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『境界線』 作者:ヤッチー / ミステリ
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 もし、尊敬する人間が殺されたとしたら、あなたは誰を恨む?当然こう答えるだろう「殺した人間」と。
 もし、尊敬する人間が自殺したとしたら、あなたは誰を恨む?
 自殺に追いやった人?その人を育てた人々?それとも自分自身?
 答えは人によって違うかもしれないので、あえて私の経験から言わせてもらうとしよう。

 …私は…誰も恨むことができなかった。



「もし、ものすごく嫌いな人間を弁護しなければならなくなったとき、あなたならどうします?」
「オレ、弁護士じゃないから他人を弁護することなんてないしな〜」
 この人は、いつもこんな感じだ。私の質問に、最初からまともに答えてくれたことは、まずない。
 私の正面にいるこの男。何年か前にインターネットで知り合い、妙に気が合ってオフでも実際にちょくちょく会って話をする仲になった。
「だから、もしもの話ですって。例えばあなたが弁護士で、あなたは離婚して奥さんが娘を連れて出て行ってしまったとします」
「具体的かつ嫌な例えだな」とりあえず突っ込みは無視。
「で、その奥さんが再婚するのですが、その相手が最低な人間で娘さん。つまりあなたの子供に暴力を奮って訴えられました。まあ、現実にはありえないことですが、あなたはその男の弁護を依頼されました。どうしますか?」
「それだとさっきと質問の意味が変わってくるけど…ま、いっか。オレなら引き受けるね。仮にも夫婦、仮にも親子だったわけだから、当然性格とか知り尽くしてるわけだろ?やりやすいじゃん。だろ?」
 一瞬も考えず答える。
「…本気で言ってます?」
「本気本気。真剣と書いてマジと読むくらい本気だよ。お前に言ってた条件なら、間違いなくオレはそうするね」
 私の言っていた条件?
「条件なんか出してないつもりですけど?」
「オレはね〜、これでも真面目な人間なつもりだよ?職業が弁護士なら、どんな奴だろうと弁護しないわけにはいかねえよ」
 つまり、こういうことか。
「あなたにとっては職業の限定すらも条件として、縛ることになってしまうわけだ」
 彼はニヤニヤと笑いながら答える。
「別に人を弁護するだけなら、今のオレだってできるよ。なんならやってみようか?試しにお前の事務所の仕事一つオレに預けてみな。ん〜そうだな〜。離婚問題辺りが面白そうでいいかな〜。2日後には互いに顔を見れば殺し合いに発展するくらいに仕上げてやるから」
 …絶対に離婚問題を相談するのだけは止めておこう。
 ふぅ〜、と息を吐き出す。
「さっきの話に、弁護士という条件は抜かしましょう」
「その場合は、問題自体なくなっちまうから答えられないな」
 私が質問する内容を予測していたらしく、即答だった。
「どういうことです?」
「その最低男は、弁護士を雇う間もなく死んでしまうからだよ。その、元旦那ってやつの手にかかって」
 彼は声を押し殺すように笑っている。
「意外でしたよ。娘が殴られただけでその男を殺すなんて、結構家族想いなんですね」
「ん〜。ちょっと違うな。別に娘が殴られたから殺すんじゃない。娘が殴られたことで、オレがむかついたから殺すんだよ」
「同じことじゃないですか」
「違うよ。全然違う。オレは他人が傷つこうがなんとも思わない。たとえそれが家族だろうと。全てはオレが中心。オレがむかつくから殴る。オレが殺意を抱いたから殺す。それだけだ」
 これ以上ないくらい自己中心的考えだ。しかし、彼が殺意を抱く原因となることは娘に対する男の暴力だろう。結局彼は娘のために行動を起こすわけだ。本人は否定するだろうけど、それは愛情と呼ばれるものではないだろうか?殺意は愛情の裏返しとよく聞くし。


 彼と会うのは、1ヶ月に2〜3回。なんだかんだでもう2年の付き合いになる。しかし、私は彼の何も知らない。年齢も、職業も、出身地も、本名すらも明かされていない。分かるのは、彼のハンドルネームが「ヨク」で、性別が男だ、ということくらいだ。
 これだけ聞くと、そんな得体の知れない男と会うなんて絶対に嫌だ。と言うかもしれない。
 しかし、実際に会った人間だけが分かる。彼は明らかな善人で…いい人だった。確かに経歴は不明で、話し方も雑。なによりどうしようもないくらい自分中心的な考え方の持ち主だった。が、どうしようもないくらい自分中心な考え方ゆえに、他人のことを第一に考えることのできる人間だった。矛盾に聞こえるかもしれない。しかし、彼の性格を言葉にするなら、こう表現するのが一番適していると私は思う。
 彼は、周りの全ての人間が自分に笑いかけて欲しいと願っていた。また、自分意外の人間は、そうするのが当然だ。そうでなくてはならない。と、信じていた。これだけ聞くと単なる自己中心的な人だが、彼のすごいところは、それには、彼の周りの人間が幸せである必要があるとゆうことを理解していることだろう。そして、そうなるための努力を怠らなかった。本人は否定するだろうけどね。
 自分のために他人に尽くす。誰よりも自己中心的であるがゆえに、誰よりも他人に気を遣う。全て自分のためといいつつ、なんの特にもならないであろう私の話に付き合ってくれたりする。…そんな彼に、私は惹かれていた。


「んで、今話題の、娘を自分の不注意で殺してしまった政治家の弁護を引き受けるかどうか悩んで、オレに相談を持ちかけたわけだ」
「!?」なんで、彼がそのことを知っているんだ!?このことはまだ、依頼人と私しか知らないはずのことなのに。
「おいおい。弁護士が人の言うことでいちいち戸惑ってちゃまずいだろ」
 ニヤニヤと口元を歪めながら、彼はしゃべり続ける。
「好きにすりゃいいんじゃねえの?弁護士として、そいつの無罪を証明するのも。そいつが嫌いだって理由で断るのも」
「断ることなんてできない。例えそれが法律で許された行為だとしても、世間が私を許さないだろう」
「法律だの世間だの、なに難しいこと考えてんだよ。あのな、許すだの許さないだのって問題は、あくまでテメー自身の問題であって、それ以上でも以下でもねえんだよ!世間が許さねえ?いいじゃねえか、無視しちまえば。法律が許さねえ?いいじゃねえか、逃げちまえば。最終的に残るのは、結局お前自身が自分を許すかどうかだろうが!」
「しかし、それでは…」
「ちっ、くだらねえことでいつまでも悩みやがって。分かったよ。しょーがねえな。お前がどんな答えを出そうと、オレが認めてやる。オレが許してやる。だから、いつまでもそんな顔するな。飯がまずくなるだろうが」
 彼にとっての自分の発言は、世間よりも法律よりも重視されるものらしかった。
 …全く、適わないですよ。
「もし、私が間違った答えを出したとしても、君は認めてくれますか?許してくれますか?」
「ハッ。いいことを教えてやるよ。オレが認めて許すって言ってる時点で、それが間違った答えだってことは、ありえないんだよ!なぜなら…」
 一呼吸置き、とびきり邪悪な笑みを浮かべ自信満々に答える。
「オレが間違えるなんてこと、あるわけねえだろ?」
 そう、言い放った。



 誰もいなくなった事務所で、私は二人の男についての資料に目を通す。
名前 神名見 翼(かんなみ つばさ)、年齢 24、慎重 178cm、体重 60キロ、職業 不明、性格はかなり明るく大雑把。しゃべり方は、かなり雑だが不思議とそれを悪く言う人は少ない。老若男女分け隔たりなく誰にでも優しく接し彼を慕う人間も多い。
「そして、自信過剰で自己中心的…かな」誰に言うでもなく、つぶやく。
 間違いなく彼、「ヨク」だった。そして、資料の一番下の文字を目で追う。
 死因 出血多量によるショック死。
「ふう〜」
 煙草に火をつけ、なんとなく煙の行方を目で追う。
 私は続けて二人目の男の資料に目を通す。
 名前 美凪 春樹(みなぎ はるき)、年齢 20、慎重 172cm、体重 55キロ、職業 無職、性格は内向的。極力人と関わらないように生活をしているが、一部の人間たちからは、かなりの人気がある。なんでも副業として霊媒師をやっているらしく死者を自分の体に憑依させ、死者の家族と会話をする、といった商売もしているらしい。
「いかがわしい野郎だ」
 霊媒師という文字をみつけたとき、前に彼が言っていたことを思い出した。


「お前さあ、幽霊とか魂の存在って信じるか?」
 珍しく彼から呼び出された私は、突拍子もない質問をいきなり投げかけられた。
「いきなりですね。まあ、あなたらしいですけど。そうですねえ、別に信じていないわけではないのですけれど、なにぶん生まれてこの方見たことないものですからね」
「存在を否定する気はないが、絶対いると言い張るわけでもない。ってところか」
 分かりやすく通訳してくれる。
「中途半端な答えで、すみません」
「いや、大体の人間はそんなもんだろ。別に否定してるわけじゃないならいいよ」
 相変わらず口元には、ニヤニヤと笑みを浮かべながら、彼はしゃべり続ける。ただ、いつもと違うのは顔は笑いながらも、目だけは笑っていなかった。
「オレにはな、生まれつき人とはちょっと違ったことができるらしくてな。そうだな、簡単に言えば、幽体離脱って知ってるか?あんな感じなことができるわけだ」
またしても、突拍子もないことを彼は口にする。
「へー。それは便利ですね。やりたい放題じゃないですか」
「それがそうでもねえんだよ。オレが移動できるのは、他人の体の中に限定されるんだな」
 怖いことを、あっさりと言う。
「んじゃ、なんですか?あなたは他人の中に入り込み、体を乗っ取ることができるとでも言うんですか?」
「だから、そんな便利なもんじゃねえって。ただ単に、そいつが見たもの、聞いたものがオレにも聞こえるってだけだよ。そいつが何を考えてるとか、そいつが寝てる間に体を動かすとかいったかとはできねえの。まあ、個人差はあるけど」
「個人差といいますと?」
 質問を受けて、彼は珍しく少し考える。
「相性って言うのかな〜。たまにいるんだよ。オレが考えてることをそのまま実行したり、オレがしゃべろうとしてたこと、そのまましゃべるやつとか。まあ偶然かもしれないけどな」
「面白い話ですけど、ちょっと現実味が薄いですね」
「やっぱりそうか。う〜ん、今度書く小説に使おうと思ってたんだけどな〜」
「ハハハ。っていつからあなたは小説家になったんですか!?」
 危なく聞き逃すとこだった。
「ん?知らなかった?まあ、細かいこときにすんなって」
 いつの間にか彼の顔は、元のにやけた顔に戻っていた。
 不意に、私は思いついたことを質問してみる。
「そういえば、…その、私の中にも入ったことがあるんですか?」
「ああ、お前が奥さんに黙って、美人の後輩と喫茶店に行ったとこ、じっくり見物させてもらったよ。お前の中でな」
 とびっきり邪悪な笑みを浮かべながら、本当に面白そうに彼は答えた。


 いつの間にか煙草を一箱分吸い尽くしていた。空になった箱を投げ捨てる。
 運命というものは皮肉なものだ。
 私にあの人を殺した人間を弁護しろというんだからな。どこで私の名前を調べたのか知らないが、犯人からのご指名らしい。
 迷ったあげく、私は引き受けることにした。…弁護士としてではなく、殺された彼の友人として。名誉など関係なく、美凪春樹という男をできるだけ思い罪にするためだけに。



「よう。初めまして…かな」
 美凪春樹は、まるで私を久しぶりに会った友人のような態度で話かけてきた。
「初めまして。美凪春樹さんですね」
「ああ、そう言う名前らしいな。別にどうでもいいことだけど」
 なんだ?この態度は。
 逆上しそうになる気分を必死に押さえ込み、あくまで表面上は冷静に話しかける。
「まず、事実の確認をしたいと思います。あなたは神名見 翼さんを殺害した。この事実に間違いはありませんね?」
「あ〜、いきなり仕事の話かよ。まあ、オレはいいけどな。オレ以外の人間、特に女にもそんな調子だとすぐ嫌われるぞ」笑いながら美凪は答える。
「間違いありませんね?」私は感情を押し殺しなんとか同じ言葉を繰り返す。
「ハイ。間違イアリマセン」外国人の様なしゃべりかたで対応してくる。
 どこまでもふざけた野郎だ。
「では、殺そうと思い立った動機はなんですか?」
「それが望みだったからだ」ピクッと自分の欠陥が動くのが分かった。
「それがあなたの望みだったからですか?」
「違うよ。本人がそう望んだんだからだよ」当たり前だ、と言わんばかりに美 凪は言い放った。
 この一言で、私は完全に我を忘れた。
「勝手ほざいてんじゃねえ!テメーに都合で殺しておきながら。テメーがあの人の何を知っているって言うんだ!」
 あの人は、口ではなんと言ってても自分から死を選ぶような人じゃない。
 すると、美凪は口元に笑みを浮かべ、楽しそうに答えた。
「おいおい。弁護士が人の言うことでいちいち戸惑ってちゃまずいだろ」
 ぞくっ
 熱くなった血が一瞬で冷えきる。
「悪い悪い。まず質問に答えなきゃな。答えは簡単。知ってるよ。あいつのことなんでもな。何処で生まれ、何を思い、何故死ぬ気になったのか、全てな」
 にやにやと口元を歪めながら、美凪は喋り続ける。
「あいつはな、自分という存在そのものが嫌いだったんだよ。誰にも言ってなかったけどな。いつも変わりたいと思っていた。願っていた。そして、そのチャンスが見事に転がってきたわけだ。だから、迷わず飛びついた。だから・・・オレは殺すことにした。オレは殺されることにした」
「絶対間違っている!」
 気がつけば、私は叫んでいた。
「そんなこと、許されるわけが…」
「お前が許す許されるなんて言おうが、関係ねえよ。オレは、オレ自身の行動を許しているからな。あとな、もう一つ忠告だ」
 そして、一呼吸置き、とびっきり邪悪な笑みを浮かべ自信満々に答える。
「オレが間違えるなんてこと、あるわけがねえだろ?」
2005/06/14(Tue)16:09:12 公開 / ヤッチー
■この作品の著作権はヤッチーさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
急にシナリオが頭に浮かんできたんで、なんとなく形にしてみました。
小説を書くこと自体初めてなので、お手柔らかに。

すみません。やっぱり字下げは必要ですよね。自分で読んでいてかなり読みづらかったです。修正しました。
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