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『O君とH君』 作者:カオス / リアル・現代 未分類
全角5246文字
容量10492 bytes
原稿用紙約16.4枚
地球に置けるニンゲンの必要性について。今日も今日とて、O君とH君はだらだら詰まらない会話をする。このふたりに、進化はあるのだろうか。
 O君は、H君より世界に厳しい。
 H君は、O君よりニンゲンに厳しい。
 O君は、H君よりニンゲンとしてマトモ。
 H君は、O君より全てにおいてギリギリ。

ふたりは、仲が悪いから仲良し。


「ニンゲンとは、全く持って世界の邪魔にしかならないイキモノだね」
 四階の教室の窓際で、H君は頬杖をつきながら校庭を見下す。その表情は春の海のように静かだ。
 対するO君は、額に十字路が三つも四つも浮かんでいる。そうとう、怒っていないとこんな額にはならない。
「お前、そんなこと言う暇があったら問題を解け」
 O君のシャーペンの差す先には、真っ白な解答用紙が一枚ある。答えはおろか、名前すら書いていない本当に真っ白な解答用紙だ。H君は、まず自分の机の上にある解答用紙を視界に入れ、それからO君の額の十字路を興味深げな表情で見る。
「はぁー。どうしてこうも、君は怒りっぽいのだろうね。少しばかり同情するよ、O君」
「僕はお前の頭に同情してる。さっさと終らせろ」
「冷たいなぁ。せめて、手伝ってやるとか暖かい言葉はないのかい? それにこんな小テストが出来なくても、そんなに大きな支障は出ないだろう?」
 H君はそう言うと、また窓から校庭を見下す。校庭では、サッカー部の少年がサッカーボールを追いかけ、陸上部の少女が等間隔に並べられたハードルを飛び越えて行く。
 世界は回転している。地球が太陽の周りを回りながら自転するように、水が状態変化をするように、空気が風になるように、血液が身体中を循環するように。

 世界は動いている。


 H君はゆっくりと瞼を下ろす。そして、酷くゆったりとした調子で諳んじ始める。
「大道廃れて、仁義あり。慧智出でて、大義あり。六親和せずして、孝慈あり。国家混乱して、忠臣あり………」
「は?」
 O君は驚く。O君の耳が確かならば、今H君が諳んじたのは漢詩か古文だ。しかも、H君の目の前にある真っ白な解答用紙は漢詩だ。
「………そうだな。口語訳すれば、『仁義と騒がれるのは、大道が無視され。虚像が生まれるのは、知の限界が忘れられ。徳目が説かれだすのは、自然の情愛が失われ。忠臣が現れたのは、国家が乱れたからだ』だと思ったよ。まぁ、私のうろ覚えだけれどね」
 校庭は先ほどから騒がしい。それに比べ、この教室の何と静かなことだろうか。針を落とした時の微かな音さえ聞こえそうだ。
 O君は、ぽけっと口を開けたままだ。
「これは、老子の言葉でね。かれこれ、三千年くらい前だろう」
「………で?」
「『で?』何だ、O君?」
 H君は、O君より頭は悪いが口喧嘩ではO君にも負けない。
「それと、この真っ白な解答用紙が同関係あるんだ?!」
 やっと、本来の調子を取り戻したO君は一気にまくしたてる。
「………すごいパラドックスだと思わないかいO君よ?」
 H君は、にぃやりと嗤う。
 O君は、何かに囚われたようにH君の言葉を聞く。
「私は、この世界もそうだと思うのだよ。………良いかいO君? この私たちが居る地球と言う星は太陽の周りに大きな『環』を、一年もかけて描くだろう。そして、私たちの血液も少しばかりの時間をかけてニンゲンという周りに『環』を描く。 このニンゲンの『社会』の多くで取り入れられている経済は、『資本主義経済』。この『資本主義経済』の大きな原則は進むこと。なのに、ニンゲンは大小の『環』に囲まれている………否、囚われてると言った方が良いのかな………? まぁ、どちらにしろニンゲンは『環』なしでは生きて行けないだろう」
 
「O君。すごい逆説的だと思わないかい?」

 H君は、楽しそうに言う。
「………それと、解答用紙とどう関係あるんだ」
 O君はぐったりと言う。
「うんそこは、ね。 あの漢詩は、三千年くらい前に創られたと言ったろう?」
「ああ」
「それなのに、ニンゲンはちぃとも変わらないじゃないか。幾ら科学技術が発展した所で、それは表面上のことで、ニンゲンの人間性はちぃとも変わらない。………哀しくならないかね、O君?」
 O君は、無言でH君の頭目掛けて消しゴムを投げる。消しゴムは、H君の額に激突する。『痛いじゃないかO君』と、H君は目線で訴えるがO君の分厚い眼鏡に跳ね返される。
「僕は生活水準が上がればそれで良いと思ってる」
 それを聞くと、H君は『はぁ〜』と酷く馬鹿にした表情で首を横に振る。
 また、O君は消しゴムを投げるが今度は、あっさりと避けられる。消しゴムは、一回弾むとそのままころころと、転がって行く。
「ニンゲンは確かに、石器時代よりも脳は進化した。それは、認めよう。しかしそれは、『平安時代や江戸時代より脳が進化した』ということではないのだよ。科学技術や生活水準・医学は確かに、その時代に比べると格段に進化した。だが、それは『ニンゲンの脳が進化した』と『イコール』では結べない」
「何故だ? 科学技術の発展には、脳の進化が不可欠だろう?」
 O君は床に転がった消しゴムを目線で追いながら、不機嫌な声で言う。O君に取って、平安時代や江戸時代の人々と比べられるのが不服なのだろう。
「そういう訳ではないのだよ、O君。 科学技術の発展に脳の進化は必要ない。ある一定水準に達した脳がいくつもあれば、技術は進化して行く」
「……………」
「記録された、モノをどんどん更新して行けば良いだけなのだよ。ニンゲンが多くの知恵を集め、記録し、活用していった。結果が技術の発展だ」
 H君は、解答用紙で紙飛行機を折り始める。
「そうだねぇ、分かりやすくするとニンゲンの知恵が詰まった場所を図書館としよう。そして、知恵を本とする。 もしそこでO君、君が良く飛ぶ飛行機を作る本と鳥の飛ぶ仕組みの本を読んだとする。その後君が、鳥のように良く飛ぶ飛行機を作った。…………それは、君の脳の進化と言えるかい?」
 紙飛行機は、解答用紙で折ったにしては中々様になっている。それを、H君は窓から飛ばす。ゆぅらり、ゆぅらりと、空気の中落ちて行く飛行機は夕日に照らされ赤い。
 消しゴムはH君の前の机の下で止まっている。
「………言えないな」
「そうだろう。それに、ニンゲンは自分たちの力だけで、地球を救えると思っている。自分たちが原因なのにね。それも、『進化した』と誤解している脳でだ。自分たちが、大いなる『環』の中に居るくせにそれを考えようともせずに、進むことだけを考える『社会』を作り出し。進むことだけを考え続ける。 そんな割には人間性が三千年前から変わりもしないのに、思い上がりも甚だしいじゃないかい」
 口調は怒るでもなく、悲しむでもないとても平坦な口調だ。逆にそこが、怖い。
 H君は、時々すごく厳しい。その時の言葉は、鋭い刃にも薔薇の荊にもよく似ている。
「ニンゲンにとって地球は水と同じく必要不可欠だが、地球に取ってニンゲンは必要不可欠でもなんでもないよ。それで、地球を救おうと言っているんだ。全く、ニンゲンというイキモノは本当に邪魔な上に必要ないね」
 O君は、ちょっと怖くなった。今日のH君はいつもと違って怖い。
 校庭の騒がしい声が、遥か遠くに聞こえる。
「分かってくれて嬉しいよO君。…………さて、帰ろうか」
「………ああ」
 そう言うと、二人はバッグを持って教室を出ようとする。
 しかし、世界は中々人の思うように行かないからこそ、生き甲斐があるというものである。
「………ってちょっと待て! お前、解答用紙の紙飛行機、飛ばしただろう!」
「ちっ!」
 O君がそう言うのが、速いかH君は一目散に走り出している。

 O君は、H君より間抜け。
 H君は、O君より脚が遅い。

ふたりは、微妙な仲良し。


H君は、O君より背が少しばかり高い。
 O君は、H君より髪が少しばかり長い。
 H君は、口が悪くて性格も悪い。
 O君は、頭が良くて元気が無い。

ふたりは仲が悪くて良い友達。

「ねぇ、O君よ」
「何だよ」
 H君がO君に話しかけると、いつも同じ言葉が返ってくる。
「冷たいなぁ。もっと、友に優しく出来ないのかね? 私は、とても傷ついているよ。俗にいう『ハートブレイク』だよ」
 O君は無言でH君の頭を、ぽかり、と叩いた。
「馬鹿かお前は?」
 O君は眼鏡をかけている。だから、頭が良さそうに見える。実際頭が良い。けれど、何故か口喧嘩ではH君に負ける。それが、悔しいからO君はその悔しさを暴力で返す。H君は、暴力に訴えることはしない。腕力がないから。だから、口で喧嘩をすることに決めている。
「嗚呼、神よ! 何故、私の友はこんなにも非道なのですか!」
「お前はキリスト教信者じゃ、ないだろう」
「……はぁ〜。何も分かっていないなぁ。いいかい? O君よ」
 H君は、わざとらしく溜息を吐くと肩を竦めて首を振る。O君はそれが、お気に召さなかったようだ。また、ぽかり、と叩こうとするもH君はひょいっと避ける。
「いいかね。キリスト教に置いて、ニンゲンの定義は『神の子』なのだよ」
「そんなものお前に言われなくても知っている」
「うん。なら話は、速い。子供が親に頼るのは、当然のことだろう?」
「それが、お前の台詞とどう関係がある?」
「神は、ニンゲンの親に当たるだろう? だって、『神の子』なんだから。子供はよく親に救いを求める。我々は、『神』という実体亡き親に救いを求めているのだよ。分かるかね? 私がさっき言ったことは、当然のことなのだよ」
 H君は自分の都合の良いように、話を解釈する。人は、これを個性と呼んだりする。けれど、O君は『客観性に欠ける』という。
「そして、子供は親に多大なる尊敬と畏怖の念をおくっている。それは、嫉妬とも呼べるし憧れとも呼べる。良いかいO君? 我々は常に『神』という親にそういう感情を抱いているのだよ」
「僕は、『神サマ』なんか信じてないぞ」
 そういうと、H君は目を見開いてO君を見ると『ふん』と鼻で笑った。O君は、『鼻で笑うな』と低い声で言って持っていた雑誌で、ぽこん、と頭を叩いた。
「まぁ、言うと思ったよ。でも、君がどう言おうとこれはニンゲンの深層心理だ。否定は難しい」
 H君は、そこで言葉をきる。そして、また言葉を紡ぐ。
「O君。君は、絵を描いたことがあるかね?」
「普通に生きていれば、絵は描くだろう。普通に」
「うむ、そうだね。それは、世界に一つしかない絵になるだろう?」
「模写かパクリじゃなければな」
「私は、それを『親』に対する反抗または真似だと思うのだよ」
 O君はじっとH君の話を聞いている。
「子供は良く『親』の真似をするだろう。我々は『神』を真似てオリジナルのなにかを創ろうとしている。それは、我々も『神』になれると思っているからだ。どんなに幼い子供でも、親になる時が来るだろう。我々は、それを成し遂げようとしているのだよ」
 H君はごそごそと自分の鞄を探りはじめる。中から、高さ二十センチ程の縦長の箱を取り出す。
「例えば、こんな風に……」
 箱の中から現れたのは、日本文化の結晶? とも言えるフィギィアだ。
「そ、それは! かなりのレアモノの『パンダ耳ッ娘〜セーラ服〜』じゃないか!!」
 O君は、ムツッリだったりする。
「おぉ! 友よ、このレアさが理解できるのか! 嬉しいなぁ。特にこのフィギィアのポイントは、耳ではなく尻尾なのだよ」
「で、これと『神』どう関係があるんだ?」
 O君の言うことは正しい。フィギィアと『神』関係は全く持って皆無だ。
「それが、大きな関係があるんだ。フィギィアは、ニンゲンが創るニンゲンだ。つまりは、我々はフィギィアの親つまり『神』なのだよ。我々は、フィギィアで『神』と同じことをしているのだよ。まぁ、生きていないけどね」
 やっぱり、H君は口が悪い。人を簡単に惑わしてしまう。
「まぁ、私の妄想だけどね」
 O君はH君を、ぽかり、と叩かなかった。代わりに。
「お前、僕より頭悪いよな?」
 と確認する。
「………普通聞くかなぁ」
「良し!それなら良い」
 O君は、そう言うと元気よくH君の頭を、ぽかり、と叩いた。
「痛い」
「当たり前だ。痛くなるように叩いた」
 H君は叩かれた所を、自分で撫でて『痛いの痛いの』と唱えている。
「ところで、O君よ」
「何だ」
「何故私たちは、教室にいるのかね?」
 一瞬O君は、意味が分からないという顔をしてから、修羅の顔になる。
「お前が、『英語の課題分かんないから、教えろ』っていったからだろ! 徹底的にビシバシやってやる! 変な話で僕の貴重な時間潰しやがって!」
「話に、乗った方も悪くないかい?」
「話した方が悪いんだよ! 『ハートブレイク』英語で書いてみろ!!」
「hartbreak」
「誰が完璧に発音しろって言った! 英単語を書けと僕は言ったんだ!」

 O君はH君より怒りっぽい。
 H君はO君より個性的。

ふたりは、変でオタク。
それで、仲良し。
 
「だから、さっさと単語を書け! 書けるまで居残りだ!」
2007/10/19(Fri)22:14:24 公開 / カオス
■この作品の著作権はカオスさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
読んでいただいてありがとうございます。変な話で申し訳ありません。
誤字・脱字ございましたら、指摘してください。
最後に本当にありがとうござました。
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