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『壁面世界』 作者:三上 / リアル・現代 未分類
全角14110.5文字
容量28221 bytes
原稿用紙約44.75枚
やる気のない友情で繋がっていた三人。しかしある日、その中の高村に異変が起こる。



   壁面世界 


1.


 仕方がないので高村は、天野の前で実際にそれをやって見せた。先ほどから何度言っても理解しないのだ、目の前で実行するほか無い。腰に手を当てて、ぐっと空を仰ぐように背中を反らす。頭にベランダの手すりがぶつかった。夕方の日差しが目に入る。
「だから、こう、逆さまの空を見上げたら、空が海に見える」やって見せながら、高村は天野に再び言う。見ていた天野はその姿勢を頭の中のスケッチブックに描きとめるように眺めて、そして何度も繰り返された問答に再び返事を返した。
「何で」
「やって見れば分かる」
 腰をさすりながら姿勢を戻す高村。天野はやってみせはしなかったけれど、肩をすくめて空を見上げた。水色よりも少し深く、青と言うにはほど遠い秋の空だ。
 不満げに高村は天野を見る。
「アマ、ノリが悪い。フジはすぐにやってくれた」
「藤井と俺を同じにするな。というか、俺はまだ作業が残ってるんだから帰れよ」
 へぇ、作業。少しだけ冷めた目で天野を見つめる高村だった。どちらかというと非難するような眼差しだ。
 天野の言う作業とは、絵を描くことである。自分が文章に自らの思いを乗せるように、天野はパレットで考えを練って、キャンバスに思いをなすり付ける。それを高村が非難がましく見たのは、別に友人より絵を描くほうが大切なのかと言いたかったわけではなくて、それを言われると自らは帰らざるを得ないからだった。
 高村だって、文章を書きたいときに友人が居ると、書けない。そのもどかしさを知っているため、他人にそれを強要することはできなかった。そのため他人にその事柄を持ち出されると、高村は反論できなくなるのだ。
「アマ、ずるい」
「ずるくて結構、そろそろ帰れ。土産ぐらい持たせてやるから」
「いいよ」
 やんわりと断る。やや苦笑するように天野が言った。
「というか、持って帰ってくれ。親父が会社でなんかあったらしくて山ほどクッキーもらってきたんだけどさ、二人じゃあんなに消化できないっつうの」
 言葉を受けて、暫く高村はじっと天野を見る。そうか、それじゃあしょうがないなと、できる限り偉そうに振る舞った。
「あ、そうそう」
 ベランダから室内に入り込みながら、わざとらしく話題を持ち出す。
「展覧会、おめでとう」
 それを受けて、明らかに嫌そうに天野は振り返った。暫く高村を睨んでいたが、やがて溜息をつく。
「お前に何か隠そうと思って、隠せた覚えがない」
「みんなが何か隠したときに限って、おれの知人は情報を持ってくる」
 夕陽を目の端に置きつつ、いけしゃあしゃあと言う。嘆息をついた天野に、続けて尋ねた。
「で、今回は何を描いたの」
「……空、を」
「空」
 空、と一口に言っても、青い空なのか、夕焼け空なのか、泣いている空なのか、はたまた夜なのか。答えになっているようで全くなっていない。まさか、全てのパターンを織り交ぜるなんて事はしないだろう。
 いや、天野なら出来るかも知れない。
 そして現在は天野宅の玄関前。見送るようにばたんと玄関が閉まるのに、「ごちそうさま」と小さく呟いた。
 ちなみに右手にぶら下がっているこれが、天野の父が持って帰ってきた物ではなく、やってきた人にお土産にする為わざわざ天野が仕入れているのを、高村は知っている。


 鍵穴にキーを差し込んで、捻る。空き巣に狙われればどうしようもないようなセキュリティのアパートだったが、狙われるほどの価値もなかった。
 高村は一人暮らしのため、電気が光り明るく迎え入れてくれる陽気な廊下はない。後ろ手に扉を閉めて、真っ暗な室内の明かりを付けた。居住空間というよりは物置といいたくなるような部屋が晒される。
 リビングにある低いテーブルの上に鞄を投げて、その上に天野からもらった袋入りのクッキーを置く。
 夕飯の準備をしていなかったことに気付いて、「まあ良いか」と台所に向かった。冷蔵庫から牛乳を取り出し、陶器のカップへ注いで電子レンジへ。その間にもう一度リビングに戻り、鞄の中から一枚のチラシを引っ張り出した。『秋期高校生展覧会』と書いてある。
 自分の絵を見られるのを嫌がり、展覧会のことを隠そうとしていた天野だったが、高村に言わせてみればお見通しだった。もう一人の友人にもチラシを配り、クラスにも大々的に宣伝している。
 高村は無価値な物にそんなことをする意味は見出していなかったし、天野の絵を無価値だと思ったこともなかった。
 天野の絵との出会いは、高村の文章を劇的に変えた。ただ数十秒眺めたものがここまで自分に影響を及ぼすとは思っていなかったほどだ。
 天野の絵は、斬新だった。どの絵を見ても、思わず手を伸ばしたくなるような現実味と、心の隙間を満たせてくれる瑞々しさに満ちている。どれもが真に迫るような迫力を持っていたし、どれもが思わず立ち止まって見入りたくなるような光彩を放っていた。
 その絵を見た瞬間、かちりと音を立てて高村の中の駒が一つ進んだ。ようやく電池を入れ替えられた、オンボロ時計のような気分だった。たかが高校生の絵、と高をくくっていた高村の甘さを、完全にうち砕いたのだ、天野の絵は。その『たかが』を失ってから、高村は真剣に文章を書くようになった。以前のような、お遊びではなく。真剣に、誰かにこの文章を知ってほしい。読んで欲しい。
 そしてそれほどに自分に影響を与えた天野の絵を誰かに知って欲しくて、高村は天野が隠そうとする絵を必死で誰かに教えるのだ。
 考えている内に、台所で電子レンジがなった。立ち上がり、ホットミルクを片手に戻ってくる。テーブルにカップを置きながらそのチラシを広げ、広げた横でクッキーの封を切る。一つ囓って、慣れた甘みをホットミルクで濁す。
 再びチラシを見た。展覧会は明日だ。



2.


 目覚まし時計が鳴る。ああどうしてせっかくの休日なのに。
 アラームを止めてから、そして今日展覧会があり、友人と待ち合わせしていたことを思い出す。
 ベッドの中で少しだけ考えてから、まあいいかと再び布団を被り直した。

「高村、起きろ」
 どんどんどんどん。地響きのように伝わってくる迷惑なノックの音。ついでにその音の方から自分を呼ぶ声も聞こえてくる。時計を見ると、目覚まし時計を止めてから一時間程経っていた。丁度待ち合わせしていた時間だ。
 のそりと起きあがって、冷たい廊下を裸足で歩き、寝間着用のトレーナーのまま玄関の鍵を開ける。
 先ほどから不親切なノックによって軋む音を立てていた扉は、鍵を開けられたのを待っていたかのように勢いよく開く。開いた向こうの空間には、昨日とは違うもう一人の友人の顔があった。
「おはよう、フジ」
 何事も無いかのように、目をこすりながら挨拶をする。藤井はずかずかと土間に入り込むと、肩を怒らせて言った。
「阿呆、何がおはようだ。待ち合わせの時間にお前が来るはず無いよなと思ったら、当たり前のように来なかった」
「まあまあ」
 自分が原因ではあるが、宥めるように藤井の被っているニット帽を撫でる。振り払われる手をさっと避けて、まあ上がりなよ、と声をかけた。藤井は唸るようにして、そしてやはり溜息をつく。天野に連絡をするためか、携帯電話を取り出すのがリビングに向かう高村に見えた。

 朝ご飯はどうするの、行き道で買えばいいだろ、とやりとりをかわして、部屋を出る。とんとんと慣らすようにスニーカーのつま先で床を蹴ると、そのまま部屋の鍵を閉めた。
 それを見て藤井は、「早く行くぞ」と相変わらず不機嫌に言う。
 天野とは高校に入学して出会ったが、藤井と高村は中学時代からの関係だった。友情と言うべきか、それとも引率者とその児童なのか、周りは表現に困っている。
 何故藤井がいつもニット帽をかぶっているのか、高村は知っていた。もちろん天野は知らない。そして藤井も、高村が何故一人暮らしをしているのか知っている。しかしこちらは近日天野も知った。
 意外と大層なことなので、知られた瞬間から天野の態度が変わってもおかしくはなかったのだが、天野はというと「あ、そう」と興味なさそうに言った。実際興味無かったのかも知れない。追求しない、されない程度の友情は、高村の好むものだった。藤井もだ。
 三人の出会いにも一つのきっかけがあるのだが、そのきっかけについて天野の前で言うことは禁忌だった。
 とにかく、それによって三人が出会い、今日、天野の絵が飾られている展覧会に行くことには間違いがない。
 更に間違いようが無いのは、すでに待ち合わせの時間から二十分経っているという事だ。そしていまだ、高村のアパートにいる事も。
「本当に、お前の寝坊癖には脱帽する」
 アパートの階段を下りながら、吐き捨てるように藤井は言う。
「え、フジ帽子脱いでくれるの」高村は返した。
「阿呆、そういう意味じゃない。物書きならこれくらい知ってろ」
 心底機嫌が悪いのか、藤井の言葉の端々は一々尖っている。
 もう一度だけ肩をすくめてから、高村はジャケットの内ポケットにしまったチラシを取り出す。
「フジ、聞いた?」
「何を」
「今回アマが何描いたか」
「いや、別に。何描いたって?」
「空を」
「空」
 空、空なあ。ぶつぶつと暫く藤井は繰り返していた。やがて、少しだけ高村を振り返って言う。
「なんか、空って一言で言われても、な。奴なら全世界の空を一枚で描けそうではあるけど」
 誰かが持った感想に似ていて、思わず高村は笑った。


「おはよう、アマ」
「おす」
 メールにて先に館内を回っていると返事を寄越した天野に遭遇したのは、立体部門の作品が飾られている間だった。大理石で作られた施設は、一々神経質に足音を反響させる。
 黒いGパンと更に黒いタートルネックセーターを身につけ、コートを片腕で持っている天野は、立っているだけで様になった。絵描きが放つ空気というのか、天野が立っているその空間を切り取るだけで、立派な絵が生まれるような気がする。天野に歩み寄るたび感じるその空気が、高村は好きだった。
 ゆっくりとその空間に歩み寄り、天野が眺めていた粘土細工を見る。藤井は少し離れたところの作品に心引かれたのか、その粘土細工を見ているのは天野と高村だけだった。
 タイトルは、『めいそう』。
「なんでひらがななんだろ」
 唐突に言った高村に暫く反応できずに、やっと天野は「ああ」と言う。
「いろんな意味があるんじゃないか」
「例えば?」
「迷って走る、とか」
 迷走。確かに、巨大な石の端々を捻って象られたようなそれは、何処に向かえば良いのか分からずに、とにかく手を伸ばしているようにも見えた。全体に銀色のスプレーがかけてあって、綺麗に陰影が活かされている。
「上手いね」素直に高村はそう言った。今回天野の絵にしか興味はなかったが、こういうのも悪くないな、と思う。
 何だか、素直な作品だった。
「高村、天野」
 離れた場所にいた藤井が声をかけてきた。絵画の展示はあっちらしい、と壁の向こうの空間を指さす。明らかに天野の顔が歪んだ。
 まあ少々いいじゃないか、おれ達に見られるのも初めてじゃないんだから。そんなフォローにならないようなフォローの声を天野にかけながら、三人は絵画部門の方へ向かう。
 ああそういえば、絵を描くときや文章を綴るときに集中するのも、瞑想と言うんじゃなかっただろうか。なんとなく高村は思いだした。
 それを思い出すと、ああ、なるほどと先ほどの作品を振り返る。銀色の物体は思考される世界のように見えた。


 黒い物体を抱えて、空が立っていた。
 その絵が視界に入ったとたん、高村の首筋は鳥肌を立てた。そこには空が立っていたのだ。
 大きな作品だった。大人二人が両手を広げて並んでも、端から端へと手が届かないほどの大きさだ。その空間に空がある。
 さっと風を撫でるような気軽な雲があり、その奥には息を潜めて空が佇んでいる。一目見た時は青一色かと思ったが、違った。画面右に行くほど、空は赤みをまして行く。夕焼けだ。
 そして空と雲の前に、逆光なのか黒い物体があった。まるで施設の一部分だけを描いたようだ。いや、実際そう描いたのだろう。画面やや左よりのところに四角く黒く塗りつぶされ、下の方で斜めに床が描かれている。何重にも丁寧に様々な色が塗り重ねられていて、本当の影よりもよっぽど色が深い。
 目の前に空が立っている。
「タイトルは?」藤井が尋ねた。
 天野は少し躊躇って、言う。
「壁面世界」
 壁面世界。息を吸った瞬間、その感動が肺一杯に満ちた。
 違う、これは、絵なんかじゃない。高揚する高村の頭の中で、何かが告げる。
 これは絵なんかじゃない。あの日の世界だ。
 自然に握られた拳が震える。全身が汗ばんでいるのを感じる。
 これは、絵なんかじゃない。
 キャンバスを飛び出したその向こうに存在する、世界。あの校舎の屋上だ。


「すごかった、な」まだあの絵を眺めてる気分だ、藤井が言う。それを聞いて少しだけ天野が唇を歪めた。照れているのだ、と藤井と高村は理解する。
 美術館を出て最寄りのファーストフード店にて昼食を購入、現在は駅前広場の階段を陣取ってのランチの真っ最中だ。せわしなく新幹線の駆け抜けていく音が響く。
 藤井は、数段低い位置に座っている高村へガムシロップを投げた。掴み損ねた高村は、面倒くさそうに立ち上がる。鳩の群がっているところまで転がっていったシロップを追って、階段を下りていく。
 それを見送りながら、藤井はやや上段に腰掛けている天野を振り仰いだ。カップに入った烏龍茶を渡して、反対の手にストローを押しつける。
「サンキュー」
「別に」
 自分のコーラに手を付けながら、藤井は改めて天野に話しかけた。
「さっきの絵」
「あ?」
「なんか、モデルになった場所とかあんの?」
 何故、と天野は目で問うた。高村は遠くの方で、目的を忘れたかのように鳩と戯れている。
「だってさ、なんか見たことあった」
「あの絵を?」
「いや、そうじゃなくて。あの構図」
 言いながら藤井は空を見上げた。蒼天、今見ている空は、先ほどの絵よりよほど浅く見える。天野の描いた世界がどれだけ美しいものか、再度自覚させられた。あの絵は空を切り取ったものなどではなく、天野の世界を覆う色だ。
 藤井につられて空を見上げていた天野が、呟くように言った。
「さっきの絵」
「あ?」藤井が天野を見る。
「展覧会が終わったら、返してもらおうと思うんだ」
「そりゃ、そうだろ。でもお前の家、あんなにでかいの飾れるのか?」
 少しだけ天野は目を伏せた。
「焼く」
 油かけて、と付け加える。
 その言葉を理解すると、酷く藤井が表情を歪ませた。それを見て、天野は苦笑を漏らす。なんでだよ、藤井が焦りを顔に浮かべる。高村は鳩が蹴飛ばしたガムシロップを未だ探している。
「何か、気に入らないところでもあったのか?」
「別に。それどころか、今まで描いた中で一番良い絵だと思う」
「だったら何で」
 勿体ない、などとぼやいた藤井に、苦笑とは違う笑みを天野は見せた。烏龍茶を一口含み、少しだけ落ち着くように息を吐いてから、言う。
「約束なんだ。あいつとの」
 あいつ、と繰り返した藤井の顔が、今度は少しだけ切なそうになる。藤井はいつも怒鳴りっぱなしで、初対面の相手にはよく「怖い人」と認識されるが、それが誤解なのを天野も高村も知っている。だが、藤井は知らないかも知れない。
 藤井は、ただ素直なのだ。自分の思いを隠すことができない。素直に笑い、素直に怒り、素直に落ち込む。
「あの構図、学校の屋上そのままだよ。あいつと居た頃の。放課後ずっと屋上にキャンバス持ち込んで、ずっと描いてたんだ」
 でももちろん夕陽になったりするから、色の度合いが変わったりして。しかもそれに気付けなくてどんどん塗っていって、あ、失敗した、って思うんだけど、なんかそっちの方がいい味が出てたりして。
 何も言えなくなった藤井を慰めるように、天野は続ける。
 高村がようやく階段を上ってくるのが見えた。右手でぼろぼろになったガムシロップを摘んでいる。
 天野は笑った。
「あれ、志水との最後の約束なんだ」
 志水、繰り返した言葉が何だか懐かしくて、いつの間にか藤井も目を指で押さえながら笑っている。



3.


 志水という男子高校生が居た。過去形なのは近年亡くなったばかりだからである。
 成績は試験の点数順位を下から数えた方が早いほどではあったが、いわゆる典型的なクラスのムードメーカーだった。志水が笑うと皆笑う。志水が悔しがれば誰もが悔し泣いた。
 そんな志水が、死んだ。その葬式には高村も参列した。
 当時、藤井と高村は、不良というには少し単純すぎて、ただの頭の悪い生徒とレッテルを貼るには複雑すぎるような、そんな立場だった。ただ、喧嘩が学校の中で誰よりも強く、更にいえばいつも二人で行動していたために、悪名だけは知れ渡っていた。それでも志水はそんな二人に気さくに声をかけ、心の底から笑って見せた。交友関係が築けたのは、言うまでもない。
 その当時の学校にもう一人、彼らのような学生が居た。天野だ。ただ、こちらの方がややたちが悪かったと言われている。確かに、藤井と高村は天野のようにアルコールは好まなかったし、高校生でありながらの喫煙家でもなかった。
 その三人には全くつながりなど無いと思われていた。だが、その意外な共通因子は意外なところで発見されることになる。
 藤井と高村が志水の葬式に参列したとき、天野も菊の花を握って式場へやってきていた。見たことも無いほどきっちりと制服を着込んで、窮屈そうなローファーに足をつっこんで。誰よりも場違いな存在に見えて、誰よりもその暗い空気に溶け込んでいるように見えて、それが見ていて何故か寂しかった。
 周りは誰もがざわめいた。学校でもっとも有名と思われる不良が、クラスメイトの葬式などに参列したのだから、当然である。
 ただ、驚いている一同と藤井を置いて、高村は天野に声をかけた。
 あの時の天野の顔は今でも忘れられない。
「花、握ってたら萎れる」
 あの時の間抜けな顔は、今でも忘れられない。

 志水は、“友人”というのに丁度いい距離感を知っている人間だった。踏み込まず、引きもせず、手を伸ばせば触れられるくらいの距離を、いつも歩いていた。ただそのせいか、“親友”とは何となく言い難くて、結局彼が死ぬまで高村は愚か、藤井も“友人”止まりだった。
 ただ、そんな志水が一度だけ笑って言ったことがある。
「まさやん、まさやん」志水は藤井の名前から、そう呼ぶことが多かった。
「何だよ?」
「オレさ、近頃ちょっと面白い人見つけたんだよ!」
「へぇ。誰」
「あの、屋上にいる人」
「屋上?」一瞬意味が分からなかった藤井だが、やがてはっとする。「屋上の鬼か!」
 今思えば、奇妙な異名だった。誰が言いだしたのかも分からない、愛嬌さえ感じるネーミングセンスの無さ。
 その頃、天野は授業などさぼって屋上にいるのが当たり前だという、生徒内でも奇妙な常識があって、そしてその常識に従って天野はいつも屋上にいた。屋上で何をしているのか、それは鬼のみぞ知るという無責任な噂話だ。
 その、屋上の鬼に、学年きってのムードメーカーが興味を持っているという。
 なぜだか冗談だと笑い飛ばせない自分が、藤井は怖くなった。
「……あんまり近づいてたら、危ないぞ」
「へ、何で」
 藤井は溜息をついた。先日、屋上に入り込んできた他人を返り討ちにした鬼が丁寧に救急車まで呼んでやったというのは、すでに伝説である。
「お前、なんか鈍そうだから。殴られても笑ってそう」
「オレそこまで変態じゃないよ。弱くもないし。少林寺拳法なめんな」
「……どうでも良いけどさ」本当にどうでも良くなって投げ出すように息を吐く。
「とりあえず、オレに迷惑かからないようにしろよ」
「うーん、難しいと思う。だってまさやん呼んでも無いのに自分から首突っ込んでくるし」
「お前達があまりにも危なっかしいんだよ」
 ここで複数形なのは、もちろん高村も含まれているからだ。志水は笑った。
「うん、まさやんが友達で良かった」
「……まあ、仲良くなりたいなら頑張れや」
「うん。なんかね、あまのじゃくくんなら」
「天の邪鬼?」
 聞き返す。耳慣れない言葉のような気がした。なのに、口からするりとその単語は出てくる。ああ、と志水は手を叩いて、笑った。
「あのね、屋上に居る人のあだ名」
「あだ名? もしかしてそうやって呼んでるのか」
「うん」
 危ない。危なすぎるこいつ。
 何もかも諦めたくなることは多いのに、諦めきれないのが藤井の悪い癖だった。知り合いが絡むと、どうにも自分は根性が良くなるらしい。
 ただただ、志水は笑う。
「あまのじゃくくんなら、“親友”って呼んでも許してくれるような気がするんだ」
 藤井は驚いた。

 藤井は驚いた。
「……まさか親友が死ぬなんて、思ってなかったから」
 泣き崩れる前に、天野が呟いた言葉。
 志水の亡骸を前にしながら、ただただ藤井は驚いた。
 嫌味のない、わざと言った感覚もない、あまりにも自然な、“親友”の響きだったのだ。
 ただ、もう志水は居ない。



4.


 油断していたら、パンが焦げた。
(……やられた)
 オーブントースターの中で燻っているそれを見つめながら、高村は溜息をつく。食パンよりも甘いパンは焦げやすいということを、当たり前のように忘れていた。
 処理のためにオーブントースターを開く。ふてくされたパンが不満を漏らすかのように、焦げた香りが鼻に染み込んでくる。
 それにしても珍しい、と高村は自分自身の事ながら思う。
 自慢ではないが、食物が関わる失敗は高村はしたことがなかった。食事、睡眠、文章、それらには高村はいっさい妥協しない。理由は単純、好きだからである。純粋に高村は食事を愛し、睡眠を欲し、文章を綴る。本能が赴くままに、それらを求める。
 それ故周りからは「食い意地の張りすぎだ」などと評価されるが、仕方がない。実際、間違ってはいないからだ。高村は単に栄養をとる行為ではなく、食べ物を味わうという行いが好きだった。
 が、妥協していなかったはずが、失敗した。何故なのかと追求するところまで思考が進んでいった時には、真っ黒になったパンは生ゴミ用の袋に入れられている。

 焦げたパンを恨んでも仕方がないので、高村は通学用鞄から一冊のノートを引っ張り出した。最初のページを開く。びっしりと文字が刻まれていた。
 俗に言う、小説の綴られたノートだった。一ページ一ページに高村の思いが記してある。毎回一ページ目から読み返して続きを書くのは、高村の習慣だった。今日も、もちろんその通りに行う。
 思いを字として吐き出すことは、キャンバスに絵の具を塗りつけるのととても似ているような気がする。以前天野の作業を見たことのある高村は、心のどこかでそう思った。
 考えて、考えたものの半分を表現する効力で、手が動く。全てを表現しきれないもどかしさにやきもきする。時折、破り捨てて、また悩んで、筆を手に取る。そして、その一筆にようやく納得する。
 一ページずつ捲って、続きの欠けたページに突き当たる。ペンを握った。
 ペンを握った。
 暫く高村は、ペンを握りっぱなしの自分に違和感を感じた。そのまま首を捻る。
 その違和感の理由に行き当たって、目を見開く。硬直した。表情はあいかわらず変化のないまま、側に放り投げていた携帯電話にかじりつく。他人が見ていれば、何事かと他人の方が大袈裟に驚いただろう。リダイアルという機能すら思い出せずに、必死でその番号を押す。指が震えていた。
 頭の中に、冷たい部屋の中に、コール音が響く。
 コール音がとぎれる前から、無意識に口が動いていた。
「どうしよう」それだけを繰り返す。
『もしもし?』コール音がやんだ。
「フジ、フジ」
『なんだよ、お前からかけてくるなんて』
 明日は槍が降るのか? そう怪訝そうに友人が言う。
「フジ、どうしよう。どうしよう」
「どうした、落ち着けお前」
「どうしようフジ」
 ただただまくし立てた。電話口の向こうで異変を感じ取ったのか、藤井が耳を澄ませるのを感じる。
「書けなくなった」
 何が? とも誰が? とも聞かずに、友人はただ「待ってろ」と通話をやめる。


「高村が、小説を書けなくなったらしい」
 昼休みにやけに神妙な顔をした藤井に呼び出され、天野もそれに付き合うように真剣な顔で廊下に出て、そして話された事はそれだった。通り過ぎていく生徒が、不思議そうに自分たちを見ている。
「……は?」
「高村が、小説を書けなくなったらしい」
 藤井はやはり、神妙に繰り返した。そのあまりの真剣さに茶化す事も出来ずに、「ちょっと待て」と天野は心の中で状況を整理しようとする。
 無理だった。
「……だから?」
 短くそう尋ねてしまう。状況を理解するには判断材料が少なすぎて、しかもその状況があまりにも単純すぎて、混乱していた。
 藤井は溜息をつく。がしがしとニット帽を掻いてから、腕を組んで壁にもたれかかった。
「そのままだよ! 高村が小説を書けなくなったらしい」
「だから何だと、俺は聞いてるんだ。まさかその、どこから何を指摘して良いのか分からない事柄を聞かされるためだけに、俺はわざわざ真顔のお前に呼び出されたわけじゃないだろうな」
 苦々しく顔を歪めた藤井を見て、ようやく天野は本調子を取り戻してきたらしい。苛立ちを含めた言葉を藤井にぶつける。
「お前等の事は、良い奴だと思ってたんだが。俺はここまでからかわれる存在だったか?」
「全くからかってなんか無い!」
「だからって言葉の意味が分からないんだよ!」
 久々に天野の一喝が響いた。藤井が眉間を引きつらせて、周りの生徒がざわつき始める。天野は自分の誇りを汚されるのを嫌い、そしてよく誤解も繰り返した。今回も、自分が馬鹿にされたと思っているのだろう。それだけ意味の分からない事を言っている自覚は、藤井にもあった。
「ちょっと落ち着いて、話を聞け」
「ふざけるな。俺は教室に戻る」
「天野!」
「五月蠅い! そんな下らないことで一々呼び出しするな!!」
 天野が踵を返し、生徒の間を割って去っていこうとする。その背中に腹が立って、藤井も思わず苛立ちの混ざった声を投げた。
「じゃあ、お前が絵が描けなくなったらどうだよ!?」
 暫く天野の歩みは止まらなかった。しかし、踵を踏んだ上靴を引きずる音が段々長くなり、歩調が緩くなり、やがて離れた場所で天野が立ち止まる。
 野次を飛ばしに来たのか、群がる生徒すら蹴散らす視線を、藤井一人に浴びせた。
 一瞬空間が硬直したように緊張が走り、やがて天野が口を開く。
「どういう事だよ」
 その声の響きはただ疑問の意味しか持っていないと感じ、藤井はようやく肩から力を抜いた。

 あの後騒がしくなってしまった廊下を後にし、屋上に向かった。珍しく静まりかえった歩みで、荒々しく階段を上る音以外、生徒の声すら二人を邪魔しない。
 屋上の扉を藤井が開く。不思議な気圧に引っ張られ、嫌でも爽快感が天野の耳元を駆け抜けた。
 藤井がコンクリートの床を踏む。天野から少し距離をとって振り返った時には、天野も屋上の扉を後ろ手で閉めていた。睨み合う。
「どういう事だ」
 鋭い声は、天野のものだ。なるほど屋上の鬼な、と藤井が一瞬だけ首筋に鳥肌を感じる。この開放的な空間では、天野は空気すら味方に付ける。大気全てがぎしぎしと藤井を睨んでいるかのようだった。久々に、拳を固める。
「高村が、小説を書けなくなった」
「くどい。だから何でって聞いてる」
「それはオレも知らない」
 その言葉に、一層鋭く天野は睨んできた。負けじと藤井も眉間に皺を寄せる。
「じゃあ、質問を変える。小説が書けなくなったら、何が問題なんだ」
 藤井の拳がふっと緩んだ。知らず知らず自分でもこの質問を求めていたのだと、気付く。少しだけ表情筋の力を抜くと、言葉を返した。
「高村は、小説が無いと生きていけないらしい」
「は」
「正しくは、小説が書けないと生きていけない、らしい」
「は?」
 理解できない、そう言いたげに天野が気の抜けた声を漏らした。空間がほんの少し和んで、「つまり?」と天野は眉間に皺を寄せたまま首を傾げる。
 もう少し緊張を解かねば同じ言葉しか言えそうにない、と、藤井は勇気を振り絞って手の平を開いた。ぐるりと右肩を回し、左も同じようにする。首を鳴らして、改めて天野を見る。
「あいつな、本当凄いストレスの中で生きてるんだ」
「ストレス」
「そう。兄弟は全員名字が違うし、実の母親は自分を見たらヒステリー起こすし。学費と生活費だけは実の父親が保証してくれちゃいるが、あとは生活の面倒事全部奴一人に押しつけやがった」
 父親が息子を育てるのを放棄した、と言うのは、天野も聞いていた。今の自分は放任的に飼われてるだけだから、と高村が自分で言い、藤井に頭を叩かれたのも記憶に新しい。
 だから高村は一人暮らしなんだ、と藤井は事実を再度確認する。
「一人暮らし」
 オウム返しのように天野が呟く。話の筋を理解しようとしているのだと、藤井は知っていた。
 天野が視線で続きを促してきて、続ける。
「だから奴は、結構前まで定期的にパンクしてたんだ」
「パンク?」
「頭の中だけで処理しようとしてたストレスとか、云々とか、全部処理しきれなくなって、段々それが溜まって。軽いときは頭痛とかで終わってたけど、酷いときは吐いたりとか飯食えなかったりとか、寝れなかったりとか」
「それが?」
 それが小説とどう繋がるのだ、と訝しげに天野が顔に出す。まあ聞けよ、と目を細めることで藤井は答えた。
「奴の鬱憤とかを晴らしてたのが、小説を書くことだったんだよ。頭の中のもやもやした奴全っ部文章に閉じこめて、シャー芯の先に全神経集中させて、ノートに吐き出すんだ。中学の時とかも、それはやってた。けど、やっぱりたまにパンクして。けど」
 そこで一端藤井は言葉を切った。何かに気付いたかのように虚空を見つめ、手を顎にやる。表情は変わらず、呆然としているように見えれば、また、目まぐるしく頭の中身を廻転させているようにも見えた。
 天野が不思議そうに藤井を見る。もはやあの怒気はかけらもない。
 藤井は顎にやっていた手で頭を掻き、それでも驚いたような表情のままで、天野を見ないで言う。
「けど、うん」
「けど、何だよ」
「なんか、そういえば今は違うな」
「は?」
「多分」
 そこでようやく天野を見た。
「多分、お前の絵を見てからだ」
 は、と天野も目を丸くする。藤井が納得したように、それでも不思議そうに頷いた。
「なるほどな、通りで最近機嫌が良かったわけだ」
「おい、一人で納得するな。俺の絵が何だって?」
 天野が質問を重ねると、ふ、と藤井の頬が緩んだ。それに天野が怪訝そうにする。
「何だよ」
「いや、な。なるほど」
「だから一人で納得するなって」
「中学のころは、奴の小説はただの手段のひとつだったんだ」
「手段?」
 早くこの状況を理解したい、と、天野の声に焦りが滲んだ。更に藤井が笑う。
「奴は小説なんて好きじゃなかった。寧ろ、嫌だったんじゃないかな? 自分であんなどろどろした字を書くなんて」
「じゃ、今は何で」
「お前の絵だ」
 藤井がその場に座り込んだ。顔に手を当てて、心底嬉しそうな笑顔を浮かべ続けている。
「そういや、高村が言ってたよ。お前の絵は革命だって」
「革命?」
「そうだよ。お前の絵を見て、高村の小説が変わった。お前の絵に感動を感じて、その感動を自分も作りたくなって。奴、お前の絵を見てから、小説が好きになったんだよ。そっかそっか」
「は、え、な?」
 混乱した頭を鎮めようと、天野が自分のこめかみを押さえる。その様子を見て、更に藤井の笑みが不覚なる。
 だから、と今にも笑い出しそうな声の調子で言った。
「お前が、高村を変えたんだよ」
 その言葉に、混乱が一瞬で凍りつく。
 天野がおそるおそる、にやにやと笑っている藤井を見た。
「……俺が?」
「ん。っていうか、お前の絵?」
「俺の絵が?」
 人を変えた?
 その事実に、硬直した天野の頭はなかなか上手く働かない。暫く呆然としていて、そのまましばらくの間が空く。
 藤井が欠伸をするだけの間があって、ようやく天野がはっとした。
「……俺の絵が、高村を変えたのは、良いんだよ」
「まあ、良いことだよな」
「そうじゃなくて!」
 誤魔化すような大声を出した天野に、とうとう藤井が吹き出す。迫力も何もない目でそれを睨み付けてから、「それ以上に!」と更に声を張り上げる。
「それより、高村の小説が書けなくなったんだろ」
 その言葉に、次は藤井がはっとする。
 天野が溜息をつくだけの間があって、藤井が頭を抱え込んだ。
「そうだった。お前からかってる暇無かった」
「からかうな!」
 「まあまあ」と天野を藤井が宥める。げんなりとした目線で、天野を見上げた。
「だからあいつ、最近全然パンクしなかったんだよ。小説もどんどん書くし、何か、雑誌に送りたいとか野望もでかくなってたし、傍目から見ても日々普通の人間に近づいていってたし」
 それなのに。
 藤井が手を重ね、その上に自分の顎を乗せながら、ぼやくように言う。
「書けなくなった」
 少し書けなくなっただけで、最近調子が良かった分、反動が大きかった、と藤井は続けた。今の高村は、頭痛、食べない、食べても吐く、寝ない。
「この間の休日からずっとその調子だよ。こればっかりはオレにもどうしようもなくて、落ち着くのを待つしかないんだ。でも、いつもは大抵一日で落ち着いてたのに」
 静かに天野に手の平を見せる。ゆっくり指を折っていった。親指から、一、二、三と数える。三つ目で止まったのを見て、それが休日からの日付を数えているのだと天野は気付く。
「もう、この期間何にもしてねぇ」
「……今日も?」
「休んでる」
 苦しそうに言って、藤井は俯いた。胡座を掻いている自分のつま先を、きつく掴む。
「こればっかりは、オレにもどうしようもなくて。けど、このままだったら、奴死にそうなんだよ」
 奴と、オレ一人の協力ではどうしようもない。己の不甲斐なさを呪うように藤井がきつく唇を噛む。やがて、天野を見上げた。
「天野、頼む。知恵貸してくれないか」
 どうしたらいいんだよ。
 そんなの俺に聞かれても困る、としか返しようが無いのに、その藤井の表情に、結局何も言えないまま昼休みが終了する。


2007/03/08(Thu)19:09:54 公開 / 三上
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■作者からのメッセージ
以前も投稿させて頂きました、三上です。
暫く原稿を落ち着かせて、もう一度すこし訂正を入れてから投稿いたしました。
どうかご指導の程、宜しくお願いします。
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