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『鬼』 作者:新屋 礼 / ファンタジー 童話
全角3383.5文字
容量6767 bytes
原稿用紙約10.8枚
 とある少年に退治された鬼たちの、いまわの際。 ショートショートの定義にギリギリ入らなかった読みきりです。  
 赤は目を覚ました。
 酷く頭痛がして、胸が苦しい。うまく呼吸が出来ない。
「畜生、飲み過ぎたか」
 声を出すと肺に激痛が走った。酔いの感じではない。
「ここは……?」
 赤はがらんとした岩窟を見渡したが、それは見慣れない場所だった。赤は少し考え、そこが自分達の宝物庫で、宝をあらかた少年に持って行かれたから空っぽなのだ気付き、同時に自分が少年に斬り倒された事を思い出した。
「そうか、やられたのか……」
 赤は呟き、そして大事な事を思い出した。
「青。青。いるか」
 青というのは赤の相棒だった。鬼の最後の二人だった。青はどうやら近くにはいないらしかった。
「青!」
 赤は一際大きな声を上げた。刺されたような激痛が肺に走った。
 赤は立ち上がろうとして、体がうまく動かない事に気付いた。足が痺れている。視界が揺れている。腹部の辺りに激痛が走る。どうやら刀で腹を貫かれたようだ。見れば大量の赤い血が床に溢れていて、今もなお血が吹き出ていた。
 痺れる足を無理やり動かしたが、左足はどうやら動かない。辛うじて動く右足で立ち上がり、壁を伝いながら、赤はなんとか歩く事が出来た。
 青は階段の下で仰向けで倒れていた。
「青」
 赤は階段の上から声をかけたが、その声はあまりに弱弱しく、聞こえるはずもなかった。赤は半ば身体を引きずるように歩き、階段を下り、青の耳元に近付いて、もう一度声をかけた。
「青。起きてるか」
 赤はしばらく待ったが、返事は無かった。
「青! 起きろ!」
 赤は激しく声を荒げた。すると、青がぼんやりと目を開いた。
「……赤か」
「そうだ。赤だ。おめぇも小僧っ子にやられやがったんだな。情けねぇ。あんなに飲むからだ。おめぇもうふらふらだったじゃねぇか」
「は。そうだな。やられちまったな。まぁ酔っ払っちまってた俺らのせいだな。普段ならあんな小僧っ子には負けねぇ。…あいつらは、帰ったのか」
「ああ。帰ったさ。俺らの集めた宝、全部持って行きやがった。ひでぇもんだ」
「は。そうか。こいつは見事にやられたな」
「全くだ」
 赤は答えて、ふと青の顔を見ようとしたが、どうもさっきから辺りが暗い。たいまつが切れたのだろうか。それでも目を凝らし、青の顔を見てみると、
「おい。青。おめぇ酷くやられてるじゃないか」
 青は両目が潰されていて、腹部には刀が突き立てられてあった。右足首は切断されていた。床には大量の血が溢れ、血は半ば固まりかけていた。そして、青の一本だけのツノは、折られていた。赤は慄然した。
「青おめぇ、ツノが折られてるじゃねぇか。なっさけねぇったらありゃしねぇな」
 それを聞いた青は驚いて、触って確認しようとしたが、手はもう動かないようだった。
「はは。折れてやがるのか。ツノが。こいつはおもしれぇ。昔あれだけ折ろうとしたツノが、こんな時に折れやがるなんてな。皮肉なもんだ」
 赤は、昔に青がツノを折ろうとしていた事を覚えていた。こんなもののせいで俺たちは鬼なんだ、と青は叫びながら、泣いていた。
 赤は何も言わなかった。
「赤よ」
 さっきよりもかすれた声だ。
「赤よ。やっぱりやられちまったな」
「やっぱりたぁ、どういう事だ」
「前に言ったじゃねぇか。俺たちはいつか、人間に滅ぼされるってな。鬼は不死身だから、一代限りの生き物だ。交配して、進化していく、人間にいつかやられるだろうなって」
「あぁ。そんな話か。くだらねぇ。今回はたまたまだ。俺もお前もへべれけだったじゃねぇか。この傷が治ったら、思いっきり仕返ししてやろうじゃねぇか。鬼の怖さを見せ付けてやろうじゃねぇか」
 青は、しばらく答えなかった。呼吸が荒くなっている。声が出ないのかも知れない。
「おい。青。どうした」
「いや、なんでもねぇ。確かに飲みすぎちまったみたいだな。目の前が真っ暗で、体が動かねぇ」
「はん。だらしねぇなぁ。ちょっと邪魔は入ったが、夜はまだこれからだってのに」
「そうか。夜は、まだ、これからか」
 赤は、青の言葉がおかしくなって来ている気がした。
「赤、人間は死んだら生まれ変わると聞いた」
「あぁ、そうらしいな。まぁ、人間に生まれ変わると限ったわけじゃないらしいけどな。それがどうかしたのか」
「鬼は、死んだら」
「バカ野郎!」
 赤は青の言葉を遮った。嫌な予感がした。大きな声を出したので、肺が酷く痛んだ。
「ばか野郎、鬼は死なねぇ。鬼は不死身だ。だからこそ鬼だ。不死身の俺たちはいつまでも地上の支配者だ」
 青はそれを聞き、顔だけで笑った。
「そうだったな。鬼は死なねぇ。鬼は不死身だ。だからこそ鬼。だからこそ憎まれて…」
 赤はもう一度叱ろうとしたが、声にならなかった。
「じゃあ、次の、次の国に行ったら、この国は諦めるとして、次の国に行った時は…」
 青の声が途切れた。
「青。次の国で、なんだ」
 赤が問いかけると、青ははっと目を覚ましたように、話し始めた。
「次の国に行った時には、俺は音楽がやりてぇ。この国の祭りってやつを見に行った事があるんだ。でかい音で楽器を鳴らして、人間達が踊ってやがるんだ。そいつは楽しそうだった。だから俺もやってみてぇ。なんか楽器でも弾きながら楽しい歌でも歌ってよ、人間達に聴かせて、みんなに踊ってもらうんだ。きっと楽しいぜぇ。お前もいっしょにやろうや。音楽隊を作るのよ。色んなとこ回って、色んなところで俺たちのお祭りをするんだ。きっと楽しくなるぜ」
 赤は、何故だかふいに涙が流れた。
「はぁ?音楽隊?しょぼくれたお前にぴったりな事だな。しかもなんだ、人間どもに聞かせるってのは。人間が鬼の歌なんか聴くかよ。俺はまっぴらごめんだね。音楽隊ってのがまずありえねぇが、何より人間どもと和気あいあいってのがありえねぇ。どうしてもってならてめぇ一人でやりやがれ。馬鹿らしいったらありゃしねぇ」
 青は、大きく息を吸った。
「そうか…。そりゃ残念だ。俺はおめぇとやりたかったんだがなぁ…」
「は。そんなつまらねぇ話より、飲みなおそうじゃねぇか。夜はまだまだこれからだ。そうだろう?」
「そうだな…。夜は…、まだまだ、これから、だ。だけど、俺はもう無理みてぇだ。頭がぐるぐるするし、なんだか真っ暗だ。灯りがもうねぇのかな?まあ、いい、や。ともかく俺はもう飲めねぇよ。それに…」
 赤はしばらく待ったが、青の言葉が続かない。
「それに、どうしたんだ」
 青はまた、はっと目を覚まし、
「それに、ひどく、眠い」
 言い終わると青は、大きく息を吐いた。
「何言ってやがる。夜はまだまだこれからだ。キツいのを持ってきてやる。それで目を覚ませ。しゃきっとしろ」
 赤は酒を取りに行くために立ち上がろうとしたが、足が痺れて動かなかった。辺りがさっきより暗くなったようで、赤はもう何も見えなかった。
「ははは。青よ。俺もだいぶ飲みすぎてたようだぜ。足が動かねぇ」
赤はしばらく待ったが、青の返事はなかった。
「青。寝たのか」
 返事はなかった。
「寝たんだな。まったくしょうがねぇやつだ。夜はまだまだこれからだってのに。これから楽しく飲みなおそうってのに。おめぇと2人で、楽しく、いつものように、飲もうってのに。ほんと、馬鹿なヤツだ。おめぇはよ」
 赤の目から涙がぼろぼろとこぼれた。
「は。なんだ。目から水が。どうせなら酒が出て来い」
 かかか、と乾いた笑い声を出し、何故だか止まらない涙が流れるのを感じていた。赤は意識が朦朧としてきた。
「青。起きてるか」
 返ってこないと知っている青の声を少し待った。
「青。どうせ寝たふりをしてるんだろう。じゃあ聞こえてるな。さっきの話な、お前の、音楽隊の話だが…、人間どもと楽しくやろうって話だが…」
 赤はまた青の声を待った。
「その話、悪くねぇかもな。次の、次の国でおめぇと音楽隊、やろうじゃねぇか。人間どもと仲良くなって…、お祭り、しようじゃねぇか。俺とおめぇの音楽隊、楽しそうじゃねぇか…」
 赤は大きく息を吸うと、
「青よう、俺も眠く、なってきたみてぇだ。続きはまた、今度話すとしようぜ。へへ。楽しく、なりそうだ。じゃあ、また明日な。青」
 赤は大きく息を吐き、深い眠りについた。
2010/02/06(Sat)04:16:49 公開 / 新屋 礼
■この作品の著作権は新屋 礼さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 読んで頂いてありがとうございます。
 誰に退治されたかとか言わないでくださいね。ルールに反してしまいますので。
 
この作品に対する感想 - 昇順
初めまして。童話、逸話、昔話……それらが好きな者でございます。
落ちなどは、最初から予想できていましたが、退治された鬼の悲哀がよく伝わってきて、ついついポロポロとこぼれ落ちる物が……。
いわゆるベタな感じですが、そうと分かっていて、読んで面白いのが、物語です。良かったです。
他にもアップされているようなので、そちらも読んでみようと思います。ではまた。
2010/02/06(Sat)11:18:450点ミノタウロス
ご感想ありがとうございます!
とても励みになりました。
これからもよろしくお願いいたします。
2010/02/06(Sat)11:44:490点新屋 礼
 初めまして、お初に感想失礼します。勝ち組より負け組に感情移入してしまう、負け犬っころ的新人類フラットと申します。
あの有名なお話、確かに鬼視点からすればこんな感じなのでしょうね。いい解釈だと思います。
 こういう作風の場合、発想はできても表現が追いつかないという事が、執筆の際に、よく陥ることかと思いますが、作者さんが伝えられたいことが明解な文章で表現され、一読者として心地よく読むことができました。
特に台詞回しが好きです、ピロートーク的な。
2010/02/07(Sun)01:25:230点フラット
こんにちは! 羽堕です♪
 赤と青の会話から優しい切なさというのかな、そういう物が伝わってきたように思います。話の展開や文章も分かりやすくて、良かったです。それぞれ好みはあると思いますが、もう少しだけ、もしかしたら! というのがある終わり方でも良かったかなと。
であ次回作を楽しみにしています♪
2010/02/07(Sun)10:18:450点羽堕
ご感想、ありがとうございます!
お褒め頂き、励みになります。
現在小説賞投稿用の長編に取りかかっているためあまり投稿できませんが、読んで頂ける人がいて、感想まで書いて頂ける事がとても嬉しいです。

もしかしたら! の発想はなかったです! ありがとうございます!
2010/02/07(Sun)17:33:050点新屋 礼
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