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『殺人ウイルス   序曲〜第壱曲』 作者:シイナ / 未分類 未分類
全角5541文字
容量11082 bytes
原稿用紙約18.25枚

こんな筈では無かった

自分は普通に学校で生活をしていた筈だった


目の前にいきなり広がった暗闇に止まった時計

教室にいる筈だったクラスメイトは一瞬で消える


廊下を彷徨う得体の知れない物体

……見付かってはいけない



必 ず 殺 さ れ る 



――――――――――――――――――――――



序曲 始まりの合図


それは、先程聞いた誰のものかも分からない引き裂く様な叫び声で確信に至った。
緊張から落ちる汗。整理の追いつかない頭の中で確実に分かることは、
――此処は危険だ。
ということ。体のヒシヒシで感じる恐怖。きっと学校の外に出れば助かる。外なら人も何処かにいる筈だ。きっと……助かる。

導くように廊下へと繋がる鍵の開いたドア。決して気を許してはいけない。まだ少し震える足に力を入れて、立ち上がった。
「……とりあえず外に出なきゃな」
誰もいない薄暗い教室で一人呟いた。小さく吐き出した声は、誰にも聞こえることもなく、無機質な教室に溶けていく。
黒いクレヨンで塗りつぶされたような外を眺めながら、現状に追いつかない頭を落ち着かせるように色々考えてみた。どうしてこんなことになったのか。これからどうするべきなのか。
体中の神経が敏感になり、小さな物音にも反応する。
記憶の糸を辿って、過去を振り返ってみた。


『ねー、あずさぁー。今日さ、天気悪いね』
梓っていうのは俺のこと。休み時間に、窓の外を見ながら幼馴染の西田鈴(にしだ すず)は言った。十八歳だというのに幼さの残った顔は、まるで中学生のような雰囲気を醸し出していた。
『あ、傘も持って来てないや』
俺は視線の先を追いつつ返事を返す。
『あいあい傘して帰ろっか!』
『お断り。そんなのした次の日には噂になるだろ』
『ショックー! 振られちゃったー!』
鈴はわざとらしくしゅんと項垂れる。そんな姿も、別にいつものことだから気にも留めないで話題を変える。
『雷鳴りそう。……最悪』
『梓ったら男の子なのに雷怖いの?』
『死ねば』
ニヤニヤ笑う鈴を一目見て、再び外を眺めた。
窓の外は大雨で、ザーザーという雨音は教室にまで大きく響いた。空は昼だというのに真っ暗で、普段は外に遊びに行くクラスメイトも今日は教室の中に居た。

『ねぇ、知ってる?』
煩い教室の中の何処かで、誰だか分からない女子の話す内容が耳についた。
『何を?』
『この辺で言われてる言い伝え!』
『あんたバカでしょ? 今時言い伝えなんて信じてるわけ?』
そんな笑い声がいくつにも交わった。たいして興味もない会話を、第三者として聞いていた。
『でも、何か……こんな天気だと、それ思い出すからさ』
『で、その言い伝えとやらは何なのよ?』
鈴が何か話しかけていたが、興味もないし曖昧な返事を返した。
ゴゴ・・・と、雷の音が聞こえた気がする。

『いや、私も良くわかんないんだけど・・・』

空が金色に光って。

『なんでもさ・・・』

思わず目を瞑った。


その瞬間、雷の落ちる音が耳の奥にまで響いた。
直後、一切の音が聞こえなくなり、目を開けると今の暗闇が広がったのだ。
誰一人として、教室には人影が無かった。さっきまで自分に話しかけていた鈴も、騒いでいたクラスメイトも、誰一人。
何が起こったか分からない。シンとした教室はあまりにも冷たくて、いっそのこと、そこから逃げ出したかった。

外は今まで通りの雨が降り続いてて、それが何だか凄く不気味に感じる。何が何だか訳が分からなくて、慌てて廊下に出ようとした。
だが、其処には……『何か』が居た。
廊下に続くドアに付いているガラス窓。廊下には明らかに、目を疑うものが居た。真っ黒の闇を身に纏う、人のような姿の者。
黒いレインコートのフードが顔を隠して、誰だか分からなかったけど、人間だということが確信できた。
――知り合いか?
しかし、その思いは直ぐに断ち切られる。

そいつの片手は何かを掴んでいた。何かを引きずり、廊下を歩いていた。その引きずり後には、真っ赤な血がズルズルとこびり付く。俺は、そいつが死体を引きずっているんだと一瞬で悟った。

まるで、テレビ番組やゲームの様。創造世界で作られる番組では、良くこのような恐い話がテーマになったりするから。こんな残酷なテーマが。
『……ッ!?』
思わず声を出しそうになったが、意識的に声を殺した。人間の本能が叫んでいた。
――今見つかったら、絶対殺される。
そいつは気付くことなく、人形になった物を連れて何処かへ消えて行った。足音が遠くなるにつれて、廊下には人気は無くなっていた。殺人の一言では済まされないような気がする。殺人にしては、この暗闇は明らかにおかしい。
そして、誰かの叫び声。
それは、目の前で、誰かが死体を引きずりながら歩いていた時だったから。
ここには、少なくとも……殺人鬼が二人以上居ることになる。
そして、二人以上の犠牲者が出た事も確かだろう。それが万一クラスメイトだと思うと恐怖と怒りで体の震えが止まらなかった。


そこまで思い返して一度深呼吸をした。少し冷静になって、次はこれからのことを考えてみる。
「とにかく二階の窓からでも脱出して……」
生憎此処は四階の教室だ。窓から飛び降りれば怪我するだけじゃ済まないと悟り、二階に行くことを決心する。
「あ。鈴……」
無意識に呟いたのは幼馴染の名前。きっと学校にいる筈で。
鈴は俺にとって妹みたいな存在。当然置き去りには出来ない。
探すべきか? 当然校舎内をうろうろすると、危険を犯すことに繋がる。それは百も承知のことだ。
「どっちみち、此処からは出ないとイケナイってことだし……」
喉が酷く渇く。冷や汗は、じっとりと額や背中を濡らしていく。目をもう一度ゆっくり瞑る。目を開けても目を閉じても、そこには同じ様な闇しか広がらない。現実を捉える事ができないけど、これは夢でもなんでもない。
「とりあえず鈴を探すこと前提で、」
ユメでもない、現実。恐怖で体はいっぱいで。死と隣り合わせの現状は、平和ボケした俺には実に滑稽で。
「逃げ切れば良いってことだね」
今は前に進むことしか出来ない。だから胸に誓う。「絶対に、生きて帰る」と。

頬を伝う汗を手の甲で拭って、目をしっかりと見開いた。廊下に続くドアを、音を立てないようにゆっくりと開ける。普段は気にしない小さい音が、学校中に響くような錯覚に陥った。心臓の音までも、耳に聞こえてくるような奇妙な感覚。
梓は、自分の体が通れるほどの広さまでドアを横に引く。震える腕を何回も抑えて、長く暗い廊下に足を踏み入れた。
そこには、希望通り、誰も居なかった。だが、廊下には引きずられた血痕は確かに残っている。その生々しさに、吐き気を覚えた。鉄錆び臭い匂いを鼻で感じ、声を喉の奥で詰まらせた。

廊下から隣の教室を覗いた。
――ハズレ……?
教室には、無機質な机が規則的に並べられているだけで、人の気配は感じられない。
手を強く握り締め、ゆっくりと隣の教室のドアを開く。足を踏み入れ、床が軋む音に注意しながら中へと進んだ。
「鈴、いる……?」
そう小さく囁いても反応は無かった。シーンとした空間が物語っている。
――やっぱりハズレか。
そう思い、踵を返してドアに手を掛ける。

瞬間。ヒヤリとした鋭利な物が首筋に当たった。ゾクっと一瞬震えて、全ての思考は凍てついた。空気がやたら重い。後ろに人の気配がする。
汗が一筋伝った。今、唯一分かることは……
「動いたら……殺す」
絶体絶命のピンチってことくらいだ。



―――――――――――――――――――


第壱話 死神

首に当てられたナイフの冷たさに比例して、ドクンドクンと胸の鼓動が序所に早くなっていく。頭の中は「ヤバイ」という三文字でいっぱいになる。
「正直に答えなさい。『今飛ばされて来た』の?」
「はァ?!」
飛ばされて来たってどういうことだろう。訳分からないことに答えろっていうほうが無理だ。大体、どうしてこんな状況になったのかもわからない。
「……わけ分かんねェんだけど」
「……」
「……」
「……」
すっ……と首筋に当てられたナイフが下げられた。振り返ると長い髪の華奢な女が立っている。吊り眉が勝気感を出していて、鈴と反対の雰囲気だな、とかどうでも良いことを考えた。
「……ッ」
助かった? いや、元々殺そうとしてなかったのかもしれない。もしも殺人鬼だとしたら一発で殺ってるだろうから。それじゃあ、何者? 自問自答しても答えは出ぬままで、沈黙だけが俺を苛立たせる。
「……てか答えろよ」
「静かにして」
彼女は神妙な顔をして黙り込む。その姿は、何かに集中しているようにも思えた。元々小さな声で話していたが、流石に両方黙り込むと、恐ろしいほどにシンとなる。
――カツン。ズルズル……ピチャン……カツッカツッ。
一瞬で悟った。 ……何かが、来る。
引き摺る音と水音、イコールあの殺人鬼ってとこが妥当な線だろう。緊張の糸が張り詰め、顔が強張る。彼女は来るのが分かっていたように窓から見えないように伏せていた。慌てて伏せ、通り過ぎるのを待つ。
――カツン。カツン。ズルズル……。
段々足音近づいてくるにつれて彼女の表情は険しくなり、自分の握っている拳も硬くなるのが分かった。
――……カツン。
足音が、丁度自分達のいる教室の前止まる。心臓の音は尋常でないくらい早く鳴り、冷や汗はべったりと体に張り付いていた。
「……チッ!」
彼女は一度舌打ちをすると、手に拳銃を構える。カチャリ……安全装置を外す音が響いた。
その瞬間、教室のドアがいきなり蹴破られる。派手な音を立てて倒れたドアからは、黒いシルエットだけ。顔はレインコートで隠れて見えない。こびり付いている血の匂いと、鋭利な鎌。
吐 き 気 が す る 。
鋭い鎌は、教室の中に明かりが無くても、人を殺す道具に十分だという事が伝わってくる位大きい。黒いレインコートも、暗闇に溶け込む様に、足元まで裾が届く物だった。「死神」という言葉が頭を過ぎった。
目の前の恐怖に動く事が出来ない。足を一歩でも動かさなくては。
だが、金縛りにあった様に動いてはくれない。指一本でも、指先を少し動かす位でも。言い知れない恐怖。

此れが夢だと願いたくても、今はそんな悠長な事は言っていられないだろう。血の臭いも、体の震えも、目の前の光景も……。

――こんなにも、リアルだ。

早く……早く逃げなくては。
そんなこと、頭では理解している。
しかし、その意思とは正反対の、正直な自分の体。足が震えて、相手を只見据える事しか不可能で。つくづく、何て自分は弱いのだろうと、厭でもそう実感してしまう。

クスクスクスクス。

黒いレインコートの下から聞こえる、静かな笑い声。変声機で変えたような、不気味な含み笑い。初めて聞く相手の声に耳を塞ぎ込みたかった。同時に、酷い恐怖がその場を包む。よく見ると殺人鬼の鎌からは真っ赤な血が滴っていて、ポタリポタリと音を立てて床に零れる血の音は、鮮明にこの場の絶命的な雰囲気を悟らせた。

クスクスクスクス。

その瞬間、殺人鬼は鎌を振り上げて、物凄い速さで襲い掛かってきた。
「……ッ!!」
相手の行動に叫び声すらあげれなかった。今まで味わったことの無いような殺される瞬間の本当の恐怖。こんな呆気なく死ぬのかと目を瞑り、諦めかけた、その瞬間。
――パァン。
と、乾いた音だけが響いた。
ハッと金縛りが解けたように、体が自由になった。見ると、女の撃った弾が見事に殺人鬼の効き腕に命中したみたいで、鎌を落としてその場に倒れ込む。しかし、それだけでは殺人鬼は許してはくれなく、すぐに立ち上がろうとしていた。
「何してんのよ! 早く逃げて!」
――ザッッ!!
そんな音が聞こえた瞬間、自分の顔に掛かる温かい鮮血。何が起きたのか理解出来なかった。
「うぁあ……ッ!!」
彼女は力なくその場にへたり込んだ。

クスクスクスクス。

相手の鎌からは新しい血が滴り落ちる。ポタリ、ポタリ、と。彼女の腕からは大量の出血。
「なんで……」
明らかに斬りつけられた彼女の腕。大きな傷がパックリ口を開けていた。
彼女の犯した間違いは、
「なんで助けようとしたんだよ……!! 俺のことなんて放っておけば良いだろ!」
俺を逃がそうとした一瞬の隙。
「……っバァカ。アンタだって……あたしのことなんて放って逃げりゃ良かったじゃん」
振り絞った様に出した彼女の声。心が締め付けられるような感覚に陥った。
「俺のせいで、ゴメン……ゴメン……」
「早く逃げなよ。生きたいんでしょ? ……っ早く逃げて!!」
名前も知らない奴なのに、如何して助けるのか、俺には分からない。見ず知らずの他人を助けるなんて、俺には出来ない。

「イツマデソウシテルツモリ?」

気味の悪い声。レインコートのフードの中は、奇妙な仮面だった。
瞬間、体に襲う鈍い衝撃。気付くと床に押し付けられていて、首には鎌が押し付けられていた。
冷や汗が頬を伝って流れる。
「コワイカ」
どんな抵抗も多分無に等しい。コイツが少しでも鎌を動かせば、自分の首は飛ぶから。鎌から錆び付いた鉄のような血の匂いが鼻を掠める。
「……怖いに決まってんじゃん」
馬鹿にしたような薄ら笑いを浮かべてやる。
死にたくない。殺されたくない。思い知るのは、こんなにも無力だったこと。何も出来ない。
――結局……誰も守れない?
「ソイツ放しなよ! あたしを先に殺せば良いでしょ!」

クスクスクスクス。

聞き取れないほどのか細い声、だけど俺にははっきり聞こえた。
「……カズを、離してよ……!!」
一瞬、彼女の目から涙が流れたような気がした。




続く→
2004/04/14(Wed)03:05:47 公開 / シイナ
■この作品の著作権はシイナさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
今晩和、シイナです。新キャラは女の子でした。しかも即行主人公やられちゃってます(笑)『カズ』と女の子に何か関係がありだと思います。

東堂 梓>少々口の悪しで、性格に難有り。目つきが悪い。動物に例えるなら猫。彼は結構冷静なほうだけど、本編で実力は未だ見えない(笑)
西田 鈴>小柄な童顔少女。性格は純情純粋系。梓の幼馴染。動物に例えるならウサギ。出現率少なし。

まだまだ話が見えませんが、お付き合いして下さると嬉しいです!
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