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『雨男』 作者:こーんぽたーじゅ / ショート*2 未分類
全角2861.5文字
容量5723 bytes
原稿用紙約8.45枚
皆さんは「俺って雨男」と言ったことがあるでしょうか。一度でもいった方は本当に自分が「雨男」なのかそんなことが考えさせられるそんな作品です。
「俺、雨男なんだよな」

 たいていの人はこんなことをいきなり言われても困るだけだろう。しかし俺は生まれつきの雨男だ。
 母さんが言うには俺の生まれた日も雨だったらしい、しかも大雨。たぶんこの日から俺は雨男となったのだろう。生まれるのがあと一日遅かったら、その日は快晴だったというのに。俺がもしタイムスリップするなら俺は母さんの腹の中に戻って一日踏ん張ってるだろう。まあ今更言っても遅い。これが運命と言うものだ。

 しかし、ガキのころってのはそんなこと気にすることもなかった。というかむしろたいていの子供は雨が好きだろう。俺も雨が降るとわくわくして、よくヒーロー物のキャラがプリントされた長靴をはいて遊びに行ったもんだ。あのころは俺が外に出るとたまに雨が降るなと言う程度であったため、俺が雨男だと俺も友人も気づかなかっただろう。

 しかし俺の中で眠っている雨男の才能は小学校入学と同時に開花した。
 小学校では運動会を屋外でした覚えがない。しかも運動会だけではない遠足、写生大会、社会見学など俺が参加するイベントのほぼ全てに雨が降った。しかし一度四年生のとき風邪で遠足を休んだことがある。その日は、遠足は俺が参加しなかったことが関係するのかは分からないが絶好の遠足日和だったそうだ。このことがきっかけだ俺が雨男だと自覚したのは。
 最悪だったのが六年生の時の修学旅行、前日の天気予報では降水確率ゼロパーセントだったが、そんな予報は俺の前では無力だった。俺たちはその日、集中豪雨で新幹線が止まり、修学旅行を中止させてしまった。修学旅行というのは一つの予定が狂うと全部が駄目になってしまう、俺たちは旅行代をキャンセル料に回されて手元に返ってきたのは半分以下に金額だ。
 しかし、そのころも俺が雨男だと気づく人物はいなかったであろう、きっとそうだ。

 そんなことがありながら俺は家のすぐ近くの中学に通うことになった。中学校と言うのは実に不思議だと思う、メンバーは変わらないのに場所だけが変わる。二週間前まで学校の一番上の立場に君臨していたのに、二週間後には一番下の立場にある変な世界だ。
 中学生になったからといって俺の雨男ぶりは変わらなかった。むしろエスカレートしたほうだ。
 中学校にももちろん修学旅行はある、俺たちは沖縄だった。飛行機こそ止まらなかったが、現地についてホテルにチェックインした直後に大雨が降った。大雨の影響で観光バスがこれなくなり、観光も、真っ青であろうビーチにも行けない。俺たちは三日間のほとんどをホテルで過ごした。そして帰りの飛行機も大雨で四時間順延した後、自宅に帰還したのは深夜だった。家族はみんな夢の中、俺はもどかしさの中。
 しかしそんな中学校生活の中で文化祭は俺の心の支えになった。なぜなら文化祭は屋内行事だからだ。これならいくら雨が降ろうと関係ない。この行事だけが俺の思い出らしい思い出。
 中三の夏休み、俺は友人(ガキのころからの仲良しだった)と二人で三日間でチャリで日本海を目指すという途方もない計画を立てた、しかしその日も雨で流れてしまった。すると友人は、
「昔からだけどやっぱりお前は雨男だな」
「根拠は?」
「だってお前と遊ぶときはいつも雨が降るだろ」
「そうかな」
 俺はうれしかった。やっと自分が雨男だとわかってくれる人がいたことが。
 しかし、その友人は二学期が始まると俺が雨男だと学年中に言いふらした。俺はそのときからその友人とは口をきいてない。それから俺の性格は気弱になってしまった。
 そんなこともあったが俺は中学校生活をちゃんと送った。充実感はない。

 俺は高校時代恋をした。相手はクラスでも目立たない子だった。俺は思い切ってその子に告白した。結果は見事成功だった。そのことは何度かデートをしたが、一ヵ月後彼女から、
「あなたとはもう付き合える気がしなくなってきたの」
 これが別れのシーンか、俺はあまりに突然だったので驚いた。
「俺のどこが悪いのかな?」
「あなたとデートすると最初は遊園地だって言っても、結局雨が降って映画館か水族館、つまらなくなっちゃうの」
 やっぱり気づかれたか、俺はこのとき初めて自分の能力を恨んだ。
「でも君は遊園地に行けなくても楽しんでくれたんじゃ……」
「そんなのも分からないの? 社交辞令よ社交辞令。私はデートはアウトドア派なの」
 なんてわがままな女なんだ、クラスではこんな性格ではないのに、俺はこのとき女の本性と言うやらにひどく軽蔑した。
「わかった。別れよう」
 俺はさっきの言葉で彼女に嫌気がさした。「別れよう」と言う言葉は意外とあっさり出るもんだ。
 俺がそういうと彼女は吹っ切れた表情で去っていった。
 俺はこのとき以来女の裏の顔、そして自分が雨男だということが理由で恋はしていない。これは世間で言う現実逃避なのだろう。でもこの言葉は今の俺にしてはきれいごとに過ぎない。
 高校では修学旅行も計画されていたがテロの影響で中止になった。俺は内心助かったと思った。これでいいのだ。これで。

 高校を卒業した後俺は大学にも行かず、就職もせず気の向くままに生活していた。世間では俺のような人間をニートと呼ぶらしい。当たっている、俺はニートだ。
 俺は日常することが限られている。寝るか起きるか、コンビニに行くかCDショップに行くか。あとは人間が生きていくために必要なこと。その程度のつまらない人生。母は、
「働け」
 だとか、
「大学行けば?」
 とか言うがやりたくない、どうも雨男というのがどうも引っかかってブレーキになっている。このままつまらない人生を送るのなら死んだほうがましかも、と考えたこともある。

 

 こうして半ば引きこもりの親のヒモのような生活を五年間続けた。やっぱりこの生活にも嫌気がさした、そして働くことにした。といってもアルバイトだ。仕事場でも極力人間関係を避けた、現実逃避だ、ふがいない。同僚にも白い目で見られるがこういうことは慣れっこだ。そして俺は生まれて初めて金を稼いだ。それを両親に渡すと両親は飛び上がって泣いて喜んだ。人に喜ばれたのって何年ぶりだろう? 記憶にない。

 アルバイトとして生活していたある日、俺の下に一通の手紙が来た、中学の同窓会の知らせだ。行くかどうかも迷ったが、いい機会だし行くことにした。
 そして当日珍しく雨が降らなかった、これはミラクルだ世界の終わりかそんな風に思えた。会場である学校に着いた、グラウンドでは旧友たちが集まっている。しかし俺のことを雨男だと言いふらした元友人がいない、ためしに聞いてみると
「あいつ高校のときバイク事故で死んじまったんだよ。あいつも雨男だからなあ。滑って転んで打ち所が悪かったんだよ」
 俺は信じられなかった。あいつが死んだことではない、自分は雨男なんかじゃなくて単に雨人間とよく出会う運の悪い男だったなんて。
「俺の人生返せぇぇぇぇ!」
 俺はひどく落胆した。

  ――了―― 
 

2006/09/11(Mon)18:36:19 公開 / こーんぽたーじゅ
■この作品の著作権はこーんぽたーじゅさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めてSSに挑戦してみました。かなり苦戦しましたが自分では納得いく内容だと思ってます。読んでいただいて感想や辛口のコメントをいただけたらうれしく思います。

高校のときのシーン、訂正させていただきましたのでご了承ください。
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