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『☆星降るままに☆ 再投稿』 作者:ニラ / 未分類 未分類
全角8159文字
容量16318 bytes
原稿用紙約23.6枚
          ☆オープニング☆
星の美しさは宇宙で一番だと思う。
でも、死んで星になり、美しくなるのと…
生きてずっと美しいその星を見るのだったら…
貴方はどっちを選びますか?

        『星降るままに・・』

          ☆第一夜☆
 彼は天文学者である。いつも見なれた望遠鏡のレンズを覗きこみながら仕事に没頭している。普通の人から見れば過労になるかもしれない仕事量だが、彼は一度もなった事が無い。
「おい!! 和哉、飯食いに行こうぜ!!」
「ごめん!! ちょっと待って、もうすぐこのレポートも済むから」
 研究者仲間から和哉と呼ばれる黒髪の男は、いつもの様に仕事を優先させる。星を研究する事は、研究者にとっても面倒な事もある。あまり天体観測は進んで研究したいと思うものもこの町にはいなかった。しかし、和哉は違った。自分から進んで科学者の道を目指し、星の研究を題材にしたのだった。和哉はレンズから目を離し、レポート用紙の最後の一行を書き終えると、ゆっくりと近くの階段を降りていく。かつん、かつん、と音を立てているが、和哉の心臓はそれ以上にバクバクしていた。いつもの事ながら、星を見ると興奮してしまうのは和哉の悪い癖であった。
 和哉が階段を降りると、明るい光が指しこむ。食堂の電気だ。と呟き、白衣をばさばさと揺らしつつ、走っていく。この研究所は、天文研究専門で、寮制となっている。故に、全ての家具などがそろっている。他にも、研究でカチンコチンに固まった頭を癒す為の温泉までついている。
「遅いぞ!! 和哉、もう十二時だ!!」
「ごめんごめん、待ってて!」
 和哉は急いで食堂に入ると、苦笑いしながら仲間に手を合わせると、注文台に駆け込む。そこには、料理の注文用の紙が置いてある。それにペンで綺麗に「空理和哉」と書きこみ、きつねうどんのところに丸印を付け、調理室にいるおばさんに渡すと、仲間の席につく。どうやら、仕事をしていたのは俺を合わせて、三人だ、と考えながら、注文した者がくるのを待つ。
「でもさ、やっぱり和哉にはかなわねぇわ!!」
 和哉の右隣の席に座る「木型良哉」からかう様に言う。
「まあな、でもさ、実際の進み具合は良哉達とほとんど変わらないんだ!!」
 良哉の言葉に笑いながら和哉は答える。その頃には注文したきつねうどんはとっくに来ていた。それに七味唐辛子を軽くかけると、すすり始める。
「そういえば、明日から俺、休暇願い出すから」
「何で!?」
 カレーを食べている「望月卓也」の言った事に良哉は驚く。それを和哉は聞きながらうどんの箸を置き、水の入ったコップに手を出す。
「しっかしなぁ・…俺と和哉の二人で平気かなぁ?」
「大丈夫だよ、今の所、研究所内で俺達のグループトップだしな」
「まあ、気をつけろよな」
「分かった、じゃあな!!」
 うどんを食べ終わった和哉の言葉を聞き、笑顔でそう卓也は答えると、先に自分の寮室へ帰っていった。
「さてと、腹もいっぱいになった事だし、俺達も行くか!」
「そうだね!! 明日も仕事あるし…」
 二人でそう話すと、研究所を出て、寮へ向かう。寮はニつに分かれていて、卓也と和哉はB棟であり、良哉はAであった。二人は分かれ道で別れると、それぞれの道を進む。外はずいぶんと暗くなり、子供ならば泣き出すだろうと思う。寮につくと、雨が急に降り出す。
「おいおい、雨降るなよぉ!!」
 和哉は慌てながら玄関まで走る。玄関に入ると、そこにびしょぬれの女性が座っている事に気づく。茶髪で、綺麗な顔が水で更なる輝きを増している。
「どうしたんですか? 風邪引きますよ?」
 和哉は心配になって尋ねると、女性は振り向き、「道に迷って・・」と言う。聞き取りにくいほど小さな声だが、聞いた和哉は、慌てて手をひっぱると、寮の中に入れる。
「とりあえず、服を乾かした方が良いよ!! とにかく、寮の中に!! 風邪引くといけないし、確かロビーも開いてると思う」
 その言葉を聞いて、女性は無表情でありがとう、と呟く。そして、二人は寮室の中へ入っていった。雨は降り止まず、大きな音を立てている。

            ☆第二夜☆
 微妙な温度で保たれたロビーは、濡れた体をもっと気持ち悪くさせていた。冬だからなのか、奥の暖炉には火が残り、ロビー中の場所が密閉され、湿気は多くなるばかりである。和哉は彼女を暖炉の前に置かれている、赤いふかふかのソファに座らせると、自分の部屋に戻り、入ってすぐの所に置いてあるタオルを手に取り、ロビーに戻る。息を切らしながらロビーに入り、電気のスイッチをONにする。すると、薄暗く、暖炉の残り火で照らされていた部屋が一瞬のうちにはっきりとする。ロビーの中はさっぱりしており、入って右に自己研究用の資料集の棚、真ん中には何故か将棋やチェスなどの遊具で、その机を囲むように椅子が並べてある。
「はい、タオル…これで拭いて」
「・…」
 彼女は頭を下げて礼をすると、タオルを受け取り、頭を拭く。濡れた髪は美しく輝いていたが、拭いた後は、髪の毛がまとまっていて、さらりとしていた形跡は何処にも残っていなかった。和哉は彼女を見ているが、ふいに目をそらし、顔を赤くする。彼女は全身が水浸しで、着ていた白いワンピースは透けて、下が見えていた。彼女はそんな事も知らずにタオルで体を拭き、大体水気を取ると、タオルを返す。和哉はタオルを受け取ると、すぐにロビーの隅にあるちいさなキッチンの下のところからやかんを出し、水をなみなみと入れると、レンジに置き火を点火させる。大きな音を立てて火は付き、あっという間にお湯は湯気を上げる。そうなったら、火を止めてキッチンの近くにある棚の窓を開け、紅茶のティーバッグを出し、棚の横に並べてあるカップの中から、自分の名前の書いてあるカップを出しそこに、お湯とティ―バッグを入れる。だんだんと薄い茶色の色がお湯に混ざっていき、香りを漂わせてくる。色がつき、良いと思ったときに袋を取り、横に砂糖を乗せておく。それを彼女に差し出す。
「どうぞ」
「・…」
 彼女は相変わらず無言で礼をし、紅茶を受け取る。それに砂糖を入れると、少し目をつぶって香りを楽しみ、少しズつ啜って行く。途中途中熱そうに顔を歪めるが、飲み干したときには、顔に色が戻っていた。
「君は誰なの? どうしてここに?」
「・…」
「君、喋れないとか?」
 彼女は首を横に振る。どうやら、他人とは関わりたくないといっているようである。和哉はそう判断すると、はあ、とため息をついてからロビーを出て、部屋から少し厚めの毛布を持ってくる。
「雨、止みそうに無いから、ロビーで一日ゆっくり休みな」
「・…」
 彼女は毛布を受け取ると、お辞儀をし、ソファに寝転がった。暖炉の火をしっかりと消し、明かりを少し消す。ロビーはオレンジの光で満たされる。そこに彼女はいるが、もう寝てしまったようであった。
「俺も、寝るか・・」
 あくびをしながらロビーを出てそう言うと、自分の部屋に帰っていった。
―――――――――――☆
 気がつけば朝であった。ベッドに横になる前に和哉は寝てしまい、自分の部屋の壁に寄りかかって寝てしまっていた。部屋は一つだけで、そこにベッドがあり、窓がわにテレビとちゃぶ台が置いてあると言う、窮屈な部屋である。そんな部屋に壁に寄りかかって寝れば、全く寝てないのと同じような事である。
「もう朝かぁ…」
 大きく伸びをしながら和哉はちゃぶ台の上に置いてある時計に目を向け、慌てふためく。研究所の仕事の時間は八時からであり、今の時間は九時である。といっても、研究所内が八時から開いていると言うだけで、研究はいつからでも始めても良いと言う事になっている。しかし、サボればサボるだけ、給料が減るので、あまり休む事は無い。和哉は、週に二回ほど休む程度で、しかも八時から閉館の十二時まで研究を続けっぱなしなので、給料などに困ることは無かった。とくに和哉が休んでも、「あの仕事量ならわかるなぁ」と流されてしまうだけなのである。
「どうしよぉ!! 今日はレポートを三十種終わらせる予定なのに!!」
 普通なら八時から十二時でも、研究結果の報告書を三十種類も出せるわけが無いが、和哉はそれをやってのけてしまうほどであった。和哉は白衣に身を包んで寮を出ようとするが、ロビーのしまったドアに目をやる。しかし、気になったがすぐに仕事へ向かっていく。

 仕事場は、驚きでざわめき返していた。あの「和哉」が始めての遅刻をしたということでだった。それは研究所内で発光されている広報委員の新聞でも大きく記事にされていた。しかし、遅れながらも研究に入れば、ほとんどの他の研究者をごぼう抜きし、三時間で十五種の報告書を書き終えると言う伝説を作った。昼の時間は、いつも通りに良哉と食べる。しかし、そこに卓也の姿は無い。
「卓也さ、今日から休みらしいな」
「昨日聞いたけど、何でだと思う?」
「知らないのかよ!?」
 和哉の反応に驚き、良哉はきつねうどんの汁をこぼす。慌てて机を拭くと、話しを続ける。
「卓也の母さんがたしか、ガンで治療中らしいんだ。でも、そこの場所が場所らしくて、治療が難しいらしいよ」
「そうなんだぁ・・」
 和哉は始めて知ったような素振りで言う。その時、食堂の扉の方で大声が飛ぶ。
「良哉!!」
 それは昨日の彼女である。その乾いた姿は食堂の男子全員を釘付けにし、一瞬で彼女は女子全員から反感を買った。彼女は良哉に無表情で近づき、良哉の前に立つ。
「今日、母さんと父さんの墓参りでしょ? なんで来ようとしないのよ!!」
「・・なんだ、比奈か、悪いけど俺はあの夫婦の墓参りなんか行かないぞ・・」
 彼女の言葉に怒りの顔で答えて、和哉を置いて研究室へ良哉は戻っていた。彼女は全く、と言いたげな表情で腕を組む。
「あのぉ?」
「はい? なんですか?」
「あなたはあいつとどんな関係で?」
「ああ、貴方は昨日の…実は、私はあいつのいとこなの」
 比奈はそう言い、まるでそれが嫌なように言う。しかし、比奈の目は、水を満たしたような目で潤んでいた。何か悲しい出来事でもあるかのように。
「昨日は、ありがとうございました。では!!」
 比奈はそう言うと、良哉の後を追って研究所に入っていった。和哉は、それをあっけらかんとした表情で見ているだけであった。
 
             ☆第三話☆
 その頃、僕はまだ夢を見ていた。今のような悲しい事が何一つ無かった頃に、たった一つだけ夢見た事だった。「宇宙飛行士」 それは、僕にとってはかけがえの無いもの。地球と言う一つのまとまった世界ではなく、何処までも続く世界を…・・彼は見たかったのだ。
―――――――――――――☆
 暗い研究室は、いつもと違った雰囲気であった。すぐ横にパソコンが三台、広い部屋の真ん中に資料が重ねておいてある。そして、壁中資料の本だらけであり、立った一つの大きな望遠鏡の先は天井に向かって伸びていて、天井を貫通している。その部屋に入り、電気のスイッチをつけ、明るく照らすと良哉はパソコンに目をやる。パソコンの電気は付けっぱなしであった。下にローラーが付いている椅子に座り、コロコロとパソコンに椅子を近づけ、カタカタと打ち始める。軽快な指使いで何行も何行も書きつづけて、少し経った頃に、画面の左端に矢印をやり、クリックする。ガコン、と音を立ててパソコンの上にあった印刷機が動き出す。口からだんだんと紙を出し、何分かかかった頃に印刷は終わった。そのページ数は30をゆうに超えている。パソコンから手を離して立ちあがると印刷したての紙を部屋の真ん中の机の上にあるファイルにしまい、部屋のドアを開ける。そこには、比奈が目を吊り上げて怒っている。
「良哉、さっさと行くよ!!」
「うるせぇな、俺から夢奪った親達の墓参りに何で行かなきゃ行けないんだよ!!」
 良哉は思わず怒鳴り込む。その声は下の階の食堂にまで響き渡り、食堂できつねうどんを食べていた和哉も思わず身震いし、持っていた箸を落す。比奈と良哉の間に瞬間的に冷たい空気が充満し始める。二人は暫くの間無言であった。良哉はファイルを持った手と反対の手で「クソッ」と比奈に向けるように怒鳴った後、比奈を置いて下へ行く。比奈は、泣きもせずにずっとガラスのような目で良哉のいた所をずっと見据えていた。
 良哉は下に行くと、報告書を出すためのポストにコトンとファイルを入れる。この研究所は別館のような物で、本部へ出すためにはポストに入れる必要があった。それを一週間に二回程来る本部の者が持っていくという仕組みになっていた。
 報告書を出し終わった良哉は、やる事が無くなったので食堂へ再び戻る。普段なら食事をすぐに終えて研究室に走っているはずの和哉はここにいた。どうやら、先ほどの声を聞いて、行く事を、遠慮していたのだと思う。和哉の元に良哉は行き、隣に座ると顔を手を覆いながらひじを机に付く。
「ごめんな…行きにくかっただろ? もう平気だぜ」
「うん…分かった」
 和哉はそう言い、研究室に向かう。ドアの前には彼女がいた。泣いてもいないし、笑ってもいないし、怒ってもいない。まるでロボットのように、研究室のドアを見ている。しかし、和哉は見ていると、何だか涙が出てきそうになってくる。彼女の気持ちが溢れているのを、和哉が感知したのか、単なる気のせいなのか。しかし、その彼女の無表情な状態を見ていると、心が痛くなってくるのだ。それを見ていた時、和哉はたまらずにこう言ってしまった。
「俺が行っても良い? 良哉の代わりにさ・・」
「え!?」
 驚いた顔をする。彼女の表情を見たのは始めてだった。思わず安心したように思えるその顔は、和哉の心に刺さっているとげも軽く抜いてくれた。
「駄目かな?」
「いえ、全然平気ですけど・・」
「じゃあ決まり!! 明日からで良いのかな?」
 和哉はほっと一息しながら彼女にそういうと、彼女は縦にしっかりと振ってくれた。和哉は、下に一回下りてから、ポストにの横の「休暇届」と書いてある封筒を手に取る。。中には、休暇届用の用紙が入っており、自分の名前と休暇日数を書けば平気であった。彼女に日数を聞き、その日数分書くと、入れた。そして、良哉の所へ行く。
「良哉、ちょっとあの人と墓まいり行ってくる」
「良いけど・・お前が行っても意味無いぞ?」
「お前も来る?」
「い・や・だ!!」
 和哉のおちょくるような言い方に、本気になって良哉は言う。和哉に向かって親指を立てると、彼女の元へ行った。彼女は、やはり相変わらずの無表情だが、どこか笑っているのではないかと和哉は思ったのだった。そして、和哉はいつも通りに、研究所へこもったのだった。  

              ☆第四話☆
 死んだ人は星になって何時までも僕らを見ていてくれる・・それを信じなくなったのは何時からだろうか?僕にとって星はもう、見る存在でしかないと思い始めたのは何時だろう・・
 その頃、僕は、人間は、誰かが見ていてくれるから強くなれると思っていた。
―――――――――☆
「起きてください、起きてください」
「うにゃ?」
 ふしゅうと音を上げながら止まっている電車の中で意識が戻る。電車の中の赤いシートの上に寝転がった結果であった。もうすぐ閉まりそうだと予感がするのを比奈は抑えられず、より大きな力で和哉を揺らしていた。その反動で大きく脳に痛みがはしる。
「早く出ないと、行っちゃいますよ!!」
 和哉は重い頭を起こしながら大急ぎで荷物を持つと、閉まりかけているドアを抑え、何とか出る。キュウン、と電車の車輪の方から音が鳴り、電車は行ってしまった。ふうと溜め息をつきながら二人で胸を撫で下ろす。
「ごめんね、寝過ごしちゃって…」
「あの場所で寝れると言う方が凄いですよ・・」
 比奈から痛い言葉が飛ぶ。その言葉に傷つきながらも、改札口に行き、切符を入れてすぐに駅を出る。なかなかの長旅だったので、日はもう既に暮れ始めていた。駅の外は、和哉達の町とは違っていた。ビルは一本二本建ってるだけで、周りは畑で囲まれていた。町中自然が溢れ、青々とした風景が広がる。そして、1歩歩けば戻れなくなるかもしれないと思うようなくらい森もある。
「凄いね、こんな所見たこと無いよ」
「夜は綺麗な星空も見れますよ」
 比奈は冗談交じりの言葉を和哉に返す。でも、どこかに少し本気が混じっているのではないかと和哉は正直思っていた。
 しかし、この町は半端じゃなく田舎であった。駅前のちんまりとした商店街を抜けると、何処まで歩いてもコンビニなんて物は見つからず、車も来たとしても三十分に一回くらいである。畑のあぜ道を危なげに通っていくと、古ぼけた屋敷が見えてきた。「あそこですよ」 比奈は振り向きながらそう言った。 そこには、古ぼけて、茶色が混じった木造の家がある。木造を見たことはあまり無かったので、少々戸惑いながらも、比奈に連れられて入る。
「お邪魔します」
「良哉!! 来たのかい!! ・…おや、すまないね、間違えてしまったよ」
「おばあちゃん、この方は良哉の仕事仲間の和哉さん」
 比奈がおばあちゃんと言う彼女は、少しなまってはいるが、どこから見ても四十前後の女性だと和哉は思う。和哉は緊張しながらも、家に上がる。古く汚れてしまっている廊下はきしんで、今にも抜けそうな程であった。やはり、木造は少しなれそうに無いと、和哉は思う。外ではもう夕方近くなり、そろそろ村の人たちが農業からつかれて帰ってくる所である。そして、静かな薄暗い青い世界は、鈴虫などの綺麗な羽音によって、壮大なオーケストラを作っていた。
「すまないねぇ、代わりにきてもらって…でも、うちの息子たちも喜ぶと思うよ」
「いや、突然上がりこんだりしてしまって・・」
 ちゃぶ台を囲んでの食事中、沈黙を破ったのはおばさんであった。比奈はそれを聞きながら、真っ白でつやが出ている炊き立てのご飯を箸で小さくつまみながら聞いている。八つ前後の畳が敷いてある部屋の、座布団の上で正座をして食べているが、やはり、和哉は痺れ、ギブアップしてしまう。ところが、なれているのか、二人は全くと言って良いほど痺れを感じないらしい。
「ところで、気になったのですが、良哉は何で親の墓参りに行こうとしないのですか?」
「それはね、夢を夫婦に壊されたからだよ」
「え?」
 比奈は少し暗い顔をする。しかし、おばあちゃんは続けていく。
――――――――――☆
 その頃、良哉は宇宙に憧れていた。行き止まりがなく、永遠と続く青い世界に感動し、良哉は引き込まれていった。
 そして、年が二十を過ぎようとした頃に、良哉は念願の宇宙飛行士の夢を叶えるときが来た。しかし、夫婦は反対した。
「何で駄目なんだ!! 俺の夢を叶えちゃいけないのかよ!!」
「ふざけるな!! 父さんはお前に有能な後継ぎにさせる為にいい高校に入れたんだ!!」
 良哉の父は大きな会社を経営していて、そこの社長であった。どうしても、自分だけは引退しても裕福な暮らしをしたいと言うことばかりを考えていた。もちろん、それは子供にまで渡った。良哉の夢は知っていた。しかし、一度も振り向こうとしなかった。「自分が幸せであれば良い、自分だけなら他はいい」 そんな、自分勝手な考えであった。
 そして、事故は起こったのだった。母親が過労で死んだのである。父親は一度も家族の為にしたわけでもなく、離婚届も何もしなかった。良哉はその頃の母親のことは、ずっと見ていた。何をされても、「仕方が無いのよ」と言うだけであった。しかし、影では辛さに泣いていた一面もあった。
 葬式、父親は大切な取引だと言って、来なかった。良哉はその頃から父親に怒りを持っていた。
――あんな奴がいなければ母さんは死ななかった…
 そして、父親は、新しい女を作った。そして、比奈が生まれた。その時、ついに良哉は無が夢中で飛びついた。何が何だかわからない。気がついたら父親に飛びかかり、殴っていた。
 その時だった…良哉が夢を壊されたのは…
2004/09/29(Wed)17:45:45 公開 / ニラ
■この作品の著作権はニラさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どうも・・・PC壊れかけて、久々の投稿でいす!!四話は、とりあえず、作れましたが、最初の方が、パスワードが効かなくなっており、結局再になってしまいました。アドバイスなどをくれた皆様方スミマセン!!
星降るままにですが、このまま、続いていきそうです。五話で終わるはずなのですが、もっと行きそうです。なので、これからもアドバイス、きつくてもいいので、お願いします!!
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