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『ある日のある人の直感』 作者:ありる / 未分類 未分類
全角1065.5文字
容量2131 bytes
原稿用紙約3.25枚

 不思議な思いで生きている。

 朝も早い電車に揺られて、公経はまどろむ目をこすりながら顔を上げた。
 電車の中には誰もいなかった。少なくとも、公経の見える範囲内には人影は見当たらない。始発に乗っているのだから当たり前か、と公経は勝手な納得をして大きく伸びをした。
 今日は久々に部活の朝練がある。それほど強くも弱くも無い我が愛しき卓球部は滅多なことでは朝練はしない。する奴は時々しているらしいが、公経はそうではなかった。
 それなのに今こうして眠気を堪えて電車に乗っているのは、大会が近い所為だった。部長が全員強制を指令したのだから仕方がない。
「あ、公経。」
 まだ学校最寄の駅まで時間があるため、もうしばらく寝ていようと背もたれに寄りかかったところで、唐突に人の声がした。それが自分を呼ぶ声でなければ無視できたのに、と公経は少々苛立った気分でそちらに顔を向けた。
「なにやってんの!はやいなー、お前。珍すぃー」
 朝からハイテンションで声をかけてきた主は、元同級生の康成だった。
「…お前こそなにやっての」
 不機嫌さを殺して返答すると、康成は元気に大振りな動作で近寄ってきた。途中、電車の傾きに足を取られ転びそうになったが、本人は何事もなかったようすで公経の隣に腰を下ろした。
「いやさー。今日は絶対何かある!って思ってさ。直感?てーの?それがビビビッ!って働いちゃってさー。朝目ー覚めたの3時半だぜ!それからもう全然眠れなくてさー。もう、これは今日一番に街を徘徊しよーと計画してるところよー」
 本人の性格どおり明朗活発に生き生きと話す康成に、公経は「あーそうですか」と適当にうなずいた。それ以外にどう返事をしろというのだ。意外と頭ずれてんだよな、こいつ、とか思いながら目をこする。
「んで?街を徘徊する予定の奴がなんでここにいんの」
「ん?そりゃー、まずは学校で出席とってから行動するに決まってんじゃーん。ズル休みはいかんよぉ、君」
「……・・さよですか」
 訳がわからん、と小さくつぶやいて公経は額を押さえた。
「でもさ!こういう時の俺の感はぜってー当たるんだよな!見てろよー!隕石が落ちてくるくらいの変なことが起こるから!!」
「はいはい」
 んなこと起こってたまるか、と公経はあきれ返る思いで、結局目的の駅まで康成の戯言を聞かされるハメとなった。

 そしてそれが単なる戯言ではないと分かったのは翌日のことだった。なんで一日ずれんだよ。そしてどーして微妙に当たる。いや、別に隕石が落ちてきたりはしなかったが、と公経は深くため息をついた。
2005/01/27(Thu)14:58:13 公開 / ありる
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