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『Winter Vacation』 作者:turugi / 未分類 未分類
全角1450文字
容量2900 bytes
原稿用紙約6.25枚
ある日俺はMailをしていた。

ずっと好きだった子といつものように、自分の気持ちをほのめかしながら。

以前に一度振られてから、その日以来Mailで好きだという言葉を頻繁に使うようになっていた。

一度気持ちがばれてしまったら、もう怖いものなしといった感じだ。




その日の俺は久しぶりにその子とMailをしていた。

明日は冬休み最後の日、どうしてもその子と過ごしたかった俺は「次の日遊ぼう」とMailをだした。

それから一時間ほどが過ぎ、ようやく彼女から返事が届いた。


それは一つの動画だった。

時計の針が動いて止まる。

ただそれだけの動画だった。

あぁ、また断られた・・・

俺はそんな気持ちと共に、その日Mailを終わらせた。


それから2日後、俺は朝早く下駄箱の前で立っていた。

することのなかった俺は、彼女とのMailを読み直していた。

そしてすぐにあの動画の部分まで読み終える。

時計の針が2時45分で止まったあの画像。

俺はその画像の下にスペースがあることに気がついた。

何気なくそのスペースへと指を動かすとそこには一言、


『クリスマスの日のあの場所で』


その一言で全てが分かった。

あの場所とはどこなのか。

返事の意味は何だったのか。

俺は何という過ちを犯してしまったのかを・・・

自分の犯した過ちに混乱し、頭がうまく回らない中ただ一つ、


『会いたい、会って誤らないと』


ただそれだけが頭の中に浮かんできた。

気付けば彼女が登校してきている。

近づく俺に気付いた彼女が顔を上げ、

泣いた。

初めてみる彼女の泣き顔に凍りつく俺。

その横を足早に去っていく彼女。

あぁ、俺は何て事をしてしまったんだ。

彼女を傷つけるなんて。

何よりも大切な彼女を・・・


気付くと俺は走っていた。

必死になって彼女を追っていた。

とにかく謝りたい。

他に何も考えられず、謝りたい、ただ謝りたい・・・

その一心で俺は走った。

前の彼女も走っている。

俺から逃げているということがどうしようもなく胸を痛めた。

何度も手が宙を欠き、3度目か4度目で手を掴むことが出来た。

振り返る彼女はやはり泣いていた。

涙を流しながら俺のことを見つめていた。

それだけで俺は何も言えなくなる・・・

後悔に染まった俺の視線と、涙に濡れた彼女の視線、無言のまま見つめ合う。

荒れた二人の呼吸だけが音として聞こえてくる。

そんな中耐え切れなくなった俺は目を逸らそうとしたその時、彼女が口を開いた。

「私は―――」









気がつくと俺は布団の中に居た。

視界は闇。

どうやら夢を見ていたようだ。

やけにリアルな夢だった。

例え夢の中でも彼女を傷つけてしまったことを悔やむ。

なぜ俺はあんな間違いを・・・

なぜ夢の中の俺はあんな間違いを・・・?

・・・・・なぜ


そんなことを考えているうちに一つの考えにたどり着いた。

最近は毎日のように彼女にMailを送る俺。

なんの気なしに気持ちをほのめかし、一緒に遊ぼうと誘っていた。


その台詞。

誘う時の言葉、気持ちをのせたMailでの言葉が、最近毎日送るあまりに事務的になっていないだろうかと。

だから夢の中の俺はあんな過ちを犯してしまったのではないだろうか。

そう考えると、とてつもなく自分が許せなかった。

Mailでしか想いを告げられず、それを事務的にこなす自分が許せなかった。






だから明日は自分で言おう。


告げる言葉に変わりは無いが、少なくともこの口で。


夢の中のような後悔を残さぬ為に。







明日は冬休み最後の日
2004/03/02(Tue)23:24:33 公開 / turugi
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