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『日記帳 〜遊牧民の大予言〜』 作者:鈴乃 / 未分類 未分類
全角2352.5文字
容量4705 bytes
原稿用紙約7.05枚
はいはい、初めまして!
わたくし、自称時の旅人。通称気違いの魔術師こと、キョウと申します。
時の旅人と名乗るくらいですから私は旅をしています。旅といっても時の旅故、時間、世界…もちろん、国を今までたくさん回ってきました。
信じられないって顔してるそこの貴方!そうそう、貴方です。
自称だけなら、時間や世界の旅を信じなくても仕方がないでしょうが通称もあるといったでしょう?気違いの魔術師をなめちゃいけません!ほら、証拠になるようにと日記までつけてあるんですよ?・・・え?嘘の日記くらいつけられるだって?とんでもない!!私が嘘をつけるような顔をしてますか?…している、と…そうですか…。そろそろ、イジけますよ…。
まぁ、続けましょう…。
今日はたまたまこの世界のこの時間のこの国…つまり貴方方の目の前に辿り着いたわけです。
という訳で、ここで日記の一部を披露したいと思います。嫌でもお聞き頂きますよ。だって、貴方は私の旅を信じていないんですから。
…信じるから話さないでくれ、だって…?はぁ〜…いじけますよ…本当に…。とにかく聞いてください!


とある山より東側、そこには大草原の中に群れを成したテントが存在していた。その群れの中央、一際大きなテントの前で二人の男女が言い争っている…というより、男が一方的に怒鳴られている。
「こんな遊牧民の群れの姫様を守れって…ここにどんな敵がいるって言うのさ!?」
男は黙ったままうつむき、その行動は女に更なる怒りを募らせる。女はテントの壁となっている防水シートを蹴飛ばしたが、シートの伸縮で跳ね返って転びかけたが体勢をすぐに立て直した。
「そうカッカしなさんな、メリアさんよ」
テントの中から現れた派手な色彩の衣装を纏った老人は優しそうな笑みをメリアと呼んだ女に向けて言った。
「メリアさんはまだこの民のことを知らんから敵のこともわからんのじゃ。まずは、テントの中で説明を受けなされ。」
老人の促しにより、メリアはおとなしくテントの入り口へと向かう。男もその後を追う。突然メリアが振り返ると男に向かって口を開いた。
「ルイ、つまらない仕事だったら命はないと思いな。」
メリアは、鬼のような形相で言い終えるとショートの茶髪をなびかせながらまた歩き始める。ルイと呼ばれた男も、再びその重そうな足で後を追う。

テントの中は薄暗く、外から見るよりはるかに大きな造りだった。しかし、中は広いが置いてあるのは藁と木材で作られた小さなベッドがひとつ。中にいる人数も、今入ってきたメリア達を除くと子供が二人きり。金髪で浅い青の瞳の女の子と、茶髪でこげ茶の男の子だけだった。
「貴方が私を守ってくれる人たち?」「用心棒なんか要らない!!リキは俺が守るんだい!!」
リキと呼ばれた女の子はにこりと微笑み、男の子は頬を膨らませながら言った。メリアの表情がみるみるで変わっていく。
「また失礼なこと言って!カナンも私も生きなくちゃいけないのよ?」
「俺は、リキを守るために生まれたんだ!!」
子供達はメリアの表情など気にもせず喧嘩を始める。もちろん、その間もメリアの顔は鬼に変わっていくだけだ。ルイにいたっては、メリアの顔色をびくびくしながら覗っている。ついに、カナンという男の子が「リキなんか嫌いだ!!」と叫んだときメリアがカナンの首根っこをつかんだ。
「お…落ち着いて…」「カナン!!」
ルイとリキが同時に止めに入ってきた。メリアは、チッと舌打ちするとその場にどすっと胡座で座る。相当不機嫌らしい。
「で?あんたらを何からどう守りゃ良いのかご説明いただきたいんですけど?」
この時、リキ達の中でメリアは怖いお姉さんになっていることをメリア自身は気付いていないだろう。

リキの話によると、リキははるか遠く国の生まれでそこの国で占い師をしていたらしい。その国は占いで政治を進め、占いで災害や大事件を避けてきた。リキが政治の占いをすることになった時、リキの占いが外れてしまったのだ。嵐が来て国は荒果てた。もちろん、リキは死刑になることが決まっていた。しかし、リキは嵐がもたらした洪水のお陰で国の外に流された。
簡単にまとめるとこういう話だった。

「なのにリキってば、せっかく生き残ったのにまた死のうとしてんだぜ」
カナンはリキの纏っている鮮やかな服の袖をまくる。服に隠されていた皮膚が目に映った時メリアは唖然とし、ルイは口元を押さえた。幾つもの赤いラインがびっしりと不規則に引かれていたのだ、そう茶がかっラインが…。茶がかった赤いラインは奇妙に腫上がり、リキの腕を不気味に醜く変形させていた。
「だって、自分でも覚えてないんだから仕方ないじゃない。」
「それだけじゃないんだぜ、リキはもう三年もずっと同じ姿なんだ。身長も伸びてない。」
カナンの指差した先のテントの壁代わりのシートには一本の横線が引いてあった。何回か引き直した跡があり、横線は随分と太いものとなっている。
「群れのみんなは成長しないリキを怖がって近寄りもしなくなり、リキは幽閉された。」
「で?アタシはあんたらを何から守ればいいのかわからないんだけど?まさか、前住んでた国から追っ手でも来てると?」
「きてないです。…貴方がたには壊してほしい国があるんです。そう、この遊牧民の国を……」
リキはベッドに姿勢良く座って呆けた顔したメリアとルイを見上げながら話を続けていく。
「確かに私はこの国の方々がとても良くしてくれて生き延びています。今もそうです。もちろん感謝してました。けど… この種族は生きてちゃいけないんです。生かしておけないんです。どうか形も残らぬようにしてください。」
浅い青の瞳に見つめられて、怖いもの無しだったメリアの背筋に何か冷たいものが走った。

2004/07/22(Thu)17:02:34 公開 / 鈴乃
■この作品の著作権は鈴乃さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
夏休みなので、再びお邪魔させてもらいました;;
今回は短編で仕上げる予定…ですが先がまったくわからない;;(作者がこれで良いのか?
悪いトコをバリバリ教えてください♪てか、悪すぎてモノも言えないよなんて見捨てないでほしいです;;
読んでくださった方々、途中で旅だった方々 感謝ですw
平日毎日少しずつ更新する予定です;;次回も読んでくれることを祈ります〜;;(ぇ
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