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『冬の花』 作者:水野理瀬 / 未分類 未分類
全角3047文字
容量6094 bytes
原稿用紙約11.1枚
 腰まで伸ばした黒い髪を頭のてっぺんで一つに結ぶ。
この髪型にすると身が引き締まる。何たって、今日は決戦の日なのだ。気合を入れないと!
 私は子供の頃から髪を伸ばしてきた。小さい時に、「女は髪が綺麗じゃないとな」と誰さんに言われてから髪の扱いには気を付けてきたのだ。

 白石佳代は鏡に向かってニカッと笑うと急いで部屋を飛び出した。
「おかーさんいってきます!」
玄関を出ると幼馴染の高野秋人が歩いているのが見えた。
佳代は走って駆け寄ると秋人の肩を、ぽんっと叩く。
「おはよう!アキ」
鏡の前で練習したスペシャル笑顔を秋人に向ける。
「おはよー、朝っぱらから元気だなぁーお前は」
「へへ、だって今日は・・・・」
「え!? 今日は?」
「ううん!! ナンデもないよ!」

 今日こそ秋人との関係を『幼馴染』から『恋人』に進展させるのだ!
と、強く佳代は誓っていた。
高校も同じ学校になれたし、秋人が誰かの『彼氏』になる前に自分から気持ちを伝えなくちゃいけない。
 秋人はそんな佳代の心情は知ってか知らずか、さっきから上の空の状態である。
「アキ、どうしたの? さっきからぼーっとしちゃって」
つまんないじゃん。アキがこっち向いて話してくれないと
佳代は心の中で呟いた。
「んー・・・、ちょっとね。それより寒いな。早く春来ないかなぁー」
「でも良い方じゃない。雪降ってないし」
「それもそうだな」
どうも会話が続かないので、佳代は不安になった。
 どうやって切り出そう? やっぱり、率直に「好き」って言うべき? 改まって言うのも変だろうし。あぁ!! いつもこんな事を考えてるから、いつまで経っても告白ができないのよ! 前もって考えておくべきだった! 
 実際、佳代は『告白をしよう!』と決意してから数週間が経っていた。いつも考えが煮詰まってしまい、あっという間に校門に着いてしまうのだ。二人っきりになれる状態が、朝に一緒に登校する時しかないのでチャンスは今しかない。
 どうしよう! 校門が見えてきた。いっきに緊張が襲ってくる。心臓がバクバク鳴ってきた。
「佳代、 どうしたん? 震えてるよ。具合悪いの?」
心配顔の秋人が顔を覗きこむ。
「ぅ・・・・。」
秋人の顔が近くにあるので、一層身体が緊張で強張り、佳代はその場から動けなくなってしまった。
 身体が熱い。頬が熱い。頭がぐらぐらする。動機も激しくなってきた。顔から火が出そうってこうゆうことを言うんだ。
朦朧とする意識の中、佳代はそんな事を考えていた。だが、すぐに佳代の目の前は真っ暗なり、佳代自身の意識がシャットダウンされたのは言うまでもない。



 冷たくて気持ちいー・・・・ こんなに心地が良いのは久しぶりだ。
ゆっくりと、佳代の意識は戻ってきた。
「んっー・・・・・冷たい・・・」
寝ぼけ眼で佳代が言うと、上から声が降ってきた。
「ごめん! 冷たかった!?」
佳代のおでこにあった冷たいものがなくなってしまった。
「んー・・・・・?」
はっと目が覚め、佳代は今、自分が置かれている状況を察知できなかった。唯一、今いる場所が保健室だというのは分かったが。
「ぇ・・・!? なんでここにいるの?」
心配顔の秋人が佳代の顔を見る。
「お前、急に立ち止まったかと思ったら、ぶっ倒れたんだぜ。マジ、びびったよ。」
「た、倒れた?」
記憶を辿ってみる。
「あぁ!! 私、倒れたんだ!!」
「馬鹿! 大人しくしてろよ。さっき、保健室のせんせーが診たけど貧血だってさ。安静にしてるようにだと」
「今、先生はいないの?」
「あぁ。佳代が起きるまでずぅっと俺が見ててやったんだ。有難く思え」
「ちょーさんきゅー」
「なっ! お前、なんだよ。その御礼の言い方は! 調子に乗るなよ」
秋人がそう言うと、佳代のおでこに思いっきりデコピンを食らわせた。
「いったぁー!! 最低アキって。私だって一応オンナノコなんだよぉ!」
ジンジンと痛むおでこを抑えつつ佳代が訴える。
「・・・・・悪かったよ。ごめん」
「ぇ・・・・」
あまりにも素直な返答に拍子抜けしてしまった。
暫く沈黙が続き、妙に意識してしまう。佳代は心を落ち着かせようと話し始めた。
「ね、ねぇ! 誰が保健室まで運んできたの?」
「んー・・・俺?」
「え」
「俺が運んできた」
「マジ?」
「マジ」
恥ずかしさのあまり、頬が急速に熱くなるのを感じた。
 今の私、すごい、林檎みたいに赤いんだろうな・・・・・。ダメだ。アキの顔、見れない。恥ずかしいよー!!
「あのさ」
「え!?」
「佳代、今日お前の誕生日デショ?」
誕生日・・・・っあ!! 忘れてた! ここんとこ、アキの事ばっかり考えてたから・・・。私って、ホント馬鹿だなぁー・・・。
「すっかり、忘れてたよ。」
「ははは、お前大丈夫かぁ〜? 普通、忘れないだろ」
「へへ・・・・まぁ、色々あってね」
「プレゼントあげよっか?」
「えー!? アキがぁ〜? あんた去年、私が嫌いな椎茸をクッキーに混ぜたやつよこしたわよね? 『手作りだから♪』とか何とか言っちゃってさ、もぅ!」
去年の屈辱が甦ってくる。だが、佳代はその椎茸クッキーを一つも残さず食べたのだった。なんたって、秋人の手作りなのである。残すわけにはいかない。味がとてつもなくグロテスクに感じても。
「去年の事はいいだろ〜! 欲しくないのかよ!」
「嘘!! マジ、欲しい!!」
その言葉を聞くと、秋人はポケットの中に手を突っ込んで白い紙に包まれた物を取り出した。
「なに? ソレ・・・・」
白い紙に包まれたそれを、秋人から受け取り、丁寧に中を広げる。
「ぁ・・・・・」
それは、綺麗な赤い色をした髪飾りだった。花の模様が刻まれている。
「変? 俺、よくわかんないから。そおゆうの、さ」
「ううん、すごい、キレイ。ありがとう、アキ。嬉しい」
「そっかぁー!よかった、よかった」
秋人が嬉しそうに笑った。その笑顔がとてつもなく可愛く見えた。
 『可愛い』なんて言ったら、アキ、怒るもんね。
再び沈黙が続く。でも、佳代はさっきより鼓動が落ち着いているのを感じる事ができた。
「好き」
気づいた時には既に遅かった。佳代は無意識のうちに『愛の告白』とゆうものをしてしまったのだ。
「え?」
こうなったら全部、言ってやろう!
「好きなの。アキの事が! 何回も言わせないで!!!!!」
「え!?」
みるみるうちに秋人の頬が赤く染まっていく。
「どうしたの? アキ、顔がまっかっかー!! 熱でもあるの?」
「・・・・うん」
「まじ!? どーすんのよ! 保健室の先生、呼ばなくちゃじゃない!」
ベットから出ようと布団をはぐると、秋人が佳代の腕を掴んだ。
「そーじゃなくて!! 俺も好きだってば!」
「ぇ・・・・」
二人して顔を林檎のように真っ赤にする。
 保健室の窓の向こうでは、ふわふわと雪が落ちていった。
 


 髪を頭のてっぺんに集めて、あの赤い髪飾りできっちりとめる。
鏡の前でニカッと笑おうとしたが、どうにも上手くいかず、照れ笑いのようになった。
「いってきまーす!」
玄関を出ると、秋人が待っていた。
「おはよ」
「おう。」
佳代が軽く咳払いしてからその場をくるりと回る。それにつられてポニーテールの髪も揺れた。
「似合ってんじゃん」
「へへ、まぁーね」
「やっぱ、俺のセンスは間違ってなかったな。うん」
一人で頷く秋人。
「誰かさんが言うからここまで髪を伸ばしたんだからね。髪の手入れも結構、大変なんだから」
「えー? 何の事かなぁ〜?」
「もー!」
二人は肩を並べて歩き出した。
       






2004/02/25(Wed)12:23:06 公開 / 水野理瀬
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■作者からのメッセージ
読み切りを書きました。なかなか読み切りも、まとめるのが難しかったんですが、読んで下さったら嬉しいです。
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