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『黄金水平線 完結』 作者:ニラ / 未分類 未分類
全角7700.5文字
容量15401 bytes
原稿用紙約24.2枚
 「黄金に輝く水平線」
――それは誰もが夢見るような気分になれる伝説の水平線…
――しかし、夢をかなえたいという気持ちが無ければ見ることが出来ないと言う・・
――その水平線を見たものは夢や願いを必ず叶えると言う伝説もある…
――だから、その水平線は、「たった1度しか見れないもの」になってしまう・・

       〜黄金水平線 第1話「草原と海」〜
 ガタンと揺れながら、2本のレールの上をすべるように走る電車。誰もが何度も乗るその電車は、気がつけばいるのは一人である。少し長めの黒髪に、大人のような雰囲気を出す顔立ち、とても、中学生には見えない。彼女の名は「木見花梨」中学2年生である。
 花梨は電車の窓顔を近づける。しかし、すぐに溜め息をつき、背もたれに背をかける。
「飛び出してきちゃったけど…やっぱり駄目だよねぇ…」
 花梨はそう呟くと、持っていた手提げ鞄の中を覗く。中にあるのは少し大きい財布と、下着だけである。
 中身を見て、花梨はもう一度深く息を吐く。
「カっとなったとはいえ、行けない事だったかなぁ?」
 花梨ははっとして、周りを見渡す。そして、周りには誰もいないことに気がつく。知らないところまで来てしまったと思う。そこへ、車内アナウンスが流れる。
『日向〜・・降りる方は降りてください・・・』
 花梨はとっさにその駅に急いで降りる。電車が良くと、ほっと一息つく。
「とりあえず、ここから下りの電車に乗って…」
そう言いかけると、少年の声が聞こえてくる。
「・・下りの電車は・・今日は来ないよ・・」
「え!?」
 花梨が振り向くと、いたところは駅ではなくなっていた。いるのは、原っぱの草原の広がる、空き地であった。そして、声がしたところには、花梨と同じ位の背丈の少年がいた。その少年は、花梨を指差すと、口を開く。
「お前、どうしてここに来たんだ?」
「って言うか、ここ…何処?」
「ここはね、夢をかなえたいと思う人だけが来れる町・・・」
 少年はそこで口を閉じると、花梨の後ろをもう一度、指を指す。花梨が振り向くと、そこには大きなスカイブルーの色をした海があり、その向こうには空と海が一体化したように見える「水平線」があった。
 その大きな風景に、吸いこまれそうになりながら、ぽかんと口をあけて花梨は見る。少年はその表情を見て、嬉しそうににっこりと笑う。
「この町で、『黄金水平線」を見た奴は、絶対に夢が叶うって信じられてるんだぜ!!」
 少年は、花梨に向かって手を差し伸べる。花梨は、頭がこんがらがりながら、まじまじと少年を見る。その花梨の反応に、また少年は笑った。
「夢があるんだろ!? 見てみたくない? 『黄金水平線』・・」
 花梨は、その少年の姿を見て、笑顔をこぼすと、少年の手を握った。少年の方もしっかりと握ると、花梨を引っ張って緑が輝く草原を走っていく。花梨が慌てながら自分の足で地面を蹴り始める。
――何がどうなってるんだろう…?
 花梨はそう思いながら一緒に走っている少年を見る。自分を見ていることに気づくと、少年はもう一度笑う。
「ここについて、ちゃんと話したあげるよ!! うちに着いたらね・・」
 花梨はただただ、苦笑いで少年に着いて行くしかなかった。 

       〜黄金水平線 第二話「町と旅館」〜
 花梨と少年は草原を走っている。しかし、もうかれこれ二十分は経つ。流石に足に疲れが流れ込み、だんだんと花梨の足取りは重くなる。しかし、少年は全くと言って良いほど、息を乱していない。むしろ元気になっている気さえするのだ。
 花梨はとうとう足を止める。それに少年が気づいたのか、少年も足を止める。花梨の足はぼろぼろだった。靴はサンダルだったので、途中途中脱げかけることもあり、足の裏は擦れてべろりと皮が向けていた。
「大丈夫?」
 少年は心配げに声をかけるが、花梨は感じた事の無い痛みで、口を開けたら悲鳴を上げそうな状態だった。少年の表情は青くなり、すぐにポケットから布を出す。そして、その布を広げる。布の長さは3mはあるかと思う。それを大体の長さに切ると、花梨のけがをした足に巻きつける。
 すると、花梨の体から痛みが消えるように感じなくなった。
「え!?」
「応急処置!! でも、歩くといたいと思うから負ぶっていくよ」
 少年は花梨を背中に乗せると、花梨を背負う。そうしてから永遠に続いているように思える草原を走り始める。
「私、重いよ!! 疲れるからやめた方が良いよ!!」
「大丈夫大丈夫、この位へのかっぱ!!」
 少年は前以上の速さで草原を走りぬけていく。花梨はその少年の姿に、少しだけ赤くなっていた。この年になってやはりおんぶは、恥ずかしいと思ったのだろう。
 気がつけば草原を抜けていた。そこは、田舎のような雰囲気を漂わす町(より村)といったほうが良いだろう。といっても、コンビニやビルは普通にたっている。しかし、道路は無く、どの家も車が無いのだ。だから、少年はここまで体力があるのだと、花梨は勝手に納得する。
 町の住民は、家の前で何か準備をしているようである。しかし、それが何なのかは花梨には理解できなかった。
 少年は花梨を背負ったまま、一つの大きな旅館に入る。外から見るといわくのありそうな宿だが、中は違った。中は一流のホテルを思わせるくらい広く、そして綺麗だった。何処を見てもチリ一つ無いと思える。
「今年来た娘だ。部屋開いてる?」
「開いてるよ!! あ、でもスイートだけ」
――スイートって・・あのスイートルームの事!!
 花梨はフロントで話してることを聞いて驚く。スイートルームなど夢のまた夢だと思っていたはずだが、今こうして花梨の目の前で実現しているのである。
 少年は花梨を下ろさずに、そのまま部屋へと送る。そして部屋のベッドに下ろす。
「よ〜し、着いた!!」
 少年は花梨を見て笑う。しかし、花梨は少し身構えるようにして少年を見る。
「何、身構えてるの?」
「だって…君が襲ってくるかもしれないし・・」
 それを聞いて、少年は大笑いする。
「大丈夫!! そんな事はしないよ! じゃあ、夜にまた会おうね!!」
 少年はそう言うと、出ていってしまった。花梨はベッドに倒れこむと、頭の中を目をつぶって整理し始める。
――この町は何処なんだろう・・駅も無いし…どうなってるんだろう、私は確かにここへ電車で来たはず…
 花梨がそんな事をしているうちに、目を開けたらもう夜であった。花梨は気がついたら眠っていたのである。
 そこへ、ドアを叩く音がする。花梨は寝ていたせいでガンガンする頭をハッキリさせながら、ドアを開ける。
 そこには、さっきの少年が立っていた。
「約束通り来たよ!!」
 少年はそれを言うと、部屋へと入る。花梨はドアを閉めると、少年の方に行く。その時に、少年が声をかける。
「さっきはごめんね…ちょっと忙しくって、ゆっくり良く暇なくってさ」
 そう言われ、はっとして花梨は足を見る。足は知らないうちに痛みが消え、元の白い肌に戻っていた。
「ここは…ここは何処なんですか!? なんで私はいるんですか?」
 花梨が聞くと、少年は頭を掻く。そして、立ちあがると真剣な顔で、花梨を見る。
「教えて無かったね・・じゃあ、今から話すよ・・」
 少年は話を始めた。

         〜黄金水平線 第3話「祭りと夢」〜
「ここは、夢を叶えるためだけにある世界なんだ・・」
 少年は一言をゆっくりと、目を閉じて言う。それを花梨はどきどきしながら聞いている。
「そして、五年に一度だけ出るといわれている『黄金の水平線』があり、これを見た人は夢が叶う」
「でも、この町の人は駄目なの?」
「うん、迷い込んできた人だけなんだ」
 一瞬静寂が周りを包む。1秒1秒の針の音が鮮明に聞こえるほどに静かになる。
――何を言えばいいのだろう・・・
 その考えが花梨の脳裏をよぎる。しかし、何も言い出せないまま、気がつけば五分立っていた。ここまで時間が長いと思った事は無かっただろうと無言のまま、花梨は思う。
 その静寂を破ったのは、外の音だった。夏に良く聞くような笛の音と共に、ガヤガヤと外が騒がしくなってくる。
「祭りがあったんだ…忘れてた!!」
「祭り?」
 花梨は突然喋り出したので、慌てながら話を繋げる。
「うん、君も行って見る?」
「いいの?」
「浴衣もあるよ・・ちゃんと」
 少年は部屋のすみにある箪笥から、虹色の綺麗な和服を取り出す。それを受け取ると、嬉しがりながら服に手をかける。
 ふいに、ある事を思い出すと、急いで部屋の和室に入り、戸を閉める。
「入ってこないでね…」
「大丈夫だよ・・」
 入ってからしばらくすると、うめき声が聞こえ始める。そして、遂には戸を開けて少年を呼ぶ始末だった。
 着替えが終わるのは入ってから五分前後だった。着替えも終わり、ホテルの外に出て見ると、そこはもう朝とは全く違う風景だった。真っ暗な空を照らすように打ち出される鮮やかな花火、眩しくなりそうなほど明るい屋台。騒ぐ子供、それは、花梨にとってあまり見ることが出来ないような光景だった。
 気がつけば、花梨は涙を流していた。何故出たのか分からない。
「一緒にまわる?」
「そうしようか・・」
 花梨は屋台の沢山並ぶ所に行くと、色々な物を見始めた。好奇心なのか、それとも流した涙を忘れようとしているのか、ここへくる前にあった事を忘れるためか、それは花梨以外誰にも分からなかった。
 花梨はある一つの屋台に目をつける。「射的」
「これ、やって見ても良い?」
「良いよ!! お金結構あるしね・・」
 屋台のおじさんに百円を払うと、モデルガンとコルクが出てきた。それをゆっくりと持つと、的を狙う。花梨が引き金を引くと、勢い良くコルクが飛び、見事に的に―――当りはせずに、しっかりとコルクは店のおじさんに当った。
「いたたた・・」
「ご、ごめんなさい!!」
 花梨はとっさに頭を下げると、恥ずかしさのあまり駆けて行く。
「お、おい!! 残りの弾どうするの!? …すいません、俺も行きます」
 少年は花梨を追い駆ける。 
 花梨は、祭りの中心の噴水の前で座っていた。恥ずかしさで、まだ顔はほてり儀見である。
 少年は花梨を見つけると、声をかける。
「大丈夫か!?」
「…うん・…」
「元気出せよ!! 俺なんかあのおじさんに十発はコルク当ててんぜ?」
 少年は花梨の背中を叩きながらなだめる。やっと落ちついてきたのか、花梨は溜め息をする。そうしてから、笑顔で向き直る。
「ありがとう・・元気でたよ・・」
「気にしないで・・」
 少年は花梨の様子を見てほっとし、隣に座る。すると、花梨はまた顔を赤らめる。
「どうしたの?」
「いや、なんか…二人で回ってると・・」
 花梨は口を噤む。そして、小声で言った。
「…つきあってるみたいだよね…」
「え!? ・・ああ、そうかもしんないや・・」
 少年は花梨につられて赤くなる。しかし、少しすると、少年は立って。手を出す。
「帰る?」
「・・うん!!」
 花梨は迷いもせずに手を繋ぐ。そして、二人は宿へ帰っていった。

       〜黄金水平線 第4話「明日」〜
「ねぇ!!」
 大きな声をあげて寝ている花梨をぐらぐらと揺らす。その表情は真剣その物である。花梨が揺らされて起きると、深刻な表情をした少年が立っている。
「どうした・・の?」
 まだ眠い目を開けつつ、少年を見る。少年は花梨の手を掴むと、ベッドから引きずり落す。そうした後で机に座らせる。
「大変なんだ!!」
 少年はもう一度言う。
「落ちついて・・何があったの?」
 少年をなだめつつ花梨は聞く。少年の口からは、思っても無い言葉が出た。
「黄金の水平線の出る日が、計算したらあと今日を入れて二日になった・・」
「え…なんで? …とにかく、外で話そうよ」
 花梨はきがえると、少年と共に部屋から出、そのまま外に出る。少年はまだ落ちつかない表情であり、花梨はその顔を見ると、溜め息をつく。
 海岸に着くと、そこは人が集まっていた。シートを砂浜に広げて、場所を取っているものが大勢いる。しかし、「木見花梨様用」と書かれているシートもある。
「明日なのに、何で皆用意してるの?」
「黄金の水平線は日の出から20分しか見れないんだ・・だから、一度ここに用意をして、一旦皆就寝する・・そうしてから夜中にきて見るんだ」
「でも、何で日にちが早まったの?」
 花梨が聞くと、少し落ちつきを取り戻した少年は答える。
「自然破壊のせいだよ・・」
 花梨は驚く。少年は少しばかりためらいながら、小さい声で話を続ける。
「元々は、この世界は、自然と一体化になった世界で、少しばかり文化的でも、それ以上に自然が上回っているから、変化は全く無かったんだ・・・でも、この世界以外の人間が自然を荒らしていくせいで、この世界にも影響が及ぶ事があるんだ」
「でも、この世界は私達の世界とちがうん…」
 花梨はそこで気づく。少年が言いたい事を。少年は、涙を流していたが、怒りは全く感じない。少年は少し泣きながら続ける。
「そうなんだ・・この世界は、自然が破壊されたときに逃げるための所…僕らの世界は、現実の人々の夢で作られた世界なんだ・・・だから、向こうの世界と一体化してると同じなんだ・・」
 花梨はその事を聞いて、思わずしゃがんで泣き出す。彼らは私達のような欲望を優先するような者とは違い、自分のためではなく、「世界の為に泣いている」のだと…花梨がここにきた理由は、「家出」…でも、その小さいことでも夢を無くした者達を助けるためにこの世界があること・・・それが真実だと花梨は思う。
「でも、そこまでしてもらってるのに…この世界への仕打ちが『自然破壊』なんて・・ひどすぎるよ!!」
 花梨の涙は止まることを知らず、気がつけば顔中をぬらしていた。その花梨の反応を見て、少年は少し微笑み、肩に手を置く。そして花梨に向かって静かに言った。「ありがとう」と…
 少年は花梨を自分の方に顔を向けさせる。涙で濡れた顔を少年は微笑んで見る。花梨はその柔らかい表情に、少年に抱き着いて泣き出す。
「ごめんね!!」
 花梨はその言葉を少年・・・いや、この世界に向けて言ったように少年は思えた。そして、花梨をしっかりと抱きしめつづけた。
「良いんだよ…君のせいじゃない…」
 少年は花梨にやさしくそう言うと、泣いている花梨の頬に唇をつける。その行動に、泣いていた花梨は泣き止み、顔を赤らめて少年の方を見る。
「これ、あげるよ…いつでも持っててくれたら嬉しいな」
 少年は花梨に虹色のブレスレットを渡してから、恥ずかしさでなのか、向き直る。
「じゃあ、水平線が出るまで待とうか!!」
 少年は綺麗なブル―で染まった海岸を見ながら、大声で花梨に言う。花梨も顔の水滴を拭うと、「うん!!」と明るく、そして高い声で返事をした。

        〜黄金水平線 最終話「まだ見ぬ未来」〜
 花梨は眠っている。気持ち良さそうに寝息を立てて。それを少年はやさしそうな笑顔で見ている。ちょうど満月の光で白くなった滑らかな砂浜に、いくつものシートが広げられ、砂浜は多くの色で染まっている。いつもなら光が無いように見えるくらい暗い世界なのだが、今は数々の色と光で鮮やかに彩られた世界となる。
 静かな中でも、セミ・コオロギ・鈴虫や、今ではあまり聞こえないような虫の音も、オーケストラを開くように盛大に聞こえている。多くのものはその音にうっとりしながら聞き入り、砂浜は静けさを増していく。
 その時、少年は腕につけているアナログ時計を暗い中、月の光に照らしながら見て、カウントする。他の者たちも同じくカウントする。
「20・19・18・17…」
 その声は、1に近づく毎に大きさを増していく。それと共にだんだんと水平線に光が指しこんで行く。
「おい!! …起きた方が良いぞ・・」
「え?」
 花梨はぼそりと呟かれた声に反応する。花梨は驚愕した。そして、笑った。
 そこには、一面の海が太陽の大きな光によって反射し、そして、その光が海の中で乱反射し、所々で違う顔を見せていく。そして、太陽が水平線から半分出たときに、「それ」は起こった。
 いままで反射してシルバーに輝いている海に少しばかりの黄色がさし、水平線中に黄金の一本の線が引かれる。黄色に輝く海と黄金に光る線。それを見れば、「夢を」叶えられるとなぜ信じられているのか花梨は理解した。
 この自然の無くなりかけた世界で、夢は確実に叶えると言う信じる心を失いつつある。しかし、改めて世界の大自然の大きさ、偉大さを見れば、誰の心でも反応してしまうだろう。だから、黄金に光る水平線「黄金水平線」は、今でも世界に夢を与えられていると、分かったのだった。
「どうかな? 夢、叶えられそう?」
「夢なんかじゃないよ・・人生の全てが上手く行きそうだよ・・」
 花梨はその強大さに心を打たれ、涙を流し始める。それを、少年は柔らかく花梨を抱きしめる。その中で泣いていると、だんだんと眠くなり、眠ってしまう。
 そこで、花梨の意識は途切れたのだった。

―――――――――――――――――――――――――――
…君!! …大丈夫かい君! …
 花梨はがばっと起きる。そこにはスーツに背広を着た駅員さんがいた。話しを聞くと、ここに来た時に倒れているのを助けてくれたらしい。駅員は花梨に茶を持たせると、心配げに問いかける。
「一体どうしたんですか? 吃驚しましたよ…」
「あ!? …いいえ…」
 花梨は「あの事」を言おうとするが、途中で口を噤む。信じてくれるわけが無いと思ったのだろう。
「凄く気持ち良さそうだったよ? 何があったの?」
「…夢を…見てました」
「へぇ…どんな?」
「浴衣姿で、知らない男の子と一緒にいた夢です」
「でも浴衣着てるよ? 何か祭りでもあったの?」
「え!?」
 花梨は自分の姿を見る。あの虹色の浴衣だった。手には虹色のブレスレットがしっかりとかかっていた。それを見ると、花梨は涙が止まらなくなる。
「夢じゃ…無かった…」
 花梨は大粒の涙を浴衣にたらしながら、「ありがとう」と呟きつづける。
 そして、何を思い立ったのか、ホームへと駆けて行く。駅員は驚くが、止めようとはせずに、微笑んだだけだった。そして、駅員は呟く
「…彼女も行ったのか…」
 花梨は行きも絶え絶えにホームに行くと、電車の方ではなく、壁の方を向き、大声で叫ぶ。
「私の名前は『木見 花梨』…始めまして!! また会おうね!!」
 花梨はそう言うと、ホームを後にし、階段を登っていく。
――この階段のように、私は夢を叶える事が出来るかもしれない
――でも、それだけじゃいけない…彼らが永遠に「あれ」を見れるようにするためには、世界の皆に夢を持ってもらわなくちゃいけない…
――だから私は、夢を世界中のみんなに与えられる仕事につくのが夢です…
――そしたら、今度は名前教えて欲しいな・・
――じゃあね…また会えたら良いな…
 花梨はそう心の中で叫ぶと、笑顔で階段を駆け登っていった。
             END 
2004/08/28(Sat)15:24:55 公開 / ニラ
■この作品の著作権はニラさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
終わりました。最後は何とか唐突にならずに済んだ様です。やっぱり、夢は大切だと思いました。そして、自然の恵み…まさに「大自然は世界を救う」とかですね・・
また次回作が出たら、アドバイスと感想おねがいします。次回も、見てくれたら嬉しいです。感想ありがとうございました。
卍丸様:とうとう終わりました。感想いつもありがとうございました。次回作も、見ていただけると嬉しいです!!
神夜様:深みを最大限にしたかったです・・が、とうとう最終話・・前編になってしま言ました・・もっとしっかりかければよかったです。まだまだ勉強が足りないです・・もっと練習して、ちゃんとした物になるべくなるようにします!!
なので、これからもお願いします!!
卍丸様:はい・・僕の作品はやっぱり急ぎ過ぎなんですよね・・なるべくもう少しゆっくりした話にできるようにする事を、今後の課題にします!!
如月 淘夜様:ありがとうございます!!ほのぼのとした物を出せて良かったです!!(自分、ブラック系多いので・・)
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この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
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