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『倖せの鐘。』 作者:姫乃 / 未分類 未分類
全角2790.5文字
容量5581 bytes
原稿用紙約11.2枚
倖せの鐘。

昔々、碧の国には少女がいました。

少女は、優しい人でした。

少女は、草木を愛しました。

少女は、人々を愛しました。

少女は、国を愛しました。

罪人までもを許し、愛しました。

ただ一つ、愛せなかったのは『自分のココロ』

そして今、少女は碧の国にいます。

少女は、与えられた使命を果たすため、碧の国にいます。

それは、とてもとても重いモノです。

少女は、歩き出しました。

背負うことを決めたのです。愛することを決めたのです。

少女はいつまでも、碧の国にいます。










倖せの鐘。

*空の碧*

「ねえ、この空、キレイじゃない?」
彼女は言った。芹沢未来は黙って空を見上げた。
碧が、一面に広がる。自由に鳥がはばたくセカイ。
「そうかもね。」
私の方を向いて、彼女は無邪気に笑った。
「もう少しで、卒業だね。」
「そうね。」
私はたいして興味もなさそうに言った。
「未来ちゃん、私達ずーっと友達でいれるよね?」
私は正直、呆れた。

―――友達?くだらない。

―――あんたが独りで鳴いていたから与えただけ。

―――枯れかけた花に、水をやっただけ。

―――友情じゃなくて憐憫。友達?くだらない。

「無理じゃない?」
私は言った。
「そうかなあ。」
彼女はちょっと困ったように首を傾げた。
私はそれ以上何も言わなかった。


しとしと しとしと


その日は雨が降っていた。
ざわめく教室の片隅で、私は一人、もう必要のない参考書の文字を追っていた。
教室に先生が入ってきた。まだ雨も教室のざわめきも止まない。
「突然だが昨日、日下部が亡くなった。」


しん。

あれだけ喧しかった教室が一気に静まり返った。

しとしと しとしと

教室の中では、雨が降り込んでいるわけでもないのに沢山の、たくさんの綺麗な水が滴り落ちた。
未来の中にも 波紋が 広がった。
でもそれは、笑ってしまうぐらい唐突なことで、衝撃的なことだった、でも、なぜだか哀しくなかった。
ただ、パズルのピースが一つ知らぬ間に抜け落ちたような。私は呆然としてしまった。
クラスメイトの声。
悲しい、哀しいとその音が私のココロに反響していた。

―――喧しい。

私は独り、『哀しい』の声から逃げた。
それは本音だったのだろうか?
私も、『哀しい』から逃げるほど辛かったのではないのか?
彼女は、私の何だったのだろう。
クラスメイト?知り合い?それとも

友達、だったのか?

日下部美咲とは三年で偶然同じクラスになった。
私は彼女の斜め後ろの席にいた。
彼女は休み時間も、騒ぎ立てるクラスメイト達から遠ざかるように毎日毎日、本ばかりを読んでいた。
当時の彼女のあだ名は『本の虫』。
考えたのはクラスのリーダー的存在でお調子者の男子だった。
彼女は毎日のように、笑っていた。
彼女の笑顔はとても綺麗だった。
それが第一印象だった。


「ねえ、一緒にお昼しない?」
憐憫からかけた言葉だった。
彼女はいつも独りだった。
私も人のことは言えなかったが。
私は綺麗に笑う彼女に、哀れみをかけたのだ。
その時から私と彼女は『友達』だったのだろうか?


夕暮れが背中を照らした。
下校途中の小学生の声が妙に喧しく聞こえた。
猫ののんびりとした声が私の何かを吸い取っているような気がした。

その時だった。

バサアッ!!

何もいないのに、それなのに、

鳥の羽音が聞こえた。耳鳴りが続く。

酷い寒気がした。

体が凍り付いた。

「あーあ、疲れたカオしてるねェ。」
「・・・!」
見知らぬ少女がいた。傍らには不似合いな真っ黒の兎のぬいぐるみを置いていた。
直後、耳鳴りが消えた。

―――誰?

「ん、アタシのこと?」
「!」
「なんでって?」
少女はイタズラっぽく笑った。
「な、何なの・・」
「アタシの名前はベル。」
「何者?」
少女はニッと笑った。直後その眼差しは真剣なモノへと変わった。
「初めまして愚かな人間さん。アタシは管理人bO017、人間界担当者、魔女のベル。」
私は正直、少女の言葉が理解できなかった。
「ベルって呼んでね。よろしく。」
「・・・。」
「そんなに怯えなくても良いよ。アタシは彼方に呼ばれたのだから。」
「私あんたなんて知らない・・」
「当然よ。今日初めて会ったもの。」
少女は淡々と言った。確かに当然のことだった。
「ベル、『管理人』を知っている人間は少ないと聞いている。」
どこからか、声が聞こえた。別の声。冷たく感情のこもっていない声だった。 
「うん、分かってる。」
少女は少し寂しそうに言った。
「さて、そこの人間。」
少女の傍らにいた兎のぬいぐるみがもぞもぞと動いた。

―――珍しいぬいぐるみだ。喋った。

少女がコロコロ笑った。
「ただのぬいぐるみが、喋ると思う?」
「・・?」
「ベル、時間がない。」
いきなり声が二人の会話を遮った。
「うん。」
少女の声、トーンが低くなった。

スッ

少女の白い指が未来の額をトンと突いた。
酷く冷たい手だった。
「がんばって、ね。」
それだけ言うと少女は霞のように消えた。兎のぬいぐるみも一緒に。
「・・何だったの?」

―――夢?まさかね。

未来は小さくため息を一つ。進路を変えようと振り返った。

――未来ちゃん――

「!!」

哀しそうな、澄んだ声。

――未来ちゃん――

彼女がいた。綺麗な笑顔の、彼女が
「ど うして ?」
熱いモノが胸に込み上がってくるのが分かった。
「未来ちゃん、私のコト、視える? 私の声、聴こえる?」
綺麗な、水が、私の頬をつたった。あの時のクラスメイトと同じだ。
「未来ちゃん、私、死んじゃった。」
「知ってるわよ・・馬鹿」
彼女は綺麗に笑った。私の中では、やるせない気持ちが渦を巻いていた。
「えへへ、未来ちゃんが泣くトコ見たの初めて。なんか嬉しいな」
「やな女ね・・あんたは・・」
精一杯の皮肉のつもりだった。
「美咲、私、あんたにずっと友達でいてもらえるか・・不安だった。」

与えてくれたのは、彼女だった。

クラスメイト達の涙を見て、分かった。

独りで鳴いていたのは、枯れかけていたのは、

私だ。

彼女は私に水と、居場所を与えてくれた。

今度は、私の番。

「美咲」
私は、前を向いた。
彼女は黙ってやわらかな笑みを浮かべている。
「私達、どんなに離れていても、たとえそれが天国とココでも、ずーっと友達でいられるよね?」
これが最後の言葉だと分かっていた。だから、だから私は

下手くそな言葉だけど。不器用な笑顔だけど。

私の友達に、捧げたい。

そして彼女も、
「うんっ」
これがきっと、彼女の精一杯。



「ベル、終わったみたいだ。」
「うん。ヒカリが見えた。良かった、ちゃんと逝けたんだね。」
兎のぬいぐるみは横目で少女を見た。
「お前は何故人間などに関わる」
「んー、そうだなぁ。」
少女は少し、考えた。
「なんとなく、だよ。」
空は、今日も碧。

2004/04/27(Tue)16:20:25 公開 / 姫乃
■この作品の著作権は姫乃さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
倖せの鐘。
*姫乃の欲張り日記*

えーと、前回に引き続き、一章です。
前回はたくさんの方々にコメント&アドバイスいただきまして、うれしい限りです。
ただ、やっぱり短かったりその他諸々な面で皆様に不快を与えてしまいました。ごめんなさい。
えと、まだ駄目駄目な面もたくさんあると思いますが、前回と同じく少しでも面白いと感じてくださいましたならば笑ってください。
んでもってお時間に余裕のある方はコメント等、いただけると嬉しいです。
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