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『LOST 第2章 3 UP』 作者:ももちゃん / 異世界 ファンタジー
全角7902.5文字
容量15805 bytes
原稿用紙約26.25枚
『世界が絶望に満ちた時。全ては再誕する。全知全能の鍵、LOSTによって』黒き絶望と呼ばれる大戦後の世界には希望など有得なかった。そして突如と現れ出した異形の黒き脅威『黒獣』レインとジェイ、二人のハンターを軸に終焉と最誕の鍵LOSTを巡る物語は静かに始まる……


 ……とある村の門前。


 二人の男が肩を並べて立ち塞がるようにして佇んでいる。
 一人の男は黒いコートに身を包み、もう一人の男は白いシャツに短パン姿で首に銀のペンダントを吊らしていて腰には鞘に収められた使い古された長剣を携えている。

 シャツの男には面倒臭いとでも言わんばかりの苦笑が浮かんでいる。
 音一つしない不気味なほどの静寂が草原を包む。
 太陽は丁度空の真ん中に浮かび、眩い光で草原を包み込んんでいた。

 コートの男は表情一つ変えず、とにかく目前に広がる緑の海原を見つめている。
 その表情は世の中の汚い部分を全く知らず、これからの未来に目を輝かせている無邪気な子供の見せるそれによく似ていた。
 シャツの男の方はと言うと、整ってはいるものの髭に覆われて汚らしい顔を何度も横に振ったり縦に振ったりして、大きなあくびを一つ。目はほとんど閉じかかっていている。
 どうやら強大な天敵、睡魔と死闘を繰り広げているようだ。
 
「なあ」
 不意にシャツの男が面倒くさそうに口を開いた。
「何?」
 コートの男は無邪気な笑みを保ったまま答える。
「いや、何でも」
「そういうの、止めようよ。むかつくんだよね」
 コートの男は無駄に伸ばされた長髪をかきながら鋭い目でシャツの男を睨み付ける。
「いやさ、お前が安い報酬でちっぽけな村の為に仕事するなんてさ意外だなぁって」
 コートの男の怒りを買うまいとシャツの男は急いで答えた。
(おっかねぇんだよな。コイツ。あの眼だけはいくら付き合いが長くても耐えられねぇな……)

「それはこっちの台詞」

(生意気な……)
 シャツの男は吐き出そうとした言葉を飲み込み、不味い物でも口にしたかのように苦い表情を浮かべる。

 再び沈黙が流れる。
 ああもういやだと言わんばかりにシャツの男は深いため息をつく。
 そのため息にどんな意味が込められているのかは分からないが恐らく、冷たくされてちょっと落ち込んでいるのだろう。
 次の突然、シャツの男はだらしない表情を消し去り、真剣な表情へと移り変えた。。
 そして、何も無い草原をにらみ付け、笑みを浮かべる。
(お出ましだ)
 コートの男もシャツの男の気付いた『異変』に気付いたようで、無邪気な笑みは既に消え去り、シャツの男に見せたあの冷たい感情の込められていない瞳をを草原に向けている。

「……レイン」
 コートの男はシャツの男に言った。レイン……それがシャツの男の名前。
 レインと呼ばれた男はああ、頷く。

「馴れ合いは終わりにしようぜ。……団体さんのご登場だ」


 第1章 二人の男
 

 静かな沈黙を破る大きな地響きが起こったのはレインの最後の言葉からすぐ後の事だった。
 一定のテンポで鳴り響く音は次第に大きくなって行き、遂にそれらは現れた。

 漆黒の皮膚で体を覆う異形のモノ。
 ヒトはそれらのモノ達を『黒獣(こくじゅう)』と呼ぶ。
 形、大きさは様々で、今回現れたのはヒトとよく似た形状のヒュマ。攻撃の際には腕を剣の形に変化させる。
 小型で、体よりも長い鋭く尖った角を持ち攻撃の際には4枚の羽を広げ飛び掛るリトル。
 そして、全長8mをも超えるジャイアント。岩のようなゴツゴツした無数の物体がヒトを形作っている。圧倒的な腕力を持ち、豪腕の前ではヒトの群れなどチリ以下でしかない。
 
 数は8体。ヒュマ、リトルが3体ずつ、そしてその後をついていくようにジャイアントが2体。
 常人ではヒュマとリトルを相手にするのが精一杯で、個人でジャイアントに刃を向ける事は無謀でしかない。
 
「どうなの?ジェイ君。チビが6体に、デク野郎が2匹か……まぁジェイ君だったら一人で余裕かな」
 レインはジェイと呼んだコートの男を横目で見る。
 挑戦的なレインの表情を横目で確認したジェイと呼ばれたコートの男はそれに答えるようにゆっくりと頷く。
 余裕だ、と。

「相変わらずクールだねぇ、ジェイ君。だったらさ、全部片付けてよ?」
「別に構わないけど、銃ってさレイン君のお得意の剣より燃費悪いからね。最近になってますます弾の値段も上がってるしさ……まぁレイン君が腕に自信がなくてどうしてもって事なら構わないけどさ。」

 レインと呼ばれた男は悔しそうな表情を浮かべ、ジェイを睨み付けた。
 生意気な、と言わんばかりだ。

(下らない依頼受けたのはてめぇだろうが)
「……わーったよ。雑魚は俺が片付ける。ジャイアント相手に剣はあまりにも不利だからお前の特製銃で何とかしてくれや。……おっと、弾の使いすぎには注意しろよ。弾代だけで報酬が飛んじゃぁあまりにも俺が不憫だからな」

 レインはイライラしながら言い捨てると腰に吊るした鞘から剣をゆっくりと抜いた。
 白銀の剣の刃は鏡の様な刀身を持っている。太陽の光を受け、眩過ぎる光を一斉に反射した。
 一瞬、レインは殺意に満ちた表情を浮かべ剣を地面へ突き刺した。
 研ぎ澄まされた刃に地面に生えた草は刻まれ、突然の風に乗りヒラヒラと高く舞って行く。
 その一部始終をジェイは興味なさそうに見ていた。

「とっとと終わらせるか。雑魚相手に時間使うなら女でも口説いてたほうがマシだからな」
「……相変わらず不潔だねぇ。君のその悪い癖のせいで僕はいつも迷惑を受けているんだからさ。ちょっとは自粛して欲しいものだよ。それと、口説くのなら髭、剃った方がいいよ。不潔」」
(一言多いんだよな……)
 レインは苦い表情を浮かべ、ジェイを見つめる。
「ハイ……」
「どうでもいいけどさ、とっとと行ってきなよ」
 
 言われなくとも、とレインは剣を構え風を切り裂くように一直線に駆けて行く。
 有得ないほどの速さで黒獣の群れとの距離を詰める。
 駆けて来るレインを迎え撃つようにしてヒュマは腕を一瞬にして剣状の黒くて尖った物へ変化させる。
 リトルもその後に続くように羽を広げ空を掛ける。
 レインとヒュマがお互い剣を構える。
 
「遅いんだよ」
 レインは柄を両手で強く握り締め、ヒュマの懐へ潜り込もうとした。
 そうはさせまい、とヒュマは奇声を上げながら剣をレインへと押し込む。
 だが、剣は空しく地面に突き刺さる。
 いない?どこだ?
 
 その瞬間、ヒュマの絶望の悲鳴が響き渡った。
 レインはヒュマの一撃よりも速く懐へ入り込み白銀の剣を腸へと押し込んでいたのだった。
 黒い血液が刀身を伝って柄を握り締めるレインの拳へ流れていく。

「だからね。遅いんだって」 
 レインはヒュマに髭に埋もれた微笑を見せ、次の瞬間剣を勢いよく引き抜いた。
 栓を抜かれたヒュマの体から黒い血液が吹き出る。
 この機を逃すまい、とレインは両腕と両足を眼にも止まらぬ速さで切り裂いた。
 まさに光速。
 切断された首、両腕は緑の芝生へ重い音をたてて落ちた。
 残された胴体はレインにひざまずく様にして足元の近くへ倒れこんだ。
 黒い血はとどまる事を知らないように流れ続けている。

 ヘっと余裕の笑みを浮かべるレインをよそに無数の影が襲い掛かる。
 二体のヒュマだ。
 だが、そのそこにレインの姿は無い。

 ……上だ。
 高く飛び上がったレインはそのまま影の一つ―ヒュマの頭上―へ飛び、そのまま脳天を銀の剣で突き刺す。
 そして、剣を引き抜いたかと思うともう一体のヒュマへと襲い掛かった。
 光速の太刀がヒュマを襲い、一瞬にして胴体から首と両腕が引き裂かれた。
 ほぼ同時に二体のヒュマは地面へと倒れていった。

「相手にならねぇ」
 レインは倒れこんだヒュマの胴体を踏みつけ、剣を振り刀身についた黒獣の血を振り払った。
 この隙を逃すまいと3体のリトルが黒い羽を広げ、一斉に飛び掛る。
 その瞬間、凄まじい炸裂音が草原に響き渡り3体のリトルは一瞬にして弾けとんだ。
 どうやらジェイがご自慢の銃を放ったらしい。
 ジェイの両手には銃口から煙を吐いているリボルバーがそれぞれ握られていて、ゆっくりとレインの元へ歩いてくる。その表情には貸しが出来たねと言わんばかりの意地の悪そうな微笑が浮かんでいる。

「しっかりしてよね。まったく。僕の銃の正確性が無かったら間違いなくあの世行きだったよ」
「約束、破ったな。飯抜きだ」
「がきだねぇ」

 レインはジェイの言葉を無視して残ったジャイアントを指差した。
 二つの木偶のぼうはゆっくりと前進を続けている。
  
「お前の特製弾の出番だ」
「銃が壊れたら新しいの買ってよね」
「いい子にしてたらな」

 ハイハイ、というようにジェイはコートの内ポケットから弾を二つ取り出す。
 それらは真っ赤に染まった血の様な色をしている。
 二発の弾を確認するとジェイは二丁のリボルバーのシリンダーから弾を全て抜き、赤い弾を一発ずつそれぞれに装填すし勢いよくシリンダーをセットする。
 そして準備完了、と無邪気な笑みを浮かべ銃を構えた。
 ジェイの瞳には全く感情がこもっておらず、ただ二つの標的を見つめているばかりであった。
 そして、悲鳴にも近い爆発音が二丁のリボルバーから放たれた。

 それとほぼ同時に二体の8mをも超える巨体を持つジャイアントの上半身が膨大な爆発を起こし、胴体がひだるまと化した。

「呆気ないねぇ。全く面白みも無いエンドだ」
 レインはひだるまを見つめながら静かに呟いた。
 もう眠気は去ったようだ。
 閉じかけていた眼は完全に覚醒している。

「毎回思うよ……これでいいのかな?あいつらにも命が……」
「お前は毎回それだな。戦ってる時はとことんやるくせに終わった途端これだもんな……」
 
 レインはもううんざりだ、と両腕を挙げる。
「奴らは敵で、俺達はそれを倒す正義の味方、ハンター様だ。報酬もらってやつらをぶっ殺してる限り命がどうとか言えないんだよ」

「分かってる」
(分かってる、言われなくとも)

ジェイは自分に言い聞かせるように頷いてみせる。

「だったらいいじゃないか。今から村に帰って報酬もらって俺は寝る。意義は?」
「無い」
 
 レインは微笑みながら頷く。

「よろしい」

 そして二人は村へとゆっくりと歩いて行った。


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 第2章 呼ぶ声

1

レインとジェイは門をくぐり、村の中へと歩いて行く。
今回、二人が依頼を受けて黒獣から守る事となったヘルアという小さな村は穏やかであたり一面に広がる草原に包まれていた。村人達はお互いにお互いを認め合っていて、共に助け合いながら日々を過ごしている。
そこには怒りや悲しみといった感情は一切なく、笑いに包まれていた。
……だが、黒獣はそんな小さな平和の場さえも存在する事を許さない。村長ケビンの話では黒獣の襲撃が始まったのはそう遠い昔話ではないという。
いつ来るか分からない黒獣に怯える生活を続けていた所に二人は立ち寄ったのであった。
そして、依頼を受けた。二人はハンターとして。
だが……

「まったく……ここでも嫌われものかぁ」
ジェイは少々がっかりした様に言った。
村人達の目を見れば分からない筈がない。冷たく、怒りに満ちた軽蔑の眼差し。

「やっぱりお前は餓鬼だな。俺はもう慣れたさ。ま、毎回思うのはハンターって仕事の事を理解していない奴が多すぎるって事だな。俺達ハンターはボランティアかなんかじゃない。こっちは依頼されたら命懸けて仕事をする。金とって何が悪い。弱みに付け込むな、だって? 笑わせるな」
フンっとレインは周囲の村民達をにらみ返す。
やめなよ、とジェイは視線で伝えようとするがレインは気にも留めない様子だ。

「とっとと村長のとこ行って金受け取って飯食うぞ」

2

小さな村ヘルアの尊重ケビンの住居はとても質素なものであった。
形を成している木は雨や日差し、そして長い年月によって腐り果てている。
嵐が来たら跡形もなく吹き飛んでしまいそうだ。
近くには井戸があるが、本来水がある筈の場所は完全に枯れ果てていて草やコケに覆われてしまっている。
そんな事に目もくれずレインは早足で家の中へ入って行く。

家の中には人の気配など皆無で、あちらこちらに蜘蛛の巣が張られており壁にはよく分からない小さな黒い虫が這っている。幽霊屋敷、とレインは心の中で呟いた。
それと同時に疑問が浮かび上がる。
(報酬は出るのか?)

レインは真剣に考え始めた。
(確かに、今回はジェイのお情けで受けた仕事だ。俺達にとっちゃ大した額ではないがここの奴らにとっちゃ大金だ。村長は俺達に直接仕事を申し込んできたから俺達はこの家の有様を目にする事は無かった。村長もそれを考慮して……だったら不味いな。ワシの命で勘弁してください、だなんて報酬は絶対いらねぇし……)

「レイン」
ジェイの言葉にレインの思考は木っ端微塵に砕け、強制的に我に還らされた。
ふと顔を上げるとそこにはあの老いぼれケビン村長の姿があった。
白髪に覆われ、顔の至る所に深いシワが浮かび上がっている。
着ている物はもはや言うまでも無いかもしれないが粗末なものであった。
シワだらけで、所々に様々な大きさの穴が開かれている。元は白い生地だったかもしれないが、今は汚れで黒ずんでいる。

「感謝する勇敢なハンター殿。これが報酬だ」
ケビンは唇を震わせながらゆっくりとかみ締める様にゆっくりと意外に低い貫禄のある声吐き出し、懐から小さな袋を取り出してレインに渡した。
シワに覆われた日焼けした皮膚に視線を落としレインは罪悪感を感じたが、すぐに消え去った。
ああ、と言いレインはケビンから袋を受け取る。
ジェイもレインと同じように罪悪感を感じたがレインとは違い消し去る事は出来ていないようだ。
その表情には悲しみが浮かび上がっている。

「一つ、訪ねてもいいか?」
とは言ったもののレインはケビンの答えを待たずに話を続ける。
「この金はどこから出たものだ? 失礼だが、この家や住民の家を見た限り裕福そうには見えないのが事実だ。この金は、誰のものだ?」

静寂が3人の間に広がる。
レインは一心にケビンの眼を見ている。ケビンはそれに気付いてはいたが、恐怖に近い威圧感に怖気づき下を見つめたままだ。ようやく顔を上げたかと思うとすぐに下に視線を落としてしまう。

「答えろ」
追い討ちをかける様にレインは言い捨てた。
その言葉に答えるようにケビンは顔を上げた。もう迷いは無いのか下を向く事は無かった。

「その報酬は我々の命だ」

  

3

「なるほどな」
 レインは小さく呟いた。しかしジェイは何の事やらさっぱりといった様で呆然としている。

「どういうことさ?」
「この金は村人達の少ない金を寄せ集めた物って事だろ? ケビン殿」
 レインは袋を目線の位置まで上げ揺らす。中で小銭が擦り合わされジャリジャリといった音が聞こえる。ケビンはレインと眼を合わすまいと顔を横に向けた。
 図星か。レインは悪戯に微笑んだ。

「ま、この金がどのような物であれ価値は変わらないから俺は全然構わないがな」
「レイン……」
 ジェイは不満そうにむすっとした表情を浮かべ、レインを睨み付けた。だが、レインはそれを無視する。

「……あの忌わしき大戦後に起こった異変はご存知か?」
 ようやくケビンは口を開いた。苦いものを吐き出すかのように表情は重く、曇っている。
(黒き絶望、か)
 ああ、とレインは頷く。

「大戦後、世界中で天変地異が起こり、我々の村にも襲い掛かった。それにより作物は枯れ、生きていく事さえ難しくなってしまった。我々は常に死と隣り合わせである。かつては在った村の者の溢れんばかりの笑みも大戦によって枯れさせられてしまった。そして、追い討ちを駆けるように現れたあの忌わしき獣ども。我々は抵抗を続けたが、村の勇敢な男達は散っていった。死を覚悟した。その時、あなた方が現れたのだ。我々は話し合い、あなた方に懸ける事にしたのだ。そして見事にあなた方は我々を守ってくださった」
 ケビンは安堵の笑みを見せる。これでいいのだ、これでと自分に言い聞かせるように。

「残念だけど……まだ終わっていないよ、ケビンさん」
 ジェイは突然口を開いた。何やら覚悟を決めた様な表情をしている。
 おいおいちょっと待て、とレインは急いで静止しようとしたがため息をついて諦めた。

「ん? どういう事だね?」
 ケビンの笑みは一瞬にして崩れ去り、心配そうな表情へと移り変わった。
「奴らはまた現れる。この村の近くにある筈の巣にいるマザーを殺さない限りね」
「……黒獣の母となる存在マザー。マザーは寿命を迎えるまで半永久的に黒獣を生み出し続ける器だ。だから黒獣の小さな群を殺したからといって何も解決していない。この事を知っている一般人は少ない。だから、その……」
 レインは言い難そうに口を閉じた。適当な言葉は無いかと宙を向き探してみる。が、何も無い事に気付きまたため息をついた。

「悪質なハンターはね、その巣を潰さずに報酬を分捕るのさ。ま、その気持ちも分からなくも無いけどね」
「巣に乗り込むのは本当に命がけなんだ。中にいるのは幾多ものの黒獣の群。最深部に辿り着いてマザーと対峙したとしても厄介な事にマザー自体相当な力を持っているからな」
「でも大丈夫。僕らがチョチョイといって片付けてくるからさ」
 ジェイはケビンに微笑んで見せた。レインはジェイの笑みをチラリと横目で確認するとため息をつく。
「……ま、そういう事だ。依頼を受け、報酬を貰うからには仕事をちゃんとこなさないと契約違反だからな。だからこの金は返す」
 レインは小さな袋をケビンに向かって軽く投げた。ゆっくりと弧を描いて飛んでいきケビンはそれを受け取った。

「こんなはした金でそこまで……」
 ケビンはうつむき、面目ないと何度も呟いていた。泣いている様にも見えない事も無い。
 そんなケビンの姿を後に二人は家を出て行った。
 しばらくの間、お互いに口を開く事は無かった。
  

「意外だよレイン。まさか最後まで仕事を受けるなんてさ。いつも適当な数殺したら報酬受け取ってさっさと逃げるのにさ」
 ジェイは突然愉快そうに言った。レインの返事が返るまでに少しの間が空いていた。

「お前が詳しく話すからだろうが。あそこまで説明しといて別料金を頂きます。ありませんかそうですか。じゃあさようならっていうのは酷すぎるだろ。それにジェイ。お前何かおかしいぞ。いつもなら自分から仕事を受ける事なんて有得ないのにさ……どうしたんだ?」
(そう。ハンターの仕事を受けるのはいつだって俺だ。仕事の話をすると嫌がり、全然積極的じゃない。でも戦っている最中は別人の様にとことんやる。が、仕事は終わった後はいつも罪悪感を感じて命がどうとか呟く。けど、今回は違う。自分で仕事を受けて、しかもマザーまで倒すと言いやがる……疑いたくは無いが……何かあるのか?)

 レインは心配と疑念を抱いていた。だが、この男、隠し事をするのはとても苦手でどうしても顔に出てしまうのだ。それが仇となって今までも色々と問題を起こしてきたのであった。
 勘の鋭いジェイはそれに容易く気付き、レインをなだめる様にやさしく微笑んだ。

「何を心配してるのさ。何も無いって。僕らパートナーだろ?」

 レインは疑念を抱いていた自分を呪った。
(そうだ。コイツに何かするはずが無い)

「ああ、その通りだ。さっさと仕事片付けようぜ相棒」
「うん。やってやろうじゃん」
 

 
 
2006/08/26(Sat)14:30:51 公開 / ももちゃん
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■作者からのメッセージ
心理描写、戦闘描写など全てがまだまだ未熟です。
ご指導いただければ嬉しいです
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