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『アサシン −一話〜昼ー』 作者:如月 淘夜 / 未分類 未分類
全角8633文字
容量17266 bytes
原稿用紙約26.8枚
「お別れだなぁ、裏切り者サン? 最期に何か言い残すことあるか? 誰かに伝える伝えないは別として、聞きいといてやるよ」
 硝煙の匂いが立ちこめた、薄暗い倉庫の中。
 ハンマーを立ち上げる音が聞こえる。殺風景な空間には二人だけ。
 至る所、止めどもない生命を流す女と、真っ青なスーツを着込んだ男。
 殺される者と殺す者。
 銃創から夥しい血を流して、銃を突きつけられた女がうっすらと笑った。
「一つだけ。お前の減らず口を聞かなくてすむのが清々する」
「フンッ、そりゃよかったな。じゃぁ、お前の死体を始末するときもしゃべり続けてやるよ。嬉しいだろ?」
 青い男はトリガーに指を当て、躊躇いもなく弾いた。
 それと同時に朱い女は銃創が一つ増える。だが、獣のような動きで即死は避けていた。
 その動きを保ったまま、近くにあった柱の影に滑り込む。
「は〜はっはっは! ・・・・・・その普通じゃない動き、流石だよ! 笑いがとまらねぇ!」
 本当におかしいと言った表情で男はまだ弾の残るリボルバーごと交換する。
 女は苦しそうに息をしながら、残弾を確認して柱にもたれ掛かった。
「なぁ、お前は覚えてるか? 俺等がガキだった頃によ、目の前で親父とお袋が死んだこと。俺は覚えてるぜ。なんせ二人を殺したのは俺だからよ〜! ははっ、あの時と同じだ。今も初めて童貞を捨てた時みたいに興奮してるんだ! なんたってウチで最高傑作って言われている幼なじみを殺せるんだからなぁっ!」
 狂喜然とした青い男の目は涙が浮かんでいる。恐らく笑いすぎての涙だろうが。
「覚えている。それがどうした、カルド。言いたいのはそれだけか?」
 女は背を預けていた柱を掴み、立ち上がった。その様は見るだけで痛々しい。どれも致命傷ではないが、最早死は確実であった。
 それすら知らぬといった趣で銃を構え、一気に飛び出す。無防備なカルドと呼んだ男に数発の弾丸を消費した。
 カルドは笑いながら走る。女ほどの動きではないが、こちらも並ではない動きで物陰に隠れた。
「つれないじゃねぇか、セリナァ! もうちっと話を楽しもうぜ!? ・・・・・・・・・・・・あ〜、そうか。シカトかよ? つまんねぇから死んじまえっっっ!」
 勝手を叫き散らしながら、物陰に隠れたまま銃を乱射する。狙いなど完全無視の弾道。
 使い終わった銃を投げ捨て、新しい銃でまた乱射。カルドはそれを繰り返し、セリナを執拗に攻める。
 セリナは再び身を隠した障害物に隠れて隙をうかがっていた。
 銃声が支配した空間に静寂が訪れる。
 静寂の前の音、セリナはガチンという音を聞き逃さない。
 一種の賭けに近かったが、チャンスは最大限に生かすという躯に染みついた修正だろう。
 セリナは一瞬にして障害物をすり抜けた。予測通り、物陰で弾詰まりを起こしてたカルドに銃を突きつける。
「チェック(詰めだ)」
 その姿は、気高く、凛とした手負いの獣そのものだった。




『この音声と映像はいつも通り一度で消える。ベテランの貴様にそんなことを言う必要はないが、一応規則なのでね。さて、無駄話よりビジネスの話といこう。今回のターゲットは生物研究所の研究員、レイドリック=ガルシアだ。知ってるとは思うが、こいつは組織のやり方に度々文句を付けてきた。今回の命令が下りた最大の理由は先日、R・H・B(Refinement human being )計画の研究データを破棄したこと。更に、完成していた素体の一体を持ち出したことだ。以上の理由でこいつを消して欲しい。武器の支給及び・・・・・・』
 セリナはつまらなそうに、まだ機能を果たしているパソコンを投げ捨てる。冷たい路地裏に湿った音が響いた。
「ヒッ!」
 その音に脅え、ここら一帯を支配していたギャングのボスが悲鳴を漏らす。
 それも当然だろう。突然の出来事だった。

 いつも通りクスリで楽しんでいるところに女が舞い込んできた。しかもとびきりの上玉ときている。乱雑に結ばれた赤色の髪は男達の劣情に火を付けた。 
 この場にいる全員、この女を犯すのに躊躇いはない。場所も路地裏、力の差云々よりも、こちらの人数は圧倒的。条件はこの上なく最良だった。
 一瞬にして女の退路を塞ぎ、徐々にその間を詰めていった。
「よ〜姉ちゃん!? こんな寂しいところにどうしたんだい?」
「男が欲しくって我慢できないの〜ってかぁ!?」
「あひゃひゃひゃ! だったらアレだよなぁ? オレタチがこの寂しいお姉さんを癒してあげねぇと! もちろんボランティアだから金なんていらねぇよ?」
 仲間達はいつも女を犯すときみたいにハイテンションになっていた。
 通常この時点で女は恐怖で脅えてるか、助けを求め、叫ぶ。何度も見てきたから今回もそうかと思っていた。
 だが、女は無表情でパソコンを立ち上げようとしていた。本気で頭の行かれたジャンキーかと考えたとき、仲間の一人が女に襲いかかった。
「スカしてんじゃねぇ! オラァッ! 早くアンアン鳴いてりゃいいんだテメェはよぉ!」
「黙れ」
 初めて聞いた女の乾いた声。それよりも乾いた小さい音の後、バケツの水をひっくり返したような音が響いた。
 女の手に握られた黒くてでかい鉄の塊は、先の方から煙を吐いている。
 ギャングと呼ばれ恐れられた男達は、何も解らずに呆けていた。
 その間にも鉄の塊は乾いた音を出し続け、次々と男達は身体のパーツが無くなっていく。
 周りに骸が増え続け、最後にギャングのボスを撃とうとしたときに弾切れを起こした。
 女はまるで何事もなかったかのようにパソコンを立ち上げていた。

「たっ、頼むから助けてくれ! なっ? 俺達はドコのマフィアのシマも侵しちゃいねぇし、契約以上にヤクを造っちゃいねぇっ! 金とクスリが目的ならたんまり持ってる! だから助けてくれよぉ!?」
 男は必死に懇願しているが、セリナは表情を崩さない。
「質問がある」
 まるで感情のない瞳で、泣きついてくる男に問いかけた。
「な、なんだよ?」
「レイドリック=ガルシアという人物の居場所を知らないか?」
「いや・・・・・聞いたことはねぇ。ただ、待ってくれ、別の仲間を使って・・・・・・・・・」
「ならば必要ない。神に祈れ、オーバー(以上)」
 男はセリナの言葉を何かの呪(まじな)いのように理解が出来ず、呆けていた。だが、理解した瞬間、発狂したかの如く叫びながら銃を抜く。
 路地裏に再度、乾いた音が鳴り響く。しばらくの後、路地裏から颯爽と出てきたセリナは近くに止めてあった車に乗り込み、街へと消えた。
 無人になった路地裏には薬莢が転がり、硝煙の匂いが立ちこめていた。脳漿や臓物の海と、抜け殻の身体達。
 その中心で、小爆発により用を成さなくなったパソコンだけが音を立てていた。 


 とある都内の高級ホテルは、相も変わらず夜だというのに賑わいを見せていた。この近辺に観光地ということもあるが、ここのレストランは国でも評判の味だった。わざわざ他の街からでも食事に訪れる程である。
 だが、そのホテルも今日は勝手が違っていた。レストランではなく喫茶店に人集りが出来ている。
 別段、喫茶店の方は特別美味しいわけではない。値段も普通に比べ少し高いほどだ。
 喫茶店の中には一人の女性・・・・・・セリナがいた。
 セリナのモデルを思わせるスタイルと容姿にはハッとするものがある。喫茶店の周りには男が多いようでもあった。
 軟派な男はセリナを誘おうと声を掛けたが、見向きもされず相手もされない。そんなセリナに何人目かの男が近づく。
 一般的な大きさの鞄を持った、黒縁のメガネに、少しよれた紺色のスーツ。体格も細く、人の良さそうな顔をしていた。
 誰の目からも見てセリナと釣り合わないその男は、まるで友達のように話しかける。
「ゴメン、待ったかな? 実はビデオデッキが壊れちゃってさ。中のビデオを撮るのに苦労してたんだ」
 これまでかたくなに男をむっしてきたセリナが初めて口を開く。
「いいえ、いいのよ。大変だったわね。でも、その詰まってたビデオは何だったの?」
「タイトルはね、『境界線』っていう面白い映画だよ」
 男は子供のように微笑む。
 それを見たセリナは困ったように笑い
「しょうのない人ね。いいわ、部屋に行きましょう?」
 そう言って、人集りを掻き分けてエレベーターへ男と乗り込んだ。

「あっはっはっはっは・・・・・・! セリナさん演技が凄いですね! 僕芝居って判りながら少し惚れちゃいそうになりましたよ?」
 部屋に着くなり、男は高笑いを始める。
「雑談はいい。早く用件を済ませろ」
 先程の女性とは似ても似つかない口調と冷たい声で部屋の奥へと歩を進める。カーテンを全て閉め切り、再び男の前へと戻っていく。
「お! 雰囲気出てきましたね〜。じゃあシャワーでも浴びて・・・・・・・・・・・・冗談ですよ。謝りますからその物騒な銃をしまって下さい」
 男は『冗談が通じないんだから』と小さく溜息をついて、鞄をセリナに渡した。
「今回の命令に関しての費用、武器、それと必要になるであろう小道具一式です」
 セリナは受け取った鞄を開けて、中身をまじまじと確認している。中には偽造された身分証明書や、キャッシュカード等が入っていた。
「確認した。ご苦労だったな」
「あ、そのDr.(ドクター)ガルシアのレポート作ったの僕ですから。ちゃんと読んでおいて下さいね?」
 男の言葉が終わらない内にセリナは部屋を後にしていた。
「まったく・・・・・・つれないなぁー・・・・・・極上のワインも持ってきたのに。あの人には感情ってものがないのかな」
 一人になった部屋で、男はワインをおいてセリナに習い部屋を後にした。





 レポートによるとDr.ガルシアが素体を盗んだのは二日前。最後に確認されたのは二十一時間前にここからほどよく近い波止場だった。
 セリナは速度違反を軽く越える速さで波止場を目指す。事件が起こったのが必然かのように、セリナの運命は大きく回り始めた。 
 真っ黒な平面に時々白い三角形が浮かび、また消える。風はさほど無いが、冷たい月夜だった。
 数分後、無人の波止場を支配していた小波の音は、闇を切り裂き現れたエンジン音にかき消される。
 誰の目から見ても荒い運転で、波止場を抜けていく。その奥には貸倉庫の群が並んでいた。
 セリナは目的の倉庫に着くと、適当な動きで車を停めた。
 先程のエージェントから貰った鞄を漁り、弾を取り出す。無駄のない動きで、タッシュボードに入れておいたマガジンに弾を詰めていった。
 作業が終わり、念入りに弾の入り具合と、銃の調子を確かめた。満足したのか、走りの余韻を残す車を降りて彼女は倉庫へと独り入っていった。
 倉庫の中は当に漆黒。気配は疎か、世界すら感じれない空間がセリナを包んでいた。

 ゆっくりと眠りについた幼子を見届けて、男の口から溜息が一つ漏れた。
 オレンジ色の髪を優しく撫で、おやすみ。と言い残し部屋を後にする。
 彼が入っていった部屋は、一言で言えば異様。天上に張り巡らされたパイプ、コードが無造作につながっている試験管、病院でもないのに置かれた不自然な医療器具。
 その傍らに置かれた堅い椅子に男・・・・・・レイドリック=ガルシアは腰を掛ける。
 机に置いてあったインスタントコーヒーを口に運ぶその姿は、疲れ切っていた。
 計画の核とも言える基本理念、構造原理、比重分析さらに数え切れないデータを使い物にならぬよう破棄した。その上研究の成果そのものと呼べる素体まで持ち出した。
 今まで積み重ねてきた信頼や地位を代価にしても、払いきれない裏切り。
 だがそれでもガルシアに後悔はない。
 あの子を殺戮者にさせるくらいなら、総てを捨ててでも逃げた方がましだったのだから。
 ガルシアは先程出てきた扉に目をやる。
 あの扉の奥で寝息をたてている子は、何処にでもいる子供と変わりはない。だが、それは外見上の話である。
 R・H・B計画は、人体の精錬という馬鹿げた目的を掲げ発足した。だが、その馬鹿げた計画はより戦闘に向いた人体を造るために更に人外な方法で進む。
 受精した卵子の中で子が形を成す。その段階で薬物などを投与し、人の形をした兵器を造り出そうとした。
 例外的に妊婦から胎児を出し、それを試験管に入れ替える。どのみち運命は同じだった。
 大半の子等は投与に耐えきれなかったり、形が異様に変形したりして失敗していた。
 幾多の研究の中で成功と呼べたのはあの子を含めた二人だけ。
 能力が元より高い二人は、すでに一流と呼ばれる者達と身体能力や知能に関して引けを取らない。
 だが、二人はまだ子供のそれそのものだった。無邪気に笑い、よく泣いた。いくら知能が高くとも、幼い所は年相応だ。
 本当の子供のように育てた幼子を、このまま成長させ殺戮の為だけに成長させるのだけは許せなかった。
 ある日、隙を見て研究の集大成である二人を連れだし、逃げようと試みるも救えたのは一人だけ。
 その子供を元と子供と同じように戻すために研究を続けていたが、この施設では到底無理な話であった。
 日に日にすり減っていく精神との戦い。ガルシアは限界を迎えようとしていた。
「どうして・・・・・・こんなことになったんだろうな」
 テーブルの上にある写真に向かい放った言葉はだれの耳にも届かない。
 刹那、けたましい音量の警報が部屋に鳴り響いた。

 警報の鳴りやまぬ部屋に、セリナは足を踏み入れた。それと同時に質問を投げかける 
「Dr.ガルシアだな?」
 ガルシアはハッとした表情をしていたが、それも一瞬で落胆の表情に変わる。
「まさかウチのエージェントの中で最高峰の君が来るなんてね。組織を裏切った私には、もったいのない使いを寄こしてくれたものだ」
 セリナはガルシアに近づき、銃を突きつける。それはどこか機械を思わせる仕草だった。「チェック」
 ガルシアは首をゆっくりと横に振り、穏やかに口を開く。
「その必要はないよ。私は逃げることも生き延びることも考えてはいない」
 セリナは感情のない瞳でガルシアを見ていた。
「ただ、一つ君に願いがある。あの子だけは・・・・・・フェリアだけは逃がしてくれないか?」
 切実な願いが込められた言の葉。一種の祈りにも似た願いだった。
「要求は、不可能だ。素体の捕獲も命令に入っている」
 その願いもセリナはうち消した。
 ガルシアは再度首を振り、取引を持ちかける。
「焦らないでくれ。ただで、と言っているわけじゃないんだ。私の命と、君の過去であの子を見逃して欲しい」
 それまで何一つ捉えてなかった彼女の目に、光が灯る。消えるような声で呟いた。
「私の・・・・・・過去?」
 恐らくガルシアに対して問いかけたものではなく、漠然と口から出ていたのだろう。セリナの表情は無表情の中に困惑が見て取れた。
「そうだ。君の経歴を一度調べたことがある。もっとも組織にいるときの経歴だがね。結論から言おう、君はフェリアと同じだ。ただ、君の場合は胎児からのものではない。いや、正確に言うと元々組織にいた人間じゃない。君が十の時に在る事件をきっかけにして、連れ去られた子供だ」
「黙れ」
 そのセリナの言葉は、ギャング達に放ったときの威厳はなかった。
 まるで脅えたようなセリナの声を無視してガルシアは話を続ける。 
「以来、君は薬物の投与が行われ、今の君が持つ身体能力を手に入れた。だが反面、次第に記憶も消えた。そして組織の殲滅機関『アサシン』に入って現在に至る。恐らく君が覚えているのは『アサシン』に組み入れられた後のことだけだろう?」
「黙れぇっ!」
 悲痛な叫びと共に、力無く銃が落ちる。
 セリナは今まで体験したことのない感覚に襲われ、身を丸めて震えていた。
 ガルシアはセリナの肩にそっと手をやり『大丈夫』と言う言葉と、銃声が響いたのは同時の出来事だった。
 セリナが先程押し入った入り口には、人影があった。
 プラチナブランドの癖毛に、青いスーツ。男は壁にもたれ掛かりながら口元をつり上げている。
「オイ、ドクター。あんまり俺の幼なじみを虐めてんじゃねぇよ? 撃っちまうぞ? ・・・・・・ってもう撃っちまってたか!? ひゃはっはっは!」
 ガルシアは苦しそうに胸を押さえ倒れる。片方の手はセリナの腕を掴もうとして、空を切っていた。
 セリナは銃声を聞いて、元の機械のような瞳に戻っていた。
「何の用だ、カルド。お前まで命令に組み込まれているとは聞いてない」
 その姿は完全に以前の彼女に戻っており、落とした銃を拾う。
「つれねぇなぁ? 大事な大事な仲間が、人の良さそうな博士に誑(たぶら)かされそうなところをタスケテやったんだぜ? もう少し感謝してくれてもいいんじゃネェの?」
「それについては感謝する。だが、質問に答えろ、カルド」
 セリナは刺すような視線と、穿つ殺気をカルドに向けた。
 命令に関わっていないエージェントが、他人の命令に関与するのは厳罰ものなのだ。
 カルドもそれに気付き、同等の殺気をセリナに向ける。が、一瞬にして元の貌に戻った。
「あーぁ、やってらンねぇ! 追加命令があったから大至急お前に渡せ、って言われて来てやったのによぉ? こんなことなら別の奴に押しつけりゃよかった」
 セリナは殺気を解いた。鋭い視線だけは残したまま、カルドに近寄る。
「感謝する。命令を渡して貰おう」
 壁にもたれ掛かったままの男は更に口をつり上げて嫌な笑みを浮かべた。
「あ〜、内容は覚えてるから教えてやるよ。ドクターをブッ殺した後、捕獲したガキはお前が教育しろ、だってよ。良かったじゃねぇか? 名誉な命令を頂いちまってなぁ?」
 刹那、薄ら笑いを浮かべるカルドに拳がとんだ。直撃する寸前、掌で遮られる。
 セリナは目の前の男を殺すという明確な殺意を隠そうともせずに睨む。
「貴様・・・・・・他人の命令を見ることは、どういうことか解っていて読んだのだろうな?」
「ははっ! 珍しく長く喋ってくれるじゃねぇか!? そうだよ、解って読〜み〜ま〜し〜た〜よ〜! 文句あっか? えぇ? 文句あンのかよぉっ!? なんならここで殺し合いでも初めちまうかぁ!?」
 極限にまで膨らんだ二人の殺気は、部屋を支配した。
 その一食触発の空間で、扉の開く日常的な不和音が聞こえる。
「パパ・・・・・・お客さん? 眠れ・・・・・・・・・ヒッ!?」
 部屋から出てきた少女は、現実に起こっている惨状を目の当たりにして悲鳴を漏らす。
 異様な殺気を放つ二人に、構おうともせず。脇目もかけずにガルシアへと走り寄った。
「パパァ! どうしたの!? どこかイタイの? ねぇ、おきて。おきてよぉっ!」
 うめき声を上げながら、ガルシアは目を開けた。
 それを見たセリナは更にカルドに対して殺意を向ける。
「カルド。貴様なぜ一撃で仕留めなかった」
「あらぁ〜? 心臓って左だっけか? 間違えて右撃っちまったよ。ありゃさぞかし苦しーだろ〜なぁ!」
 悪びれた様子もなく、けらけら笑って再びガルシアに向けて発砲する。先程の銃創とは反対の胸に、朱い模様が出来た。
 フェリアの顔に雫が飛び散った。か細い指でそれを呆けたようにそっと拭う。
「これでいいんだろ?」
 それを見たカルドは、再び誇らしげに薄ら笑いを浮かべ、首を傾げた。
「パ・・・パ・・・・・・? 寝ちゃダメだよ。イタイならまた『飛んで行け』ってやってあげるから・・・・・・だから起きよう? パパいないとフェリア眠れないよぉ!」
 嘔吐混じりの声で必死に何度もガルシアの身体を揺さぶるが、反応はなかった。
 暫くして堪えきれなくなったのだろう。幼い少女は大声で泣いて、ガルシアの遺体に泣きつく。その姿はガルシアの言っていた通り、年相応の子供だった。
「なんだ、あのガキ。アホか? 心臓撃ち抜かれて生きてるわきゃーねぇだろ? 頭の方も良いって聞いてたンだけどな・・・・・・欠陥品じゃねぇーのぉ!? あっはっはっは!」
 高笑いが聞こえると泣き声が止まった。
 それまで遺体に顔を埋めていたフェリアはゆっくりと起きあがり、カルドを凝視した。
「あんたが・・・・・・パパを殺した・・・・・・」
 瞬きをする間もなく、フェリアは高速でカルドの喉に跳び付く。
 だが、それも薄皮一枚の差で反射したカルドの拳で、フェリアは壁に叩き付けられていた。
 フェリアの身体が地面に落ちる前にカルドは標的に銃を向け、トリガーに指をかける。
「ハンッ!・・・・・・チッ。判ったよ。お前のターゲットに手はださねぇ」
 音もなく、まさに神速。トリガーを引く前に、セリナは銃をカルドに向けていた。
「冗談に決まってンじゃねーか。いくら俺でもプロジェクトのガキを殺す、なんつーマネできやしねぇよ!」
「消えろ。これは本来、お前の関わるべきではない」
「・・・・・・・・・ハイハイっと。俺は銃を降ろしてるんだぜ? いい加減テメェも降ろせよ。それとも何か? そんなに俺と殺し合いがしてぇか!?」
 セリナはカルドを一瞥した後、銃を降ろした。
 それを確認したカルドはつまらなそうに『せいぜいガキのお守り頑張れや?』と悪態をついて消えた。
 セリナは何事もなかったように少女に近づく。
「パパの・・・イタイのイタイの飛んで行け・・・・・・」
 フェリアは涙を流し、まだ理解せぬ現実を深い眠りで妨げていた。 
  
2004/10/20(Wed)21:13:57 公開 / 如月 淘夜
■この作品の著作権は如月 淘夜さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
第二弾更新ですっ!(千年目は?)さて今回の更新、説明文っぽくなって皆様を飽きさせてしまわないか、ハラハラしながらのアップ!全く持って無知・無謀・無鉄砲・無芸・無力と五色の無が揃った作品を読んで頂いて誠に感謝です!では、次回の更新でお逢いしましょう!・・・・・・仕事の関係で遅れるかもしれませんが(ボソッ
いつも通り、苦情・感想・指摘等々有れば仰って下されば更に幸いです♪

ささら様 一番乗りありがとう御座います!こんな駄文にお付き合い頂けるなんて・・・あうぅ感謝で涙です。仰るとおり、アサシン=暗殺者ですね。ささらさんの期待に応えれる物語になるかは解りませぬが、全霊で頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! 追伸 硝煙の匂いは硫黄の濃いモノです(ナンデシッテンダコイツ?)

卍丸様 いつもお読みいただき、感謝です!更にタッチとキャラ造りが上手いとお褒めのお言葉、身に余る光栄ですじゃ♪俺がハードボイルド感ゼロなので、どこまでそれを醸し出せるかが解りませんが、身体から滲みだしてでもやって見せます!(ぇ では、卍丸さん好みのアクションか解りませぬが、これからも頑張りますのでよろしくお願いします!

紅蓮様 読んで頂いて有り難う御座います!リボルバーの件、済みません!アレ俺の入力ミスという最悪の結果です。死んでお詫びします(ぇ 死に方は何がいいかなぁ・・・・・・っと死ぬ前に、格好いいと言っていただき嬉しい限りです!いやー・・・・・・まだまだどうしようもない俺ですが、最後までお付き合いいただけると恐悦です!では・・・・・・パーン!(エイドリ○ーン!!!(ぉ

神夜様 生まれ変わりました、如月淘夜(にょつき とうよる)でs(ry ゴメンナサイ、嘘です。いつも作品を読んでいただき感謝です!俺が常に戦いの中に身を置いているので・・・(二度目の嘘(死 ただ、今度はほのぼの刑(!?)でも創ってみようかと思います。そのときも是非読んで下されば感謝の極みです。しかし、神夜さんのプロローグは一品だと思います。すぐさま世界にとけ込みやすく、理解しやすい。そんな神夜さんを目指しつつ、これからもお付き合いいただけると感謝感激雨霰です!
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