の心なんて…… 
 自分の目的のために一緒に戦った仲間を、自分を想ってここまで来た妹を、戸惑うことなく消しちまうあんたにさ!!」
 俺は正直、どっかでまだ、どうにかなるんじゃないかと思っていた。ガチで戦わなくても良いんじゃないかって。
 だけど無理だ。ゴメン俺が間違ってた。わかるはずがないじゃんか? だって昔からよく言うじゃんよ……

『馬鹿は死ななきゃ直らない』ってさ。

 安綱、俺に構うことはない。お前の力を全部ぶつけろ。俺の何かがお前に力を与えるのなら、遠慮しないで洗いざらい持っていけ! そしてあいつを食らい尽くすんだ。1バイトも残さずに……っ!!

 さあ、この世ならざるこの世界で、最後の狩りを始めよう。

 小刻みに震える安綱を握り直し、俺はアスファルトを蹴り全力疾走に移った。目の前の距離が一気につまり、仁王立ちする鬼丸をあっという間に射程距離に捉える。さっきまでとは比べ物にならない段違いのスピードだ。俺はそのまま上段から安綱を振るった。
 鬼丸はすぐさま俺に反応し、その斬撃を手にした國綱で受ける。鬼丸の國綱と俺の持つ安綱の刃が交わった瞬間、鼓膜を刺すような甲高い音と共に、交わる刃の周りの空気が震えた。空間を構成するテクスチャーがブレるように歪んでいる。
「イレーサーの共鳴現象…… なるほど、お互いの力が反発して周囲のプログラムを歪ませているんだな。装備者がルシファーモードに移行し、同調率が跳ね上がったことで本来持つポテンシャルが開放されたってわけか」
 その現象を見ながら、鬼丸はそう分析した。俺はそんなことはお構いなしに安綱に力を込める。もっと…… もっとだよ安綱っ!
 俺の心の声に反応したように安綱の二尺六寸の刀身が振動し、それに比例して金切り音が高くなる。自分の中の何かが、手を伝わり安綱に引っ張られていく。
「ほほう、國綱が力負けし始めたよ…… 凄まじい意志の力だな。そんなに俺が憎いか? シャドウ」
 鬼丸はその状況を面白がるようにそう聞いた。

 ああ憎いさ。
 マリアを斬ったあんたが
 スノーの気持ちを踏みにじったあんたが
 俺や俺の戦友達の心を裏切ったあんたが
 だが……
 ホントに憎いのは
 
 仲間を救えなかった俺自身なんだっ!!

「お…… に…… まるぅ……っ!!」
 自分の口から、自分の物とは思えない獣じみた声が漏れる。震える安綱の黒光りする刀身の向こうを睨むと、鬼丸の姿が時折ノイズが走ったように、ザリっとブレる。
 次の瞬間、鬼丸は地面を蹴って横っ飛びに跳躍する。さっきは全く捉えられなかった鬼丸のスピードが、今は完全に視界に捉えることが出来る。
 見える、見えてんだよ! 逃がさねぇぞ、鬼丸っ!!
 常軌を逸した反応と機動に、俺の関節が早くも悲鳴を上げる。すると頭の中に、あの無機質な電子音声が流れる。

《ペインリムーバー機動……》
《β-エンドルフィン増大……イプシロンオピオイド受容体結合……》
《神経伝達抑制率95%……痛覚遮断……脳負荷42%に上昇……危険域に入ります》

 危険域? そんなの関係ねぇ! ぶっこわれたって構うものか、使える領域は全て攻撃力と機動力に回せっ!!

《承認……コマンドリリースAttack and mobile ……サポートブースター全開》
《プログラム干渉リミッター52%解除……システム続行》

 頭の中の声が終わると同時に、関節を襲っていた痛みが霞のように消えていき、全身の血液の流れが加速していくのを感じ、俺はアスファルトを蹴った。狂気の沙汰で流れる視界の先に、紅い鎧姿を捉えた。そのまま一気に追いつき安綱の射程に入るやいなや、連続して斬りつけた。
「くっ……!」
 鬼丸の顔から先ほどの余裕の笑みが消え、苦い表情と共に小さなうめきが漏れる。俺が斬り付け、鬼丸が受ける。または鬼丸が太刀を振るい、俺が飛ぶ。刃が交わる度に甲高い音と衝撃が、この狂ったスピードの攻防を演出するかのように無人の秋葉原の街に響き渡る。そして数合の撃ち合いの後、再び唾競り合いの状態で俺達は動きを止めた。
「いやはや、想像以上の力だなシャドウ。この聖櫃のフィールドプログラムとメタトロン、そしてセラフィンゲインのコアシステムを使って、数手先を予測して動いているはずの俺が、捌くだけで手いっぱいだとは…… お前のガーディアンとしての資質は俺以上だよ」 鬼丸はそう言って驚いた表情で俺を見つめた。
「少しはキモが冷えたか?」
 俺は低い声でそう鬼丸に声を掛けた。
「ああ…… そしてますます欲しくなった」
 鬼丸の口元がニヤリと歪む。俺はそれを虚勢だと思った。ハッタリだ、大丈夫、俺はコイツより『強いっ!!』
 そう思った瞬間、鬼丸はぐいっと力を込め、俺を突き放すと後方へ飛んだ。俺も瞬間的に鬼丸を追撃するべく地を蹴った。
「ギガボルトン!!」
 一瞬で距離を開け詠唱し、鬼丸がギガボルトンを放つ。鬼丸の左手から放たれる青白い雷撃が轟音と共に俺に迫った。だが俺はその雷撃を左手で払い落とした。
「効かねぇよっ!!」
 たたき落としたギガボルトンの雷撃が周囲にはじけ飛び、俺の横にあったソフマップの電飾看板を吹っ飛ばす。流れ弾の雷撃が当たった道ばたの軽トラックのフロントガラスが派手な音を立てて飛び散る中を、俺は一気に跳躍して鬼丸の脇腹に蹴りを見舞った。
 確かな手応えと共に鬼丸が呻き、そのまま吹っ飛んだ体が正面店舗のショーウィンドウにめり込むのを見ながら、呪文を口ずさむ。
「フリサルド・ソード!」
 呪文名を口にした瞬間、黒光りした安綱の刀身に一瞬にして霜が降りる。冷却系魔法剣『フィリサルド・ソード』は斬った対象物を絶対零度の冷気で凍り付かせる。俺はそれを一瞥すると鬼丸に視線を移す。
 凍らせて動きを止めてから、確実に消し去ってやるっ!
 口元に残忍な笑みが浮かぶのを自覚しながら、俺はバリバリと硝子を踏みしだきながら立ち上がる鬼丸めがけ、疾走に移った。
 それに反応した鬼丸は瞬間的に太刀を構えて俺を迎え撃つ。
「おせぇんだよっ!!」
 鬼丸の刃を唾元で弾き、がら空きの脇腹に渾身の力で安綱を突き入れた。鬼丸の脇腹が安綱を中心に瞬時に凍り付き、深紅の鎧が霜で白く染まると同時に、耳元で鬼丸のぐもった呻きが漏れたのを聞いた。
 俺はすぐさま次の攻撃に移るべく安綱を引き抜こうとしたが、その手を鬼丸の手が押さえた。
 ――――――!?
「かかったな、シャドウ。チェックメイトだ……」
 耳元で鬼丸がそう呟いた。そして次の瞬間、体が金縛りにあったように硬直した。
 な…… に……っ?
 続いて、まるで割れるような激痛が頭の中を駆け回り、半開きの口から呻きが漏れた。
「あ…… が、ぐぅ……っ!!」
 お、鬼丸…… な……に、しやがっ……たっ!
「安綱を通して、お前と安綱の接続にウィルスを送り込んだ。数分もすれば安綱とのシンクロが強制的に切断されるだろう。お前の意識と記憶の大部分は安綱に吸われた状態でな」
 頭が割れるような頭痛に襲われながら、鼓膜に鬼丸の言葉が響く。ウィルスだと……?
「お前のミスは魔法剣を使ったことだ。あのままイレーサーで俺を消しに掛かれば、俺は安綱に干渉できなかった。俺としてもハイリスクな賭けだったがな。もっとも、伏線は張っておいたけどね。
 俺が今まで太刀で戦いながら魔法を使っていたのも、お前の頭に刷り込むためだ。最後にギガボルトンを使ったのもその為。怒りに駆られたお前なら、絶対一撃で俺を消しはしない。恐らく魔法剣で高ダメージを狙い俺の機動力を削ってくるだろうと思っていた。さっきも言ったろ? お前わかりやすいって……
 ルシファーモードに移行したプレイヤーと安綱は、セラフィンゲイン本来のプログラムから開放され、ガーデイアンシステムによって外部からのプレイヤープログラムへの干渉は遮断されてしまう。だが『魔法剣』はセラフィンゲインに元々ある基本プログラムだ。メタトロンやここのシステムを7割方自由に出来る今の俺には、そのプログラムからならガーデイアンシステムに干渉できる。ほんの一瞬だけだが、ウィルスを注入するには釣りの来る時間だ」
 そう言って鬼丸はゆっくりと安綱を抜くと、自分に回復魔法ディケアを唱えた。霜で白く染まった鎧が瞬時に元の紅い光沢を取り戻す。そして俺に向かって微笑むと、胸ぐらを掴み一本背追いの要領で投げ飛ばした。
 俺は硬直した体のまま、全く受け身の取れない格好でアスファルトの上に背中から叩き付けられた。
「がっ……はっ!」
 背中を襲う衝撃で一瞬息が詰まり、情けない呻き声が口をついた。必死に立ち上がろうと藻掻くが、治まらない頭痛と、まるで酷く深酒をした後のように平行感が無く、アスファルトを舐めた。
 鬼丸はゆっくりと俺に近づき、また胸ぐらを掴むとそのまま無理矢理立たせて呪文を詠唱する。
「フリサルド・ソード!」
 先ほど俺が使った魔法剣の呪文名が鬼丸の口から発せられ、鬼丸の持つ國綱の刃に瞬時に霜が降りる。
「惜しかったな……」
 鬼丸が俺の耳元に口を近づけてそう呟いた瞬間、脇腹に鋭い痛みが走った。瞬時に凍り付く脇腹周りを左手で押さえながら、俺は呻いた。ペインリムーバーで痛覚が遮断されているはずなのに痛みを感じるのは、れいのウィルスでルシファーモードのプログラムに傷害が出ているのだろうか。
「なあシャドウ、最後に俺が復活する本当の目的を教えてやろうか?」
 激痛で思考が上手く固まらない俺の耳元で鬼丸はそう言った。その声は、そんな状態にもかかわらず、妙に鮮明に聞こえた。
 本当の目的…… だと?
「インナーブレインシステム、高性能自立学習型軍事戦略AIメタトロン。そして、お前の脳が持つ類い希なるガーディアンの能力…… これらを使って、俺は……」
 鬼丸はそう言いながら俺の顔を自分の正面に向け、妖しい光の帯びた瞳で俺の目を見据えた。
「世界を造り替える!」
 ――――――はぁ? 何言ってんだあんた?
 そんな思いが顔に出たのか、俺を見て鬼丸はクスリと笑った。だがその目だけは笑っていなかった。


第33話 『魔人の記憶』


「そんなこと、出来るわけないって顔だな」
 激痛に苦しむ俺に、鬼丸の声は何故か妙に鮮明に届いた。
「今の社会は高度に発展したネットワーク社会だ。ワールド・ワイド・ウェブ、この地球上に張り巡らされたネットワークの蜘蛛の糸…… その糸をたどれば、米国の大統領にだって行き着くことが可能。つまり、セキュリティなどの傷害さえなければ、顔を見る事さえ不可能な人物とさえ、今の社会は繋がっている。これを利用しない手はない」
 そう言いながら、鬼丸はゆっくりと俺の脇腹から國綱を引き抜いた。傷口は瞬間的に凍り付いたためしゅっけつは皆無だったが、引き抜いた際に、完全に瞬間冷凍された細かな肉片の欠片がカラカラと音を立ててアスファルトに落ちる音がした。
「メタトロンは軍事目的で想像されたAIだ。いずれ各国の軍に導入される。現時点でも主要7カ国の軍隊が9割方導入を決めているし、国連からもオファーがある。わかるか? メタトロンを掌握すると言うことは、世界中の軍事ネットワークを手に入れることに等しい。そして、それを足がかりに、手当たり次第に他のネットワークに侵入する。警察機構、消防、3ライフラインに銀行や役所…… どんなに強力なセキュリティでも、メタトロンとガーディアンの能力があれば無いのと同じだ」
 そう言う鬼丸の表情は、まるで何かに取り憑かれた様に恍惚としていた。
「なあ、シャドウ。このセラフィンゲインのシステムサーバがどこにあるか知ってるか?」 鬼丸はそう質問した。
「シ、システム…… サーバ……?」
 辛うじてそう声が出た。そして俺がそう言った瞬間、ブゥゥンという音と共に、周りの風景が消え漆黒の闇が俺達を包み込んだ。そして足下に青く大きな地球の姿が映し出されていた。
「地表から23,000kmの上空…… そう、この世界のコアは衛星軌道に浮かぶ人工衛星にあるんだよ」
 そう言って鬼丸は俺の胸ぐらを放し、俺はその場に崩れ落ちた。床の感触は確かにアスファルトの感触だが、その向こうには、衛星軌道から見た地球の姿がリアルに映し出されている。
「見ろよシャドウ、ここから見る地球の姿を。国同士を区切る線なんてどこにもない。なのに人類は飽きることなく争いを繰り返しているんだ。人種、宗教、価値観の違い。自分たちとほんのちょっと違うだけで、少数派は差別され、迫害を受ける。ここから見る地球の美しい姿を、みんな写真や映像で見ているハズなのに、高々20,000kmほど下がると、とたんに忘れてしまう……
 俺は肉体を捨てここに来た。そしてお前が来るまでの間、この風景を眺めながらそんなことを考えていた。だから人類みんなに思い出させてやるんだ。ここから見る地球の姿を…… 差別のない、真に誰にも平等で、優しい世界。だが、力がなければ世界は変わらない。それも統一させる為には、誰かが導いてやらなくちゃダメなんだよ。
 ガーディアンの力は『人の意志の力』でその能力を発揮する。無限の可能性を秘めた進化した存在…… 俺やお前はその力がある。それを実現させる力を手に入れる事が出来る。
 見て見ろよシャドウ、この風景は『神様の視点』だ…… 俺は…… セラフィンゲインから神を創造する。メタトロンという依り代を使い、このデジタルの世界から神を降臨させるのさ」
 鬼丸はそう言うと俺の髪の毛を掴んで引き起こした。すると周りの宇宙と足下の地球がが消え、さっきの秋葉原の街の中にいた。
「じゃあ、そう言うわけだから。悪いな、シャドウ」
 鬼丸はそう言って自分の額を俺の額にそっとくっつけた。
「メタトロン、ダウンロードスタートだ」
 そして次の瞬間、俺の頭の中に、ものすごい情報が流れ込んできた。
 頭の中に焼き鏝を押し当てられたような感覚で、さっきの数倍の激痛が襲いかかる。あまりの痛さに声も出ない。
「あ…… がっ……」
 そして視界がブラックアウトした。


☆  ☆  ☆  ☆

 頬に当たるそよ風と、鼻孔をくすぐる花の臭いで目を覚ました。
 芝生の上に座り、大きな木に寄りかかってうたた寝していたようだった。見上げると大きな何本もの枝に茂る葉の隙間から、キラキラした陽光が降り注ぎ、心地よい暖かさが体を包んでいた。ふと目を落とすと、膝の上に1冊の本が置いてあった。
 『天界の反乱』と言う日本語のタイトルの洋書だった。
 そうか、僕は本を読みながら寝てしまったのか……
「ううっ…… できないようぅ……」
 不意に後ろから女の子の鳴き声が聞こえてきた。僕が振り返ると、一人の女の子が作りかけの花の首飾りを手に泣いていた。涙をこすりながら、たどたどしい手つきで花の首飾りを繋ごうとしているのだが、最後のところが結べないようだ。どうやらその女の子は、目が見えないようだった。
「貸してごらん」
 僕は女の子から首飾りを受け取ると、蔓を結んでやった。
「こうやって2,3回蔓を回せば取れないだろう」
 女の子は僕の指を触りながら何度か頷いている。
「こうやって…… こう…… ほら、出来た」
「出来た? もうお仕舞い? わああぁ……」
 その子は両手で確かめるように首飾りを触り、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を輝かせた。僕はポケットからハンカチを取り出して顔を拭いてやる。
「ほら、綺麗な顔が台無しだ」
 そう言って拭いてやってると、女の子は僕の手を押しのけてもう我慢できないと言った様子で花の首飾りを首に掛けた。そして立ち上がるとクルリと回って、花の首飾りで飾った自分を僕に披露する。
「どう? お兄ちゃま。雪乃お嫁さんみたい?」
「ああ、お姫様みたいだよ」
「ちがうもん、雪乃、お嫁さんがいいんだもん」
「そっか、雪乃はお嫁さんが良いのか」
「うん、お兄ちゃまのお嫁さん!」
「ははは、ダメだよ雪乃。兄妹じゃお嫁さんになれないんだよ」
 そう言う僕に、雪乃は口を膨らまして抗議する。
「そんなのつまんな〜い。じゃあ兄妹やめる〜!」
「兄妹はやめられないよ。いつまでも、ずっと兄妹なんだよ」
「そんなのやーっ! 雪乃はお嫁さんになるのっ! お兄ちゃまのお嫁さんになるんだからっ!」
 尚も抗議する雪乃。まあ、無理もない。雪乃は6歳になったばかりだ。まだその辺のことは理解できないだろう。
「じゃあこうしよう。僕がずっと雪乃の側にいてあげる。何があっても雪乃を守ってあげる。そうすればお嫁さんと同じだろう?」
「う〜、雪乃、お嫁さんが良いんだけどなぁ……」
 そこに、少し離れたところから声が掛かった。
「出来ましたよ」
 ふと視線を移すと、少し離れたところで、筆を持った初老の男がこっちを見て微笑んでいた。そうだこの人、お父様が呼んだ絵描きさんだ。僕らの絵を描いていたんだっけ……
「本当に仲がよろしいですなぁ、お2人は……」
 筆を足下の洗いバケツに浸し、腰のタオルで手に付いた絵の具をふき取りながら言った。
「見せて貰えますか」
 僕は本を傍らの芝の上に置き立ち上がると、絵描きさんの方に歩いていった。「雪乃も〜!」と言って雪乃もついてくる。
「ええ、もちろん。ささ、観てくだされ」
 そう言って絵描きさんは僕らの方にキャンパスを向けてくれた。
 そこには大きな木の木陰で、まぶしそうにしている僕と、首飾りを持ってはしゃぐ雪乃の姿が描かれていた。少ししかめた顔の僕にちょっぴり不満ではあるけれど、雪乃の方は、雪乃らしい笑顔でこっちを見ている。今にも笑い声が聞こえてきそうな、そんな素敵な絵だった。
「ありがとうございます」
 僕がそう言ってお辞儀をすると、その絵描きさんは柔らかい、慈愛に満ちた笑顔で笑いかけた。
「仲良きことは、美しきかな…… 末永く、兄妹仲良くという願いを込めております。お疲れさまでした」
 そう言って頭を下げてお辞儀を返してくれた。僕はとても暖かい気持ちになった。
「ねえ、雪乃綺麗に描けてる?」
 僕の横からキャンパスを覗き込んでいた雪乃が、そう僕に聞いてきた。
「ああ、とても可愛く描けているよ。雪乃らしい笑顔だよ」
 そう僕が言うと、雪乃はまた抗議する。
「え〜 雪乃『綺麗』がいい〜!」
 その雪乃の言葉に僕は笑った。可愛いと綺麗の違いって何なんだろう? でも雪乃らしい答えだった。
「でもつまんないな〜 雪乃見えないし……」
 その言葉に、僕は胸の奥がちょっぴり痛んだ。どんなに素晴らしい絵でも、それを見ることが出来なければ無いのと同じ。雪乃はきっとこれからもこの絵を見ることなく大人になるんだ……
 僕は少し悲しくなった。それを誤魔化すように、僕は雪乃に言った。
「でも、とっても可愛く…… いや、綺麗に描けてるよ」
「違うもん、雪乃、お兄ちゃまの方が見たいんだもん。お嫁さんと『同じ』なるんだから、お兄ちゃまを見てみたいんだもん」
「雪乃……」
 僕は少し言葉に詰まってしまった。見えないはずの雪乃の目が、そんな僕の心を見透かしているように、真剣なまなざしで僕の瞳を覗き込んでいた。
「わかったよ雪乃。僕が雪乃の願いを叶えてやる。凄い勉強して、いつか雪乃の目が僕を見ることが出来るようにしてみせる……」
 僕は雪乃に言うと同時に、自分にも言い聞かせるようにそう言った。
「ホント!? ホントに絶対のホント!? 雪乃憶えておくよ、一億万年も憶えとくよ?」
「ああ、忘れるなよ?」
「うんっ!!」
 そう無邪気に笑う雪乃の顔が、花の首飾りに飾られて眩しかった。その時、少し離れた場所から僕たちを呼ぶ声がした。
「朋夜様〜 雪乃様〜 お茶が入りましたよ〜っ! 風洞様もご一緒にどうですか〜!」
 見ると執事のアリシノさんが、テラスから声を上げているのが見えた。
「今行くーっ!」
 僕はそう言ってチラリと絵描きの風洞さんを見る。
「ええ、それではお言葉に甘えて。私は少し片づけてから行きますので、お二人ともお先に……」
 そう言って風洞さんはにっこり微笑んだ。
「行こう、雪乃」
 僕はそう言って雪乃の手を握った。その手は小さく、柔らかかったが、とても元気な手だと思った。
「うん! 雪乃走るよ!」
 雪乃のその言葉を合図に、僕たちは手を繋いだまま走り出した。何か、手を伝って元気が流れてくるような…… この手を握れば僕は何でも出来そうな…… そんな気がした。

☆  ☆  ☆  ☆

 ふと目を開けると、俺は暗い空間を漂っていた。
 どっちが上で、どっちが下なのか見当もつかない。落ちているのか、それとも上昇しているのか…… どちらも正解で、どちらも間違っている様に思えてくる。
『今のは…… 今のは鬼丸の記憶?』
 すると、暗い空間のあるか向こうから、何か光る物がこっちに向かってくるのが見えた。凄まじいスピードだ。それも一つや二つじゃない。無数の光の固まりが高速で飛んでくる。
 俺は慌てて手足を動かし、回避しようと藻掻いた。だが、いくら手足をばたつかせても、俺の体はその場から移動しなかった。そうこしているうちに、無数の光の固まりが、凄いスピードで俺の横を通り過ぎて行く。
 何個も通り過ぎていく光の固まりにビビリながら、俺は無駄だと判っていながら必死にこのわけの判らない空間を泳いだ。その時、その光の固まりの一つが、俺をかすった。その瞬間、頭の中にまたさっきの夢のような映像が流れ込んできた。

☆ ☆ ☆ ☆

 俺は車いすに乗っていた。
 辛うじて動く右手で、肘掛けの上に備え付けられたスティックを操作し、車いすを正面に見える黒いリクライニングシートの横に持っていった。
 車いすをシートの横に着け、俺はシートの脇にあるグリップを掴んだ。とそこに、すぅと脇から細い腕が伸び、俺の体を支えた。俺は右手の他に、唯一自由になる首を横に回してその腕の持ち主を見た。
「判ります、大丈夫ですよ、お兄さま」
 そう言ってその女性は微笑んだ。俺はぐいっと右手に力を込めた。するとそれに反応して、その女性の腕が俺の体を支えた。俺は弾みを付けてシートに尻を預けた。
「悪いな、雪乃」
 俺がそう言うと、雪乃は少し困った顔をした。
「悪くないわ。妹なんだから……」
「少し腕が太くなったんじゃないか?」
 俺はからかうように雪乃にそう言った。俺のその言葉に雪乃は口を膨らまして抗議する。その仕草は雪乃が子供の頃から変わらない仕草で、俺は懐かしい気持ちになった。
「そんなことないですぅ〜っ! ほら、放しますよ、背中、大丈夫?」
 雪乃は俺の背中に手を入れ着衣の乱れを直すと、天井からぶら下がった、ゴテゴテとコードがへばりついたヘルメットを引っ張り、俺の頭にかぶせた。そして今度は足の方に周り、俺の足をまっすぐにすると再びヘルメットをいじりに戻ってきた。
 何度も繰り返した作業だが、その動作には無駄が無く、盲目と言うことを感じさせない雪乃の動きを、俺は感心しながら眺めていた。
「ヘッドギアのバックガード、きつくない?」
「ああ、大丈夫だ」
 俺は雪乃の言葉にそう答えた。雪乃は左のアームレストに不格好に備え付けられた、可動式の15インチディスプレィを俺の方に向け、俺の顔を見た。ホントに見えて居るんじゃないか? と疑いたくなるような仕草だ。
「いよいよですね、お兄さま……」
 そう言いながら、雪乃は羽織っていた白衣を脱いだ。
「ああ、雪乃も早く座れよ。みんな待ってるぞ」
「ええ、30秒下さい」
 そう言いながら、雪乃は白衣を車いすに掛け、俺の向かいにあるもう一つのリクライニングシートに座った。そして俺と同じように、天井からつり下がったヘルメットを頭に被り、ディスプレィを固定する。そして瞼を閉じ、ふうっと長い息を吐いた。
「お前の願いが、後数分で叶うな、雪乃。どんな気分だ?」
 俺は向かいに座る雪乃にそう声を掛けた。雪には瞼を閉じたまま答えた。
「ドキドキしています。昨日も眠れませんでしたし……」
「はは…… 実は俺もだよ」
 俺はそう言って笑った。
「朋夜君、雪乃ちゃん、準備はいい?」
 俺はその声の方に俺は視線を向けた。数台のモニターの向こうに、白衣を着た数名の技師達が俺達とモニターを交互に見ている。そして声の主が立ち上がり続ける。眼鏡を掛けたちょっと太めの男だった。年の頃は20代後半か30代前半ってところだ。
「接続が完全に切れるまで、絶対に動かないで。判った?」
「ああ、大丈夫です。やってください、屋敷土さん」
 俺がそう言うと、屋敷土さんはぐいっと親指を立てた。
「オッケー! ようし、始めるぞ! ブレインモニター確認、シンクロカウンター目視、高周波電圧+0.27修正!」
 屋敷土さんの指示に、周りのスタッフが慌ただしく動き出す。皆期待と不安の入り交じった表情でモニターを見ている。
「脳波同調、プログラム『エデン』、アクセス開始します」
 屋敷土さんの隣にいる技士がそう告げる。確か名前は亮罫潤【リョウ・ケイジュン】 韓国出身の天才プログラマーって事だが、確かにそうだ。このシステムに連動した仮想領域体感プログラムをほとんど一人で組み立てたんだから。
 このプログラムの名前を『エデン』【楽園】にしたとき、一番喜んでくれたのは彼だった。確か彼も故郷に足の不自由な弟が居るって言ってたしな……
「カウントダウンスタート! 10…… 9……」
 屋敷土のカウントダウンが始まったのを期に、俺はもう一度雪乃を見た。雪乃は瞼をきつく閉じたまま、シートの上で両手を組んでいる。もしかしたら、祈ってるのかもしれない。
 大丈夫…… このシステムは完成している。お前の願いは、後数秒で叶うだろう。長かった…… あの日お前が言った言葉がきっかけだった。お前の目に、どうしても光を映してやりたかった。それは、お前の願いであると同時に、俺の願いでもあったんだ……
「2…… 1…… コンタクト!」
 その声と共に、俺の意識は暗い穴の底に吸い込まれるように落ちていった……
 
☆ ☆ ☆ ☆

 一瞬の意識の消失の後、気がつくと俺はまたあのくらい空間を漂っていた。目の前を無数の光の固まりが高速で通り過ぎていく。
 『この無数の光の固まりは、恐らく鬼丸の記憶だ。それが俺の脳に流れていく課程に俺が居るって訳か……』
 俺は目の前を行き過ぎる無数の光の流星を眺めながらそう呟いた。
 今見た2つの記憶は、鬼丸がまだ世羅浜朋夜だった頃の記憶だった。俺が鬼丸として、朋夜の記憶を覗いていた。だから朋夜がどれほど妹を想っていたかよくわかる。今の2つの記憶だけでも、当時の朋夜は優しく、思いやりのある兄だった。
 それなのに…… こんなに良い兄だったあいつが、その妹を消してしまえるんだ!
 どうしようもないやるせなさが俺の意識を締めていった。
 とその時、俺の肩にまた光の流星が当たり、俺の意識は再び鬼丸の記憶に飲まれていった。

☆ ☆ ☆ ☆

 俺はまた車いすに乗っていた。
 今度はざわざわとした広い病院のロビーのようだ。
 俺は周囲を見回し、一人の車いすの女性を見付けるとレバーを操作してその女性に近づいていった。
「おい、見伊奈【ミイナ】!」
 俺の呼ぶ声に気づき、その女性は振り向いた。眼鏡を掛けているが、少し幼さを残した顔立ちはどことなく雪乃に似ている気がする。彼女は眼鏡を直しこっちを見た。
「およよ! 鬼丸ちん!?」
「あのな…… リアルでその名を呼ぶな。むちゃくちゃアヤシイだろ!」
「あやや、ゴメンこり!」
 この独特のしゃべり方と時代錯誤なギャグ調子はいつ聞いてもイラっとする。まあその辺はスルーしておこう。
 見伊奈は俺が開発したインナーブレインを元に作られた通信体感ロールプレイングゲーム『セラフィンゲイン』で初めて作ったチーム『グレゴリー』の魔法使い『ミミ』のプレイヤーだ。つっても、詠唱は遅いし文言は忘れるわ、魔法のコントロールは下手だわの我がチームのお荷物と言っても良いダメメイジだった。この前も至近距離で『フレイストーム』を唱え、危うく炭にされ掛かったのだ。
「定期検診か?」
「まあ、そんなトコ。朋ちゃんは?」
 朋ちゃん? ……まあいい。
「俺は松坂教授のトコ。また論文手伝ってくれって言われてその打合せ。何でも来月仙台で公演があるんだって」
「さっすが超天才。講演だの論文だのの単語だけで、中卒の僕にはメダパニでっす」
 そう言って見伊奈は顔の横で両手をぱっと広げて見せた。彼女は病気のせいで高校には行っていなかったのだ。かくゆう俺も高校には行っていないが、親父が付けた各界の専門講師のおかげで大学の教科単位は取得済みだ。中にはオックスフォードやMITのもある。
「……それ皮肉か?」
「ううん、全開違うよ! もうメチャンコ尊敬してるんだ! ホントだよ」
 慌てて見伊奈は否定した。もうどこまでホントか判らない。
「で、お前はどうだったんだ?」
 俺はとりあえずそう聞いた。コイツにつき合っていると先に進む話しも進まない。
「実は……」
 見伊奈は急に暗い表情になって下を向いた。
「えっ? やばいのか?」
「持ってあと3ヶ月……」
 一瞬言葉が出なかった。マジで?
「でも特効薬があるんだって。でもなかなか手にはいらんのですよ……」
「まじかよ…… なんて言う薬だ? 親父に頼んで仕入れさせるから」
 焦ってそう聞く俺に、見伊奈はさも申し訳なさそうに答えた。
「え〜 でもぉ〜悪いしぃ〜」
「馬鹿言うな、そんなの関係ないだろ? どこの会社の薬だよ」
「えっとぉ…… 『王子様製薬』の……」
 『王子様製薬』? 聞いたこと無いな……
「『チッス』って薬ですぅ!!」
 そう言って見伊奈は目を閉じて唇をタコのように突きだした。このばかやろうがっ!!
「アホっ! 死ね! 死んでしまえっ!」
 俺は右手でレバーを操作して車いすを旋回させると、そそくさとその場から離れた。
「あ〜 待ってよぅ! 恵まれない少女に愛をプリ〜ズ!! あれ? ちょっとコレ何で進まないの? ねぇ朋ちゃん、僕を捨てるの〜っ!」
 そんな人聞きの悪い台詞を背中に浴びながら、俺は無視して車いすを走らせた。
 どうやら見伊奈はハンドブレーキをロックしていたようだ。あたふたしている見伊奈の気配にあきれながらも、俺はなんだか妙に心地良い気分でロビーを横切っていた。


第34話 『人として』


 また場面が変わる。今度は俺は車の後部座席に座っていた。そして酷く焦っていた。
「折戸さん、あとどのくらいですか?」
 俺は運転席に座る中年の男にそう声を掛けた。
「あの信号を曲がれば正面に出ます、朋夜様」
 運転席の男はそう答えた。彼は体が不自由な俺達兄妹の移動手段として親父が付けてくれた専属運転手だ。
 そのうち車は信号を曲がり、暗い道を照らすライトの先に目的地である大学病院の正面玄関が見えた。折戸さんは正面玄関のロータリーをパスして駐車場を横切り、丁度建物の反対側にある救命センター前に車を横付けした。そしてサイドブレーキを引き、後ろのハッチを開け、再度ピラーの横に付いたボタンを押した。
 すると低いモーター音と共に、かすかな振動を伴いながら俺は車いすごと180度旋回したところで車いすを前進させた。車いすが所定の場所に来ると、今度は床が全体的に降下し始め、地面に設置したのを確認するやいなや、俺はすぐさま車いすを再び操作し車外に出た。この車は後部座席に車いすでそのまま乗降出来るように改造されている俺専用の特注車だった。
「私は駐車場に車を置いてきますので、朋夜様は先に病室の方へ……」
 俺はその言葉に頷きながら、車いすをスロープに走らせた。自動ドアをくぐり、建物に入った瞬間に声が掛かる。
「どちら様ですか?」
 見ると白衣を着た男性看護しがこっちを見ていた。
「済みません、2時間ほど前に運び込まれた栗枝騨見伊奈【クリエダ ミイナ】さんの友人なんですが、見伊奈さんはどちらに?」
「ああ、あの車いすで事故に遭われた…… 今手術が終わったところです、この通路をまっすぐ行って突き当たりを右ですぐの部屋」
 俺は礼もそこそこに車いすを発進させた。通路を右に折れたところで、言われた通りに最初の部屋をノックした。すると一寸の間でドアが開く。中から白衣姿の中年男が顔を覗かせた。
「失礼ですが、あなたは?」
 彼は俺の顔を見、そのまま視線を下に持っていき、再度俺の顔を見てそう訪ねた。その視線の動きに俺はイラっとした。いつもなら「またか」と普通に流せるのだが、病院で白衣を着る職業の人間がする仕草ではないように思えたからだ。
「私は見伊奈さんの友人で世羅浜と申します。彼女が事故に遭われたと聞いて駆けつけました」
 俺はいらついた気持ちを抑え、努めて冷静にそう言った。このあたりの病院で世羅浜の名を名乗るのに少し抵抗を憶えたが、今はそんな状況ではない。
「悪いが見伊奈さんは今手術が終わり、現在危篤状態で非常に危険な状態なんだ。家族以外の面会は遠慮していただけないか?」
 その男は俺の名字に何の関心も抱かなかったようだ。それほど病院内で高い地位のある医師ではないのかもしれない。親父が総帥として君臨するセラフマゴイットグループは医療機器などでは世界3位、国内では1位のシェアを誇り、かつ複数の病院に資金的バックアップもしていて、かく言うこの病院もそれに含まれる。病院内でそれなりの地位を獲得している医師なら『世羅浜』の名前は知らないはずが無いからだ。俺は心の中でそんな事を考えていたら、部屋の奥から声が掛かった。
「あの…… もしかして朋夜さんですか?」
 中年の女性特有の声だ。その声音が少し震えて聞こえるのは、恐らく泣いていたからだろう。
「はい、世羅浜朋夜ですっ!」
 俺は目の前の男の向こうを覗き込むように、首を伸ばしてそう言った。
「すみません先生、その方を中へ……」
 その女性の声を聞いた白衣の男は少し不満げな表情でドアを引いた。俺は心の中で勝ち誇った気分を味わうが、その感情は微塵も見せずに、機械的に車いすを操作して中へ入った。
 部屋の中には一人の女性看護士の他に、一つ置かれたベッドの隣に座る中年女性が居た。彼女は赤く腫らした目で俺を見ると、ゆっくりと頭を下げた。
「初めまして…… 見伊奈の母です」
 中年と言うより、少し初老に近いような印象を受けるその女性は、確かに目元が見伊奈に似ていた。そう言えば前に見伊奈は母親と二人暮らしだと言っていたな……
「あなたの事は、娘から聞いています。来てくださってありがとうございます」
「あの、見伊奈さんは……」
 その俺の言葉に、その女性は言葉を詰まらせ、ハンカチを目の下に押し当てる。その姿に俺はいたたまれない気持ちになった。そして彼女は無言でベッドに俺を促した。俺は焦る気持ちを抑えながら、スティックを操作して車いすをベッドの横に付けた。
 ベッドの上で、見伊奈は口に酸素吸入器を付けたまま横たわっていた。鼻から上を包帯でぐるぐる巻きにされている。点滴の刺さる腕にも同じように包帯が巻かれ、体から数本のコードがベッド横のバイタルモニターに繋がっていて、明らかに早いタイミングで打たれるデジタル音が、痛々しさを強調しているように思えた。
「見伊奈……」
 俺はそれ以上言葉をつなげる事が出来なかった。ほんの数時間前に会った姿とは思えないほど、その姿は別人めいていたからだ。
「さっき…… 娘が譫言を言ったんです。『朋ちゃん』って…… たぶんあなたのことでしょう……」
 そう言って見伊奈の母親は見伊奈の左手をそっと掴むと、俺の前に差し出した。右手と同じように手首まで包帯を巻かれてたが、不思議と手だけは綺麗だった。俺はその手を、動く方の手で掴んだ。その手は暖かく、そして柔らかかった。
「見伊奈…… なんで……」
 俺はその手を握り、そう呟いた。するとその手が俺の手を握り返した。俺は驚いて見伊奈の顔を見た。見ると酸素吸入の透明なマスクの中で、見伊奈の唇が動いているのが見えた。
「何か言ってる……」
 俺の呟きに、他の三人もそれを確認した。だがその声はあまりにも小さく聞き取れなかった。
「先生…… マスク…… 外してやってくれませんか?」
 見伊奈の母親はそう医師に言った。規則的な電子トーンが響く中、その医師は無言で母親を見つめていた。
「娘の…… 娘の最後の言葉かもしれないんです…… お願いします」
「……判りました」
 医師は静かにそう言うと、見伊奈の酸素吸入マスクを外すよう看護士に指示した。
 見伊奈の唇はマスク越しに見るよりずっと赤く見えた。
「朋…… ちゃん?」
 かすれた声で、見伊奈が俺を呼んだ。俺は握る手に力を込めた。
「ああ、俺だ、朋夜だ。見伊奈、聞こえるか?」
「うん…… 朋ちゃんの声…… 僕に…… 聞こえないわけ…… 無い…… よ……ん」
 俺はその声に鼻の奥がつーんとした。込み上げる感情を抑えることが出来ない。
「ごめん…… クリ…… でも、仕方ない…… 僕の命は…… 元々あまり…… 無かったんだし……」
「何言ってるんだ、さっき『またね』って言ったじゃないか!」
「前に言った…… じゃん?…… 持って、あと3ヶ月って…… それが、少し早まった…… だけ」
 俺はその言葉に愕然となった。
 馬鹿な! アレは冗談だったんじゃないのか? いつものようにふざけて言ったんじゃないのかよっ! だってお前、『王子様製薬』の『キス』って……
「判ってない…… なぁ…… 乙女心って…… やつ……」
「何で…… 何でだよ…… もっと真面目に言えば…… あんな冗談めいた言葉で、判る分けないだろ!」
 俺は自分の洞察力を呪った。何で気が付かなかったんだ!
「そんなの…… 好き…… だからに…… 決まってる…… って話し」
 馬鹿…… やろう……っ!!
「朋ちゃんには…… 超…… 感謝だよ。朋ちゃんに…… 出会わなけりゃ、きっと僕の人生…… もっと…… ペケだった」
 見伊奈はそこで大きく息を吸い込んだ。その苦しそうな表情に「もう喋るな」と声を書けなければと思うのだが、俺の喉からは声が出なかった。
「楽しかった…… セラフィンゲイン…… ホントじゃないけど…… 自分の…… 足で、歩いたり、走ったり…… あそこでは、僕たち…… ホントの人間…… みたいだったよね。周りも、他の人と同じように…… 僕たちを見て…… くれる。
 あの世界で、僕は…… ホントの人間になれた。本当の仲間が…… できた。そして、ホントに…… 好きな人も……」
 見伊奈の目に掛かった包帯が濡れているのを見て、俺の目からも涙が溢れた。
「ねえ、朋ちゃん…… もう一度、おねだりする…… ナリよ。『王子様製薬』の…… 特効約…… 一度だけ、『眠れる森の美女』…… 気分だけでも…… 味わって…… みたい……」
 その言葉に、俺は今までで一番このふざけた体を呪った。肝心なときにまともに声すら出ない自分の体を……
 何故、俺の足は動かない?
「見伊奈じゃダメなら…… ミミとして……」
 何故俺の腕は、彼女を抱きしめることが出来ない?
「だから…… 朋ちゃんも、鬼丸ちんとしてで…… いいから……」
 何故俺の唇は、彼女に届かないんだっ!?
 俺は唯一動く右手の人差し指を自分の唇の押し当て、そしてその指を見伊奈の唇にめがけて思いっきり伸ばした。俺が出来る精一杯のことを、誰の力も借りずに、何か一つでも見伊奈にしてやれる事を…… その想いで唯一自由になる右腕を千切れるぐらいに伸ばした。そして微かにその指先が彼女の唇に触れた。
 見伊奈の唇は、先ほど握った彼女の手よりも温かく、そしてとても柔らかかった。
「ありが…… と…… やさしい…… な、鬼丸ちん…… 嬉しい…… な…… ふふ……」
 それが、俺が聞いた見伊奈の最後の言葉だった。
 そして見伊奈が逝った事を周囲に知らせるように、さっきまでモールスのように規則的な音を発していたバイタルモニターから、とぎれることのない電子音が部屋に響いた。それは酷く空しく機械的で、そしてとても理不尽な音のように感じた。
 そして見伊奈の傍らに立つ医師が見伊奈の手首を持ち、事務的な声で彼女の死を告げる。
「23時49分…… ご臨終です……」
 その言葉の後ろに被さるように、見伊奈の母親から嗚咽が漏れだした。俺はそれを聞きながら、溢れる涙を拭くことも忘れ、唇から放した右手を彼女の左手に戻し、その手を心ゆくまで、力一杯握りしめた。ほんの数時間前に別れた時の見伊奈の姿を脳裏に浮かべながら……
 見伊奈が横たわるベッドに顔を埋めて嗚咽を漏らす母親の姿を見やり、そしてもう一度見伊奈を見た。顔半分が包帯に隠れて表情そのものは判らなかったが、露出した口元が、微かに微笑んでいるように見えた。俺は握っていた見伊奈の手を放し、そっと布団の上に置くと、レバーを操作し部屋を出た。
 廊下に出ると、折戸さんが立っていた。
「朋夜様……」
 折戸さんは呟くように言って俺を見た。俺は無言で首を横に振った。言葉にするのがたまらなく嫌だったからだ。俺のその無言の返答に、折戸さんは俺の意図を正確に読みとったようだった。
「そうですか……」
 そう力無く答え、折戸さんは病室のドアに手を合わせ、見伊奈の冥福を祈った。
 するとそこに、廊下の向こうから誰かが歩いてくる足音が聞こえてきた。そして廊下の曲がり角から、2人のスーツ姿の男が現れた。一人は40代半ばと言った感じの中年男性。もう一人は俺より2,3上の20代半ばの若い男だった。
「失礼ですが、栗枝騨さんのご家族の方ですか?」
 二人組のうち、中年の男がそう聞いてきた。その二人組が醸し出す、明らかに一般人ではない雰囲気に、この二人が何者か気づいていながら質問した。
「そちらは?」
 俺の問いに中年男の方が俺の予想通り懐から黒い手帳を見せ、軽いお辞儀をした。
「山手署の崎山と申します。こっちは緑川です」
「緑川です」
 中年男に紹介された若い男は、その言葉を復唱するように名乗り、同じように会釈した。その時、その若い刑事は俺の姿を、まるで動物を観察するような目で見た。俺はそれに苛立ちを憶えながらも、無言で会釈を返した。
「事故のことで2,3確認したい事がありまして伺ったんですが…… 被害者である見伊奈さんは?」
「いま、息を引き取りましたよ……」
 俺は少しぶっきらぼうにそう答えた。
「そうですか…… ご愁傷さまでした」
 俺の答えにそう言って二人の刑事は頭を下げた。だが俺の目には、それは先ほどの折戸さんの時とは全く違う様に映った。
「彼女の母親が中にいますよ」
 するとその中年の刑事は少し意外な表情で聞いた。
「それでは、あなたは?」
「見伊奈さんの友人です。事故の知らせを聞いて駆けつけました」
「そうだったんですか…… それでは一寸失礼」
 そう言ってその刑事は俺の前を通り過ぎ、ドアをノックした。程なく先ほど部屋にいた看護士が顔を出し、その看護士に今俺に言った内容とほぼ同じ事を、その看護士に伝えていた。しばらく戸口で二言三言やりとりをしていたが、見伊奈の母親と一緒に廊下に出てきた。俺は少し離れて、しばしその様子を見ていた。
「先ほど、加害者である男性の調書が取れました。加害者は26歳男性、会社員で帰宅途中だったそうです。一応アルコール検査をしましたが、アルコール反応は出ませんでした。ご報告いたします」
 中年の刑事はそう母親に告げた。見伊奈の母親はその刑事の報告を鼻でハンカチで押さえつつ、頷きながら聞いていた。
「事故当時、見伊奈さんが車いすで移動していた歩道に、乗り上げて駐車していた車がありました。見伊奈さんはどうやらその車を避けようとして車道に出たようです。現場は6m幅員の道路で、加害者側から見て左にカーブしており、加害者は直前まで見伊奈さんに気が付かなかったと供述しています」
 中年の刑事の横に立つ若い刑事が、手帳を見ながらそう報告した。
「それで…… これは参考までに聞くのですが、見伊奈さんは最近、悩んでいたとかはありませんでしたか?」
 若い刑事の報告の後に、中年の刑事がそう母親に聞いた。俺はその言葉に妙な違和感を感じ聞き耳を立てていた。
「いえ…… 無いと思います。確かにあの子はもう何年も病気で苦しんで来ましたし、不自由な暮らしをしてきました。流石に余命を宣告された時は一寸落ち込んで居ましたけど、それでも持ち前の明るさで…… 精一杯生きていました。少なくとも私には、何かに悩んでいる様には見えませんでした」
 母親は涙声でそう答えた。
「……何故そんなことを聞くんです?」
 俺は考えるより先に、そう口にしていた。その二人の質問が、なぜだか妙に腹立たしく思えたからだ。
「スマンがご家族以外の方は遠慮してもらいたいな」
 中年の刑事はそう言って俺を見た。その視線には、先ほどとうってかわり、明らかな敵意の色が見えた。俺が見伊奈の家族でない事が判ってすぐの手のひらを返した態度も腹が立ったが、何よりもその刑事達が俺に向ける目つきがかんに障った。
「この方は見伊奈が生前大変仲良くして頂いた友人です。この方にも是非ご一緒に聞いて頂きたいのですが……」
 その刑事達の視線に気づいたのか、見伊奈の母親は慌ててそう言った。
「まあ、お母様がそう仰るなら……」
 中年の刑事は渋々と言った表情で話を続けた。
「実は、加害者の男性が、彼女が飛び出してきたとき『やられたと思った』と言ってまして……」
「やられた?」
 俺と母親は同じように首を傾げつつ、刑事の言葉を待った。
「彼が見伊奈さんを跳ねる直前、彼女と目が合ったそうなんです。その時、見伊奈さんが『笑っていた』と言うんです。いや、一瞬のことなんでなんとも言えませんが、彼はそれを見て、飛び込み自殺だと思ったそうです」
「冗談じゃない! 見伊奈が自殺なんてするわけないだろっ!!」
 俺は思わず怒鳴った。
「ですから最初にも申し上げましたが、これはあくまで確認です。そう言う可能性もあると言うだけです。我々は可能性を一つ一つ潰していくのが仕事ですから。それに確かに被害者の方はお気の毒だが、加害者の男性だってまだ若い。事故と自殺じゃ今後の人生の歩み方だって変わってきます。ましてや娘さんは……」
「おい、緑川っ!!」
 俺の怒気を含んだ言葉に若い刑事は反論したが、中年男が若い刑事の言葉を遮った。若い刑事の明らかな失言を制するつもりの様だったが遅かった。
「ましてや見伊奈は何だよっ! 余命宣告されたからもういいってか? 先の短い見伊奈より、若い加害者の未来を考えろ…… あんたそう言いたいのかよ、ええっ!?」
 俺の言葉に、その若い刑事は自分の失言に気づいたようで、ばつの悪い苦い表情をした。
「い、いえ、別にそんなことは……」
 そう言葉を濁すが、どうやら図星だったようで、俺から目を逸らし二の句を繋げないでいた。
 反吐が出る思いだった。仮にも社会の秩序を守るはずの国家公務員が口にいて言い言葉ではない。先ほどの視線もあってか、俺の言葉は止まらなかった。
「見伊奈はさっき俺と別れる前に、『またね』って言ったんだ。そんな奴が自殺なんかするかっ! 見伊奈は残りの人生を必死に生きてたんだ。自分が後数ヶ月で死んでしまうってわかってて、それをおくびにも出さずに明るく振る舞って…… 
 笑ったように見えたから『やられた』だと? 事故と自殺じゃ加害者の今後が違う? ふざけるんじゃねぇっ! 知るかそんなのっ! その加害者に言ってやれよ。ハンドル握った時点で、そんなもん全部に責任もって当然だろっ! それが嫌なら車なんて運転するんじゃねぇってさぁっ!!
 言うに事欠いて余命宣告された人の命より、その若い加害者の未来を考えろ…… あんたらは言って良いことと悪いことの区別も教えて貰ってこなかったのかよっ!」
 俺は右手の握った拳に力を込めてそう怒鳴った。二人の刑事は黙って俺の罵声を浴びていた。
「大体その路上駐車していた車の持ち主はどうしたんだよ? 違反切符きってさよならか? そもそもあのあたりの路上駐車は一掃したって胸張って宣伝してたじゃねぇか! 見伊奈が自殺かどうかを詮索する前に、俺達身障者が安心して暮らせる街にする方が先だろうがっ!!」
 俺はたまっていた鬱憤を言葉で晴らすかのように、そして悲しみを怒りに変えるように怒鳴った。出来ることならこの若い刑事をぶん殴ってやりたかったが、俺の体じゃそれは叶わない願いだった。セラフィンゲインで最強と呼ばれる魔法剣士は、現実世界では一人では着替えさえ満足に出来ない体のイチ弱者に過ぎない。そのことがこれほど恨めしく思ったことはこれまで無かった。
「朋夜様、もうそのぐらいでよろしいかと……」
 その言葉と同時に、俺の肩にそっと折戸さんの手が掛かった。それを合図に、俺の中に渦巻いていた怒りの感情が急速に引いていくのがわかった。
「ウチの若いのが失礼しました。明らかに失言であり、我々の配慮が足りなかった…… 本当に申し訳ない。だが、我々は可能性がある限り、徹底的にそれを調べるのが仕事です。聞き難いことでも、我々はあえて聞かねばなりません。それだけはご理解頂きたい」
 中年の刑事は流石にベテランと言った感じで丁寧に頭を下げ、そう謝罪した。若い刑事もその後に続き、沈痛な表情で頭を下げた。
「では、この件は事故として上に報告します。君が今言った事も、つくづく耳が痛い事です。貴重な市民の意見として、担当部署にも上げておきますよ。ご協力感謝します。それでは我々はこれで失礼いたします」
 そう言って二人の刑事は去っていった。歩きながら、若い刑事は何度か中年の刑事に頭を下げ、中年刑事はその若い刑事の背中を叩いていた。俺はその二人の後ろ姿を見ながら、呟くように折戸さんに声を掛けた。
「折戸さん……」
「はい」
「やっぱり俺達はさ、人として……」
 俺はそう言いかけて少し考え、続きを口にするのを止めた。こんな質問をしたところで、折戸さんに答えられるはずもないし、それによって、見伊奈のために祈ってくれた折戸さんを困らせる事もない。
「いや、何でもないです。忘れてください……」
「はい…… 朋夜様」
 その折戸さんの言葉は、俺の言おうとしたことを全てわかっているような、そんな声だった。それから俺達は見伊奈の母親に挨拶して、病院を後にした。帰りの車の中で、俺は見伊奈の姿を思い浮かべながら、心の底から彼女の冥福を祈っていた。

 
第35話 『天使が統べる地』


 唐突に意識が繋がった。そして繋がると同時に宙を舞う感覚と、次に襲ってきた背中の衝撃と痛みに思わず呻きが漏れた。何が起きたのか全くわからず、混乱する頭で色々考えようとするのだが、所々記憶が曖昧で上手く思考が働かなかった。俺は自由に動かない体を無理矢理動かし、辛うじて腕を杖代わりにして上体を起こし、ぼんやりとした視界で周囲を見た。
 視界の先に、赤い人影が動いている。その他に2人、それを囲むように人影がせわしなく動いているのが確認できた。
「やれやれ、お前達がまだ動けるとは思わなかったよっ!」
 吐き捨てるように言ったその声を聞いたとたん、思考がハッキリした。
 そうだ、俺は鬼丸の罠にはまって鬼丸に記憶のダウンロードを掛けられて……
 その鬼丸に、サムとリッパーが攻撃を仕掛けている。どうやら俺へのダウンロード中に攻撃を仕掛けられた鬼丸は、ダウンロードを一時的に中断し応戦したようだ。その結果、俺は意識を回復したらしい。だが、回復したのは意識だけのようで、立ち上がろうと藻掻くが、体が何かに縛られたように動かなかった。

《接…… 続…… エラー…… 》
《最…… 接続…… ス…… たンバ…… い》

 頭の中に響く電子音声が、何かのノイズが混じって良く聞き取れない。それにルシファーモードの発動時に治まったハズの頭痛が絶え間なく襲ってくる。鬼丸が注入したれいの『ウィルス』の影響か?
 だが、安綱を握った右手が、まるで凍り付いたように柄を握ったまま動かない。ルシファーモードが未だに生きている証拠なのだろうが、その恩恵を受けることが出来ない今、無用の長物と言っても良い。
 不意に反対の手の指先に、何かが触れた。視線を移すと、そこにはララが倒れていた。
「ラ、ラ……」
 ララは仰向けに倒れていた。その切断された両足の傷口からは、あの細かな粒子が煙のように立ち上っていて、今はもう足の付け根にまで達していた。
「ララ……」
 俺はララの顔に視線を移し、もう一度名前を呼んだ。顔全体の血の気が引き、所々煤と血で汚れてはいるが、その美貌は少しも失われてはいなかった。その顔が少し歪み、続いてうっすらとその瞳が開いた。
「シャドウ……?」
 その瞳が俺を見て、ララは呟くように俺に声を掛けた。
「あんた、何やってるの……? 鬼丸は……?」
 ララは俺の目を見つめながらそう聞いてきた。俺は言葉を返すことが出来なかった。
 その時、リッパーの声が響いてきた。
「桜花、狂気乱舞――――――っ!!」
 片腕を失い、ダブルブレイド使いとしてはその特性が完全に殺されてしまってる。本来の威力が半減した状態での技で鬼丸に挑むリッパーと、その脇から同じく片腕で槍を突くサムの姿が見えた。その姿には悲壮感さえ漂っている様に見えた。
「もういい…… もう止めてくれ……」
 俺はその姿を眺めながら、そう呟いた。
「鬼丸の目的は俺の体だ…… 俺が鬼丸の計画通り、体をやればそれで終わる…… 欲しいならくれてやる。だから…… もう俺の仲間を消さないでくれよぉ……」
 リッパーの高速剣を余裕の表情で交わし、サムの槍を弾き、飛来する魔法弾をことごとく撃墜する鬼丸。そしてリッパーがフレイヤで焼かれ、サムが蹴りを食らい吹っ飛ばされ。ドンちゃんが電撃を浴びる。その姿に俺は絶望感でいっぱいになり、涙が滲んで視界がぼやける。
「みんな…… 戦ってる…… あたしも……」
 そう言ってララは上体を起こした。俺は辛うじて動く左手でララの腕を掴んだ。
「無理だ…… 第一、そんな体で何する気だよ…… 俺達は負けたんだ。やっぱりサムの言うとおり、あいつには…… 鬼丸には勝てっこ無かったんだよ…… もう良いよ、ララ。俺が奴に体を渡せば、まだ間に合うかもしれない…… だから……」
 するとララは俺の胸ぐらを掴んで俺を押し倒し、マウントポジションで俺に言った。
「無理って何?」
 吐息のかかる距離でララの瞳が俺の瞳を刺す。
「やっぱりって何? 勝てっこないって何よ!?」
「ララ……」
「みんな見てみなよ。あんたの『仲間』を…… 『あんたの体を奪わせはしない』って言ったスノーの言葉で戦ってるじゃない。なのに、あんたは諦めちゃうんだ!?」
 ララの言葉は、激しい頭痛で上手く思考がまとまらない俺の頭に、何故かハッキリと響いてきた。
「あんたは確かにリアルじゃヘタレで、キモヲタで、ムッツリのダメ野郎だから、アッチで弱音を吐くのはしょうがないって思う。でも、ここでのあんたは違うんじゃないの? 英雄なんじゃないの?」
 英雄…… 今の俺には一番遠い存在なんだよ、ララ……
「あんたが、片腕と引き替えにあんたを助けた鬼丸に『英雄』を見たように、あたしもみんなを助けようとして戦ってきたあんたに『英雄』を見た…… 素直にカッコイイって思った。『セラフィンゲインは勇気が試される場所』…… あんたがここで見せる『勇気』は本物だと思った。現実どんなにヘタレでも、ここでのあんたはヒーローなんだって……」
 ララの言葉が、俺の急所を的確に捉えコテンパンにする。だが、そんなララの瞳が微かに潤むのを見たとき、俺の中に何か力のような物が沸いてくるのを感じた。
「あたしは…… 『勝てっこない』なんて言うあんたを見たくない! そんなあんたを認めない! あたしが…… あたしが唯一認めた男が、そんな簡単に諦めるはずがないって思ってるからっ!」
 ララが唯一認めた…… おいララ、それってひょっとして……
「しかし…… 俺は…… もうルシファーモードだって…… 憎しみだって……」
「そんなの関係ない。あんたの力が…… あんたの強い感情が力になるなら…… あたしを守ってよ! みんなを守ってよ!! あんたが強く思えば、それが力になるんでしょ? あんたのその『守りたい』って意志が、あんたを英雄にするんだから!
 簡単に諦めないでよ。最後まで英雄でいてよ。『無理』とか『勝てっこ無い』なんて言葉、アッチでいくらでも聞いてあげるから……」
 嘘こけ、アッチでも問答無用のくせにっ!
 しかし、お前の無茶な要求は今に始まった事じゃないよな……
 そのララの言葉に俺は未だに呪縛が解けない体に力を込めた。だが、やはり体が金縛りにあったように動かない。くっそー! 動けぇぇぇぇっ!
「本当に体が動かない? 本当に戦えない? 本当にそう思う?」
 するとララが不意に顔を近づけた。

 え? マジですか―――――――!?

 唇に当たる柔らかい感触に続いて、少し血の味のする舌が俺の舌に触れる。
 時間にして数秒。その間俺の頭痛はどっかに吹き飛び、頭真っ白でトリップ! やべぇっ! 俺、ショックで接続切れるかもっ!?
 そして顔を放したララが俺を見ながら続ける。
「ヒーローの特権…… 女の子の本気のキスは男の子を無敵にさせるパワーがあるの。さあ、あんたにはまだ足が付いてるじゃない。ほら、立てるでしょ?」
 そのララの言葉に、俺は再度体に力を込める。するとゆっくりだが、ララが乗っかった上半身が持ち上がる。体中の筋肉にどくどくと力強い血液の流れを感じ、体の芯から発する強い力の脈動が俺を振るわせる。
 男って単純だよな、マジで。
 でもそれもアリか…… フィールドでの選択肢は多いほど良いけど、生き方決めるのは単純な方が迷わなくて済むから……
「そう…… それでこそ、あたしの英雄【ヒーロー】…… あたしの騎士【ナイト】…… それでこそ、漆黒のシャドウ……」
 手にした安綱が再度震えだし、頭の中にあの電子音声が響く。

《システム再起動……》
《システム同調200%…… プログラム書き換え中……》
《ワクチン投与…… ウィルス駆除完了まで残り5秒…… 3…… 2…… 1…… 駆除完了オールクリア》
《モードプログラム再構築完了…… 》

 ものすごい処理速度で各プロセスが実行されていく。ただ、さっきと決定的に違うのは、俺の中を締めている感情が『憎悪』ではないってことだ。
 
 そうだ、俺は鬼丸を恨んでなどいなかった……
 俺は守りたい
 かけがえの無い仲間を
 大切な人を
 ただ純粋に守りたいだけだ……
 
 その俺の思いをまるで感じ取ったかのように、右手に握った安綱がその震えを増す。
 
 安綱、俺に力を貸せ
 何かを憎む力じゃない。大切な物を守る力を……っ!

《起動スタンバイ……》

「サンキューな、ララ。俺、行って来るよ」
「行ってらっしゃい。あの馬鹿兄貴にキツイの一発かましてやって。スノーの分と、あたしの分もね……」
 そう言うララを俺は自由になった左腕でアスファルトに降ろし、立ち上がった。
「ああ、消える前に終わらせる。ちょっと待ってろ」
 俺がそう言うと、ララはにっこり微笑みながら頷いた。消えつつある傷口が痛むのか、一瞬眉間が歪み額に脂汗が滲むが、その笑顔は昔見た『友』の笑顔によく似ていた。
 やばいなぁ、この笑顔は…… リアルじゃ悪魔の笑みなのに、今のララは女神に見える。深みにはまると抜けられないよキット……
俺はそんな場違いなことを一瞬考え、すぐにうち消して安綱を構え直し鬼丸を見た。鬼丸は尚もしつこくジャンプ攻撃を繰り返すサムと刃を交えていた。
 さあ行くぞ、安綱。これで全てを終わらせよう。お前の前のご主人様だが、戸惑うなよ! 
《―――――Reactivation The Lucifer mode…… 》

 頭の中に響く声が終わる瞬間、俺はアスファルトを蹴って疾走に移った。さっきまであれほど体の自由を奪っていた呪縛も、頭痛もどこかに吹っ飛び、まるで風になったようにアスファルトを滑る。
 前に感じたような、安綱に全てを持って行かれるような感覚はなく、逆に安綱が俺の力を増幅してくれているような感覚だ。
 頭をよぎるのは、鬼丸を憎む憎悪ではなく、鬼丸の悲哀を哀れむ心
 体の筋肉を鼓舞するのは、全てを消し去る破壊衝動ではなく、大切な物を守りたいという欲求。
 ララは言った。その想いが俺の力になると。
 ああ、そうだなララ、思い出したよ。
 英雄であり続けること、英雄であろうと思い続けること……
 それが俺がここに…… この世界『セラフィンゲイン』に居続ける理由だったんだよな……! 
 一気に間を詰めた俺は、今まさにサムに振り下ろされようとする鬼丸の斬撃を、脇から安綱で受け止めた。その瞬間にあの甲高い音が響き渡った。
「帰ってきたぜ、鬼丸っ!!」
「シャドウ…… 何故動けるんだ!?」
 驚愕の表情を浮かべる鬼丸を、俺は力で押し返し、返す刀で横一線に安綱を振るう。鬼丸は瞬間的に身を逸らすが、わずかにかすった脇腹の鎧がはじけ飛び、その破片が銀色の粒子になって霧散した。
 鬼丸は逸らした反動を利用してとんぼを切り、俺から距離を置いて着地した。
「ブ、ブラザー…… 遅すぎる……ネ」
 サムはそう言いながら、手にした槍にすがるように跪いた。
「おい、くたばるなよ。俺が迷ったら背中から突くんじゃなかったのか?」
 俺のその声に、サムは苦笑いをする。
「相変わらず…… ユーは…… 言うことがブラックだネ……」
「だがサム、俺はもう迷ったりしない…… 俺は『漆黒のシャドウ』なんだから!」
 サムはその俺の言葉に首を傾げる。俺はそんなサムに苦笑して答えた。
「良いんだよ…… わからなくても!」
 そして安綱を正眼に構え、鬼丸と対峙した。鬼丸は芋虫を咬んだような苦い顔で俺を睨んでいた。
「シャドウ…… 何で動けるんだよ……!」
「さあな? 詰めが甘かったんじゃないか?」
「ちくしょう…… サムやあのチビが余計なちょっかいを出してこなけりゃもうとっくに終わっていた物を……っ!」
 鬼丸の目に憎しみの炎が揺らめき、その全身から殺気が迸る。先刻まで余裕の表情で俺達を翻弄していた者とはまるで別人のようだった。
「さっき俺がミスったように、お前もミスをしたって事だよ、鬼丸」
「ミス…… ミスだと?」
 俺の言葉に鬼丸は意外な表情でそう聞き返した。
「あんたのミスは、俺だけしか見てなかったってことだ。まあ無理もないな…… 一緒に戦ってきたメンバーを『仲間』と思ってこなかったあんたには、他人のために『命を張ろう』っていう『仲間』なんて思いも寄らなかったはずだ」
 そう…… サムやリッパーは、さっきのスノーの言葉を受けて、俺のために攻撃を仕掛けてくれた。もっともそれで事態が好転するかはわからなかったろう。だが、今の俺と同じような気持ちで鬼丸に挑んだことはよくわかる。
「あんたは前に言ったよな。『ここに来る奴は戦友とか仲間とかに飢えてる』ってさ…… その通りだよ。確かに冷めたリアルじゃ引かれることだけど、冷めたリアルじゃ出来ない仲間がここでは出来る。だからここは、ゲーム以上の何かであり続けるんだ。だから俺はここで『英雄』になりたかったんだ!」
 そう言って俺は一気に間合いを詰めて鬼丸に斬りかかった。急激な反応と加重移動で下半身の関節と筋肉が軋む。するとまた脳内に電子音声が流れ出す。

《ペインリムーバー機動……》
《β-エンドルフィン増大……イプシロンオピオイド受容体結合……》
《神経伝達抑制率98%……痛覚遮断……極軽少、測定不能……》
《プログラム干渉リミッター50%解除……》

 俺のスピードに、鬼丸も驚異的な反応で迎え撃つ。
「うぐぅっ!!」
 俺の攻撃を捌く鬼丸の口から呻きが漏れた。捌くだけで手一杯と言った様子の鬼丸に一瞬の隙を見付け、俺は鬼丸の腹に蹴りを入れる。その衝撃に鬼丸は吹っ飛び、たまらず片膝を突いた。
「なんだ…… このスピードとパワー……!」
 鬼丸はそう漏らして俺を睨んだ。
「今のあんたじゃ理解できないかもしれないな。ルシファーモードは一方向に偏った感情で起動するんだったよな…… 俺が今発動したルシファーモードは、あんたが言った憎悪で起動したんじゃない。俺の『仲間を守りたい』って意志で最起動した物だ。自分のことだけを考えて、他人をシカトしてきたあんたじゃ、絶対出せない力だよ……」
 俺の言葉に、鬼丸はさらに殺気を込めて俺を見る。
「だがな鬼丸…… あんただって昔はそうだっただろ? スノーの願いが自分の願いだったハズだ……」
「そんな昔のことはもう忘れた…… あんな不自然な体の…… 他人から同情され続けた頃の惨めな記憶など…… 思い出したりするものかっ!」
 鬼丸の口から、獣のような呪詛の声が漏れる。だが俺はその姿を哀れみを込めた目で見据えた。
 哀れだな、鬼丸……
 崩れかけた自分の体を呪い続け、他の人間達をうらやみ続けてきたあんたの気持ちは、あんたの記憶にリンクした今の俺なら理解できる。だけどな、違うんだよ……
 他人を羨むってことは、自分を蔑むってことなんだ。自分の置かれた残酷な境遇に、そんな悲しい事をしなくても精一杯明るく生きていた人が、あんたの側に居たじゃんか!!
「俺に嘘をついても無駄だ。俺はさっきあんたの記憶に触れた。その記憶では、あんたはスノーのことを想っていた。記憶を共有した俺にはそれがよくわかる。そして、ミミの事も…… 鬼丸、あんたミミが……」
「言うなっ! ミミのことなどどうでも良いっ!」
 そう叫びながら、鬼丸は俺に向かって太刀を振るう。俺はそれを安綱で捌く。数回の斬撃を繰り出し、その全てを俺に受けきられたと判断するや、鬼丸は一瞬引いて呪文を口ずさむ。
「メテオバースト!!」
 鬼丸の口から、爆炎系最強呪文の呪文名が迸った。
 俺の頭上の出現した大きな火球が、逆落としに俺に降りかかった。狂った様な音と炎と衝撃が乱舞し、辺り一面が火の海になる。だが俺は全くダメージを追うことなくその場に立ちつくしていた。
「無駄だ、鬼丸。今の俺にはプログラム干渉リミッターの影響で、メテオバーストすら無効になる。俺をどうこうできるのは、この安綱とお前のイレーサー、それと禁呪『コンプリージョン・デリート』ぐらいだろう。だが、ここでアレを使ったらお前まで消える…… チェックメイトだ、鬼丸」
 俺は冷静にそう言った。すると鬼丸はニヤリと口を歪めた。
「俺が使わないとでも? 甘いよシャドウ……」
 その瞳に狂気の色が踊っている。
 この馬鹿兄貴が……っ!
 俺はアスファルトを蹴って鬼丸に突進した。未だに俺のスピードに反応する鬼丸に驚愕しつつも、俺は安綱を立て続けに振るう。
「よせ、鬼丸! スノーだって居るんだぞ。本当に実の妹をその手で消し去るつもりかっ!?」
 俺の脳内に、あの鬼丸の記憶が重なる。あの大きな木下で、首飾りをした幼い妹を、目を細めて見つめていた想いが…… 
 初めてインナーブレインシステムにアクセスする前の、シートに手を組んで祈るように座っている妹を見守る想いが……
 ベッドに横たわる少女に、千切れんばかりに伸ばした指先に触れる唇の感触……
 その映像全てが俺の脳内を駆け回った。
「俺は鬼丸…… 朋夜じゃない。あんな惨めな存在じゃない! 俺は過去を…… 過去を捨てることで、新しい存在に生まれ変わるんだっ!!」
 その鬼丸の言葉に、俺の中で何かが弾けた。

 もういい……
 
 俺は鬼丸の刃を弾き、がら空きになった鬼丸の左腕を斬り飛ばした。鬼丸の左腕は、その切断面からチリチリと光の粒子をまき散らしながら、クルクルと空中を回転してアスファルトの上に落ちた。
 そして、鬼丸の左肩から鮮血が、口からは絶叫が迸った。太刀を止め、もう一度構え直す俺を睨みながら鬼丸はアスファルトを蹴って距離を取り、呪文を口ずさむ。
「フレイヤ!」
 呪文名と共に、太刀を握った鬼丸の手から炎が上がり、左腕の傷口を焼くと鬼丸の口からぐもった声が漏れた。
「シャドウぅ……」
 鬼丸の口から漏れるその声は、まるで呪詛を含んだ獣のうなり声のようだった。
 俺は安綱を構えたまま、そんな鬼丸の姿を見つめた。哀れみを込めた瞳で……

 もういい……

 俺は再度心の中で呟いた。
「あんたは、この世界に意識と記憶を持ってくるのに、肉体を捨てた……」
 ここに来た理由も……
「さっき、スノーを手に掛けたとき、兄であることも辞めた……」
 あんたのその救えない恨み節も……
「そして今、あんたは人であることも否定しちまった……」
 全部もういい……
 俺が終わらせてやるよ…… 
 それが『友』だった俺が、あんたにしてやれる唯一のこと……
「あんたは俺の体で帰るつもりだった…… あの現実世界へ……」
 俺は静かに続けた。
「でもそれは無理だよ、鬼丸……」
「シャドウぅぅぅ……」
「一度でも人間辞めちまった奴に、帰る場所なんてありゃしない…… あんたはここで消えてゆけ!」
「シャドウぅぅぅ―――――――――っ!!」
「鬼丸ぅぅぅぅ――――――――――っ!!」
 ほとんど同時の絶叫! そして同じく同時に太刀を振るった。数回刃が交差し甲高い音が余韻のように響き渡る中、硬直した交わる刃の向こうにお互いの顔を睨む。
「あんたはこの世界で『神を創る』と言った。だがな鬼丸、忘れたのか? あんたが創った世界なのに……」
「な……に……?」
 徐々に押され気味の鬼丸が、苦い表情で俺の聞く。
 そうか…… なら教えてやらないと可愛そうだな、友として……
「この世界に『神様』なんていらないだろ?」
 俺のその言葉に、一瞬鬼丸の力が緩んだ。俺はその一瞬を見逃さず、鬼丸の太刀を弾いて安綱を鬼丸の左胸に突き刺した。
「―――――っ!!」
 鬼丸の口から、声にならない呻きと同時に血泡は溢れた。
「ここはセラフィンゲイン……『天使が統べる地』だ。『神様』なんて必要ないさ…… だってほら、子供だけの遊び場に、親がしたり顔でしゃしゃり出たってウザイだけだろ?」
 その言葉と同時に、俺は安綱を鬼丸の胸から引き抜いた。すると鬼丸の手から國綱が滑り落ち、アスファルトに転がって乾いた音が響き渡ると、その音の余韻が消える間に、鬼丸が膝からゆっくりと仰向けに倒れた。
「まだ…… だ…… 俺は…… こんな……」
 倒れた鬼丸の口から、そんなつぶやきが漏れる。
「メ…… タ…… トロン…… 再生を……っ!」
 うつぶせに倒れたその背中から銀色の粒子を立ち上らせつつ、鬼丸がそう呟いた。すると俺達の頭上に光の粒子が渦を巻いて現れた。
 マジかよっ!?
 俺はとっさに安綱を構え距離を取った。するとその光の粒子は急速に中央に集束し始め、眩しいほどの光の中に、一人の人影を形成していった。その姿を眺め、ニヤリと口を歪める鬼丸。
 だが、その光の中から現れたのは、俺達が知っているメタトロンの姿では無かった。
 この姿は……
 鬼丸もその姿を見て、驚いたように目を見開いた。

『鬼丸ちん……』

 頭から羽織った薄い緑色のローブに包まれたその顔を俺は知っていた。
「ミ…… ミミ……っ!!」
 ミミはフワリと鬼丸の前に降りると、膝を突いて鬼丸の顔を撫でた…… 鬼丸は震える手でその手を握りしめる。
『ミミ…… 何で……』
『ふふ…… もう、ゲームオーバーナリよ、鬼丸ちん』
「俺…… 俺は…… ミミ…… お前を……」
 鬼丸は何か言いかけたが、口から溢れた血で言葉にならなかった。胸から這い上がる銀色の煙は、鬼丸の体をもう半分以上消し去っている。そんな鬼丸の姿を見て、鬼丸の頭を膝に乗せたミミは、慈愛のこもった笑みを浮かべていた。
『そんなの、言わなくてもわかるって…… 話し』
 ミミはそう言って鬼丸の口に手を当てた。
『さあ、行こう。次のクエスト受注しなくっちゃ…… 今度は僕も頑張るからさ』
 その言葉を聞く鬼丸はまるで憑き物が落ちたような安らかな顔だった。さっきまで、炎の様な殺気を帯びていた鬼丸の瞳が、別人のように安らかな色を湛えている。そして鬼丸はミミに笑いかけていた。
 その笑顔は、過去に俺が見た、たまらなく人を惹きつけるあの極上の笑顔だった。
「ああ…… もう呪文…… まち…… がえるな…… よ」
『はいナリ!』
 鬼丸の言葉に、ミミはそう元気良く答えた。そのミミの答えに、鬼丸はまた笑った。そしてその瞳を閉じた瞬間、鬼丸の姿は銀色の煙に巻かれ、夕暮れの秋葉原の空に霧散していった。俺はその光景を、ただ呆然と見つめていた……
 鬼丸が消えていくのを見守ったミミは、すぅと立ち上がった。するとその像がぼやけ、ゆっくりと形を変えていった。そして彼女の周りの空間がブンっと音を立てて歪み、やがて彼女の姿は小さな女の子の姿になった。
「ようやく終わったようだね、聖櫃クリアーおめでとう、シャドウ」
 その少女はそう言って俺に笑いかけた。俺はさほど驚きはしなかった。実は今現れたミミの正体に薄々気が付いていたからだ。
「あれ? その顔は僕に気が付いていたの?」
 少女は意外そうに聞いてきた。
「何となくな。しかし良いのかよ? 『契約の天使』が契約放棄して」
 俺のその問いに、少女姿のメタトロンは可笑しそうに笑った。
「あはははっ、別に鬼丸と契約なんかしてないよ。ただ面白そうだからつき合っただけさ。僕はAIだよ? 人と契約なんてするわけないじゃん。喩えそれが使徒でもね。僕が興味あるのは、人間の集団心理と面白そうなことだけだよ」
「なら…… 今のはいったい何だったんだ? ミミに化けて鬼丸を看取ってたじゃねぇか?」
 その俺の質問にメタトロンはちょっと意外そうな顔をした。
「んー、何でだろう? 何となく…… 鬼丸のメモリーにあったミミの姿で出てきたら、彼がどういう反応するか興味があっただけ…… って、何笑ってんのさ?」
 俺の含み笑いに、メタトロンはふくれっ面でそう言った。その仕草は本当に可愛い少女のそれだった。
「いや、別に…… しかし、人間よりAIの方がおセンチってんだから…… 世も末だな」
「何それ? 『おセンチ』ってどういう意味だよ?」
 俺はまた笑いを堪えつつ、その問いにあえて答えなかった。良いんだよ、わからなくても。一つぐらいわからないことがないと不公平ってもんだ。この世界、すべからく平等だって言ったろ。
 尚もしつこく聞いてくるメタトロンをあしらっていると、不意に大事なことを思い出した。そうだ!
「やべっ! そうだ、みんなは……っ!?」
「みんな今頃ベースに転送されてるよ。もちろんデリート前にね。経験値たっぷり貰ってウハウハなんじゃない?」
 俺はメタトロンの言葉を聞いて、周囲を見回した。確かに奴の言うとおり周りには誰もいなかった。俺はホット胸をなで下ろしたが…… 俺の他にもう一人、転送されていない人物が居た。
「シャドウ……」
 スノーが俺にそう声を掛けた。純白のローブについた血糊はそのままだが、イレーサーによるデリート現象は止まっているようだ。
「メタトロン…… 何故俺とスノーだけが残っている?」
 俺はメタトロンにそう聞きつつ、安綱を構え直す。コイツ、俺達をどうするつもりなんだ? だがメタトロンは笑って答えた。
「はは、違うよシャドウ。僕は2人に見せたい物があるんだよ。面白いチームを連れてきてくれた白いお姉ちゃんと、人の意志の可能性を見せてくれたシャドウに…… 僕からのプレゼントだ。さあ、受け取りたまえ……」
 メタトロンはそう言って右手を天にかざした。その瞬間、俺とスノーはまばゆい光に包まれて意識を失った。

☆ ☆ ☆ ☆ 

 一瞬の意識の消失の後、俺は頬に当たる心地よい風と、鼻孔をくすぐる草の臭いで目を覚ました。いまいち意識がハッキリしないのは転送良いと同じ症状だ。どうやらあの仮想秋葉原からどこかへ転送されたらしい。
 俺は辺り一面綺麗に仮そろえられた芝生の上に倒れていた。少し離れたところに、建物が見える。どこかのお屋敷の庭のようだ。
 だが、俺はこの風景を知っていた。
「ここは、鬼丸の……」
 そう。ここは鬼丸の記憶で見た、あの世羅浜家の庭の風景だった。
 俺は立ち上がろうと手を地面に付けるとムニュっと何か柔らかい物にさわり、ビックリしてそちらに視線を移した。そこには、仰向けに横たわるスノーが居た。そして俺の手は……
「おわぁぁぁぁっ!!」
 慌ててスノーの胸から手を放すと、スノーが目を覚ました。
「あ…… あれ? ここは?」
 まさに間一髪!!
 良かった、気が付いていないみたいだ…… 俺は冷静さを装いながら、心臓バクバクで聞いた。
「き、気が付いたか、す、スノー」
 どもりまくるって事はリアルかここ……?
「シャドウ…… あれ? ここは……」
 そういってスノーはあたりを見回す。スノーの目はどうやら見えているようだ。ってことは俺達はまだ仮想空間に居るってわけだ。
「目が覚めたら此処にいた。でも、俺はこの場所を知っているんだ」
「私も…… 知っています……」
 俺の言葉にスノーもすぐにそう言葉を返した。そりゃ知ってて当たり前か。自分の家なんだし…… あれ、でも待てよ? リアルで目の見えないスノーが、なんでこの風景がわかるんだ?
「まだ残っていたんですね…… 懐かしい……」
 そう言って目を細めて周囲を見回すスノー。その顔は昔を懐かしむ表情に溢れていた。 どうやら『見たことのある風景』ってのは本当のようだ。でも一体どこで見たんだ?
「なあスノー、此処ってお前の家の庭だよな? でも何でお前がこの風景を知っているんだ?」
 俺の問いに、スノーは少し意外な表情をしていたが、すぐに納得がいった様子で答えた。
「ああ、目の見えない私がこの風景を知っているのか不思議なんですね。そうです、此処は私の家の庭を再現した仮想空間なんです。そして、私が初めて兄の姿を見ることが出来た思い出の場所…… ここが最初に創られた仮想領域体感プログラム『エデン』です」
 スノーはそう答えながら立ち上がった。俺もスノーに続いて立ち上がり、改めて周囲を見回した。
「これが、『エデン』……!」
 その風景は、俺が鬼丸の記憶で見た、あの絵を描いた風景を完全に再現していた。ほぼ天頂方向から降り注ぐ陽光、頬を撫でる心地良い風、鼻をくすぐる草の臭い……
 凄まじいリアリティを持った仮想空間だった。このプログラムをたった一人で作り上げた韓国人の青年は、まさしく天才プログラマーだった。
「私の家で見たあの絵、憶えていますか? あれはこの庭で描かれました。それを目にすることが出来ない私を不憫に思った兄が、せめてこの風景だけでも見せてあげたいって、我が家の庭を再現してくれたんですよ」
 スノーはそう言って歩き出した。その先には、あの大きな木が見えていた。
「俺は鬼丸の記憶がダウンロードされてきたとき、あの絵が描かれた時の記憶に触れたんだ。だからあの日の鬼丸があんたをどれだけ想っていたのか知っている……」
 俺は前を歩くスノーにそう言った。
「そうだったんですか……」
 スノーはそう呟きつつ歩みを進めた。不意にスノーは急に足を止めた。俺は不思議に思ってスノーを見た。スノーは目を見開き、驚きの表情で固まっていた。
「どうした?」
 俺はそう聞きながら、その視線の先を追った。その視線の先には、あの大きな木があり、その足下に座って本を読む一人の青年の姿があった。
 不意にその青年が俺達に気づき、本から目を離して俺達の方を向いた。
 その青年の顔は俺達の良く知っている顔だった。
「お、お…… お兄…… さま!!」
「やあ、やっと来たか」
 スノーの言葉に、鬼丸はにっこり笑いながらそう答えた。
「お兄さま―――――――っ!」
 スノーは走り出した。そして飛び込むように鬼丸に抱きついた。その姿は、あの記憶で見た幼い雪乃さんの姿そのものだった。
「良く来たね雪乃、お前ならきっと此処までたどり着くだろうと思っていたよ」
 胸に顔を埋めて泣くスノーの頭を優しく撫でながら、鬼丸はそう声を掛けた。そして鬼丸は俺の顔をみた。
「久しぶりだな…… シャドウ」
 その声はまさしく俺が友と思っていた頃の鬼丸だった。
「ああ、元気そうで何よりだ」
「はは、皮肉か、それ?」
 鬼丸はそう言って笑った。さっきまで死闘を繰り広げていた相手とは思えない笑顔だった。
「あんた、こんなところでなにやってるんだ?」
 俺は鬼丸にそう聞いた。鬼丸の意識はさっき消滅したはずだ。だが、この目の前に居る男は紛れもなく鬼丸だった。彼は一体何者なのだ?
「俺は本体から離れた意識の一部だ。プログラムだけになった時、本体から放り出されたのさ、いらない物としてな」
 俺の疑問を見透かしたように鬼丸がそう答えた。
「つまりあんたは、鬼丸の『良心』って感じか?」
「ははは、そんな綺麗な物じゃないさ…… 元に『ヨルムンガムド』を全滅させたときには、俺も本体の一部だったわけだから……」
 その鬼丸の言葉に少し心が痛んだ。
「あの時は済まなかった…… 本体の合理性が優先されてしまったんだ。元々俺の影響力は鬼丸全体から見れば、かなり弱くなっていたから止められなかった。あの4人には申し訳ないことをしてしまったと思っている…… 今更遅いけどな」
 確かにもう遅かった…… いくら此処で鬼丸がそう言っても、あの4人は帰ってこない。だが俺は鬼丸の今の言葉でだいぶ楽になった気がした。
「人の心はダイヤモンド…… 多面体が集まって出来ている。いまお前の目の前にいる俺は、その多面の一部に過ぎない。
 光が当たる方向が変われば、放つ輝きの色も自ずと変わる。光が強ければ強いほど、影も濃くなる。人は何かの拍子で簡単に変わってしまうものだな」
 鬼丸は少し寂しそうに呟いた。
「だがな、シャドウ。俺はこう考えたんだ。『変わってしまう』ってことは、逆の見方をすれば『変われる』って事だ。新しい何かに希望を見付け、今までの自分を変えて生きていこうとする意志の力は、人に可能性を見せてくれる。今までの自分に新しい選択肢を創ることが出来る…… その可能性は誰にでも平等に与えられる物なんだ。現実世界で不自由な生活を送る人々に、その可能性を教えたくて、俺はこのシステムを作ったんだよ。それはゲームになっても変わらないと思うんだ」
 セラフィンゲインというゲームは現実世界とは違う自分になることが出来る。そのプレイヤーの知恵と工夫、そして勇気によって、現実では絶対なれない人間になることが出来る。その可能性は無限大だ。だからこそ、俺みたいな奴が夢中になる。
「万人が納得する理想世界なんてありはしない。同じ人間は2人も居ないんだから当然だ。50億人居たら50億分の理想がある。それを統一させるなんて傲慢な考え方は、喩え神様だって許されない所行だよ。鬼丸本体の意志にはそれが見えなかったんだ……」
 同じ意志から除外された鬼丸は、悲しそうな目でそう言った。
「理想世界なんて物は、一人一人が自分自身の中に持っていればいいのさ…… 昨日より楽しい今日を…… 今日より輝くような明日を、自分なりに創っていけばいい。俺はそう思うよ」
 ようは自分の生き方一つで、見える世界は変わってくるってこと。色のない人生だと思うなら、知恵と工夫で色を付ける。目の前に立ちはだかる壁があるのなら、勇気と情熱で乗り越える。それは、この世界の原則そのものだった。
「なあ鬼丸、俺達ガーディアンっていったい何なんだ? ルシファーモードは何の為にあるんだ?」
 俺は話題を変えてそう聞いた。
「ガーディアンはデジタル情報処理に特化した進化した脳の持ち主、ルシファーモードはその存在を殲滅するためにあるって事ぐらいしか、俺にもわからない。それを研究していた使徒も、その存在理由までは解明できなかった」
「そうか……」
 俺は期待した回答が得られずがっかりした。まだまだガーディアンとそれにまつわる物は謎が多いみたいだ。
「お兄さまはこれからどうするの?」
 不意にスノーが鬼丸にそう聞いた。鬼丸はちょっと考えてから答えた。
「さあなぁ、まだ読みかけの本が山ほどある…… それを読破するまで此処にいるよ」
 そう言って鬼丸はスノーに笑いかけた。
「こんなところに一人で居て寂しくないの?」
「さあ、どうだろう…… 今の俺はデータだからあまり感じないな。腹も減らないし…… メタトロンっていう話し相手や、聖櫃に挑んでくるプレイヤー達を眺めるのも退屈しないで良いさ」
 そう言いながら鬼丸は傍らに置いた本を手に取り、スノーを立たせて自分も立ち上がった。
「でも…… 私は……」
 スノーはそう言って涙を流す。鬼丸はそんなスノーの涙を指ですくって笑いかけた。
「ほら、綺麗な顔が台無しだ…… 俺は此処にいる。会いたくなったら来ると良い。聖櫃がちょっとしんどいが、その時はシャドウに連れてきて貰うと良いよ」
「まあな、1回クリアしてるしな」
 俺はそう軽く言った。
「甘いなシャドウ。今回は俺の本体があれこれやったから本来のクエストとは違うんだ。それにあのおてんば天使が、お前に普通の試練を与えると思うか?」
 鬼丸のその言葉に俺はすかさず反論する。
「な、なら、いざとなったらルシファーモードで……」
「通常セラフで来られたら安綱は反応しないぞ? 正攻法でチャレンジするしかないな」 そうだった…… 反論できずにいる俺を、スノーは心配そうに見る。
「大丈夫だよ雪乃、シャドウはお前の願いを叶えてくれるさ、かつての俺のように…… それにな、お前の頼みを断れない理由があるんだ。実はさっきな、お前が目を覚ます前に……」
「おわぁぁぁぁぁっ!!」
 なんだお前っ! 見てたのか――――――――っ!!
「ちょっと待て、あれは不可抗力で……」
「そうは言っても兄として、見過ごせない事だからなぁ……」
 鬼丸はそう言ってニヤリと笑った。お、おまえホントにさっきの鬼丸じゃないのか!? 慌てる俺と、不可解な言葉を言う鬼丸を交互見て、スノーは不思議そうな顔をする。
 良いからっ!
 世の中には、知らなくても良いことはきっとそこそこあるからっ!
「さあ、もう行くと良い…… お前の仲間の元へ」
 鬼丸はそう言ってスノーの頭を撫でた。スノーは無言でこくりと頷いた。相変わらず涙に濡れていたが、その表情は、この陽光降り注ぐ空のように晴れ晴れとしていた。その顔を見て納得したように頷いた後、鬼丸は今度は俺を見た。
「じゃあな、シャドウ…… お前は今でも俺の……」
 俺は鬼丸の言葉を遮り、最初の言葉を訂正した。
「再会を約束した『友達』に贈る言葉は『またな』だろ?」
 その俺の言葉に、鬼丸は苦笑した。その顔を見て、俺も自然と笑みを漏らした。
「違いない…… またな、『友』よ」
 目映い光に包まれる視界に残ったその友人は、極上の笑顔で俺にそう言った…… 


エピローグ


 あの『聖櫃』のクエストから2週間ほどが経過した。あの後僕は3日ほど関節痛と筋肉痛で苦しみながらも大学に行き何とか単位をクリアーして留年を免れた。流石にその間セラフィンゲインにはアクセスしなかったが、他のメンバーは僕抜きでクエストに参加していたようだ。
 あの聖櫃クリアーで得た経験値で僕もあれてレベルが40になったのだが、そのキャラをまだ一度も試してないんだよね。でも今回はちゃんと経験値入って良かった〜 レベル2個上げてもまだおつりが来る経験値で、欲しかった萌えゲーも2本ゲット出来たしもうウハウハだった。今回はセラフィンゲイン様々ですよまじで。
 あの聖櫃での鬼丸との決戦から、そんな退屈すぎる日常が続くかと思ったのだが、残念なことがあった。
 なんと雪乃さんがアメリカに行くことになったのだ。何でもインナーブレインの医療応用をテーマにした論文が認められて、MITからお誘いがあったんだとか…… 鬼丸、いや亡きお兄さんである朋夜さんの意志を雪乃さんが継いだ形になったわけだ。
 正式な留学は4月かららしいけど、手続きやら何やらで1月前から現地入りするって話で、僕たちもそうだが、雪乃さんにとっても急な話だったようだ。
 こっちの大学は休学扱いで、2年ほどMITで学び、帰ってきてから復帰するそうだけど、MITで単位取ったらもう良いんじゃね? って思うんだが……
 しかしスゲーなまじで。雪乃さんはアメリカで最先端でサイバーな研究に勤しんでいる頃、俺やマリアはこの不況の中、汗だくで就職活動にかけずり回らなくてはならないんだよなぁ…… 雪乃さんに頼んで、お父さんの会社の下の方で良いから入れて貰えないかなぁ……

 てなわけで、今日がその雪乃さんの出発の日なのだ。とりあえず着替えて、僕はマリアと待ち合わせをしている駅前のイタリアンレストランに向かった。
 マリアとの待ち合わせは絶対に飲食店で、しかも確実に何か食べるので雪乃さんの出発の時間よりかなり早く待ち合わせる必要があった。
 だってせっかくの雪乃さんの出発の日なのに、マリアの食事のせいで遅刻して間に合わなかったなんて事になったら嫌すぎる。それにマリアはそれを僕に絶対八つ当たりするはずだ。そんな二重の地雷を踏むわけにはいかないのですよ。
 店にはいると、窓際のテーブルから僕を呼ぶ声がした。
「おーい、カゲチカ、遅いぞこらー」
 いや、早いだろ、じゅーぶん!
「あんた遅いから、あたしもう頼んじゃったよ」
 そう言ってメニューを僕に渡すマリア。つーかそもそもAM10:00で何食うつもりですか?
 あ、言っておくがこれは間違いなくブランチとかではありません。間違いなく朝ご飯食べてるだろうし、お昼もガッツリ食べるつもりですよ、恐らくね。
 とりあえず僕は受け取ったメニューをメニュー建てにはさみ、コーヒーを注文した。
 程なくして、ナポリタンとミートドリア、オレンジジュースとコーヒーが運ばれてきた。端から見れば2人分だけど、当然僕のはコーヒーだけです。午前10時に見たくない量だ。これが朝、昼、晩以外の食事って知ったら、このウェイトレスのおねーさんどういう反応するだろう…… マリアって1食でも抜いたら餓死するんじゃないか?
「あ、そうそう、今度新しいバイト見付けたんだ。あの何だっけほら、傭兵ガンナーのおっさん?」
 器用に両手でスプーンとフォークを操り、ナポリタンとドリアを同時に食べてるマリアがそう言った。
「お、お、 オウ、ルのこと?」
「そう、あのおっさんに紹介して貰ったの。割と良い稼ぎになるんだ」
「ど、ど…… どんな、バ、バイト?」
「ガールファイティング・コロシアムって言って、秋葉の地下の特設リングで戦うの。女の子同士でね」
 思わず吹いた。慌ててこぼしたコーヒーを拭いてマリアを見る。オウルのおっさん、この悪魔になんつーバイト紹介してんだよ…… 
 いや、僕もちょっと見たいけどね。だってマリアなら、リアルで爆拳とか決めそうだし…… ただ相手の子がちょっと心配だ。
「良いトレーニングになるよきっと!」
 どこ行っても殴る蹴るな訳ね…… 流石格闘悪魔。
 そうこうしているウチに、あっという間に食事を食べ終わったマリアが最後にジュースを一気飲み。相変わらず手品みたいだよまじで。僕はコーヒーまだ飲みきっていないのに、どうやったらあれだけの量がその時間で皿から消失するのか誰か教えて欲しい。
「さて、行こうよ」
 そう言って席を立ったマリアの肩に手を乗せる人物が居た。
「やあ、マリアちゃん、奇遇だねぇ」
 長身のマリアより、頭一つ背が高い男がマリアにそう声を掛けた。そしてそのまま僕を見てフンッと鼻で笑う。僕はすぐさま視線を逸らした。彼は僕らが通う大学で今年卒業の先輩だった。この人はマリアと同じく、大学内で開催されるボーイズコンクールで必ず優勝するモテ男君だった。でもって親が有名な弁護士でお金持ちつー絵に描いたようなボンボンだった。でもこの人、あんまり良い噂聞かないんだよね……
「おいおいマリアちゃん、天然ラッパーヲタッキーと食事かよ?」
 彼の周りに、いつの間にか出現した似たような顔のチャラ男君約二名が、その言葉で馬鹿笑いする。
「何よ、なんか用?」
 と、マリアは好戦的に答えた。
「そんな恐い顔しちゃ、綺麗な顔が台無しだよ。別に用があって声掛けた訳じゃないんだよ。たまたま会ったからさ」
 そう言ってにっこり笑うボンボン先輩。いや、実は名前知らないんだよね、僕。
「それにしても…… ずいぶん不釣り合いな組み合わせだね。学内ミスコン2年連続優勝の君と、天然ラッパーなヘタレヲタクのツーショット」
「先輩、その天然ラッパーって何っすか?」
 と彼の右隣のチャラオ君がそう聞いた。
「それが大ウケなんだ。コイツさ、緊張するとどもってまともに喋れなくなるんだよ。前に人数あわせで連れてった合コンで会場の笑いを独占してたよ。それで付いたあだ名が『天然ラッパー』ってわけ。他にも『ヘタレなケンシロウ』なんてのもあったっけ」
「マジッスか〜 超クールッスね。そのあだ名付けた奴グッジョブって感じ」
 そう言ってまた馬鹿笑いするチャラ男3人組。僕は3人から目を逸らして座っていた。まあ、もう慣れているけど、こんなレストランで言われるのはちょっと辛いな……
「ねえ、あんたら喧嘩うってるの?」
 そこに、今まで黙っていたマリアが文句を言った。
「あ? 何言ってんすか、この女」
 ボンボン先輩の隣で馬鹿笑いしていたチャラ男A(仮名)がマリアに言い返す。なんと無謀な……
「いやいや、まさか。そんな無謀なことはしないよ。お前もやめとけって。この娘はこんな顔しててマーシャルアーツの使い手なんだぜ? ちょっかい出した男がもう何人も病院送りになってるんだからさ」
 とボンボン先輩が後輩達をたしなめる。マリアの恐ろしさをよくわかってらっしゃるね。
「それにしても…… 君がこんなヘタレヲタッキーが好みだとは知らなかったよ」
 その言葉を聞いたとき、僕はちょっと悔しくなった。僕だけじゃなくマリアまで馬鹿にされているとわかったから…… それでも言い返せない自分が情けなかったんだ。
 もし、シャドウだったら…… ふと、そんな考えが浮かんだ。
 もし、シャドウだったら、仲間が笑われて黙っているだろうか?
「君も、変な趣味してるんだねぇ、マリアちゃん」
 僕は立ち上がり、そう言って笑いながら去ろうとする先輩の肩を掴んだ。
 いや……
 きっと黙って返さないよな……
「待てよあんた……」
 とっさに口から出た言葉には、何故かどもりは出なかった。そんな俺の行動に、マリアがビックリした顔で僕を見ている。こんな行動に出るなんて自分でも驚いてる。だけど僕は今、無性に腹が立ち、自分の意志で喋っている……
「今の言葉、取り消せよ」
「あ? 何言ってんの? お前」
 先輩はそう言って僕の手を掴み、そのまま僕の目を睨んだ。一瞬目を逸らしそうになったが、僕は勇気を振り絞ってその目をにらみ返した。
 恐くない…… 雷帝の顔はもっとデカくて恐ろしいだろ? 鬼丸の殺気に比べたら、猫の盛りと変わらないだろ?
 人は変わる…… 人は変われる…… それは『可能性』だと鬼丸は言ってた。なら僕だって変われるかもしれない。僕は心の中で何度もそう繰り返していた。
「逆ギレして舞い上がんなよ、ヲタク野郎」
 その言葉が終わる瞬間、僕は手首を掴む先輩の手を捻り、逆に先輩の手首を持ってテーブルの上に張り付かせた。そしてさっきマリアの使っていたフォークを掴むと、先輩の人差し指と中指の間にそのフォークを突き立てて怒鳴った。
「取り消せって言ってるんだっ!!」
 僕の怒鳴り声が店内に響き渡り、店内中が静まり帰った。
「あ、ああ……」
 先輩は放心した表情で僕を見ながら、崩れるように膝を床に着けた。
「いいか…… 一度しか言わないから良く聞け。僕のことをどう言うのは構わない。だが、今後もし、僕の仲間の事を馬鹿にする様なことを言ったら…… 絶対に許さないっ!」
 僕は低い声で静かに、そしてゆっくりと言葉を繋ぎながらそう先輩に告げた。
 限りなく現実に近いセラフィンゲインで数多くのクエストをこなし、数々の修羅場を経験してきた僕には、普通の人にはない殺気があるのかもしれない。焦点の合わない目で僕を見上げる先輩の顔は、怯える小動物のようだった。
 先輩はカタカタと人形のような動きで頷き、よろめきながら立ち上がると他の2人と一緒によたよたした足取りで店を出ていった。その姿を見送った後、僕はそのまま椅子に崩れ落ちるように座り込み長いため息を吐いた。
「ど、どうしちゃったの、今の! まるで別人じゃない! もしかしてシャドウ化したの ?」
 驚いた表情でそう僕に質問するマリア。いや、聞かないでくれ。僕もよくわからないんだから……
「い、い、いや、ぼぼ、僕にも、な、な、なんで、こんなこと、で、出来たのか、ぜ、ぜ、ぜんぜん、わか、わからな、いい」
「でも良かったよ〜 あいつ超ビビッてた。あんたもやればできるんじゃん」
「はは、なんか、マ、マリアが、ば、ば馬鹿に、さ、されたと、思ったら、カッと、な、な、なっちゃって……」
「ふ〜ん…… あんたも一応男の子だったんだ」
 そう言ってマリアは笑った。
「格好良かったぞ、まるでアッチにいる時のあんたみたいだったわ」
 そう言いながらマリアは僕に右手を差し出した。
「さあ、もう行こう。早くしないと間に合わないかもよ」
 僕は未だに震える右手でそのマリアの手を握った。しかし下半身だけは正直だった
「ひ、膝が、ふふ、震えて、た、た、たた、立て、ない」
 その僕の言葉に、マリアはあきれ顔でため息をついた。僕はそのマリアの顔を見て思った。僕は変われる。そう努力しよう。ゆっくりと、少しづつで良いから……
 大丈夫だ、僕には仲間がいる。このマリアのように、頼りになる仲間がいるんだから……
「もう、ほんとキマらないヒーローだよね、あんたって!」
 そう言いながら僕の手を引っ張るマリアの顔は何故か笑っていた。それを浮かべさせた相手が誇らしく思えるような、それはそんな笑顔だった……

 
 僕とマリアが空港に着くと、ロビーにはラグナロクのメンバーが雪乃さんを囲んでいた。きっとこの中の誰よりも早く家を出たのに、マリアの『間食』のおかげで僕らが一番遅くなってしまった。
「カゲチカ君とマリアさん、見送りに来てくれたんですね。感激ですぅ♪」
 雪乃さんは、その見えない瞳をウルウルさせながらマリアの手を取ってそう言った。
「何言ってんの、雪乃の新しい門出に、あたしが来ないわけないでしょ? 何なら今からそこのレストランで送別会やる?」
 オイオイ、送別会なら先週末にクラブマチルダでやったろっ! 僕に二日酔いと筋肉痛のダブル地獄を味合わせたのを忘れたのかっ!?
「それにしてもずいぶん急よね」
 とドンちゃんが言った。
「本格的な講義は来月からなんですけどね。色々準備しなくちゃならないから1ヶ月早くしたんです」
 世羅浜邸からは疾手さんが一緒に行くらしい。アリシノさんや、他の使用人さん達はお留守番。まあ、れいの『大きな猫』達も居ることだしね。元々ボストンには世羅浜家所有の屋敷があってそこから通うんだそうだ。
「アッチにもあるのか? セラフィンゲインって」
 とリッパーが聞いた。そういやセラフィンゲインって世界規模のネットワークゲームだったよな。
「もちろんあります。インナーブレインも1台持っていく予定です。でも時差の関係で日本のサーバに入るのはちょっと微妙ですね」
 雪乃さんは残念そうに言った。そっか…… セラフィンゲインなら離れてても会えると思っていたんだけど残念だなぁ。
「でも、私が望んだことですから文句言えませんよ。兄に笑われちゃいます」
 そう言って雪乃さんは微笑んだ。
「オー、ミーは羨ましいネ〜 ミーも一度は日本からでてみたいYo~」
 とサムが、そのサルのように長い腕を広げて大げさに嘆いた。だから声でかいって…… その外見で吐く言葉じゃないからそれ。
「そうだ、あの…… マリアさん? ちょっとお話が…… あ、皆さんはちょっと……」
 雪乃さんはそう言ってマリアに手招きしながら僕たちの側を離れる。マリアは「なあに?」と意外そうな顔で雪乃さんの後に続いて行った。
 僕たち5人は取り残されてしまった。
「女同士の話って奴か……」
 とリッパーがぽつりと呟いた。
「何であたしは誘われないかな〜」
 と、ドンちゃん。えっとそれは…… 頼むからリアクションに困るコメントは勘弁して欲しい。
 女同士の話ねぇ……
 ここから2人が話しているのは見えるのだが、距離が離れているので声は聞こえず、内容はわからなかった。
 ん? なんか雪乃さんがマリアに言い寄ってるぞ? あれ? マリア何慌ててるんだろう? 何だ? 今度は雪乃さんが慌ててる……
 その後はなんだか真剣に話をしていて、最後には何故か2人とも笑いながら握手をした後、僕たちの方へ戻ってきた。なんか2人とも妙な感じだった。一体何を話していたんだろう?
「な、な、なんの、は、話し、だっだんだ?」
 僕はそれとなくマリアに聞いた。そるとマリアは僕を睨み返した。
「お前が聞くなっ!」
 と言って僕の脇腹をパンチした。内蔵を揺さぶるそのマリアの一撃に僕は悶絶してしゃがみ込んだ。
 お…… お前…… 少しは…… 手加減しろ…… って!!
 しゃがみ込み脇腹の痛みに耐えていると、僕の目の前に手がさしのべられた。苦痛に歪む顔を上げると、雪乃さんの顔があった。
「ありがとう。私の願いを叶えてくれて」
 その見えない目を僕に向けて、雪乃さんは微笑みながらそう言った。僕はその手を握り立ち上がった。
「あなたに出会わなければ、私は壊れていたかもしれない…… あなたが私の仮面を剥がしてくれた…… 私と兄を救ってくれた……」
 そう言う雪乃さんの潤んだ瞳から、一筋の涙がしたたり落ちた。
「私…… あなたに出会えて良かった…… 」
 雪乃さんはそう言って、開いた手で涙を拭った。そんなウルウル目で見つめられる僕の方はと言えば……
「い、い、いや、ぼ、ぼぼ、僕、うぢっ◎Uυν★……!」
 ええもういっぱいっぱいです! リアルなのに強制リセット寸前ですっ!!
「本当にありがとう…… 智哉君」
 そう言って雪乃さんは僕の手を放した。僕は握手した状態で体を硬直させたまま、ぼーっとした思考でそれを見ていた。気の利いた言葉を何一つ掛けられないまま……
 ――――あれ? そういや雪乃さん、今僕を本名で呼ばなかった?
 するとロビーの向こうから、雪乃さんを呼ぶ声が聞こえてきた。見ると普段着姿の疾手さんが歩いてくるところだった。
「雪乃様、そろそろよろしいですか?」
 その疾手さんの言葉に、雪乃さんは頷いて改めて僕らに向き直った。
「じゃあ、私はもう行きます。みんな、見送りに来てくれて本当に感謝ですぅ」
「元気でな、スノー」
 とリッパー。およ? 少し目が潤んでないか?
「何かあったらミーがジャンプで駆けつけるね」
 サム、そのまま太平洋で溺れてしまえ……!
「ううっ…… でがみ…… でがみがくがらぁぁ〜」
 ドンちゃん号泣…… すげぇ…… 周りの人混みが引いていくよ。でもねドンちゃん、その手紙誰が読むの?
「スノーが頑張れるよう、祈ってますよ」
 サンちゃんがその姿で祈りって言うと、念仏唱えるイメージしか浮かばないんですけど。
「またね、雪乃。落ち着いたら連絡して、遊びに行くから。その時までにおいしいお店、リサーチ宜しくっ!」
 なあマリア、雪乃さんに会いに行くって理由より、そっちの期待値の方が比率高くないか?
「あ、あ、あの……」
 そして、僕も何か言おうとするが、どもって言葉にならない。こんな時まで僕って奴は―――――っ!
 するとマリアがバンっと背中を叩いた。
「肝心のあんたが転けてどうすんの! バシッと決めなよ! さっきみたいにさ!!」
 僕のどのあたりが肝心なのか、さっぱりわからないが、背中の痛みに咽せかえりながらも、僕はその言葉に後押しされたように言葉を発した。
「ぼ、僕も、雪乃さんに会えて良かったよ。こ、こんな僕にも仲間が出来たのは、ゆ、雪乃さんのおかげだよ。『ラグナロク』で『プラチナ・スノー』と一緒に戦った事も、わ、忘れないし、誇りに思う。あ、あ、ありがとう、元気でね、雪乃さん」
 い、言えた――――!
 ちょっぴりどもったけど、ちゃんと言語になってるよ! やった――――!!
 その僕の言葉を聞いて、雪乃さんは「うん!」と元気良く頷いた。目にいっぱいの涙を堪えながらの笑顔は、彼女のお兄さんに負けないくらい極上の笑顔だった。
 そして雪乃さんは右手を高く掲げ、こう宣言した。
「チーム『ラグナロク』、オールミッションコンプリート!!」
 涙いっぱいの、その見えない目をキラキラ輝かせて宣言する雪乃さんのその姿は、彼女の通り名である『絶対零度の魔女』ではなく、白銀の衣を纏った女神を連想させた。それから雪乃さんはもう一度みんなにお辞儀をして、疾手さんと共に出発ゲートに消えていった。

「行っちゃったね、雪乃……」
 姿が見えなくなったゲートの向こうを眺めながら、マリアがそう呟いた。
「マ、マリアにとっても、し、し、親友、だったんじゃ、な、な、いの、か?」
 さっきまともに喋れたのは、どうやら奇跡だったらしい…… またどもりの復活した言葉で、僕はマリアにそう聞いた。僕も友達少ないが、マリアもこんな性格だから、あんなに打ち解けた友達って、大学じゃ雪乃さんぐらいだと思うんだ。日頃悪魔のマリアでも、ちょっと寂しいのかもしれない。
「親友か…… う〜ん、ちょっと違うかな……」
 マリアは少し考え、そしてこう続けた。
「強いて言うなら好敵手【ライバル】…… ってトコかな」
 はぁ? なんだそれ? お前が勝てるわけないだろ? アッチはレベル40おーばーだぞ?
「今のところあたしが1歩リードって感じかな。それに、こっちにいる分有利だしね……」
 何が一歩リードだ。お前この前20になったばかりだろ? それに専用のインナーブレイン持っていってるんだぜ? 追いつくわけないっての!
「マ、マリア、な、な、何言ってんだ?」
 僕はそう言ってマリアの顔を見た。マリアは俺の視線に気づき俺を見ると、今度はさっきと反対の脇腹にパンチを打ち込んできた。
「聞くなって言ったでしょっ!」
 お、おまえ…… なあぁぁぁ……っ!
「マリアちゃ〜ん、屋上からスノーの飛行機見えるって! 見に行かな〜い?」
 とその時、ドンちゃんがそう声をかけてきた。マリアは「行く行く〜!」とドンちゃんに答えると、蹲る僕の腕を持って立たせた。
「ほら、カゲチカも行くよ」
 そう言うとマリアは自然に僕の手を握って歩き出した。僕は女の子と手を握って人前を歩くなんてしたことがないハズなのに、そんなマリアの自然な動作につられてさほど違和感なく手を握り返すことが出来た。もちろん、ドッキドキだったけどね。
 人が変わっていけるキッカケって、案外こんな些細な事なのかもしれない……
 そんなことをぼんやりと考えながら、僕はマリアに手を引かれ、上へ向かうエスカレーターに歩いていった。






《 完 》
2010/03/04(Thu)11:05:09 公開 / 鋏屋
■この作品の著作権は鋏屋さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めて読んでくださった方、ありがとうございます。
毎度読んでくださる方々、ほんとうにお疲れさまでした。
1年半も掛かったこのしょーもない物語に、最後までおつき合いしてくださった全ての方に、最大限の感謝を贈ります。
いや長かった…… 
でもなぁ、納得できない人も多いだろうなぁ…… 最後急ぎすぎた感もあるし。
まだまだよくわからないって方もいらっしゃるでしょうが、まあとりあえず、ここいらで一端終了となります。
一応シリーズで続けようとは考えていますが、たぶんシャドウの物語はこれにてお仕舞いなので、また別のキャラで行こうと思ってます。ただね、作者がシャドウを再登場させる誘惑に勝てるかが最大のポイントです(オイ!
まあ、その前に色々やりたいことがあるので、いつになるかわからないってのが正直なところです。

最後に、この物語で色々障害について描きました。決して中傷するようなつもりで書いているわけではないことを何度かしたためさせて頂きました。そのことについてクレーム無く此処まで書けたことは皆様の寛大なお心遣いだと感謝しております。ありがとうございました。
鋏屋でした。
この作品に対する感想 - 昇順
こんにちは! 羽堕です♪
 スノーーーーーー!! 何て事をしてくれるんだ鬼丸……でも流れ的にも避けられない展開だったのかなと、それだけに、しっくりとくる進み方が心地よくて面白かったです。それに鬼丸の目的も、まさに天才悪役の王道とでもいうのか、ストーリーなどとは別にして、ちょっとニヤけてしまいましたw
 戦闘も立場などが目まぐるしく変わっていくスピード感があって良かったです。もっと苦戦する鬼丸も見たかった気はしますが。気持ちのいいぐらいのピンチで、ここからどう展開していくのかドキドキします!
であ続きを楽しみにしています♪
2010/02/20(Sat)13:47:491羽堕
千尋です。
 王道の面白さというものを、堪能させていただきました! アクションシーンも相変わらずの素晴らしさですね。
 やっぱり、天才悪役のいきつくところは、世界征服なの? 神になることなの? すごいぜ、鬼丸! このまま突っ走れ〜!ww
 ……私は、たぶんガノタにはなれないと思います。だって、出てくる固有名詞を片っぱしから忘れて、「自衛隊がリアルファンネル開発?」とか、「かぐやが発見した月の縦穴、グラナダと命名?」とかいうニュース(?)を見ても、(そんな名前あったかな〜)とボンヤリしているんですからw
 続きも楽しみにしています!
2010/02/21(Sun)12:39:471千尋
拝読しました。水芭蕉猫です。にゃあ。
スピード感ある展開にスゲーと感嘆しながら読んでました。スノー!!! と心の中で思いっきり叫んだのは羽堕さまと一緒ってことで。
鬼丸、すげーや。世界を変えるとかデカイことかます男は好きだぜ。世界を変えようとする悪役と、それを阻止する主人公、果たして勝つのはどちらか……という展開に燃え燃えしますね。
カゲチカは果たしてきちんと現実に帰る事は出来るのか、そして鬼丸はどうなってしまうのか、ますます目が話せないですね!! 次回もわくわく楽しみにしています。
2010/02/21(Sun)20:53:300点水芭蕉猫
》羽墜殿
毎度の感想&ポイント、もうホントに感謝です。こんなにインターバル空けた作者にううぅっ……(涙
いやぁ、天才のインテリで超金持ちのボンボン悪役と来れば、「世界を変えてやろう」と思うのは当然って事でこうなりました、えっへん!(イヤモウベタネタ)
鬼丸の外道っぷりを出したくてこうなったわけです。目的のために妹すら犠牲にする。いやあ彼は本当に作者想いなキャラです(オイ!
良いのかこんなお約束で? ってな感じですが、お約束展開大好きなヲタ中年が書いてるだけにブレーキ掛からないんですよね。こうなったら開き直りますYO!

》千尋殿
感コメ、ポイントありがとうです〜! 見捨てないでくれて感謝ですw
いやもう全然書けなくて困りました。書く暇プリ〜ズです。王道展開を楽しんでいただけて何よりと胸をなで下ろしております。いやマジでここまで厨二臭いと引かれるんではを危惧していたんです。でも開き直り、「えい、やあ!」って投稿しました。
ガノタはならんほうが良いです。アレは人間をダメにしますw 私のように脳が3分の2ガンダムに染まると幻覚や幻聴が出てくるので触り程度が丁度良いですww

》猫殿
男なら 一度は夢見ろ 世界征服(字余り)
と言う格言もあるくらいですから、王道厨二ハンターとしては押さえておかないと……(オイ!
いやもうね、今回はマジでヤバイか?って思ったんですよ、少しは(スコシカヨ!)
でも鬼丸が智哉になったってダメヲタ大学生でしょ? どう考えてもメリットないんですもん…… まあ、でもこれは最初から考えてあったネタなので急遽採用って訳ではないんですけどね。それだけ引き出し少ない奴だなと、笑ってやってくださいw

お三方とも、インターバル空けたにもかかわらず食いついて頂き、まことに感謝しております。次回は少し早めに更新します。つーか次の話は元々1話分だったのですが、長すぎて切った物なので修正するだけです。次回はちょっと寄り道する予定です。
ほらね、宣言から1話の更新で4話じゃ収まらなくなった…… 構成力の無さに泣きたくなりますまぢで(泣
鋏屋でした。
2010/02/22(Mon)20:55:180点鋏屋
こんにちは! 羽堕です♪
 宇宙から地球を眺め続ける事で、心や頭の中で何かが壊れたり、もしくは創られたりする事もあるのかもなと。長期間宇宙にいる方もいるけど、肉体を捨てた魂だけのような存在になった鬼丸だからこそ感じる物があったのかも知れないと思いました。
 あの絵が描かれた時のエピソードが、良かったです。そして幼い雪乃は可愛いし、朋夜の優しい約束に偽りなど全くなくて、それは初めてのコンタクトの時でも、だからどうしてあんな事になってしまったんだろうって智哉と同じに思わずには居られなかったです。
 見伊奈はいいですねw 何だろう、どこか無理に演じているような所とか、雪乃とは違うほっとけない危なさと可愛さがあって、この話『THE RED KNIGHT』が、いつか読めるのも楽しみしています♪
であ続きを楽しみにしています♪
2010/02/23(Tue)17:05:490点羽堕
 お待ちしておりましたー!!
 拝読しました。水芭蕉猫です。にゃあ。
 宇宙へ行くと、無宗教の人が熱心な宗教家になったり、宗教家が宗教を捨てたり、結構衝撃的らしいです。なので、鬼丸もきっとそういう宇宙の瘴気とも言うべき何かに当てられたのかなと思ったり思わなかったり。
 真に平等な世界ってあるんですかね。
 平等であればあるほど世界は捻じ曲がっていくような気がしないでもありませんが……。もしそれが出来るというのなら、是非とも鬼丸さんに世界を統一して欲しいです。
 新キャラは、見てて最初イラっとしましたが、よく読んでみれば可愛いじゃないですか。鬼丸とどういう関係にあったのか気になるところです。
 前にポイント入れ忘れたので、今回にぽちっとな。
 次回、楽しみにしております。
2010/02/23(Tue)21:15:071水芭蕉猫
千尋です。
 正直、天才鬼丸の言っていることに、お脳がついていかなくて、もう一度30話あたりから、読み返していました;
 えー、まず、鬼丸は、限界になった自分の肉体を捨て、生き続けるために、記憶と意識を、メタトロンの力を借りて(依代として)、セラフィンゲイン内に移動させた。
 で、シャドウの肉体を手に入れて、現実世界に復活しようとしている。その条件として、シャドウの意識と記憶を、肉体から切り離すために、ルシファーモードを発動させた。
 発動完了で、シャドウの脳がある程度空っぽになったところで、代わりに自分の意識と記憶を、シャドウの脳にダウンロードしている……ってことでいいんでしょうか?
 ん? すると、鬼丸は、これからシャドウの肉体に移動するんですよね。肉体を持ちつつ、メタトロンとアクセスしながら、世界のネットワークを掌握しようとしているってことになるのかな? そんなこと、本当にできるのかなあ。メタトロンと契約したから、できるのか。メタトロンの見返りは、退屈解消ってことですか。鬼丸は、肉体がない今のままでも、やろうと思えばネットワーク支配は、可能なんですよね。それでも、やっぱり現実世界に未練があるってことなんでしょうか。でもきっと、ネット支配は、肉体がないほうが、やりやすいのでは、という気も。
 それから、シャドウの意識はどうなるんでしょう。セラフィンゲイン内に、今までの鬼丸と同じように取り残されるのかな。それとも、メタトロンにデリートされちゃうんでしょうか。
 言及できないところもあるでしょうが、お馬鹿な私に、少しでも解説して頂けると、助かります^^;

 先日、ある人と話をしていて、コンピュータに、自分の記憶を全部保存したら、永遠に生き続けられるんじゃないかって、話題が出ました。
 でも、私はそれに否定的なんですよね。人間の意識は、肉体と不可分の関係にあるんじゃないかと思うのです。もし男性の意識が、女性の肉体の中に入ったら、その肉体の影響を受けないわけにはいかない、だから、その意識はそこからすでに、それまでのものとは違ってきてしまって、彼の人格もまた違うものになっていく。それはむしろ、生まれ変わりに近い状態になってしまうのでは、というのが、私の考えです。だから、コンピュータという無機質なものを器とした人間の記憶は、その時点で、すでに人間の意識とは異なる存在になってしまうんじゃないかと思ったり。

 いやいや、すみません、面倒な上に、わけのわからないことを、ダラダラと書きまして。後半部分は、御作の内容に関係ないことですので、気にしないでください。
 続きも楽しみにしています!
2010/02/25(Thu)12:23:500点千尋
》羽墜殿
感想どうもです〜
あの絵が描かれたエピソードはかなり以前からありました。ぶっちゃけ言いますと、ホントは世羅浜邸地下のシーンで入れる予定でしたが、結局ここまで引っ張りましたw もうここまで来ると次の物語にぶっこんじゃおうか? とも思ってましたが、ここでお披露目と相成りました。良かったと言っていただけて何よりでした。鬼丸のストーリーのモデルはアナキン・スカイウォーカーです。昔凄い善人だった人物が、何故悪になったのか? 的な話を1度書いてみたいんです。私はそういうの凄い好きなんですよw
鋏屋でした。

》猫殿
感想、しかも律儀にポイントまで…… 感謝です!
宇宙へ行って地球を見ると人生観が激変するって話を聞いたことがあるけど、本当なんですかね? 一度は行ってみたいところだなぁ…… 私小学生の頃の夢は宇宙飛行士だったんですよw それが今じゃただのガノタ中年…… ああ……
どうでしょうね、鬼丸、変えてくれますかね、世界?(オイ)
新キャラウザくてすみません。またやっかいなキャラこさえてしまいましたw でもまあこのキャラ今回はさわり程度なので…… 鬼丸との関係は…… ムフっ♪ ナイショです。(マテコラ!
鋏屋でした。

》千尋殿
感想どうもです〜w こんなに深く読んで頂いて涙が出る思いです。ああ、だから私はここが好きなんですよ。千尋殿のような方が居るから、ここは他のサイトとは違う何かであり続けるんでしょうねww
すみません、一寸わかりにくかったようです。このあたりの文章表現は、私の場合ただの説明文になってしますので、なるべくそうならないよう心がけて書いているので、若干説明がおざなりになってしまうのかもしれません。
解説しますと、鬼丸は智哉と会ってすぐに、安綱の特性で智哉がガーディアンであることに気づきました。当時の鬼丸はガーデイアンとして、その能力や使い方を良く知っていました。もちろんルシファーモードも発動出来ます。瞬間的に発動し、自分の意志ですぐにアクセスを切る事も出来るほど、能力をコントロールしていました。過去に『伝説』とまで言われた彼の強さは、そのルシファーモードを発動させた結果です。智哉がルシファーモードを発動させると、敵を消滅するまで止まらないのは、ガーディアンの能力が高いと言う事もありますが、それを上手くコントロールできていない部分が大きいのです。ですが、その資質は鬼丸よりも上でした。鬼丸はずっと以前からそれに気づいていたのです。
今の鬼丸は現実側に脳がないのでガーディアンではありません。ただのデータにすぎないんです。よって、作中にもありましたが、ルシファーモードどころかガーディアンシステムにもアクセスできなくなってます。
確かにネットワークなどには入りやすいかもしれませんが、セキュリティなどの障壁を突破し、内部のコアプログラムを書き換えるには、ガーディアンの能力が必要だと、鬼丸は考えました。日々進化するセキュリティプログラムをハッキングし、その内容を研究し変更、若しくは書き換えるのには、かなりの時間が掛かります。もしかしたら出来ないかもしれません。ですがガーデイアンなら、その強固なセキュリティすらも意志の力で書き換えてしまうと言う設定です。ですから鬼丸は類い希なるガーディアンの資質をもつ智哉の肉体が(と言うより脳が)欲しかった訳なんです。だから現実世界に未練と言うより、あえて言うならガーディアンに未練があるといった感じですね。
そんな能力を持つガーディアンになるハズなのに、何故メタトロンを掌握したのか? というのは自分という存在を世間にカモフラージュするためです。鬼丸は自分が神になろうなんて実は思っていません。彼は無神論者です。彼が考える神は、社会機構や秩序といった『システム』を『神』と呼んでいるのです。『俺が神になる』ではなく、『神を降臨させる』と言ったのはその為です。
鬼丸はメタトロンを依り代にして自分の理想とする社会を構築する『システム』という神を作り、そこで暮らしていきたいと願ってます。障害を持つ体と、それを偽善で覆い隠す社会を呪いながら生きてきた自分を捨て、自分の意志で作った新しい社会秩序の中を、新しい体で生きていく……
『誰にも平等で優しい世界』 
しかし、自分が新しい、傷害の無い体でそれを目指しても、その瞬間に、じぶんが傷害で苦しみ、悩んでいた頃に見た周りの人々と同じ存在になるって事に気が付いていないのです。天才と呼ばれた男にしては、あまりにも愚かですが、そこに『鬼丸の人間臭さ』を感じ取っていただけたらなぁと……
でもそうなると、やはり鬼丸は千尋殿が感じたとおり、現実世界と健常者の肉体に未練を持っているのでしょうね(オイ)
鋏屋でした。
2010/02/25(Thu)18:22:180点鋏屋
こんばんは、知人の九割に『あんたはよく分からん』と言われてしまう木沢井です。
 それより鬼丸、泣かせてくれますねぇ。ありがち、と言ってしまえばそこまでですが、多用されるだけの効果があるというのも事実というわけですから。
 セラフィンゲインのシリーズ化! いいですねぇ。書き手にとっては悲喜交々でございましょうが、楽しみが増えますねぇ。私も長編を継続しようと日々ふんとうしていますが、なかなか上手くいかないもので……こうなれば、鋏屋様の御作も拝読しながら勉強していくより他ありませんね。次回も楽しみにしています。
 ちょっとだけ話は脱線しますが、感想への返答を行うに際して、本編の内容に触れるとしたらどこまでを上限とするのか、ということについて考えたことがありますが、鋏屋様はどのようにお考えでしょうか? それと、今更のような気もしますが『障害』とするところを『傷害』としていた箇所が散見していたことと、国家公務委員が『口にいて言い』……という箇所があったことが気になりました。
 以上、知人によると『何で分からんのかも分からん』木沢井でした。パラメータは至って平凡なのですがねぇ。
2010/02/27(Sat)20:28:170点木沢井
拝読しました。水芭蕉猫です。にゃあ。
うわーい。セラフィンシリーズ化決定ですね!? この世界観は好きなので、素直にうれしいですね。別チームの話とかも見てみたいですし。それはそうと、鬼丸の過去にこんなことがあったのですね。鬼丸が言うのとは別に身障者に限った話じゃなくて、精神障害にも、または世界の全てに優しい社会であってほしいと確かに思います。誰かが誰かのことを少しばかり思いやる、それだけで大概のことは丸く収まるような気もしないでもないので……。
うん。もう少しで最終回みたいなので、ぜひとも最後までがんばってください! 楽しみにしてます。
2010/02/27(Sat)22:49:580点水芭蕉猫
こんにちは! 羽堕です♪
 見伊奈の事故の真実を、いつか読めるのを楽しみしています! 朋夜は折戸に言おうとして止めた事が、想像するだけでも(何処までいっても想像でしかないんだろうけど)胸にグッと痛みがきます。あとシリーズ化も、もちろん嬉しいです。水芭蕉さんではないですが、今回の話に全く関わっていないような別パーティーの話も楽しそうですし、でも実は意外な繋がりがあったとか、たまらなく好きなのですけどw どこまでも広げられる世界観だなって感じます。
 残す所、後わずかなようで、どんな決着を見せるのか期待しています!
であ続きを楽しみにしています♪
2010/02/28(Sun)11:28:560点羽堕
続きを読ませていただきました。なんとコメントをしたらよいのやら……鬼丸よ、不幸を売り物にするなよ。努力する姿を売り物にするなよ。貫目の低い野郎だ。
「不幸も苦しみもすべて自分一人のものだ、ひとつたりとも他人に与えてたまるか」とか「おまえらは、おまえらで勝手に幸せになればいい。俺は俺の地獄を行く」ぐらいの他者を介在させない根性を見せてみればいいのに。死や病苦という安っぽい業は好きじゃないな。「serial experiments lain」(アニメ、ゲーム)のように「存在」の価値だけを読者に問いかけてみても面白かったのに(攻殻機動隊もそうでしたね)。
現実の世界ではぱっとしないシャドウという面白いキャラがいるのだからこそ、現実と仮想の「存在」が問えるだろうに。やや定番的な流れになっているためシャドウの存在(現実と仮想)が生かし切れていない感じでもったいなく感じています。
この作品をラストを想像しながら、聖書コヘレトの言葉1章17〜18節の「熱心に求めて知ったことは、結局、知恵も知識も狂気であり愚かであるに過ぎないと言うことだ。風を追うようものだと知った。知恵が深まれば悩みも深まり、知識が増せば痛みも増す」という言葉を鬼丸に贈ろう。
2010/02/28(Sun)22:48:210点甘木
千尋です。
 見伊奈の場面は、やっぱりジワッときました。「ホントの人間」っていう言葉が、つらいなあ……。
 鋏屋様もご覧になったかも知れませんが、以前テレビで、たぶん鬼丸と同じ病気の方のドキュメンタリーをやっていました。その方は、もうまぶたしか、動かない。それで意志表示をしているんです。それでも生きる喜びを感じている。でも、そのうち、最後のその部分も動かせなくなってしまったら、生きる希望を失ってしまうと語っていました。暗闇の中で、意識ははっきりしていながら、意志を伝える術をすべて失ったら、それに耐えられそうにないって。私は、それを見て、感動というより、戦慄を覚えました。人間というのは、こんなに強くなれるものなんだろうかと……。そのとき感じたことを、いつか小説にしたいと、ずっと思っていますが、なかなか実現するのは、難しそうです。往々にして、現実のほうが、想像を絶するものが多いのですよね。それでも、表現したいという欲求がある限り、書き続けると思いますが。
 私のために、詳細な解説をして頂き、ありがとうございました! いやもう、大変よく分かりました。そっかー、鬼丸は、脳狙いだったのか。脳狙いって、すごいな。しかし、シャドウって、もしかしてニュータイプ? なーんてww
 鬼丸が、具体的にどういうシステムを目指しているのかは、分かりませんが、システムを変えただけで、世界は変わるのか。鬼丸が傷ついたのは、システムじゃなく、人の心によるものだったと思うけど、でも、いったん道を選んでしまった後って、人間って、修正するのが難しいんですよね。私は、鬼丸が考えて考えて、そして、どんどん歪んでいくのが、いかにも人間らしい愚かさで、いいなと思います。人間って、悪というより、愚かなんですよね。優しさは、弱さにつながり、弱さは、愚かさに変ってゆく。そこに目をつけられた鋏屋様は、すごいと思います。
 私も人様のことはあまり言えないのですが、全般的に、誤変換が多いのが気になります。ひと月でもふた月でもお待ちしていますから、せっかくの面白さを大事になさってください。
 続きも楽しみにしています!
2010/03/01(Mon)20:43:020点千尋
》木沢井殿
感想どうもです。
シリーズ化は1回やってみたかったんです。ここの古参の住人さん達はそう言う作品を持っているじゃないですか。(木沢井殿も含めて)私も書いてみたいんですよw
やっぱり急ぐとあるなぁ誤字誤変換。修正していきますね。レスに先の内容を盛り込むのはダメですね。ついやっちゃうんだよなぁ……イカンイカン。
あ、でも今回は千尋殿への回答なので、自分では先のことでは無いつもりだったんです。しかしそれを物語りで伝えきれない私の力量不足ですね、今後の課題です。
鋏屋でした。

》猫殿
いや、決定かどうかは…… すんません、もう少し考えさせてくださいw(オイ

〉誰かが誰かのことをすこしばかり思いやる、それだけで大概のことは丸く収まるような気もしないでもないので……

↑狂おしく同意。いやまさにそう思います。お互いが悪いって言えば争いに発展しないんですよね。でも最近はそういう事が極端に減った気がします。もう少し他人を思いやる気持ちが合っても良いんじゃないか? って事件が多いですよね。
世界観が好きって言われると嬉しいデス。設定フェチなもので…… ラストまでもうちょっとですが、頑張りますので、最後までおつき合いのほど……
鋏屋でした。

》羽墜殿
見伊奈の話は考えています。ですがあのキャラ、サムより大変です。ですのでもうちょっと考えさせてくださいw

〉今回の話に全く関わっていないような別パーティーの話も楽しそうですし、でも実は意外な繋がりがあったとか、たまらなく好きなのですけどw どこまでも広げられる世界観だなって感じます。

あ、それいいですね。頂きます(マテコラ!) でも次作はたぶんシャドウは出てこないです(ワカランケド) 私もそういうの好きなんですよw
後納得いただけるかわかりませんが、頑張りますので最後までおつき合い下さいませ。
鋏屋でした。

》甘木殿
こちらではお久しぶりでございます。感想どうもです。
仰るとおり確かに安っぽい業な気がしたんですがね…… すみません、引き出し少なくて……
甘木殿のいう『「存在」の価値だけを読者に問いかけてみる』ってのに惹かれました。存在の価値…… なんか凄く心に残る言葉だな。甲殻って押井さんでしたっけ? 彼の作品は好きなんですけどまだ見たこと無いんです。今度借りてみようかな。
シャドウの存在を生かし切れていないというお言葉が耳に痛いですね。う〜ん、確かにここ数話の話ではそうだよなぁ…… キャラを生かし切れないのは悲しい。今後の課題の一つにします。
鋏屋でした。

》千尋殿
感想どうもです。

〉意識ははっきりしていながら、意志を伝える術をすべて失ったら、それに耐えられそうにない……

うわ…… キツイっすねそれ。私はたぶん耐えられないでしょう。
千尋殿のコメはちょっとほろりときましたw 人間は悪っていうより愚かってやつ。鬼丸は愚かなんですよ。悲しいぐらいに。そこに人間らしさを表してみたかったんです。私は人間くさいキャラが好きなんです。悪であろうとしながら、なりきれないとか、強くないヒーローとかねw あと、親父クサイキャラも……
誤変換や誤字が目立つのは申し訳ありません。読み直してぼちぼち修正入れてみます。
鋏屋でした。
2010/03/03(Wed)20:02:390点鋏屋
拝読しました。水芭蕉猫です。にゃあ。
まずは完結おめでとうございます!! 最後の最後、雪乃が行ってしまうシーンで、なんとなく今までのことが思い出されてウルルと来てしまったことをここに告白。最後まで貫き通される王道が素晴らしく良かったです。鬼丸も、最後の最後で欠片のようなものが切り離されて生き残ってて良かったです。言うなれば、ホワイト鬼丸? うん。なんというか、長い間本当にお疲れ様でした!!
こんな拙い感想しか出ませんけれど、このお話は全体を通して本当に面白かったです。シリーズ化は未確定なんですか。残念。この世界観が本当に好きなので、是非ともお願いしますよ(おい
しかし、次のお話も楽しみにしておりますからね。
2010/03/03(Wed)21:05:482水芭蕉猫
 完結してしまったぁぁぁぁぁぁ!!!!
 心に途方もない寂しさを浮かべている湖悠です。終わってしまいましたか……森羅万象、始まってしまえば終わらないものなんてないものですが……いやはや寂しいです。
 鬼丸の回想シーン。あれはとてもよかったです。あのおかげで、クライマックスの高潮感が高まりました。その後のメンバーの感動せざるおえない戦闘。そして、ララの言葉。そして――ラストバトル。やばい、全てが良かった。どのシーンも、どのキャラも、何一つ欠けてはいけなかった。そう、大げさでもお世辞でもなく、本心で俺は思います。
 最後にカゲチカがリアルでもかっこよくなって、嬉しいとともに、何か、息子を送りだす時のような寂しさが。雪乃とマリアの戦いがもっと見たかったです。欲を言えば、またオフ会の様子をみたい……ああ、本当に未練ばかり。それほど、面白かったです。それほど、俺は御作に入りこんでました。
 楽しい一時をありがとうございました。そして、お疲れ様です。次回作を胸をときめかせながら待っております。
2010/03/03(Wed)22:11:012湖悠
こんばんは、明日は早朝から幼稚園に向かわなくてはならない木沢井です。いえ本当、行事というのは大変なものですよ。
 といった戯言はさて置きまして、セラフィンゲイン、完結おめでとうございます。長いようで短いようで、でも考えてみれば長い物語も結びとなって、私も不思議な感慨でいっぱいでございます。
 鬼丸との最後の戦い、あれは印象的でしたねぇ。形としては『対決』でしょうが、そこに持っていった一番の原動力は、やっぱり他の面々なわけで……それにメタトロン、最後の最後で小憎らしいことをやってくれましたね。しかし本来のクエストは別にあるというのが、また想像力をくすぐられますね。シリーズ化は未定とのことですが、そういった楽しみがあるというのも嬉しいものです。
 得るものも多々あり、尚且つ楽しめました。また次なる御作か、別の場所でお目にかかりたいです。
以上、幼稚園に行くといっても、別に子持ちではない木沢井でした。なお、私はこちらの方に投稿させていただくようになってから一年と一ヶ月程度しか経っていませんので、古参と呼べる域にはまだ達しておりません。諸々の意味で。
2010/03/04(Thu)00:14:522木沢井
こんにちは! 羽堕です♪
 シャドウならと最後まで諦めずに足掻く仲間達と、ララの言葉と行動で燃え上がらなかったら男じゃない!! だからこその気持ちのいい展開です。そしてラストバトルでのシャドウの「一度でも人間を辞めちまった」という台詞は、何だかすごい響きました。
 そして『エデン』でのやり取りが良かったです。希望はあるけど、でもちょっと寂しさが残るという感じが好きです♪
 リアルでの智哉の成長も垣間見えて嬉しかったです! 雪乃とマリアは、どんな約束したのかな? ドンちゃんは混ざらなくて智哉的にもよかったなとw とにかく面白かったです! エピローグを読むまでは「智哉たち頑張ったな、おめでとう!」って感じでしたが、読んでしまってから再登場させたい誘惑には是非とも負けて欲しいと思ってしまいました♪
 完結おめでとうございます!!
であ次回作を楽しみにしています♪
2010/03/04(Thu)17:40:421羽堕
千尋です。
 完結おめでとうございます! いや〜、皆さんもおっしゃっておられますが、この作品は、コンスタントにずっと面白くて、本当に楽しかったです。
 キスで復活って、シチュエーションに、涙ものですっ! しかも、ちゃんと大人キスなんだもの……って、妙に細かく見ちゃってスミマセンw でも、これがララでよかった。ドンちゃんだったら、たぶん、その時点で、シャドウは、お亡くなりになっていたでしょうねww
 エデンのシーンが、救いがあってよかったです。私的には、メタトロンの性格が、うまくやったなあって、感嘆しました。人間の形をしているけど、人間じゃない。でも、人間に興味津津で、つかず離れず。私の『天使』のイメージに近いです。ま、『悪魔』のイメージにも近いんですけどね。どっちも似たようなものじゃないですか?w
 すがすがしいばかりの王道っぷりで、読後感が、非常に爽やかでした。
 面白い作品を、どうもありがとうございました! 次回作も、楽しみにしています!
2010/03/06(Sat)17:07:431千尋
》猫殿
長い間読み続けてくれて本当にありがとうございます。王道&厨二臭ぷんぷんの物語だったですが、喜んで貰えて本当に嬉しいです。
前回の『ナイスミドル……』が救いが無いラストだったので、今回は後味の良い終わり方にしたかったんですよw 鬼丸にも救いを残して大円団でちゃんちゃんって感じで。
最終回のシャドウが鬼丸に言うクサイ台詞とエピローグは物語の最初に考えました。もう書きたくてウズウズしてたんです。でもここまでの流れを追っかけて貰って、それで最後を味わって欲しいなぁって思ってました。シリーズ化はしたいんですけどね、別の主人公で。上野文殿の『七鍵』みたいな感じにしたいなぁ…… イツノコトヤラ

》湖悠殿
最後まで読んでくれてありがとうございます。ええもうそんな気に入っていただけるなんて感謝感激ですよw 私もシャドウは息子みたな物ですから、マリアでも雪乃でもどっちでも良いから楽しく幸せに歩んでいってほしいですよww
オフ会の場面がお気に入りとのことで、たぶん次回投稿予定の物語では、全編あんな感じなので楽しんでいただけるかな? って思います。良かったらまたおつき合いのほど。

》木沢井殿
最後までおつき合い下さってありがとうございます。思えば私もこの作品は長いこと『書けなインフルエンザ』を煩っていたさいに、リハビリ目的で書き始めた物で、こんなに長くなるとは正直思ってなかったんですよ。今までの私の作品とは180°違いますし……
つーかコミカルな作品ってこれが初めてかもしれません。こんな砕けた文体も初めて書きました。『今までの自分をぶっ壊そう』と書き始めたんです。最後に智哉が『変わろう』と言ったのは、もしかしたら私の心の声かもしれませんねw

》羽墜殿
最後まで読み続けて頂き、大変感謝です。いつも必ずコメを入れてくれる羽墜殿の『であであ!』には、何度励まされたことか…… もう何かの罰ゲーム? って思うほど(ゴメンナサイ)沢山の作品にコメント入れてるあなたの姿には頭が下がりますよマジでww 羽墜殿のような方が居るからこそ、この登竜門があるんだと私は思います。
あのシャドウの台詞が響いたとのことで、私もあの言葉がずっと書きたかったんです。あのあたりの会話は、この物語を書き始めた頃にPCに保存していた物です。だから羽墜殿のコメントは嬉しかったですww 

》千尋殿
一気読みから完結までつき合って頂き、本当にありがとうございました。
やっぱりヒーローの復活はヒロインとのチューでしょうww そこはこういうガチな厨二王道ストーリーでは外せませんし、舌使わなきゃ挨拶と変わりませんよ(オイ!
ドンちゃんは、私の描写じゃちょっと無理でしたw そっちは猫殿に任せましょうww(マテコラ
メタトロンがミミに化けて出てくるのは途中で思いついた部分です。何か鬼丸に救いを残したくてああなりました。当初の予定に無かった部分なので、喜んでいただけてほっとしましたよ。
空港でマリアと雪乃が会話するシーンは、当初本編に含んで書いてあったのですが、智哉の1人称表現なので、どう考えても無理があり切り取りました。読み手さんの想像に委ねようと思って。でもなんかもったいないので、ブログにアンサーストーリーとして短編でUPしております。もし気になるようでしたら、暇つぶしに覗いてみて下さい。


皆様、こんなしょーもない物語に最後までつき合ってくれて本当にありがとうございました。心よりお礼申し上げます。調子に乗って続編なんぞを投稿するような事がありましたら、その時は『オイオイ調子に乗るなよ』と笑い飛ばしに来てください。
次回作は恐らく以前投稿して休眠中の、これのサイドストーリーになると思います。良かったらまたおつき合い下されば嬉しく思います。
鋏屋でした。

〈短編予告〉
セラフィンゲインで『プラチナスノー』の通り名で知られる絶対零度の魔女、チーム『ラグナロク』のリーダー『スノー』こと世羅浜雪乃は普段はちょっとスローリィなしゃべり方をする盲目の美少女。
そんな彼女が密かに想いを寄せるのは、同じチームの魔法剣士で『漆黒のシャドウ』こと景浦智哉だった。ある日そんな密かな心の内を親友につっこまれた雪乃は、その場しのぎで親友に嘘つくのだが、それがとんでもない話に発展してしまい大慌て!
果たして雪乃はバレンタインデーまでに問題を解決し、無事に智哉に自分の気持ちを伝えられるのか!?

『セラフィンゲイン』の鋏屋が贈る、セラゲンキャラ総出演、奇跡のドタバタラブコメディ!?
がんばれ雪乃! セラフィンゲインは真の勇気が試される場所だ!?
セラフィンゲイン・サイドストーリー
『雪乃さんのバレンタイン?』

「わ、私……か、か、カゲチカ君のことが…… 好――――!」

なぁ〜んて雪乃の台詞があったり無かったり―――
こうご期待!
 
2010/03/06(Sat)19:14:080点鋏屋
続きを読ませていただきました。まずは完結ご苦労様でした。これだけの作品をづっと読ませる力に感服しました。ラストは私の好みではないですが無難な降着点で良かったと思います。システムに個性を持たせた時点で作品が人情話になりましたね。人情話にしたため冒頭にシャドウが持っていたカタルシスが現実感を失ったのは残念な感じがします。では、次回新作を期待しています。
2010/03/07(Sun)21:55:360点甘木
 こんばんは、鋏屋様。上野文です。
 御作を読みました。完結おめでとうございます!
 カゲチカ君は、英雄じゃない。英雄に憧れた凡人で、でも、英雄たろうとする意思を諦めなかった。
 鬼丸、「朋夜」がかつて、もっていた輝き、自身が知らずにカゲチカに与えた強さの契機が、結果的に彼自身を救ったのかもしれませんね。
 ま、まあ、現実では急には変われないみたいですが(そりゃそーだ)
 AI、メタトロンの扱いは、難しい部分もあると思います。ゲームでありながら、神のいない世界で戦うのがシャドウ達の魅力だったのに、最後に”機械仕掛けの神”が訪れたのですから。
 でも、やっぱりハッピーエンドがいいなあ♪
 大変おもしろかったです! 新作も楽しく読ませていただきますね!
2010/03/11(Thu)12:48:041上野文
》甘木殿
レスが遅くなって申し訳ない。いや、まさに仰るとおりで…… 個人的に人情話が好きなだけに、最後に来てこうなってしまいました。テーマが『仲間』とその仲間との繋がりで、自分自身が『変わっていける』ってのがあったので、これもありかな?って思っております。鬼丸というキャラを甘木殿が少し気に入っていただけただけに、残念な気もしますが…… 今後の課題にしますね。PC不調にもかかわらず、最後まで読んでくれて本当に感謝ですw 次回もまたおつき合いのほど……
鋏屋でした。

》上野文殿
感想&ポイント感謝です。智哉は単にカッコつけたがり屋なのかもしれませんね(オイ!)
まあ、男の大半がそうでしょうけどねw だから現実世界では絶対なれない存在になりたくて智哉はセラフィンゲインで英雄を目指したんでしょう。でもその影響もあってか、最後には現実世界でも、仲間と、自分の勇気次第で変われることに気づきだしたってのが今回のテーマの一つです。
最後まで読んでくれて本当にありがとうございます。私も『七鍵』を制覇しなければ!
また別の物語で、おつき合いいただければ嬉しいです。
鋏屋でした。
2010/03/13(Sat)11:31:270点鋏屋
鋏屋様、こんにちは!ロストから生還いたしました、頼家です^^作品を読ませていただきました。
もはや、多くを語りますまい……感動を有難う……。ただ、その一言で御座います。5バイトの脳では若干難しい内容もあり、若干スルーした個所も御座いますが(爆)
仲間が集まり、目的に向かって団結し、達成した後それぞれ(今回は『私の嫁』スノーだけでした)が新たな道に向かって旅立つ……
単行本が出たら、間違いなく買っていただろうとの思いを胸に、彼等との再会も含め、次回作を心よりお待ちしております。お疲れ様でした!
2010/04/03(Sat)16:54:092頼家
合計14
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