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『GOOD!GOD!BAD!(Remake) 第一話〜第二話』 作者:無夢 / サスペンス
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   第一話 桐山照子(きりやま てるこ)と松井啓祐(まつい けいすけ)

 何かおかしいわ。そう感じたのは、住宅地に入ってからだった。今日も仕事が終わり、いつものように帰っていた私は何かただならぬ違和感を感じていた。
「駅にはあんなに人がいたのに、どうして誰もいないのかしら…」
 私の周りには誰もいない。駅には溢れるほどの人間がいたのに、バスに乗り、家の近くで降りると、私は恐ろしいほどの静寂に襲われた。街灯が灯っているにも関わらず、家までの道はいつもより暗いように思えた。私がこの道を通る頃に聞こえるシャワーの音も、食器を洗う音も何も聞こえなかった。左腕につけた時計を見ると、針はほぼ直角に九時を指している。
 最初は何も感じなかった。しかし、段々と心臓の鼓動が速くなり、自然と歩く速さも速くなっていった。…恐い。一瞬、この言葉が私の胸をよぎった。
「もう、何なのよ。ちょっと静かなだけじゃない!」
 立ち止まり気持ちを紛らわすため、わざと大声で独り言を言ってみる。自分にそう言い聞かせて何とかこの鼓動を抑えようとした。
「そうだ、啓祐に電話しよ」
 もし後ろに誰かの気配を感じたら、携帯電話で誰かと話をするのが良いとテレビで言っていた。だが、実際には背後に気配など感じていなかった。そうやって安心しようとした。ただそれだけのこと。何かをしていないと落ち着かない。私は腕から下げていたハンドバッグから白い携帯電話を取り出した。猫のキャラクターのストラップに付いている鈴が音を立てて揺れる。少し震える指でメモリから恋人の啓祐の携帯に電話をかけた。
 啓祐は優しく頼りになる男だった。今まで男というものに無縁だった私が、やっと出会うことの出来た理想の人。きっと啓祐なら何か楽しい話をして、私の不安を消してくれるだろう。
 右耳に電話を当てるとコール音が聞こえてくる。早く出て、そう思った。電話を持つ手も微かに震えている。すると、右耳に聞こえている呼び出し音に呼応するように、左耳に聞き覚えのある携帯の着信音が届いた。
「啓祐…?」
 アイドルグループの歌。私があまり好きではない歌なので、何度も変えてくれといったのをはっきりと覚えていた。この音は啓祐の携帯。音は私の前方から聞こえてくる。本来は多くの和音で綺麗に聞こえるのだろうが、距離が遠いのか少し粗末に聞こえた。だが、その音は徐々に近くなり、緑に光るランプと人影も見えてきた。そしてその影が街灯の下に入り、その顔がはっきりと見えたその顔は、
「啓祐!」
 私は大声で愛する人の名前を呼んで走った。あぁ、啓祐だ。私は満面の笑みで啓祐の胸に抱きついた。啓祐は私より、とても背が高いため私の顔はちょうど啓祐の胸に当たっていた。体全体でぬくもりを感じるように私は啓祐をきつく抱きしめた。
「照子……」
 啓祐の低い声が私の顔に響く。
「啓祐、どうしたの? 今日、会いに来るって言ってたっけ?」
 本当はそんなことはどうでも良かったが、会いに来てくれた嬉しさのあまり私は啓祐にそう聞いた。しかし、啓祐は何も答えない。私が強く啓祐の体を抱きしめても、啓祐の手は私を包んではくれなかった。
「どうしたの?」
 私は不思議に思い啓祐の顔を見上げた。道端でこんな熱い抱擁を交わすのは恥ずかしいのだろうか。と、その時啓祐の左手がゆっくりと動いた。やっぱり抱きしめてくれるんだ、私はもう一度啓祐の胸に顔を押し付けた。
 私の期待とは全くの正反対のことが起きたのは、その瞬間だった。めきっと言う鈍い音が私の体に響いたかと思うと、電流が走る様に痛みが全身を駆け回った。……何? 何があったの? 言葉を発しようと思っても喉から声が出ない。やがて右手が痺れ始め、呼吸も途切れ途切れになっていった。啓祐はそんな私から体を離して、一歩後ろ下がった。
「けっ、啓祐…?」
 やっと絞り出した声に、啓祐は反応しなかった。無表情で私を見つめ、立ち尽くしている。啓祐の視線は私の右側に向けられていた。その視線が向けられている部分には何か違和感があった。私は右の脇腹に目を向ける。……そこには銀色に輝く刃が突き立てられていた。刃からは私の真っ赤な血液がアスファルトに滴り落ちている。啓祐は私にゆっくりと近づき、刃を強引に抜いた。
「あぁっ!!」
 あまりの激痛に声が漏れる。啓祐はそんな私の口を塞ぎ、今度は左胸めがけて刃を振り下ろした。一回だけでなく、何度も何度も。刺さる度にぐちゃぐちゃと、嫌な音が辺りに響き渡る。もう痛みは感じなかった。眠気に似た何かが私の体を支配していた。そんな薄れゆく意識の中で最後に見たのは、私の体から流れ出た血液で真っ赤に染まっている道路だった。

                 ◆

 俺は何てことをしてしまったのだろう。血まみれになって倒れている照子の体を見て思った。俺の服にも顔にも、照子の血液が付いている。そして、手には血がべっとりと付いたナイフ。
 荒くなっている呼吸を整え、震える手を止めた。心臓の鼓動は異常な速さだった。
「て、照子…」
 俺は自分の手で殺してしまった、最愛の人の名前を呼んだ。もちろん、返事はない。まるでマネキンのように手足を曲げ、開ききった目で空を見つめてた。……もう、ダメだ。俺はそう思った。そして、今度は自分の首をめがけてナイフを振り下ろした。


   第二話 高木舞(たかぎ まい)

「舞!」
 登校道。後方から私を呼ぶ聞きなれた声がした。立ち止まり振り向くと紺色のブレザーを着た女子生徒が私に向かって走ってきている。黒の短髪で細身の体格。友人の田村沙織(たむら さおり)だった。
「おはよ!」
 沙織が私の横に立ち止まり、肩を上下させながら言った。
「おはよう」
 私も笑顔でそれに答える。そうしてから私がまた歩き出すと、沙織は息を整えながら私の横についてきた。
「ね、数学の宿題やった?」
 いきなり沙織が私の顔を覗き込んで聞いてきた。唇に塗ったピンクの口紅がきらりと光っている。校則違反だが、高校生なのだ。少しのお洒落もしたいだろう。
「やったよ。まさか、沙織やってないの?」
「うん!」
 と、沙織は満面の笑みで言った。そんなに笑うことじゃないだろう、そう思ったが沙織は構わず
「だから見せて! 今度アイスおごるから! ね?」
 顔の前で手を合わせて言った。
 そんな笑顔を見ると、私も笑って「はいはい」と、答えざるをえない。
「やったぁ! ありがと!」
 沙織は嬉しそうにその場で飛び跳ねた。
 そうしてしばらく好きな歌手の話や世間話をしながら歩いた。
 私達は毎朝こうやって学校に行っている。本来はきちんと別の場所で待ち合わせをしているのだが、沙織がいつも遅れるので先に行っている私に追いつくという形ばかりだ。
「それでさぁ、昨日テレビでね………あれ?」
 沙織が何かを言い出そうとしたが、前方に何かを発見したのか、前を見ながら首を傾げた。
「どうしたの?」
「ほら、あそこ。人が集まってる」
 と、沙織が指を指した先には、たくさんの人が集まっている。元々あまり広くない住宅街の道が、そのたくさんの人だかりで完全に塞がれていた。その道は学校へ行く一番の近道なので、そこを塞がれると回り道をしなければならない。
「何あれ…。あそこが塞がったら遠回りしなきゃいけないじゃない。沙織、戻ろ」
 私は別の道を行こうと沙織の腕を掴んだ。しかし、沙織はそんな私を無視する様に
「ねぇ、行ってみようよ」
 と、私の腕を振りほどいて走り出した。
「あっ! 沙織!」
 呼んでも沙織は「ちょっとだけだから!」と言い、振り向きもしなかった。仕方なく私は沙織の後ろ姿を追いかけた。沙織はスーツ姿の男の後ろで飛んでいる。男の身長が高く、前が見えないようだ。
「もう! 見えない〜! 何があったの〜?」
 沙織が口を尖らせて言うと、前に立っていた男が横目で彼女を睨もうとする。だが、ほぼ真後ろにいる沙織には視線が届かず、ちょうど男の見えやすい位置にいた私と目が合った。私は沙織の代わりに、謝罪の意味を込めて小さく頭を下げた。そうして男が前に向き直ると、もう沙織を置いていこうと今来た道を戻ろうとした。こうやって何かにわらわらと集まるのは好きではないのだ。と、その時。私が歩き出そうとするのとほぼ同時に、野次馬の群れから抜け出そうとする少年がいた。黒い学生服に金色のボタン。私が通っていた中学校の制服だった。そしてそれを着ているのは、弟の良太(りょうた)。
「良太、何であんたこんなところにいるのよ」
 私は良太の腕を掴んで野次馬の中から引っ張り出した。その力が強すぎたのか、良太は前のめりになって転倒しそうになった。が、体勢を立て直し私の顔を見上げた。良太は中学二年生だが、背は小さく私服で歩いていると小学生に間違われることがしばしばある程に背が小さいのだ。
「姉ちゃんこそ、何でここにいるんだよ」
「私は沙織がここに来たから来たのよ」
 私はまだ飛び跳ねている沙織を顎で示した。と、それに気付いた沙織が
「何も見えなかったぁ…。ねぇ、何があったの?」
 と、良太に近寄り聞いた。
「さぁ、俺も知らない」
 良太も首を傾げる。
「沙織、行こ。早く行かないと遅れるよ」
 私はまだ見たがる沙織を無理矢理引っ張って言った。

「もうちょっと見せてくれればよかったのに〜」
 教室に着くや否や、沙織が私の隣の席に座って拗ねたように言った。
「何言ってるのよ。もうちょっとで遅れるところだったじゃない。それに、数学の宿題だって写さなきゃいけないんでしょ? 数学は一時限目よ」
「あぁ! そうだった! 舞、見せて!」
 沙織は焦りながら机の横にさげてある鞄から、自分の筆箱とノートを取り出した。しかし、時既に遅し。教室の扉が開いて、クラスの担任が入ってきた。体育の教師で常にジャージ姿。髭も濃く、女子生徒からはあまり好かれていない。あだ名は「ジャージヒゲ」。そのままだ。
「ほら、早く席につけよ〜」
 ジャージヒゲがそう言うと、今まで立っていた生徒達が慌ただしく席に座った。全員が座ったのを見計らい、室長が起立礼の号令をかける。「おはようございます」と生徒達は小さな声で言った。だが、ジャージヒゲは体育の教師らしく大声で叫ぶように挨拶をした。
「んじゃあ、今日の連絡事項をいくつか言うぞ。えっと、今日はある事情で授業は短縮。部活も全部なしになった。だから皆は早く帰れるぞ」
 そんなことは元々予定にはなかった。登校中で野次馬が集まっていた場所と何か関係があるのだろうか。
「どうしてですか?」
 眼鏡をかけた室長が聞く。
「だから、ちょっとした事情があるんだよ」
 ジャージヒゲは焦ったように答えた。その時、
「知ってるぜ。この近くで人が殺されたんだろ?」
 一人の男子生徒が言った。するとジャージヒゲに動揺の表情が浮かび、何人かの生徒が口々に喋り出す。
「あっ、俺それ知ってる!ナイフで何回も刺されたんだろ?」
「何それ? 犯人は?」
「殺された人の恋人らしいよ」
「えぇ〜! こわ〜!」
「犯人まだ捕まってないの?」
「ほらほら! 静かにしろ!」
 ざわつく教室を静める様に担任が手を叩いて言った。
「そうだよ。事情ってのはそれだ。お前らに余計な不安を抱かせないようにしたかったんだが、心配するな。犯人は一緒に死んでいたそうだ」
「何ですかそれ?」
 その言葉を聞いた沙織が席から立ちあがって言った。
「自殺をしていたらしい。……もういいだろ。この話は終わりだ」
 そう言って担任は他の連絡をし始めた。沙織は椅子に座り、私を見た。その表情が少し嬉しそうなのは私の気のせいだろうか。人が殺されたことに喜んでいるわけではないだろうが。
「あの人ごみは、それだったんだね」
 沙織が言った。
「まさか人が殺されてたなんてね…」
「ちょっと怖いけど、犯人死んじゃってるんでしょ? ねぇ、それよりさ、[GOD]って知ってる?」
 沙織はもうその事件には興味なしといった様子で話題を変えた。
「[GOD]? 何それ?」
「この近くに教会があって、そこでお願いすれば、どんな願い事も叶うんだって!」
 沙織が手を組んで大袈裟に言う。
「ふ〜ん…。それで?」
「だからね、今日学校終わったら一緒に行こ! ほら、今日は部活もなくなったじゃない!」
「そうだけど…。それに、私そういうの信じてないよ」
「本当に叶うらしいんだよ?」
「だから信じてないって」
「それでもいいから! ね?」
 また沙織お得意のおねだりだ。私は仕方なく、
「…分かった。行くよ」
 そう溜息交じりに言った。それでも彼女には嬉しかったらしく
「やったぁ! じゃあ、今日の放課後ね!」
 と、両手を挙げて喜んだ。
2005/05/24(Tue)16:33:28 公開 / 無夢
■この作品の著作権は無夢さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
二話目。更新いたしました。
影舞踊様、私はこれがサスペンスなのか正直な話はっきりとは言えません(汗 ですが、そういう風に書きたいと私自身思っておりますので、どうか温かい目で見てやってください…。
うしゃ様、初めまして。申し訳ないのですが、過去の作品は削除してしまいました…。ですので、出来る限り私も早めに更新して皆様に楽しんでいただけるよう頑張ります。
京雅様、確かに淡々とするという演出は多少使っていますが、自分で読み直してみてあまりにも酷すぎました…。ですので、少し変えてみましたがどうでしょうか?
clown-crown様、どのような理由であれ、私の作品に目を通して頂けた事、とても感謝しております。今回もあまりぴんと来ない内容ではないかと心配ですが…いかがでしょう?
羽堕様、初めまして。照子が歩いている場面は少し気合を入れて書きましたので、そう言っていただけるととても嬉しいです。
甘木様、確かに啓祐の部分が短いような感じがしますね…。要精進です…。ご意見いただき誠にありがとうございます。
皆様、誠に有難うございます。この作品をもっと楽しんでいただけるよう、頑張りますのでよろしくお願いいたします。
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