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『君をわすれない…。 第一章〜第四章』 作者:砂葵 / 未分類 未分類
全角4763文字
容量9526 bytes
原稿用紙約16.3枚
プロローグ

死んだらどうなるのだろう…。

誰もが一度は考えること。
誰もが考えることなのに誰も答えを知らなくて…。
死んだ人は答えを知ることが出来るのに、その答えを俺らに伝える術がない。
だから、死ぬのは怖いんだ…。まるで、数学で答えがわからない問題を答えさせられる様な恐怖感。答えを知っていれば全然怖くないことなのに…。
もし、死んだらどうなるかがわかっていたら怖くないだろうに…。

自分が死ぬのはもちろん怖いけど、大切な人が死んでしまうのは、もっと怖い。今まであった存在が嘘の様に消えてしまって…。もう、触れてもぬくもりを感じられないし、話しかけても返事は返ってこない。そして、残された俺に残るのは、たくさんの君との思い出とたくさんの後悔、孤独。

俺に出来ることは、君の残像を追いかけて歳をとることのない君を追いかけること、君との思い出に浸ること、そして後悔すること― 
もっと触れていたかった、もっとぬくもりを感じていたかった、もっと話していたかった、もっと、もっと…。
どの望みも君がいなくなってしまった今では叶えられない望みで、どの望みも君がいれば叶えられる望み。

だから、目を開けてください。もう一度だけ目を開けていつもの笑顔を俺に見せてください…。


第一章 [あの日〜SIDE 純〜]
「愛、付き合って!!」
顔を真っ赤にした中学生の俺が告白をしている。
「ははっ。ごめ〜ん。無理だぁ!!それより顔すごい赤いよ?熱あんじゃないの?」

俺の一世一代の告白は、軽い感じでむなしくも散ってしまった。

ジジジジジジジジ

目覚まし時計の電子音が部屋中で鳴り響く。
それを布団の中から手だけを出して止める俺。
「あ〜、朝から最悪な夢、見ちゃったよ!!」
それれは、忘れもしない中学校の卒業式のことだった。

「あ〜、マジ最悪だ…。」
布団から出て制服に着替えていると携帯が鳴り出した。
「もしもし?」
女からの電話だった。
「純く〜ん?今日さぁ、放課後ひまぁ?」
すごいブリブリの声。
「あ〜、ちょーひまぁ。」
「マジで!?じゃあさ、ゆきに付き合ってよぉ!」
自分を名前で呼ぶ女って、あんまり好きになれない…。
「いいよ。どこ行く?」
Yシャツのボタンを片手で留めながら答える。
「純くんと一緒ならどこでもいいよぉ。」
うざっ…。
「じゃあ、ゲーセンでいいな?切るぞ。」
「じゃあ、3時半に迎えにいくからぁ!バイバ〜イ!」

あの日以来俺は、女付き合いが激しくなった。もとは、ふられたことにやけになって告られたと理由だけで好きでもない奴と付き合ったこと…。
今では、男子校に通いながらも女にモテまくっている。
もちろん、女にとって俺は遊びというかホストみたいな存在で、俺にとって女はただの暇つぶしのようなもんだからややこしいことにはならない。たまに本気な奴がいるけれどそういう時はおもいっきり突き放してやる。あんまり優しくするとふられた時に傷つかせることになる。俺が傷ついた様に。あとは、適当に遊んでいればいいし。本気に好きになったっていいことなんてないから…。

それに俺はあの日以来、女を本気で好きになったことがないから…。

第二章[俺がいる意味〜SIDE 純〜]

「純〜!!校門まで一緒に行こうぜ。」
ダチの塚本尚哉が笑顔で話しかけてくる。
尚哉はまるで今日の青空のようなさっぱりとしてどこかすがすがしい、そして何にでもまっすぐな奴。
「いいけど。灯里ちゃんは?」
灯里とは、尚哉の彼女。俺とは違い尚哉が本気で好きな子。
灯里ちゃんは、女子高に通っていて、俺らより一つ下の二年生だ。
「もちろんっ!!今日は、灯里が迎えに来てくれる日なんだよ!」
本当に嬉しそうに笑う尚哉を見ると少しうらやましくなる。
「純は?誰か予約入ってんの?」
「あ〜、今日はゆきちゃん…。」
「純もさ、‘今日は’じゃなくて‘今日も’って言える相手を早く見つけられるといいのにな…。」
「だな…。」
本気に好きになれる女が欲しいのは本当だけど、誰かを本気に好きになってまた傷つくのが怖かったし、俺の周りに本気で俺を好きになる奴はいても、俺が本気になれるような奴がいない。
「そしたらさ、一緒にWデートとかしような!!」
「そんな相手が出来たらな…。」

校門に行くと灯里ちゃんが待っていた。
「尚哉く〜ん!!」
笑顔で尚哉に向かって手を振る灯里ちゃん。
「灯里〜!!」
尚哉もそれに応えるように笑顔で手を振る。
二人とも本当に幸せそうで、なんだか俺がものすごく不幸に感じた。
あの日から本気で人を好きになれなくなったことがすごく、すごく不幸に感じた。
俺も誰かを本気で好きになったら幸せになれるのかな…。
別に自分が今、幸せじゃないというわけじゃないけど、もし、本気で好きになった人と尚哉の様に付き合うことが出来たら幸せになれるかな…と、ついつい考えてしまうのだった。
「じゃあ、純。俺らは帰るから!!」
「おうっ。じゃあな。」

尚哉達が去っていった後、俺は校門でゆきを待った。
時計はとっくに、3時半を過ぎている。
携帯電話が鳴り出した。
「もしもし…。」
「ごめんっ。純くん!彼氏とデートすることになったので今日は行けなくなりました。」
ゆきからの電話だった。
「ん〜、分かった。彼氏とのデート楽しんでこいよ。」
「ありがと〜!!じゃあ、またね。バイバ…。」
ゆきが言い終える前に電話を切った。
「あっ、純じゃ〜ん!!なにしてんの?」
ぼんやりと校門に立っていると前に遊んだ女が二人が話しかけてきた。
「別に…。お前らは?」
「ふふっ。これからデートだよぉ!!」
「ふ〜ん。」
「じゃあね、純!また、遊んでね〜!!」
そういうと嬉しそうに歩いて行った。

俺がいなくてもみんな幸せじゃん…。本気で好きな奴がいて。俺がいなくても全然OK?みたいな…。俺ってなに?みんなに必要ないじゃん…。

今日はなんだからしくないことを考えてしまう。
そして無意味に孤独を感じてしまう。

俺ってだれかに必要にされてる?
俺っていても意味なくない?
誰かを本気で好きになって、その誰かも俺のことが本気で好きで…。
傷つくことのない恋愛がしたい。
あの日の様に傷つくことのない。
軽く流さず、俺を受け止めて欲しい。

第三章[見つけた〜SIDE 純〜]


無意識に足は卒業した中学校に向かっていて、気がつくと校門前に立っていた。
あの日俺が、告白をした校門近くの桜の所へ向かう。桜はもう、ほんど葉桜になっている。
その桜の前に誰かが立っている。
ふとそいつと目が合った。

ドクン

心臓が鳴った。
目が合っただけなのに胸が苦しくなる。
声が出なくなる。
涙が出そうになった。

「…純?」
そいつは俺の名を呼んだ。

ドクン

名前を呼ばれただけなのに、また心臓が大きく鳴った。

「純だよね?私だよ!!大森愛!!小中って学校一緒だったでしょ!」
大森愛…。
それは忘れたくても忘れられない名前。
俺の告白を軽く流すかのようにふった女。
「久しぶり!!元気にしてた?」
愛は笑顔で俺に聞いてくる。
まるであの時の俺の告白を忘れたかの様に。
それなのに、俺の心拍数は速くなっていく。
「ふつう…。」
「ふつうってなに?」
無邪気に笑う愛がとても愛しく感じた。
あの頃から変わっていない笑い方。
「純さぁ、卒業式の日に告白されて付き合ったじゃん?」
「うん。」
「私その時さ、めちゃくちゃショックだったんだよ〜。」
懐かしそうに校舎を見つめながら愛が言った。
「なんで?私への気持ちはそんなもんだったの?みたいな感じでしたか?」
嫌味ぽく言ってしまった自分を少し恨んだ。
「へ?なにそれ…。私はただ純が好きだったからさ…。」
はにかみながら愛はそう言った…。
「そうか、愛も俺のこと好きだったのか…って、えっ?」
愛も俺のことが好きだったのに、なんで俺はふられてるんだ…。
「ごめん、愛。じゃあ、なんで俺のことふったわけ?」

一瞬の沈黙

「えっ〜!!純のこといつふった?」
「卒業式の日…。」
「…えっ、あの‘付き合って’ってやつ?」
「それ…。」
急に恥ずかしくなって下を向く俺。
地面にはたくさんの桜の花びらが落ちている。
「わ、私はてっきり、帰りどこかに付き合って欲しいのかと思って…、その後は家族で食事しに行く約束をしていたから断ったわけで、まさかそういう付き合ってとは、思っていなかったし…。」
愛の顔がみるみる赤くなっていく。
「愛は、今でも俺のこと好き?」
余裕のなさそうな愛をみていると、いつものプレイボーイな俺になった。
「…うん。ずっと忘れられなかった…。」
愛がまっすぐと俺を見ていった。
あの頃と変わらないきれいな瞳。
「俺も愛のことが好きだよ…。」
好き―なんて言葉を口に出したのはあの日以来だった。
愛は俺がそういうと幸せそうに笑った。
幸せそうな愛を見て俺も笑う。

「二年間は、長かった〜。二年間ずっと会っていなかったのにすごいな私。」
愛は無邪気に笑い、俺を見る。
「二年間もかぁ〜。長いな…。あの時、愛が告白OKしてたらこの二年間も二人の思い出が出来てたのに、空白だぜ?」
愛と一緒にいるとあの頃に自分に戻れる。
「大丈夫。二年間の空白なんて簡単に埋めちゃうから!!」
愛はそう言うと俺の頬にキスをした。
自分の顔が赤くなるを感じた。
キスなんて何度もしてきたことなのに、こんなにも違うものなのか。
「仕返し。」
そう言って俺は、愛の唇にキスをした。
「これから、二年間分まで愛し合おうね。」
「ああ。」
やっと俺も本当に好きになった人と付き合うことが出来た。
幸せを手に入れた。
これからもこの幸せが続けばいいのに…。
ずっと、ずっと―

このやっと見つけた幸せを手放さないように…。

第四章[時間〜SIDE 愛〜]

今日は、いつもより早く起きた。というより、起きてしまった。
昨日の興奮がまだ残っているのだろう…。
本当に昨日は幸せだった。
小学校の四年生からずっと好きだった人ととうとう付き合うことが出来るようになったから。
昨日のことを思い出すと顔が赤くなった。
今日からずっとこの幸せを味わっていられることが本当に嬉しかった。

部屋のカーテンを開けるとまぶしい太陽の光が差し込んできて、窓を開けるといつもの空が広がっている。こんなにも当たり前のことが、いつも見ているこの風景が今日はすごくきれいに見えた。

昨日あの桜の木の下で純に会えたのはきっと偶然じゃなくて必然だったのだろう。
神様が私にくれた最高のプレゼントなのだろう。
そんなことを考えている間にいつもと同じ時間になってしまった。
この頃、時間が過ぎるのがものすごく速い。
本当に一日が二十四時間あるのか疑ってしまうほど速い。
また、こうやって考えているうちに時間は静かに過ぎていって。
「愛〜!!遅刻するよ〜!!」
下からお母さんの声が聞こえる。
「今いく〜!」
それに私が返事をして。
このやりとりの間にも時間は過ぎていて。

時間が一秒でも進むと一秒前のことは過去になる。一秒でも先は未来でその一秒を過ぎると過去になる。過去と未来がこうやって繰り返されて時間は作り出される。
過去と未来の間に今がある。今があるから過去があって未来がある。過去と未来があるから今がある。こんな風に今と過去と未来は切っても切れない関係。お互いがあるから存在しているみたいな…。

だから私も純と切っても切れない、純がいるから私の存在があるみたいな関係をこれから作っていきたいな…と思う。

私に残された時間があと少しだとしても、私が生きている限り私の今があって、過去もあって、未来もあるのだから。
未来が私にある限り私は純と幸せな時間を、いい関係を作っていきたい。















2005/03/24(Thu)15:11:07 公開 / 砂葵
■この作品の著作権は砂葵さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして。砂葵という者です…。
未熟者ですがよろしくお願いします。
未熟者の作品ですから、もちろん作品も未熟ですのでご意見・ご感想お待ちしております!!アドバイスとか頂けると有り難いです。
最後になりますがこれは恋愛ものです。
今年は、「世界の中心で愛をさけぶ」とか「いま、会いにゆきます」などの恋愛ものがすごく目立った年でしたが、そんな作品に負けないような作品を書いていきたいと思っています!!←無理ですが…。
とりあえず力の限り、時間がある限りがんばりますんで本当にご意見・ご感想をよろしくお願い致します。
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