オリジナル小説 投稿掲示板『登竜門』へようこそ! ... 創作小説投稿/小説掲示板

 誤動作・不具合に気付いた際には管理板『バグ報告スレッド』へご一報お願い致します。

 システム拡張変更予定(感想書き込みできませんが、作品探したり読むのは早いかと)。
 全作品から原稿枚数順表示や、 評価(ポイント)合計順コメント数順ができます。
 利用者の方々に支えられて開設から10年、これまでで5400件以上の作品。作品の為にもシステムメンテ等して参ります。

 縦書きビューワがNoto Serif JP対応になりました(Androidスマホ対応)。是非「[縦] 」から読んでください。by 運営者:紅堂幹人(@MikitoKudow) Facebook

-20031231 -20040229 -20040430 -20040530 -20040731
-20040930 -20041130 -20050115 -20050315 -20050430
-20050615 -20050731 -20050915 -20051115 -20060120
-20060331 -20060430 -20060630 -20061231 -20070615
-20071031 -20080130 -20080730 -20081130 -20091031
-20100301 -20100831 -20110331 -20120331 -girls_compilation
-completed_01 -completed_02 -completed_03 -completed_04 -incomp_01
-incomp_02 -現行ログ
メニュー
お知らせ・概要など
必読【利用規約】
クッキー環境設定
RSS 1.0 feed
Atom 1.0 feed
リレー小説板β
雑談掲示板
討論・管理掲示板
サポートツール

『ビバ★グルメ!!』 作者:ゅぇ / ショート*2 ショート*2
全角6328.5文字
容量12657 bytes
原稿用紙約21.7枚
 
 

  ***幸せになろうね***


 


 『キングサーモンとイクラのクリームソースパスタ』


 
 先週と同じ金曜日に、先週と同じ店、先週と同じ席で、あたしは先週と同じメニューを注文する。
 教育実習終了日。眼の前には二人の女子大生――いや、何か女子大生っていうより風俗の姉さんみたいなカッコなんだけど――まぁそれは置いておく。
 今日の夕方、三週間続いた教育実習がようやく終了を迎え、ガラにもなく生徒から貰ったメッセージを読みながら実習生控え室で涙ぐんだりした。なるほど、教育実習というものは幾分人を涙脆くさせるように出来ているらしい。三週間精神的というよりも体力的にきつかったので、その反動もあって感激したのかもしれないけれど。
 「あーぁ、クソだりぃ!」
 そう言ってあたしの正面で煙草を吸い始める。
 ええ、正直に言いましょう。教育実習の三週間であたしが一番嫌いになった人なんです、アナタ。
 ホストクラブに入り浸るのはいいけど、控え室で痴話喧嘩するのやめてください。
 口が悪いのはいいけど、あたしに向かって親友でもないのに『おまえ』とか『てめえ』って偉そうに言うのやめてください。
 それから『うち足腐ってんねん』って自慢げに言って控え室で靴脱ぐのやめてください。ハンパなく臭いんですけど――っていうかホントに腐ってると思う。
 「メシ食おうぜ、メシ」
 (メシって言うな。食うって言うな)
 そんな彼女があたしの目の前に座っている。煙草吸いながらメシ、メシと怒鳴る姿は傍から見ていて相当恥ずかしい。
 ともかくパスタのお店に来てるわけだし、それだけで満足しなくては――とあたしは肘をついてぼんやりする。
 「梅田のホストはさぁ……」
 喋りだす彼女の横で、もう一人同じ国語科の女の子も煙草を吸っている。どうやら彼女たちは、あたしとはまるで違う道へと歩き出しているらしい。
 時々不思議に思う。中高一貫の学校で同じ時を刻んだあたしたちは、いったいどこでお互い見知らぬ人間に変化してしまうのだろう。もっと昔は優しくて、もっと昔は楽しかったはずなのに。
 「うちの彼氏はな〜……」
 あたしは仲の良い友達の恋バナにしか興味ない。ていうか、何か貢がされてるっぽい雰囲気満々の彼女に何をどう言ってあげればいいのかが分からない。彼女の彼氏はホストである。
 そういえばあたしが実習で担任をしたクラスの子も、あたしはホストの○○クンが好きぃ、と叫んでいた。
 不思議な世の中になったというか――早熟な世の中になったというか、こんなことを思うのはホストクラブに対する偏見なのかもしれないけれど。
 まぁ大変な世の中だわ、と思いながら運ばれてきたパスタを見て一気に幸せの絶頂。もうむしろあたしに話しかけないで、とばかりに目の前に座る彼女たちを無視して食べ始める。
 とろりとした柔らかな色合いのクリームソース。大きめにカットされたキングサーモンは、口に入れるとほろりと崩れて独特の風味と一緒に消える。これは美味しい。
 先週も食べたところだけれど、飽きない。
 豪華にもイクラというキングサーモンの子供が。きらきら輝く紅い宝石がいっぱい散りばめてあって、これも口に入れると程よい塩加減と一緒に弾けて消えるのである。
 もういい、ホント今までのしんどさなんて消えてなくなりそう。
 あつあつのパスタが少し硬めなのもまた最高、あたしは思わず笑顔になる。
 「おまえ早よ食えや」
 (……………)
 ――今日、あたしが車を運転してここまでやってきた。
「まだ〜?」
「別に一人で歩いて帰ってくれてもいいんよ?」
 人が味わって食べてるところに、早よ食えやとのたまうその神経は何だ。まだおまえ呼ばわりか。あたしは無視してパスタを口に運ぶ。
 あたしがここまで言われても大人しくしているのには――微笑んで受け答えしているのには理由がある。仲の良い知り合いに、「キレるな」と言われていたから。
 (今日が過ぎればもう二度と会わないんだから)
 我慢、我慢。それが人生なんだってことを、この三週間でよぉく思い知ったから。
 「………………」
 もっと仲良しの人。親友とか好きな人とか、そういう人と食べに来たいものである。美味しい豪華なパスタっていうのは。



 


 『ごまもち』

 
 ごまもちっていうものを、昨夜母親の知り合いが持ってきてくれた。胡麻のついた普通のお餅かと思いきや、正方形の入れ物の中に黒胡麻の摩ったのが山ほど詰まっている。
 付属の竹串みたいなのでつつくと、その黒胡麻の海の中にお餅らしきものが埋まっていた。
 (何なのコレ……)
 とてもおいしそうには見えないのである。何だか見た目が本当に微妙で、おそらく好き嫌いの激しいあたしの父親は絶対食べないだろうと思われる。
 ていうか、食べようとしたら息で胡麻が吹き散らされていくのが嫌。何か自分の鼻息が荒いみたいで気に食わない。
 口に入れると、胡麻の何ともいえない食感が。少し甘くて、胡麻の風味がたっぷり含まれている。お餅も胡麻も好きなあたしにはとっても楽しい食感である。
 「お母さんコレおいしい!」
 「でしょ? だから言ったのよ」
 (……何を? あたし何も聞いてないよ)
 とりあえずこれは母親の性格だからどうでもいい。母親が横からごまもちを掻っ攫うその下で、撒き散らされる胡麻にむせながらあたしはお餅を食べる。
 なぁんだ、見た目に反して美味しいじゃないの。
 これを持ってきてくれた母親の知人というのは、母親と同じ保母さんである。夜中に電話をかけてきては、母親と長時間にわたって話し込む。どうやら保育所の愚痴が溜まっているらしい。
 この人はいつもいつも色んなものをくれる。サザエ、蜜柑、いよかん、焼き鳥(!?)……大丈夫だろうか、あたしの家は。餌付けされてるんじゃないだろうか、と思いつつあたしは次のごまもちに手を伸ばす。
 あたしが一番餌付けされているといえる。それでもいい。
 美味しいものは美味しい、それだけで幸せを感じることのできる純粋さを人間は忘れてはいけないと最近特に思うのだ。
 美味しいものを食べよう。そうすれば心も豊かになると思う。
 美味しいものを食べて幸せになろう。そうすればむやみやたらと人を殺したりしなくなると思う――と考えるあたしは、もしかしたらバカなのかなぁ。
 母親に言ってみたら、鼻で笑われた挙句。
 「そんなアホなこと言ってる暇があったら勉強したら?」
 へぇへぇ、申し訳ございませんでした。




 

 『焼肉』

 
 焼肉は、祖母の家で食べるのが一番美味しい。しかも関東から親戚が来ているとき。何でかっていうと理由は簡単。あたしの家だと安いお肉しか買わないけれど、祖母の家では違うから。
 100g1500円もするお肉をいっぱい買ってくれるのである。これがまたホントたまに食べるものだから、美味しくて美味しくて。
 鉄板の上で、何ともいえない素敵な音を奏でる素晴らしいお肉たち――それはもう耳に優しい天上の音色。あなたたちは本当に素敵、と称賛してあげたいくらい。
 焼けてくるお肉を裏返す瞬間に、お箸にちょっとお肉がひっつく感触もまた素敵。
 焼肉はたまに食べるから美味しいんだと思う。綺麗に焼けた柔らかなお肉を、タレにつけるとほんの少しじゅっという感じのいい音がする。
 ちょっぴり噛めば、しっとりと肉が溶けていく。この味がたまらない。
 「ひとみちゃん」
 (このお肉おいしいわぁ)
 「ひとみちゃん」
 (さっすが100g1500円)
 「ひとみちゃん!」
 さっきから何なんだろうと思ってふりかえると、祖母の兄――つまりあたしの母親の叔父にあたる85歳の老人があたしを見つめて、あたしに呼びかけていた。
 「ひとみちゃんは今年で何歳になるんだ?」
 思わずきょとんとしたのは――……あたしの名前が「ひとみ」ではないからである。どこぞの親戚の娘と間違っているらしい。
 「**です、あたし」
 あたしはこの叔父さんが好きである。白髪で帽子が似合うちょっぴりダンディな老人で、気が強いのが玉に瑕かもしれない。
 若い頃にははるばる海に出てゆく戦艦大和も見送ったというし、何の勲章だか分からないけれども総理大臣から純金の懐中時計も貰ったとか。
 「んぁ?」
 「あたし、ひとみじゃなくって**です!」
 「あ? 何だって?」
 ああ、気が強いのが玉に瑕じゃない。耳が遠いのが玉に瑕だ。
 彼と喋っていると何だかもう朗らかな気分になってくる。いったい何度聞き返せば、あたしの言葉は彼の耳に届くのだろう。そんなことを思いながらあたしは自分の名前を叫ぶのである。
 「ああぁ、ああ、そうだったっけか。**ちゃんか、おじさん時々わかんなくなっちまうよ」
 とても朗らかな老人のことを、あたしは正直ギャンブルまみれの祖父よりも慕っている。



 

 『抹茶フラペチーノ』

 

 最近恋バナをずっとしていなかった。久しぶりにアルバイトに行くと、親友が大喜びで迎えてくれた。アルバイト先の塾で、久々に苛立ちを感じる。明日がテストだといって、古典を何とかしてくれと泣きついてくる男子生徒二名と女子生徒一名。
 (そんなギリギリに来られたって、口語訳丸暗記しか残された道はないんだけど)
 あたしが一生懸命テスト対策を講じているというのに、俺アホやねんアハハと笑う生徒に呆れ返った。
 「将来何になるの?」
 ちょっと訊いてみる。
 「え、俺? ニートになろっかなぁ〜……」
 マジですか。まあ、『ニート』という言葉を知っているだけでもマシなのかもしれない。少しはニュースを見ている証拠だ、と楽観的に考えてみる。
 「ニートになるの?」
 「楽しそうじゃない?」
 「今でもじゅうぶん楽しそうですけど〜」
 「テスト明日に控えて苦しんでる俺を見てそんなこと言うの?」
 「言うの――……っていうかさっさと暗記しな」
 へらへらしている生徒に、そこはかとない殺意を覚える。そんなに呑気でいられるなら、君にテスト勉強のための塾なんて必要ないだろうとアドバイスしてあげたい。
 「俺勉強したくなぁい」
 もうひとつのブースに移ると、間髪いれずその席の男子生徒に我儘を言われる。
 「大学は?」
 「別にどっちでも……」
 他の講師たちが教えているブースからは、朗らかで暖かい講師の励ましの声が聞こえてくる。数いる講師の中で、あたしの声が一番でかい。
 「勉強したくないの?」
 「当たり前ぇぇ」
 「じゃあもう勉強なんてせんでいいから帰ってしまえ」
 「それでも先生!?」
 「かーえーれ、かーえーれ」
 一瞬シーンと塾の中が静まり返った。
 (冗談だってば……)
 少し本気だったんだけれど。


 


 久々に塾に返り咲いたあたしを、親友が誘った。
 「スタバ行こ」
 ちょうど持ち合わせのお金がなかったので一度断ると、『実習お疲れ様、よく頑張ったね』の意でごちそうしてくれるという。喜んでついていくことを決めた。
 「あたし好きな人できたって言ったやん?」
 彼女が言った。以前あたしと最も仲の良い男友達に惚れこみ、二度告白して玉砕した過去がある。
 彼女も前に向かって歩き出しているのだと、あたしは他人ごとながらホッとした。あたしも少し前に男と別れたけれど、きっちり前に歩き始めることができている。
 「でさ、その人と付き合ってるわけじゃないんやけど×××しちゃったんね。でもさ、あたしがメールしても全然返してきてくれへんねん」
 その男というのが、天下のK大卒。どこぞの頭いい進学塾の正社員講師として働いているらしい。
 
 抹茶フラペチーノとサンドイッチを頼んで席につく。すでに時間は十時半。他に客は見られない。
 「見せて、どんな顔?」
 おもむろに取り出した携帯で、その彼の写メを見せてくれた。
 (げ?)
 あたしの親友を押し倒して、そして彼女のメールを無視するとは――どれほど男前で自分に自信のある男かと思いきや、いやいや全然カッコよくないではないか。めがねをかけた、チビの小太りである。
 あたしの親友がこんな男に熱をあげてる!? 冗談じゃない、とあたしは半分キレた。
 「そいでさ、家おいでって言ってくれたんだけどね。あたしちょうどそのとき女の子の日だったから、抱き締めるくらいしかできないよって言ったわけ」
 そしたら何て言ったと思う、と彼女はフラペチーノの容器をガツンとテーブルに置いた。
 あたしの飲んでいる抹茶フラペチーノは、少し生クリームが多すぎる気がしないでもない。けれどそれをスプーンでよくかき混ぜてしまうと、ほどよく溶け合ってとてもいい感じになる。微細な氷がいっぱい入っていて、ストローで吸うたびにほんのわずかしゃりしゃりとした爽やかな食感と冷たさが身体を通り抜けた。抹茶パラダイスだ。幸せこのうえない。
 「そしたら今日までメールなし。音信不通やねん」
 そりゃあ彼女が幸せになれるんだったら、あたしは応援する。大事な友達だし。だけど何か……何となくこの男感じ悪いと思った。
 だからフラペチーノという未知の美味しい世界をごちそうしてもらっておきながら――あたしは。

 「止めや、止め!! そんな男止めや!! 他探そ、他にいい男いっぱいいるって!」

 彼女は溜息をついて、携帯をバッグにしまう。
 「何か新しい出会いないかなぁ」
 あたしも彼女も、合コンがあまり好きではない。こういうときに合コンのひとつでも行ければいいんだけれど、あたしたちはどうやらそういう性質に生まれてこなかったようで。
 っていうか今まで面子のいい合コンにあたったことがないからかもしれないけれど(だって少し前に誘われていった合コンの相手、自分の仕事の忙しさ自慢ばっかりしてくる医者だった。しかもしつこい)。
 「頑張って幸せになろなっ!」
 抹茶フラペチーノを両手で抱え込んで、女二人が誓いあったあとに見たものは。店外のベンチでチューをしまくる二組のカップルでした、と。世の中はそんなものである。つらい。
 「いや〜ん、えっち〜」
 あたしと彼女は、そう言い捨てて自転車に飛び乗った。




 






 あたしは夢を見つけた。なりたい職業が明確になってきた。とりあえず就職できれば――っていうのは、あたしは嫌だ。
 せっかく生まれてきたんだから、やりがいのある仕事に就いて、素敵な人生を送りたいと思う。美味しいものを食べて、ぐっすり眠って、自分が一番輝くことのできる仕事をして生活を立てる。最高のことだとあたしは思う。
 あたしは、たとえ明日死んでも後悔しないような生き方をしていきたい。


 ***幸せになろうね***

 
 それはあたしたちの合言葉。そのためには美味しいものも必要なわけ。


 ***幸せになろうね***


 親友と笑って誓う。
 お互い素敵な人を見つけて、素敵な恋をして。
 美味しいものを食べて。
 それから自分のやりたい職業に就いて、充実した人生を送って。
 そして老後も仲良く恋バナしたりしようねって。


 


 で、あたしは明日からも頑張って生きていくわけ。
 明日からの親友にバンザイ。
 明日からのあたしにバンザイ。


 
 その晩彼女からメールがきた。

 * * * * * * * *

 【2005/06/15 23:58】
  
 題:無題 

 本文>幸せになろうねw



 * * * * * * * *


 【2005/06/16 00:02】

 題:無題

 本文>もっちろん〜♪(≧∀≦)♪







2005/06/19(Sun)23:02:38 公開 / ゅぇ
■この作品の著作権はゅぇさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
病気です。昔も一度これを投稿した(同じやつではないですが)ことがあるのですが、まず小説といえるようなものではございません(なら投稿するな)

けれども前よりは少しだけ小説仕立てにしてみたつもりなんですが。お許しください、と今のうちに土下座して謝っておきますっ!! 最近少しずつまたおいしいものが頭の中でふよふよと浮かび始めたので、【長編イヤイヤ疲れた病】にかこつけて、皆様と美味しいものを食べる幸せを共有したいとばかりに書いたものでございます。どうかこのアホ全開のショートにお怒りにならず、微笑みながら読んでいただきたいと切に願いますっ!! ではでは♪


そして菖蒲さんのコメントに焦って少し追記を→これはほぼ実話です。あたしが関西人なので、主人公も関西弁になってます(笑。そこらへんはあまり気にせず読み流していただければ(コラ

とりあえずは神夜さん、菖蒲さん早々に読んでいただいてありがとうございます(6∀6)
この作品に対する感想 - 昇順
感想記事の投稿は現在ありません。
名前 E-Mail 文章感想 簡易感想
簡易感想をラジオボタンで選択した場合、コメント欄の本文は無視され、選んだ定型文(0pt)が投稿されます。

この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
スタッフ用:
投稿者用: 編集 削除