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『not simple』 作者:M6 / 未分類 未分類
全角5022.5文字
容量10045 bytes
原稿用紙約16.55枚
性別は? 男と女。
自分の長所や短所は? ありすぎて答えられない。
趣味は?   色々。
人を殺したことは? あると言えばある。無いといえば無い。
名前は? 



身分証明書もパスポートも意味が無い。
時々、自分が「風間 翔」なのか分からない時がある。
カレンダーのようにパラパラと変わっていく。
季節より速く 一時間より遅い。
俺は誰なんだ?   




天気。雨。のち。晴れ。
湿度。60%。気分。最悪。
時間。Pm7:00。遅刻。

「ま〜た遅刻か!? 翔ちゃんよ」
「うるせぇ。ジメジメしてて気分悪りぃんだよ」
「言い訳にならんよ。とりあえずハゲ課長も遅刻常習犯のせいで気分悪りぃぞ」
「はぁ〜。面倒くせぇ」
ハゲ課長に説教される事約1時間。これならサボッた方がマシだったな。まぁ、給料いいから我慢するけど。それにしてもいつにも増してここは慌しいな。
ディスク越しから窓を覗く。いくつもパトカーがサイレン鳴らして出て行くのが見える。
「お〜い翔」
「あん?」
「またイカレ事件だよ。プロファイリング頼むぜ?」
「またかよ。いつになったら休みが入るんだ? 刑事ってもっと楽じゃないのかよ?」
「バ〜カ。そんなんだったら俺は女とキメてるわ」
バタン。ドアを閉めタバコに火をつける。相変わらず空は晴れない。
「あの嘘つき番組め」

ファイル1 「嘘つき番組」

天気。小降り。のち。晴れ。予定。
気温。24℃。寒い。
場所。公園。
死体。バラバラ。

「何が言いたいんだろうね〜?」
「あっ。秋元警部。どうもです」
「お〜トモちゃん。相変わらず可愛いね〜」
「おい、圭介。コレか?」
「ん? あぁ、何が言いたいんだろうねソイツ」
    
     助けて

それは一部一部キレイに切り取られ並べてあった。手や足はもちろん指、目、股、腕。
バラバラにされ一つの文字としてあった。よく鳥が食わなかったもんだ。
「どう? 何か読み取れた?」
「…………」
「えと、死亡推定時刻は15:00〜17:00となっています。ご老人が犬の散歩中に犬がやけに吠えるのでよく見てみたらこのようになってたようです。どれも皆キレイに切断されて出血あとがあまり見られない、との事です」
「さっすがトモちゃん! やること早いね〜」
「あ、いえ」
「目撃者は?」
「あ、何の報告もありません」
「身元は今調べてるらしいね。で、先生さんよ。どうよ?」
「かなり殺ってるよコイツ。出血を止めるならベルトか何かで止めればいいけどコイツは血があまり出ないように切断してる。……きれい好き。多分、潔癖症。殺しに美学を求めるタイプだよ。前とは大違いだな」
「あぁ。前はこんなご丁寧にされてなかったな」
ガヤガヤ ザワザワ
パトカーのサイレンに集まってきたのだろう。野次馬が集まってきた。そして、さっきまで小降りだったのに少し強くなった気がする。切断部分からは血が滲んでいる。今回のこのバラバラ殺人事件。(文字遊び事件、ネーミングは圭佑)これで2回目になる。内の課長もかなり悩まされて髪の毛があと4本しかないって噂が今現在も流れているような。
そんなことより、前の事件は今回と同じく体がバラバラされていたが殺り方は半端じゃなかった。切断といっても斧でブッタ切りにされたようにグチャグチャにされ下半身の方は手でもぎ取られたような有様。辺り一面壁の色でも変えたのか真っ赤に染まったのを覚えている。そしてその時も文字はあった。
「今回は【助けて】そして前回は【食べちゃうぞ】だったな」
「あぁ、多分また殺るよコイツ」
「あ〜ヤダヤダ血生臭くて。殺人課なんか入ったのが間違いだったな」
「何いってんだよ。好きなくせに」
「へへ、バレたぁ?」
空は今にも落ちてきそうな色。淡色というのだろうか。ポツポツと降っていた雨はザーザーと変わっていた。この事件ただの殺人事件とは思えない。何処か何か近いものを感じるのは気のせいだろうか? 最初の事件のあの文字、恐らく。退行。なら二つ目は主格、か?
「お〜い考えんのは後にして、飯食いに行くぞ」
「ん? あぁ」
現場を後にし車に乗り込む。
「とりあえずトモちゃんにそれらしい人物ハック兼ねて調べてもらってるからよ。このファイルを本庁に届けてフォルクスでも行って」
「そのファイルってアレか?」
「あぁ。迷宮入りのな」
「まだ分かんないのか」
「死亡者250名。行方不明者150名。永田町のマンション世帯から突然起こった大量殺人事件。昨日までガキんちょはサッカーボールで遊び、奥様達はお決まりのおしゃべりタイム。それが一夜にしていきなり死んで消えた。死亡者はそれぞれが違って斬殺されてりゃ銃で撃たれりゃ、手とか千切れてたり、まさに地獄だね。アソコは。今回みたいにメッセージとかねぇし指紋とか出てこない。何より調べるのに時間食っちゃてるから捜査行き詰ってんだよね〜。ま、複数犯ではあるんだけど。宗教団体とかかな?」
「さぁ。でも殺人というより自殺って感じがするんだよな。アソコ」
「おいおい。勘弁してくれよ〜。250人の人間が集団自殺ってか!? 世も末よ!?」
「………あぁ」
「っと、到〜ちゃく〜」
空に逆らうよな縦長いビル。一応俺の職場。警視庁の殺人課に所属し、プロファイリングまがいな事もやってる。事もというのは俺は元々ただの刑事で、殺人事件の現場の時に相手の心理を口にしたら課長に惚れ込まれ今に至る。
「あっ! 美夏ちゃ〜ん! どう? これから俺と素敵なディナーをとらな〜い?」
あそこで歯をキラリと光らせているバカが俺の同僚。「秋元 圭介」。調子者で女好き。昔からの付き合いでコイツのせいでここに入ったようなもんだ。
「おい圭介。とっととソレ出して………」
振り向く。長髪の赤いジャケットを羽織った女。胸にべっとり付いてる嫌な感触。明らかに俺を意識している。サングラスを掛けているから目は見えないが間違いなく同類。時間にしたらあっという間だろうが俺には舐めとられるように長かった。
「ん〜? どうした翔。汗だくだぞ」
「えっ? ………」
「おっ。ま〜た降って来やがった。お前の言うとおり全然あたんね〜な」
「あぁ。あの嘘つき番組」



天気。曇り。のち。雨。
気温。16度。湿度30%。
場所。マンション402号室。
快楽者。3人。

「どうだった? 翔って人」
「感覚はいいんじゃない? 私の事も気づいたし」
「どうでもいいけど、その、格好、やめろ。見下ろされる、の、ムカツク」
「はいはい」
そう言うと女性は女の子に変わった。身につけてた服も靴もブカブカで顔も10歳くらいの子供だ。彼女はポケットからアメ玉を取り出し口に入れた。
「結構しんどいだよねコレ」
「あんまり無駄使いすんなよ。もう研究は終わったとはいえ数も少ないし」
「分かってるわよ。着替えてくる、ってアレ?」
「あん?」
「美砂は?」
テーブルの上に座ってる少年がナイフで何かを刺しながら答えた。
「遊び、いった」
「またぁ〜? あんま派手にやると……ねぇ? 新太」
パソコンをカタタと規則正しく動く指は違う生き物に見えた。ディスプレイには「4人の天使と異徒」と書いてある。
「平気じゃない? アイツなら」
「まぁ、いいけど。んじゃ着替えてシャワー浴びよ」
「おい、報告はどうすんだよ? 杏奈」
「新太がやっといて」
そう言うと彼女はバスルームに向かった。はぁ〜とタメ息をつく。此処にきてもう四ヶ月は経つ。言われたことは二つ 「派手に殺れ」そんな事言われても殺しとなると美砂がすぐやっちゃうから必要ない。もう一つは 「美砂と同じ者を捜せ」 これにはかなりの手間がかかった。何度もハックしてやっと見つけ出した。多分、もう少しで。
「おい和也。グッチャグッチャうるさいぞ」
「き、きらいか? この、音」
「どうでもいいからその死体捨てとけよ。明日燃えるゴミの日だから」

ファイル2 「燃えるゴミの日」

天気。曇り。のち。雨。
気温。36度。気分。何がなんだか。
場所。公園ベンチ。

「暑い……」
「今人気No1の言葉だな。そこら中で溢れてるよ」
「なんでもっと……」
「涼しいとこにしなかったか? ふざけんなよ、勝手に決めてたの何処の誰だ? あん?」
「ヤバい。頭がぼんやりとしてきた」
「あん時もっと考えて待ち合わせ場所を考えりゃよかった……」
ドサッとベンチの横になる。
本庁から歩いてすぐの公園。大きさはそれ程でもないが子供も多く活気もある。あれから5日が経った。大した事件は起こらず平和な日が続いているが、それも今日で終わりそうだ。
黒須さん(トモちゃん)が得た情報は最近国防省が頻繁にハッキングされている事と宗教のサイト。このサイトは何処にでもあるフレーズで「神を信じなさい、あなたの国はすぐにそこに……」などイカれてる奴等の集まるとこだが本当にイカれていた。日記。管理人の日記を見てみるとこの前の事件の事が書いてあった。しかも正確に書いてあり、死亡予定時刻や死因、さらに俺が考えたプロファイリングまで。最初は警視庁の中にいるのかと思ったがそれらしき人物はいなかった。
圭介いわく「そんな奴の臭いはしね〜よ」らしい。まぁ、あいつがそう言うなら間違いないだろう。そしてそのサイトのチャットルームでD.D.Dさんという人と知り合いになることが出来た。会話の内容には近いものが感じられた。打ったのは黒須さんだが指示したのは俺。思考がほとんど殺人思考といっていいほど。人の殺し方やソクラテス、孔子の事などで話し合いコンタクトがとれることが出来た。
「時間は2時のはずだけど」
「忘れてんじゃね〜か? ヤバい奴は昔から時間にルーズなんだよ」
「何だそれ……」
「こんにちは〜〜!!」
「うわっ!」
「あの〜翔さんですよね?」
「あ、はい。えっとD.D.Dさんですか?」
「はい! 初めまして。あえて嬉しいです!」
その少女歳は14ぐらい。派手なTシャツと所ごろ破れているジーパン。どう見えても何処にでもいる普通の子だ。本当にこんな子が事件の事を知ってるのだろうか? その子は隣に座りある紙を見てつけてきた。
「これは?」
「私の通っているサイトの方針とイベント予定表です」

「四人の天使と異徒」

全体方針:神の起こした事はどんな手段でもいいから使い情報を集めること。
部分方針:私達は使徒。この世にそぐわしくない者は消してもよい。

イベント予定: 9月 的当て大会
        10月 早食い競争
        11月 かくれんぼ
        12月 鬼ごっこ
        1月  缶蹴り

相手は恐らく人を殺して快楽を得る。殺楽者。一番厄介な相手だ。俺達の間では快楽者は殺人を犯す、死体を見るなどそれが日常となっている。つまり命が奪われる、奪う事に感して恐ろしく鈍感で何も感じない。何が発端か分からないがいきなりスイッチがOFFからONに変わったように人を殺す。だが、殺楽者は違う。彼等は普段からそのスイッチを持ち自由に切り替えられる。つまり幼稚なのだ。子供のようにワガママでしたけりゃヤル。これが彼等の心理。殺人を犯しそこに自分の存在意義を求める。生きるタメに殺す。食料にするなら分かる誰でもやることだ。彼等は殺しが食料なのだ。
「どう? すごいでしょ? ここの管理人さん」
「うん。驚いたよ。殺楽者かな? 彼は」
「そうだよ。さすがだねお兄さん。殺し甲斐あるよ」
「え?」
「捨てろ! 翔」
真っ白だ。何も見えない。何が起こったんだ?
「おい! 翔!」
「爆発の光をモロに浴びたから目のレンズが調節しきれてないのよ。でも彼女がいるか平気でしょ?」
「黙れ。瞬殺してやるから」
カチャリ。背中から銃を取り出す。
「そんな玩具で?」
「大人の玩具さ」
白い銃と黒い銃。片方の黒い銃は手に余るほど大きさ。白い方は普通のサイズ。
さっきの爆発で人が集まりだしてきた。あまり時間は掛けられない。すぐ目の前には本庁もある。とりあえず両足を潰す。ここで殺せばまた面倒な捜査の繰り返しだ。縛り上げて全部吐かせてやる!
「フフ、もう少しなのに。我慢できない人って嫌い」
「俺の守備範囲は17〜26までなんだよ。運がなかったな」
ダメだ。全く体が動かせない。目も見えないし、音もほとんど入ってこな……え? ちょ、待てよ。ヤメロよ。待ってって! ヤメっ……。

「あ。和也〜! ちゃんと捨てたか〜? ゴミ収集車来ちゃってるぞ〜」

2007/10/20(Sat)14:40:57 公開 / M6
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