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『雪は太陽よりも遠すぎて  1』 作者:かえる / 未分類 未分類
全角1269.5文字
容量2539 bytes
原稿用紙約5.15枚
―…今は、春。

一人の、悩む少女がいた。
「…ベリィ…」
その少女は一人の友人の名を呼んだ。
「何?マリィ」
その少女たちは、顔が同じだった。
「雪・・・見たいな」
切ないような表情で、外のことを何も知らない少女が言った。
すると、扉の向こうから顔を出している少女は、
「またそれ?大丈夫よ、冬は逃げないんだから」
呆れたように言ったのである。
「違うの!!」
即座に反応し、大声を上げてたった今言われた言葉を否定した。
そして大声を上げた後、はっとしたように口を塞いだ。
すると扉の向こうからは、何も声が聞こえなくなった。
「・・・ごめんなさい」
沈みきり、だが何処か反省していないような、幼い声が聞こえる。
「はいはい、『今年は雪が見れないの』でしょう?何回も聞いたわ」
「だって、・・・本当だもの」
今にも怒りそうで泣きそうなガラスのような少女を、愛おしいと思うのだ。
「ええ・・・それは本当だわ」
「何か聞いたの!?先生から!」
先程と同じように、大きく反応しては反省の言葉を言った。
そして、運命の歯車が、動き出したのだ。


翌日。
「後・・・2週間ですね」
その医者の言葉を聞くと、判っていたつもりでも驚いてしまった。
横では、ふるふると震える私の妹が口を開けて―…
「そっか」
と小さな声で、泣きそうに呟いた。
「あ・・・」
今、私は理解したのだ。
『雪が見たい』と毎日のように言っていた意味を。
今は、春。
2週間経っても、夏にしかならない。
(そういえば、去年の冬は―…)
はっとした。
そうだ、この子は去年の冬も、一昨年の冬すら雪を見ることが叶わなかった。
病院にいたから。


「やっと、判ってくれた?」
マリィという名の、私の妹は、おどけた顔で言った。
「・・・ごめんね」
「いいのいいの!」
明るく吹き飛ばす彼女が、私には信じられなかった。
だから、私は言ってやった。
「良くないよ!」
妹に対し一度も怒ったことなど無かったのに―…
けれど、私の言ったことは正しいと思ったから、取り消さずにただただマリィの顔を見つめた。
「・・・」
沈黙が流れ、謝ろうとしたその時だった。
マリィが、口を開いた。
「私だっ・・・や・・・」
小さすぎて、聞こえなかったので、「え?」と聞き返した。
「私だっていやだよ!」
怒りあったことは一度も無かった。
お互い双子であるがゆえにお互いの尊さを知っていたから。
「でも、挫けてどうするの?暗くなっていたら、余計怖くなる!」
泣いて、泣いて、小さな声を振り絞って叫んでる。
私には、助けを求める声にしか聞こえなかった。
「もういや・・・。雪に触れることも、見ることすら叶わなくて!ベリィまで失いたくないの!」
それは、必死に生きようとしていることを証明する言葉だった。
けれど、この子にとって雪は太陽よりも遠いのだ。

見せてあげたい。

『双子だから』と言っていたくせに一人だけ外に出て。
遊んで、虹や、雪や、美しいものをたくさん見て。
妹は、それをどんなに羨ましく思っていただろうか。
「何とか・・・見せてあげたい・・・!」
そして、私の決意は固まった。


2004/08/10(Tue)13:42:38 公開 / かえる
■この作品の著作権はかえるさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めてです!
シリアスな、可哀想だけど命の大切さを知る女の子の物語、書いてみたかったんです!
見せ場的にはマリィちゃんが叫ぶところが一番良いんじゃないでしょうか?
此処まで読んでくれている人、有難う御座います!
続き物です。
何かもう打つのが楽しすぎました!
ではでは、次を楽しみにしてやって下さい!
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