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『嘘が上手な女の子』 作者:ここあ / 恋愛小説 未分類
全角1719.5文字
容量3439 bytes
原稿用紙約5.4枚
嘘ばかり言って、本当のことは何一つ言ってくれない。
 朝はまだ来ない。しかしそこだけが進んでいるかのように光が閉じたり開いたり音を立てた。周りは置いていかれたままで静寂だけが長崎加奈人を包む。冷蔵庫の音は時折その静寂を潰すだけ。その他に聞こえるのは、長崎の呼吸音。

 閉じる。開く。

 空腹を訴えている訳ではない。喉の渇きを訴えている訳ではない。ただ、足りない。「無いものねだりじゃない」彼女の声が何処からか聞こえて、慌てて頭を振る。無いものねだりじゃない。ただ、欲しいだけ。欲しいものが何か分らない、それだけ。心の空腹。言い当てればそんな感じだ。体の何処か一部分が欠けてしまっている様な、或いは体の何処かに風穴が開いているような。

 外から水音がした。ぽた、ぽた。水道の蛇口から漏れている水の音ではない。外から、恐らく雨。

「みず、みず、みみみ」

 彼女の名前にも水が付いていた。みず、みず。それからは、覚えてない。水田。だったかもしれない。水谷、だったかもしれない。水木だったかもしれない。どれかは分らない。ただ、そんな感じの名前だった。

 嫌な感じだ。頭の中に薄っすらと靄がかかって、苛々が募る。ふと、彼女の顔が浮かんだ。茶色の跳ねた髪を持つ、うそつきなおんなのこだ。巧みな嘘で人を貶す意地悪な人だ。言い掛かりを付けるのが得意で、音楽が苦手な彼女。

「みーず、みずみず、みず」

 いつのまにか冷蔵庫を開け閉めする音は消えていた。冷蔵庫に背を預けてしゃがみ込む。みず、みずさわ、みずおか、みず、みずみず。

 次に幼馴染の顔を思い浮かべる。彼女なら、知っているはずだ。

 ぷるぷる、ぷるぷる。ぷるぷる、ぷるぷる、ぷるぷる、ぷ!

「……なに、よぉ、加奈人?」
「おぅ、おはよう。寝てた?」
「ったりまえでしょ!何時だと思ってるの!」
「さぁ?」

 起こられる覚悟はしていた。思っていたよりも短かったのは想定外だ。「で、なに?」

「みず、みずみず…」
「は?」
「ほら、転校して行った、茶色い髪の、あの」
「…ああ、水谷さん?」

 数秒経って、名前が受話器越しに滑り落ちる。みずたに。やっぱりみずがついていたのか。

「なに?水谷さんがどうかした?」
「下の、名前は?」
「は?何?」
「下の、な、ま、え」
「下の名前…ちょっと待って」

 受話器から声が遠ざかるのが分った。がざがさがさ。何かを漁る音が聞こえる。きっと連絡網でも探してくれているのだろう。相変わらず良い性格をしていると思う。良い幼馴染を持ったとも思う。

「あった、もしもし?加奈人?」
「あい?」
「水谷さんの下の名前だけど」
「うん」
「麻里奈。水谷麻里奈だよ」
「……漢字は?」
「あんたねぇ…まは、ええと、麻縄の麻で、りは里、奈はあんたのなと一緒だよ」
「麻縄の麻に、里に、俺の奈…」
「もしもし?ねえ、なんかあった?どうしたの?」

 ゆっくりと、口には出さずに繰り返す。ま、り、な。何度も何度も繰り返す。

「ねえどうしたの?ねえ」
「良い名前だよな、まりな、まりな」
「……あんたさ」

「水谷さんのこと、すきなの?」言われて初めて、気が付いた。すき?だれが、だれを?

「ん、そーかもしれない」
「な!」
「好き、うん、好きだわ、じゃ」

 もしもし。ぴっという音をたてて通話を終了させる。すき、好き。好き、なのかもしれない。というのは、嘘だ。携帯を右手に持ったまま、再び冷蔵庫の前に立った。もう一度、扉の開け閉めを繰り返す。ほら、まだ穴は開いたまま、塞がってはいない。

 我ながら最高の嘘だったと思う。俺が?あのうそつきおんなの水谷麻里奈を?嘘だ、嘘に決まっている。

 そういえば、俺は彼女に本当の事を言った覚えは無かった。嘘ばかり言っている彼女は嘘を言う人を酷く拒んだ。冷ややかな目で見下す。「うそはきらいよ?」お前はどうなんだ?そう聞き返したかったが、それは言わないでおく事にした。言えばどうなるのだろう。彼女のポーカーフェイスが崩れたかもしれないのに。あのときは惜しかった。本当に。

 本当の事を言わないのは、嘘よりもっと悪い事なのかもしれない。なんとなくそう思った。今の俺は、嘘を飄々と言っていた彼女のように、上手く笑えていただろうか?
2007/12/12(Wed)21:19:08 公開 / ここあ
■この作品の著作権はここあさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
こんばんは。山内まりなと申します。
この話は、嘘ばかり言っている少女、水谷麻里奈に恋心を寄せる長崎加奈人の話です。
友情と恋の微妙な境目を表しました。
言って良い嘘は存在するのか? 本当の事は何なのか?
もう一度嘘という意味を考えてもらえると嬉しいです。
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