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『ASTRAY IN ENDLESS DREAM』 作者:現在楽識 / 未分類 未分類
全角12079.5文字
容量24159 bytes
原稿用紙約39.4枚
親の転勤でこの街に来てから早くも1ヶ月がたち日常生活で行動する範囲で困ることはほとんど無くなった。
『もう1ヶ月たった』
そんな風に考える人がよくいるらしいがそんなことは別に僕の日常生活には何の関係も無い。
少し思い返してみるようなことも1ヶ月ではほとんど無い。
ただ、この街に来て最初に思ったことは中途半端に自然が多いなということ、そして……平和だということだった。
それは1ヶ月たっても変わらないことだ。
そんな街で僕は新しい生活、人間関係がリセットされた生活を始めた。
たぶん、僕を知っている人から見ればそれは『逃げた』といわれるかもしれないけど、それは別に否定はしない。
昔住んでいたところからこの街に来たことは確かだし、他人が『逃げる』と判断するようなことがたくさんあった。
だから、僕にとってはそんなことはどうでもいいことなのだ。
新しく始まった新しい世界での日々を過ごすだけだから。

平和だな。

僕はそう思いながら背中にリックを背負い、耳にはMP3から流れる音楽を聴きながら大通りを歩いている。
車の通りが激しい道路の両脇の歩道にはたくさんの人間が歩いているのが眼に映る。
会社員、小学生、中学生、僕が通う学校以外の制服を着た高校生、同じ学校の高校生、
フリーターや、大学生だって歩いていた。その中を僕は歩いている。
歩道に埋められた桜の木が満開の花を咲かせていて、その花も風に揺られて桜吹雪が少しだけ起こっている。
入学式から1週間、人によってはあっという間に過ぎた1週間だったんだろう、しかし僕はそう思わない。
時のたち方は常に一定、そう思うだけだ。
信号が赤になり、足を止めると、音楽を聴きながらでも周りの人々の声が聞こえる。

「ねえ、昨日のドラマ見た?」
「みたみた、あの俳優、かっこ悪くない?」

「今日、確か宿題の締め切りだよな?」
「ヤベェ、まったくやってない」

他愛も無い話ばかり、しかしそんなことを話している人々は人から見れば、楽しそうに見える。
それは、そういう話が出来る友達や知り合いが自分の周りに居るということだ。
この街の人で僕と朝、一緒に登校する友達はまだいない。
新しい学校に入って1週間しかたってないからというのが表向きの言い訳。
別に周りにそんなのがたくさん居ても邪魔だし、いつ裏切られるかわからないからな。
信号が青になり、横断歩道で止まっていた人々が前に進みだした。
あるお店の壁に大きな鏡があり、僕はそれに写るものを見た。
茶色交じりに黒髪に無表情でまるで死んだ魚のような目をした顔をして、学生服に包まれた少年が映っている。
鏡に映る少年の右手には包帯が巻かれている。それは鏡には映らないが学生服の中まで巻かれている。
その鏡に映るのは僕だ。そうやって少しの間、鏡に映る自らの姿を見ていた。
さっき渡った横断歩道の色がいつの間にか青から赤になっていたらしい。
そして再び赤から青に変わり人々の流れが再び起こった。
その混雑した人ごみの流れに沿って、再び歩き出す。平穏で何の変化の無い日常の街中をゆっくりと歩き出した。
大通りの角を曲がってから、後ろから何かが近づいてくる音と気配を感じて少し警戒した。
その気配を出しているものは混雑した歩道なのに、かなり速く動いている。
「ウィース、バットモ〜ニ〜ング」
後ろから接近してくる何かは僕の真横に並んだ瞬間、速度を落とし、僕の横には1人の男子生徒が現れた。
「おはよう、あれ? 今日は自分の足か」
僕は真横に並んだ男子生徒のほうをちらりと見て、すぐに前を見た。
僕みたいに茶色が混ざった髪とは違う質感が感じられる漆黒のように黒い髪に子供のような笑顔をした顔、
僕と同じ位の身長で、怪しげなオーラをかもし出している。
彼の名前は黒址龍(くろあとりゅう)、僕の親友と呼べる唯一無二の存在。
「おう、今日は余裕があったからな、それにあんまり乗り回すと学校側にばれてまずいからなぁ」
朝からテンションMAXの龍を見て僕はある仮説を立てた。
「お前、徹夜か?」
「ん? ああ、何故わかったんだ?」
龍はまるで自分が犯人だとばれた殺人犯のようなリアクションを取った。
(間違いない、こいつ……徹夜明けだな)
「リアクションが大きい、あと、朝からテンションが最高潮になってる」
コイツは辛ければ辛いほどテンションが高くなり、ヤバければヤバイほど興奮する。
マゾというわけではないが、そういう奴なのだ。危機感を楽しんでいるというのが一番解りやすい言い方だ。
暴走族に囲まれても笑っていられる。不良に追い掛け回されていても楽しそうにしている。そういう奴だ。
「そんなに高いか? 今の俺は」
「だいぶな、それにバットモーニングなんていっている時点で寝てないって言ってるようなものだろ」
この街の人ではこういう他愛の無い話を人間はいない。しかしいくつかの例外は存在していて。
特にコイツは例外だった。それに僕は他愛の無い話をすることは出来ない。
「あー、独り暮らしして1週間たつけどなかなか夜に外出できないぜ」
「ウチの学校の寮ってセキュリティ厳しいのか?」
「いや、管理人の若い女一人だけだけど、先輩達がいろいろとうるさいんだ」
龍は僕と一緒にこの街に引っ越してきた。僕は家族ごとだが、コイツは寮で独り暮らしをはじめた。
進路先を僕らは一緒にして、住んでいた町を離れることにした。一緒に新しい生活してみないかと言って。
「お前では突破不可能か?」
「まさか、今夜辺りは攻略して見せるぜ」
龍はビシッと効果音がつきそうなくらい力強く親指を立てた。漫画のキメポーズのごとく、
親指の関節が外れているが、そこはあえて無視する。
「がんばれよ」
僕は特に感情をこめることなくそう言って、大通り沿いにあるコンビニへと入った。
「いらっしゃいませー」
店員がお決まりの言葉を言っているのを無視して僕は雑誌のコーナーへ向かい、
いつも買っている雑誌を手に取り、さらに飲み物のコーナーへ行きコーヒー牛乳を1パック手にとる。
「あ、俺のも一緒に頼む」
龍は自分のコーヒー牛乳を僕に手渡し、お金を投げ渡す。
「解った」
僕はレジへ言って会計を済まし、再び雑誌のコーナーへと足を進める。
そこには親友が今日発売の雑誌を読み漁っている。
「おい、行くぞ」
そういっても龍はまったく反応しない。完全に集中している、自分の世界を作り上げている。
こうなると読み終わるまで流星群が降り注ごうとハルマゲドンが起きようと絶対に戻ってこない。
しかたないので僕もコミックを立ち読みする。
派手な戦闘ものの漫画だが、描写が少し荒い、ついでに言えばネタがいろんなマンガからの流用の塊だった。
(こういう漫画、最近多いな)
いつの間にか僕も漫画を読むことに夢中になり、読み終わった瞬間に時計を見た。
時計の針は8時26分を刺している。遅刻ギリギリのまずい時間を意味している。
「ヤバイな、おい、行くぞ」
僕は4冊目を読み漁っている龍に後ろからチョップをかました。すぐに状況を理解してくれて僕らはコンビニに出た。
「本気で走るぞ」
龍は走りながらそう言って、カウントダウンを始めた。
「10……9……8……7……6……」
僕もそれに合わせて深く息を吸い込んだ。そうしている間にもカウントは続いている。
「3……2……1……」
そして龍は一瞬目を閉じて、すぐに見開いた。
「ゼロ」
その瞬間、龍の走るスピードは飛躍的に、いや……爆発的に上がった。
通勤通学のピークは過ぎてるので辺りに人はいない。
おかげで避ける動作も必要なく、最短距離で僕らは走り抜けていける。一瞬、何人かの生徒を追い抜いたが、
僕と龍の姿を見て驚いたような顔をしている。
「お前なあ、体力持つのかよ?」
全力疾走、下手をしたらそれ以上のスピードで走りながら僕は尋ねた。
龍は無言でうなずいた。カウントダウンした後は龍は絶対にしゃべらない、
龍にとって自分で決めたルールらしく、それを守っている。
右へと曲がるカーブを龍は壁に向かってジャンプして、壁を蹴り、そのまま三角飛びの容量で曲がっていく。
おまけに壁蹴りでさらに加速している。多分普通の人間には出来ない芸当だと思う。
「そんな芸当、俺には出来ないって」
実際試したことが無いので出来るのかもしれないがそんなことに挑戦する気はまったくない。
僕はサイドステップの容量でカーブを曲がり、学校へと抜ける1本道へと出た。
そうすると7階建ての巨大な校舎が2つそびえ立っている。校舎の前には天然芝のサッカー場が広がっている。
おまけに2つの校舎の屋上には片方には大きな鐘、もう片方にはパラポナアンテナが大量に設置されている。
そんな規格外にでかい私立双星高等学校の入り口につけられた時計の針は8時33分を示している。
「ギリギリ間に合うな、これなら」
校門の前には巨大な橋がかけられていてアーチ状になっているため校門は見えないが、誰かいる気配は無い。
だから僕らは一気にラストスパートをかけた。この調子なら一気に駆け込んでエレベーターに乗れば遅刻しない。
しかし、僕の予定通りには行かなかった。なぜなら見えなかった校門が見えたとき、そこには白い何かがあった。
龍はとっさにジャンプして白い何かの3センチぐらい上をギリギリ低空飛行で避けた。
しかし、僕はその白いものを眼で捉えて、そこにあると理解してから回避動作に入ったため、間に合わなかった。

「ぐぇ」
「きゃーーーーーーーーーーーーーー」
「…………」

龍の声とその白い何かからの悲鳴、そして……僕の沈黙。
ぶつかったものは何なのか確認しようとしたとき、現在状況を把握した。
まず龍は着地に失敗したのか、背中から落ちたのか仰向けに倒れている。
僕はぶつかった白い物の上に乗っかる形に、俗に言う押し倒した形になっている。
そして僕の下に居る白い物の正体は女の子だった。白い髪の小柄な女の子、顔は髪に隠れてよく見えない。
カラーンゴローンと本物の鐘の音が8時35分を知らすために鳴り響いている。
「あの、どいてくれませんか?」
状況判断をしていると、その女の子の口が動き、消え入りそうな小さな声でその女の子は僕に言った。
「お前、何時までそんな体勢してんだよ、襲ってるように見えるぞそれ」
そういわれて僕はゆっくりと女の子から離れて、体についた砂とかを払った。
そしてすでに復活した龍のほうを見た。龍はやれやれというポーズをしている。
「大丈夫か?」
僕は手を指し伸ばし、女の子を起こしてあげる。
「…………」
女の子は何も言わずに僕らのほうを見ている……と思う。白い髪の毛で目が見えないので表情がわからない。
「ゴメンな」
僕は素直に謝る。だけど、それでも女の子は何も言わずこちらのほうを見ている……と思う。
表情が読めない人間相手にするのは辛い。何を考えているのか、わからない。
相手の思考が読めないと、行動が取れない。
僕らはどうしようかと互いの顔を見合わせた。龍は呆れている。いや、楽しんでいると思う。
(なあ、この状況はまずいのでは?)
龍は僕にこそこそと耳打ちをしてくる。その顔は少々ニヤっとしている。完璧に楽しんでいる。
(いや、俺は別に何もしてない、ぶつかっただけだ)
やましいことなど一切してはいない。それはいるはずの無い神に誓ってでもいい。関係ないけど。
龍があきれ果てた顔をしてため息を吐く。
「こちらこそ、すみません」
こちらが対応に困っていると、女の子はようやく口を開いた。
「遅刻確定だな、しかも1時間目もうすぐ始まるし」
龍はそう言って時計を見た。僕もそれに合わせて左手につけられた腕時計を見ると、8時40分をさしている。
ここまで来ると慌てても意味が無いので、龍は余裕ぶっこいている。
「怪我とか無いよな?」
僕はそう言って女の子の方へと視線を戻すと女の子は首を縦にコクコクと振った。
まるで怯えているような様子で少し距離を取っている。
「それじゃあ、俺達行くから……あんたも遅刻だろうけど」
龍はそう言って校門へと走り出す、先ほどと比べてはかなり遅いほうだ。
僕は黙ってそれについていき、ふと後ろに振り返る。
ゆっくりだが確実に歩き出す女の子の姿が見えたので、すぐに前を見て龍の後を追う。
校門を抜けて向かって右側の校舎の2階部分にある昇降口へと続く階段を上っているとある事を思った。
「なんかこの展開ってベタなゲームの出会い編みたいだな」
龍も同じことを考えていたのか、笑いながら頷いた。
「ま、俺がそんな風な面白い展開になるわけ無いよな」
僕はそう言ってエントランスへと抜けて中に備え付けられたエレベーターに乗り込む。
龍もエレベーターに乗り込むが、黙って僕のほうを見ている。
「確かにな、お前はそんなことには絶対にならないよな」
龍がエレベーターの扉を閉めて1年生職員室がある6階のボタンを押した。
「あ、そういえば……名前聞いてないな」
僕らは互いの顔を見合わせた。そして、龍は大笑いして、僕は軽く顔を歪ませた。
そういう展開になる分けない、そんな出来すぎた物語のような展開なんて存在しない。
偶然、出会って、ただそれだけ、それだけであり、それ以上のことなんて無い。
それ以上のことが起きるのなら、それは、災いに繋がるのだろう。
僕は、龍の顔を見た。何事も無いような顔をして楽しんでいる。最高の親友の顔を、
「どうした?」
「いや、平和だな」
龍は納得したような表情をして、うなずいた。


結局、僕らは職員室で説教されて、教室に入るとクラスメイトに白い眼で見らた。
教室の中は3つ分の空席、僕と龍以外に休んでいる奴がいるようだ。
僕と龍はそんなことお構いなしで2時間目から授業を受け始めた。
授業は退屈で眠気が出るがそれを必死にこらえて。途中で、教師に起こされたりもするが、
僕らは春の陽気に勝てずに眠りこけたりして、いつの間にか4時間目……
4時間目の古典の授業でノートを取っていると僕の隣に座っている龍の様子がおかしくなった。
靴の紐をぎゅっと締めなおし、屈伸運動を座りながら行っている。
時計を見ると12時32分……後3分で授業は終わり、昼食の時間になる。
(今日は何人から依頼受けたんだ?)
僕はノートを取りながら龍に小声で話しかける。
(16人、このクラスでパン買う奴全員)
この学校は昼飯の時になるとエントランスでパンと弁当を売り出される。
その競争率は高く、特にパンは争奪戦争と呼ばれるくらいの激しいものらしい、
僕は参加したこと無いけど、親が弁当作ってくれるし、
(10……、9……)
隣でカウントダウンが始まった。
初めてパンを買いに行ったとき、ウチのクラスで1人しか買うことが出来なかった。
買えなかった生徒は昼飯を抜く羽目になり、確実に買う方法を考えた結果として、
唯一買うことが出来た生徒、つまり……龍にみんなが代金と駄賃を渡して代行してもらうことになったのだ。
カラーンゴローンと鐘が鳴った瞬間、それと同時に、ゼロという言葉も聞こえて、
教室の中で風が巻き起こり、龍の姿はなくなっていた。神風かアイツは……
教室の扉のところに一瞬だけ龍の学生服の端っこが見えたがそれは本当に一瞬だった。
教師は龍が消えたことに気がついたが、無視して授業を終えるための礼をさせて教室から出て行った。
龍は後3,4分たてば戻ってくるだろう、たくさんのパンと一本のコーヒー牛乳を持って。
なので僕は自分の弁当箱を取り出し、一人で静かに龍の帰りを待つことにした。
「ねえ〜、ノートとった〜〜?」
後ろからのんきそうな声がしてきたので振り返るとそこには机にうつ伏せに倒れている女子生徒がいた。
長い黒色の髪が机の上から黒い布を四方にたらしたかのような状況になっている。
上条真奈(かみじょうまな)、この街で家族以外で僕に話しかける数少ない人間で、
入試の時に席が隣だったから偶然話しかけられたのが発端で、
引っ越してきた新しい家の隣の大きな家に住んでいて、
トドメに入学して同じクラスになったという奇妙な偶然が連続発生して、知り合った女子生徒。
自宅は金持ちの方ので両親は仕事で忙しく、家にメイドが居るらしいが入ったことが無いのでよくわからない。
つやのある長い黒髪とつり上がった目、そしてスタイル抜群なので人気があるらしい。
考えてみれば、こいつとも、ゲームみたいな展開もどきだな。関係ないけど、
「上条……お前、また寝てたのか……中間赤点とっても知らないぞ」
これは本当にこっちには関係ない話だ。いつも授業中寝ているのだから本当に平常点で引かれそうだ。
「ダイジョーブだって、それよりもあたしのことを上の名前で呼ばないでよ、区別つかないでしょ」
コイツは良く似た顔をした双子の弟が隣のクラスに居るため、上の名前で呼ばれると少し嫌な顔をする。
「真奈……お前、先生に絶対ににらまれえるぞ」
僕はさっきまで使っていたノートを左手でつかんで貸してあげた。
真奈は包帯の左手を見てから、その包帯に触れないようにそれを受け取った。
「ありがと、で? アレは買出し?」
「ああ、さっき教室に風が吹いていたぜ」
コイツはそんな状況で寝ていたらしく、龍が消えたことに今更気がついている。
「アレが人間なのか疑っちゃうわよ、あの速度を見たら」
アレとはもちろん龍のことだ、確かにアイツは速かった。だけどそれぐらいで人間か疑うのもおかしい。
「アレは間違いなく人間だぞ、血も赤いし骨もある。……何が人間の定義かは知らないけど」
真奈は理解できないといいたいような表情をして、これ以上は何も言わなかった。
真奈はあまり他人の深いところには踏み込まない性格らしく、それゆえに友達が多い、
こちらが相談したり言ったりしたこと以上は追及してこない。
(こっちとしてはそれは楽でいいんだけどな)
そうこういっていると龍が足を器用に使って教室のドアを開けて戻ってきた。無論、両手いっぱいにパンを抱えて、
「おらー、帰ってきたぞ」
その声を聞いた瞬間、教室に居た生徒の半数が龍の元へと走っていく。
16人ということは単純計算でも32個のパンを買ってきたことになる。しかも人それぞれの注文があるのだが、
見たところ全員の注文をクリアしたようだ、パンの山は勢い良く減っていき、最後には2つだけパンが残っていた。
「お帰り、儲けはいくらでたの?」
真奈は意気揚々としている龍に向かって自分の弁当を出しながらたずねた。
「今日は締めて800円、儲け儲け」
ただ単に走ってパンを買ってくるだけでお金が手に入るのは確かに儲けなんだろう。
「飯食ってどこか行くか」
僕はそう言って弁当箱を開けて箸を左手で握った。
龍もコーヒー牛乳のパックにストローを刺し、パンの袋を開けてパンをかじった。
真奈もサンドイッチが入ったランチボックスを開いた。
僕は親が作ってくれた昼飯、龍は自分で買ってきた昼飯、真奈は自分で作っているらしい。
3人ともいろんな意味でばらばらな昼食を少し雑談しながら食べ始める。


昼食を食べ終わり、僕らは龍と2人で校舎内を歩き回っていた。
この学校は広すぎるので1週間たっても全ての場所に行くことは無い。
噂では卒業するときまで入らない部屋も存在するらしく、
他にも一部の生徒しか存在を知らない隠し部屋があるとか、
校長の秘蔵コレクションが隠されている部屋などの噂が多数存在している。
とりあえず今日は天気もいいから龍の提案で屋上に行くことにした。
僕達がいる校舎の隣の校舎のパラポナアンテナだらけの屋上には1回行ったので、
今度は自分たちの教室があるこの校舎の屋上へ、
巨大な鐘が設置されているため広いスペースが確保されているらしい。
一応、パラポアンテナの屋上から一度見たが誰もいなかった気がする。
「でもさあ、鐘のすぐ近くってうるさそうだよな」
龍は屋上へと続く階段を上りながらそんなこと口から漏らす。
「そうだな、確かにうるさそうだな」
階段の踊り場に出るとそこにはチェーンが張ってあり、その前に立て札がおいてあった。
『屋上立ち入り禁止』
「行くか」
龍はその立て札を見て5秒も待たないでチェーンを乗り越えた。
こういうときは屋上の扉に鍵がかかっているはずだからそれで諦めるだろうと思い、僕もついていく。
しかし、鍵は普通に開いていた。この学校はかなり豪華に作ってあるはずなのに……セキュリティが甘いのか?
「完全に防音用になってるぜ、この扉」
龍は扉を指さした。鉄で出来ている頑丈そんな扉としまったときに固定される位置にゴムが取り付いている。
僕らはそれが意味することを理解して互いの顔を見合わせる。
「かなり、下手したら……滅茶苦茶うるさい、言うことか」
僕らは扉を超えて外へ出てみると、いい景色が広がっている。
上には青い空が広がり、下にはデザインされたという広がる街並みがあった。
「あ、おい、アレ」
龍は屋上の隅のほうを指したので僕はその方向を見てみると、なにやら白いものがあった。
眼を凝らして焦点を合わせてみると、
「マジかよ……」
そこには今朝の少女が居た。ボーッと柵に手を置き、どこか遠くを見ているように見えるが、
朝と同じように、髪の毛で表情がわからないので実際はよくわからない。
「まじめにゲームみたいだな」
龍はそう言って足音を消しながら女の子の方へ歩いていく、僕は普通に歩いていく。
(足音消せ)
龍は口パクとジェスチャーで僕にそう指示し、僕も広い屋上を10メートルほどの距離を足音を抜き足で歩いた。
隣まで近づいても女の子は気づいていない。ピクリともせずにそこに居る。
眼や鼻が白い前髪で隠れているから何を見てるのかはわからないが、遠くを見ているのだな……と思った。
1時を告げる鐘が鳴ったとき、僕らはあの防音扉の理由がわかった。
カラーンゴローンと零距離に近い距離で聞くとかなりの音量だった。
「音波兵器の零距離射撃かよ」
僕の隣に居る龍の声がかすかに聞こえるくらいにしか聞こえないくらい大きい音だった。
反対側の隣を見ると女の子が耳を押さえてうずくまっている。
1分間という短い時間だといえど十分威力があった。
「大丈夫か? 二人とも」
僕は龍のほうを軽く見てから、女の子の方を見た。
「…………」
一瞬ビックリしたようなリアクションを取って1歩後ろにさがった。
相変わらず、髪の毛で顔があまり見えない。
よく生徒指導の教師とか風紀委員に捕まらないな、色とか、長さとか……などと思いながら彼女のほうを見た。
「あのさ、ビックリするのはわかるけどそういうリアクションはこちらが傷つくんだけど」
龍は呆れたような表情をして女の子に向かってそういった。
「あ、ごめんなさい」
落ち着いたのか、女の子は1歩前に出た。
「今朝はスマンな、ぶつかって」
「いえ、私が悪いですから、気にしないでください」
多分僕達が悪いんだろう、人から見れば。
「ここって立ち入り禁止だよな? 何で居るの?」
龍は座り込んで女の子にたずねた。
「いや、間違いなく俺たちが言うセリフじゃないだろ」
僕は機械のように突っ込みを入れておく。
「……朝から居ますから」
何を言ってるのかまったく理解できなかったが、その言葉から推測されることは、ひとつだけだった。
「朝から?」
僕の質問に女の子はコクッと首を縦に振る。
「授業を1回も受けずに?」
龍の質問にまた女の子は首を縦に振る。今日一日、僕達と会ってからずっと屋上に登っていたのか。
「耳が壊れるだろ、朝からこんな所に居たら絶対に」
龍はそう言って立ち上がった。
「大丈夫です、大きな音には慣れてますから」
さっきうずくまっていたけど、大丈夫だったらしい。
「何で朝からここにいるんだ?」
龍は自分の思う最大の疑問を解決するために女の子にたずねた。こいつはこういうときは遠慮が無い、
「…………」
黙りこんでしまった。僕は一応、龍の頭を軽く殴っておいた。
「お前、訊いていい事と悪いことがあるだろ」
そして、僕は龍の耳元でささやいた。
(お前、自分の右目のこと訊かれても気分いいか?)
そういうと龍は一瞬、ほんの一瞬、無表情になり、固まったが、納得してすぐに女の子の方を向いた。
「悪い、言いたくなかったら言わなくてもいいから」
「……怖いんです」
龍がそういったと同時に女の子も口を開いてそういった。白い髪の毛が風でなびいている。
龍は絶句した、突然すぎてビックリしたようだ。
「新しい世界に飛び込むのが怖いんです。……誰も私の事を知らないから」
「新しい世界って、もう1週間もたってるからそれなりに話したりする人とか居るだろ?」
龍は女の子にそうたずねた。確かに1週間たてば友達とまでは行かないけど話す人は出来るはず。
龍の場合はパンの代行ということでクラスメイトの大半と話したりしてる。
僕の場合はちょっと例外なのでそういえないけど、それでも真奈と話している。
「いえ、まだ1回も授業を受けてません」
「…………」
僕らは沈黙してしまった。そして、僕はある事を思い出した。
ウチのクラスにまだ1回も出席してない生徒が居る、その生徒は今日もまだ現れてない。
今日もその席は空席だった。普通ならどうでもいいと気にしないのだが、
僕の隣の席のことなので記憶の隅には置いてあった。何しろ今日、教室に入ったとき、横一列に3つ空席なのだ。
「なあ……もしかして、高校からこっちに引っ越してしてきた?」
龍は女の子にそうたずねた。その疑問は僕も思ったことだった。そして、推測される事実はこれぐらいしかない。
「はい、とある事情で強制的に……前にいたところから急に連れてこられました」
また女の子は遠くの景色を見始めた。
「俺達もそうなんだよな」
僕はそう言った。その言葉に女の子はキョトンとしている。
「俺達もここに入学するときに引越ししてきたんだ」
龍がキチンと補足説明を入れた。
「偶然だな、本当に」
「なあ、友達にならないか?」
僕が虚空に向かってつぶやいていると龍は女の子にそういった。
「え?」
女の子は本当に戸惑いの一瞬の呆けになっている。
「いや、偶然にしては連続しすぎだし、同じ引越ししてきたもの同士、仲良くしようかなって思って」
子供のように龍は笑った。そこには邪気も悪意も存在しない。純粋に誘っているのだ。
本当に戸惑っている。戸惑い続けている。悩んでいる、目の焦点が僕らから外れている。
「……ありがとう御座います」
何故か龍と僕は礼をいわれた。
「いや、別に礼を言われることは行ってない気がするけど、それより、顔見せてくれねえか?」
龍は前髪に隠れた部分を見せてくれるようにお願いした。
「あ、すみません、顔も見せずに話をするって失礼ですよね」
女の子は自分の前髪に隠れた部分を二つに分けて、初めて僕らに顔を見せてくれる。
「え? ……嘘だろ」
僕はその顔に見覚えがあった。龍も驚きの表情をしている。
「あの? どうかしましたか?」
僕らの表情を見て女の子は不思議そうにこちらを見ていた。
整った鼻に、優しそうな目……多分人から見たらかわいいと判断するだろう。
まるで漫画のようだが実際にそういう女の子が存在していた。
しかし僕らの思考回路はそんなこととは違う事に繋がっていた。
「おい、落ち着け、大丈夫か?」
龍が僕の肩をつかんだ。

何でその顔がそこに存在している……

そこに存在してはいけない顔だろ……

矛盾……事実に反している

僕は頭を抱えた。頭の中で様々な事実がぐるぐると回っている。
「だ、大丈夫ですか?」
女の子は僕に近づいてきた。

声が違う、しゃべり方も違う、デモカオハオナジ

「落ち着け、……そっくりなだけだろ」
そういわれて僕の頭の中での矛盾は消えた……下手したら保留かもしれないけど、
一応、正気は取り戻したと思う。
「そうだな、……ごめんな、いきなりパニックになって」
僕はもう一度女の子の顔を見た。似ているだけで、別人……そう、アイツではない。
「私の顔、変ですか?」
「いやぜんぜん、むしろかわいいほうだな」
龍は心配そうにこちらを見ていた女の子に即答してあげた。
「ちょっと、昔の知り合いに似てたんだよ、それでちょっと混乱してしまっただけ」
龍がそういうと女の子は何で混乱するんだろうって言う顔をしていた。
「あのさあ、名前は?」
僕は女の子に尋ねた。
「あ、白鴎……白鴎景(はくおうけい)です、そちらは?」
「俺は黒址龍」
女の子は僕のほうを見た。
「色無刹那(しきなしせつな)だ、よろしく」
また鐘が鳴り始めた。
「これはきついってやっぱり……」
「これ、授業開始の鐘だけど、行くか」
僕はそう言って耳を押さえている龍に扉へと促した。そして、白鴎も……
「私は、ここにいます」
「何で?」
「怖いからです」
「怖がっていても何も始まらないよな」
そう言って龍は白鴎に手をさしのべるが、それでも白鴎はここに残ろうとしている。
「誰も自分のことを知らないから怖いのか? 俺達って言う友達がいるのに?」
龍の言葉に彼女は思いつめたような顔をする。
「だれもお前のことを知らない世界はもう無いぜ? だって俺達が知ったんだから」
僕はいつの間にか、無意識のうちにそう言っている事に驚いた。

あれ? でもなんで僕はこんな事してるんだ?

そんな疑問が頭をよぎるが今は気にはしないでおこう。
僕が近寄り、ゆっくりと手をさしのべるとようやく白鴎は指し伸ばした手を遠慮がちにつかんだ。
「がんばってみます」

僕らは新しい世界で暮らしている。それが厳しくなるのか、楽しくなるのか、絶望に沈むのか、僕にはわからない。
ただ、そんな風に感じることはきっと無い。今のところは、絶対に無い。
物語がどうなろうと、関係ない、僕の物語はもう、終ってしまったのだから。

2006/01/09(Mon)12:46:49 公開 / 現在楽識
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■作者からのメッセージ
こういう性格の主人公なんですけど……あまりよくないみたいですか?

また、駄目だし等お願いします。
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