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『見上げる星空』 作者:umitubame / 未分類
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原稿用紙約枚
 
 寮の屋上の物陰に座って、私は一人空を見上げた。ここは、隣の棟の屋上に誰かいない限りどこからも死角になる。そして、今日は少し風があるから煙なんてすぐに散ってしまうだろう。私を見てるのは、空にちりばめられた無数の夏の星座たちだけである。
 うちの学校には、飲酒喫煙の禁止という校則がある。まあ、それ以前にこの国に未成年の飲酒喫煙の禁止の法律があるので、校則として改めて禁止するのもおかしい話だが。
 しかし、実際はそんな校則はあってないようなもの。みんな吸うし、みんな飲む。教師たちも、その行為を目撃しない限りはほぼ無関心で、結局はそれが黙認されている。その行為を見ていても、見ていないふりをする教師もいる。
 トイレは常に煙草臭い。
 駅で堂々学ラン姿で吸う生徒。
 部活の打ち上げは飲み屋。
 だって、あの高校だもの、そういうささやき。
 頭の悪い学校じゃないんだけれどもね。
 他の学校がどうなのかは知らない。しかし、それは中学の頃に抱いていた私の理想とは大きくかけ離れすぎていて、私は、最初とまどい、そして、落ちぶれた。
 私は大きく息を吸った。
 赤い火が少しこちらへ近づき、肺に煙が満たされる。
 みんなは、私が煙草を吸うことを知らない。酒は、週末みんなで部屋で飲むけれども、こればっかりは1年の時から隠し通してきた。けして、部屋では吸わない。
 きっと、私はあの中に埋もれてしまうのがいやなのだろう。中身はあいつらと同じなのに、あの高校だもの、と一色単にされたくないのだ。
 だから、星を見る。
 煙草を片手に、星を見る。
 冷たい夜風は、肌に心地よく、虫の声が音楽を奏でる。
 そのときばかりは、現実は現実ではなく、ひどく馬鹿馬鹿しいものに思えてくる。あいつらはあいつらで案外悪いものではないとそう思える。そう考えると、自分も悪くはないのだろうと思える。校則にも、法律にも背いてるけれども、小さなことなんだとそう思える。

 でも、それも馬鹿馬鹿しい。

 悪いことは悪いことなのだ。それ以上でも以下でもない。
 私たちは、法を破り社会に背いている。これを罰するものはない。これを私たちにさせるものが何なのかを私は知らない。
 
 私は、短くなった煙草の火を消して携帯灰皿へと押し込んだ。
 こうしてはいられないのだ。あと、一週間でテストが始まる。
 落ちぶれた自分をわずかに支えるものを、なくすわけにはいかない。
 私は、立ち上がり、大きくのびをした。
 わずかにこぼれた灰が風に吹かれて飛んだ。

END
2005/06/13(Mon)19:13:05 公開 / umitubame
■この作品の著作権はumitubameさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ほとんど物語性というものがない作品となってしまいました。なんというか、事実と意見を述べただけ。これをどう上手く物語りとするかが、腕の見せ所なんでしょうね。

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