オリジナル小説 投稿掲示板『登竜門』へようこそ! ... 創作小説投稿/小説掲示板

 誤動作・不具合に気付いた際には管理板『バグ報告スレッド』へご一報お願い致します。

 システム拡張変更予定(感想書き込みできませんが、作品探したり読むのは早いかと)。
 全作品から原稿枚数順表示や、 評価(ポイント)合計順コメント数順ができます。
 利用者の方々に支えられて開設から10年、これまでで5400件以上の作品。作品の為にもシステムメンテ等して参ります。

 縦書きビューワがNoto Serif JP対応になりました(Androidスマホ対応)。是非「[縦] 」から読んでください。by 運営者:紅堂幹人(@MikitoKudow) Facebook

-20031231 -20040229 -20040430 -20040530 -20040731
-20040930 -20041130 -20050115 -20050315 -20050430
-20050615 -20050731 -20050915 -20051115 -20060120
-20060331 -20060430 -20060630 -20061231 -20070615
-20071031 -20080130 -20080730 -20081130 -20091031
-20100301 -20100831 -20110331 -20120331 -girls_compilation
-completed_01 -completed_02 -completed_03 -completed_04 -incomp_01
-incomp_02 -現行ログ
メニュー
お知らせ・概要など
必読【利用規約】
クッキー環境設定
RSS 1.0 feed
Atom 1.0 feed
リレー小説板β
雑談掲示板
討論・管理掲示板
サポートツール

『嵌め殺しの窓』 作者:木沢井 / リアル・現代 ショート*2
全角1008.5文字
容量2017 bytes
原稿用紙約3.45枚
今日、俺はいつものようにやって来た。


「こんにちは」
 俺がそう言って訪れると、彼女はいつものように笑顔で迎えてくれた。
「いらっしゃい」
 どうも、と軽く会釈してからベッド脇の椅子に腰を下ろすと、俺はお決まりの台詞を投げかける。
「それで、今日は何があったんだい?」
「そぉねぇ」
 聞かせるのが楽しみで仕方がない、と言わんばかりの笑みを顔全体に貼り付けながら、彼女は「今日、ツバメを見たのよ。ツバメ」と口火を切る。今日はツバメの話か。
「ほら、そこの家。今も見えるんじゃないかしら」
 彼女が指さす先を見ずに、俺は次の言葉を待った。
「不思議よねぇ。毎年同じような場所に来るんだもの。どうしてかしら?」
 ここいらで、決まって俺に話が振られる。
「さあな」
 でも俺は、そのバトンをすぐさま彼女に返した。「そぉ」と彼女も気にせず、すぐさま話を続け始めた。
「そういえばね、一つ思い出したんだけど、ツバメは秋と冬になると見かけなくなるけど、どうしたのかしら?」
「そういえばそうだな」
 昔、ツバメは寒くなったら暑い国へ行くんだとテレビか本かで知ったような気もするが、俺は相槌に留めておく。
「不思議よねぇ、ツバメ」
 窓の向こう、とっくにツバメが飛び交う初夏の町並みを見つめて、彼女は短く呟いた。
「そうだな」
 俺はただ、相槌を打つ。


 夕焼けに染まる帰りの道すがら、俺は思い出す。
(――「何も話さなくていいから、代わりに一つだけ、わたしの話を聞いてほしいの」――)
 これは俺が、彼女と最初に結んだ約束だ。
 どんなに外のことを聞いても、見に行けないのでは結局塞ぎ込んでしまうだけだから、いっそ聞きたくない。知りたくもない。
 だから、せめて窓から見える、わたしだけの世界を貴方に見て、聞いてほしい――そう彼女は、俺に言っていた。

 ――救いのない話だ。

 彼女は外への関心を半ば以上捨てて、窓から見えるだけの世界に埋没してしまっている。温かくも涼しい、暑くも寒くもない、あの部屋のベッドの上で。
 その原因は分かっている。何度か面と向かって(或いは視線で)非難された経験があるから。
(――「また明日ね」――)
 それでも、毎日聞かされ続ける彼女の言葉を俺の脳からこそげ落とすには足りない。
「……ああ」
 きっと俺は、明日もまた彼女の話を聞いてやりに行くだろう。明後日も、明々後日も、その先もずっと、彼女の声が俺の中に残り続ける限り。


 嵌め殺しの窓は、開かない。
2009/04/06(Mon)19:24:38 公開 / 木沢井
■この作品の著作権は木沢井さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めての方にははじめまして。それ以外の方にはTPOに則った挨拶をば。三流物書きの木沢井です。
毎日のようにダラダラと長ったらしい話ばかりを書いているからなのでしょうか、衝動のままに習作を兼ねて作ってみました。
どのような感想・ご指摘でも幅広く受け付けております。ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
この作品に対する感想 - 昇順
こんにちは! 読ませて頂きました♪
 彼女自身が自分の事を諦めているようで、それを主人公も受け入れている形が、悲しくもあり、それでいいの? と問いかけたくもなったり、でもそれが優しさのようにも感じれました。
 この先の未来で、嵌め殺し以外の窓を持つ事が出来たなら、いつかそれを開けられればと期待してしまいます。
では連載の続きも期待しています♪
2009/04/07(Tue)16:20:500点羽堕
>羽堕様
ご感想ありがとうございます。
限られた情報だけで、人はどんな解釈をするのだろう? という疑問も手伝いつつ、半ば勢いで作った代物ではございますが、そんなにもたくさんのご感想をいただけて嬉しく思います。
では、次は連載中の拙作でお会いしましょう。
2009/04/08(Wed)00:22:390点木沢井
読ませていただきました!
「何があったんだい?」という問いかけに対して返されるのは、窓から見える景色の話に限られてしまった二人の、「可哀想」だけではとても表現できない悲しさが伝わってきました。
普通なら退屈すぎる狭い世界、文句もなく浸ってしまっている彼女に、何とも言えない虚しさを感じました。
心に染みました^^他作の連載も応援しています!
2009/04/10(Fri)17:16:070点泡球
>泡球様
ご感想ありがとうございます。心に染みたとは、また非常に嬉しいことを仰って下さいますね。
小難しい話やらギャグめいた話ばかり書いていた反動なのでしょうかね、思いついた当初のイメージとは大きく違った、温かいような冷たいような感じの、よく分からない話に仕上がりました。
それでは、次はユーレイ噺でお会いしましょう。ちなみに、あの二人が何者で、どのような関係なのかはお好きなように想像して下さって結構です。
2009/04/11(Sat)00:06:560点木沢井
興味深く読ませていただきました。同じ時間、同じ空間にいながら、おそらく両者とも、別々の時間と空間を生きているのでしょうね。それでもなお足を運ぶ主人公の「俺」に、稟性のやさしさを感じて、わたしは救われた気になってしまいます。連載も、また読ませていただきます。
2009/04/18(Sat)01:45:470点神坂ノベル
>神坂ノベル様
興味深いご感想ありがとうございます。
なるほど、たしかにそういう見方もできますね。「俺」にとって、彼女の部屋はどこまでいっても延長線上にあるのに対し、彼女にとっては自身の部屋とその窓の向こうから見える景色だけが、ということでしょうか? 彼らもインスピレーションから生まれたクチなので、どうも私にとっても手に余る感じがします。
それはさて置くとして、次は貴方様の御作か当方の別の拙作でお会いしたく思います。
2009/04/19(Sun)23:42:560点木沢井
作品を読ませていただきました。なんとも不思議な感じがする世界観ですね。トーマス・M・ディッシュの『リスの檻』のように、世界の情報は入ってくるけど世界には触れられないという世界のようだ。なんとなく1970年代に流行った古いSFを読んでいる気分でした。では、次回作品を期待しています。
2009/04/26(Sun)23:07:520点甘木
>甘木様
ご感想ありがとうございます。
ううむ、私は仰られている作品は未読なために話を掘り下げられないのですが、不思議な感じの、といった部分はありがたくいただきます。古いSFですか、自宅を探せば見つかりそうなので近々探してみようかと思います。
2009/04/28(Tue)23:12:540点木沢井
合計0点
名前 E-Mail 文章感想 簡易感想
簡易感想をラジオボタンで選択した場合、コメント欄の本文は無視され、選んだ定型文(0pt)が投稿されます。

この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
スタッフ用:
投稿者用: 編集 削除