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『暁ノ向日葵。【プロローグ〜第1話】』 作者:木下日丸 / 未分類 未分類
全角3468.5文字
容量6937 bytes
原稿用紙約25枚




幾夜も幾夜も





赤く濡らした枕。





全ての要因は





遥か昔、何億年も前にさかのぼる─────









カナシクタタズム ヒトミノオク




ナンオクネンモノ ハルカムカシ




アダム ト イブ




フタリノインガ ガ ネムルバショ────・・・
































少し難しい話になるけれど。





















理由はまだ、わからない。今はまだ。





だけど、アダムは凄く怒っていて、“エデンの園”から、妻イブを追い出したんだ。





─アダム!行かないで!!─





夜、真夜中だったから、帰り道が分からなくて。





イブはその場で狂ったように泣き始めたんだ。





─アダム・・・・アダム・・・・!!─





そのイブの涙から生まれたのが、百合の花(リリィ)─────





たくさん、たくさん。





イブはたくさん泣いたから、涙の数だけ地には百合の花が咲いた。





涙がしみこむ・・・・と同時に生まれる百合の花。





ふと気付けばそこは一面の百合花畑。























イブはたくさん百合の花の子孫(たね)を、その場に植えつけた。





そして、向日葵の花。





向日葵の花も、たくさんの種(しそん)を残す事は、皆分かるはず。




イブの残した多くの百合の花の子孫と、





夏が終わり、向日葵が残す数え切れないほどの種達。





数の多さがとても良く似ているから、この物語は、後にこう呼ばれる。
















─────暁ノ向日葵─────















この物語のせいで、今でも苦しんでいる人がいるんだ。





それは誰って?





物語の続き、開けば分かるよ。





──────嫌でもね。






開いて・・・・・みるかい?






















物語はまだ、始まらない。









【第1話】










────イブの魂は『サンフラワー向日葵)』の名の下に────















物心ついたとき


私の脳が記憶していたものはたった2つ


自分の名前、『リリィ・ブラッディー』と


それから



────私の任務



私に託された────いや、受け継がれた任務


それは







『サンフラワー』の息の根をとめること










イブの最後を看取った者として・・・・











百合の花が元服を迎える時







2つの花がとうとう出会う・・・・・・










・・・向日葵。・・・ #1










カラン・・・・

コップの中に沈む氷が崩れて、威勢のいい音を立てた。
町はずれのバーのカウンターに佇む、一人の女性。
漆黒の長いストレートの髪が、店内の中を吹き抜ける、
柔らかい風に美しくなびく。

(いよいよ今日・・・か。)

何か物思いにふけている様子で、不慣れな酒を
口に注ぐ作業に没頭している。
何故、あんなに悲しそうな横顔をしているのだろう?

大人しそうな雰囲気に似合わず、腰に下げている
赤い刃の短剣が目に付く。
柄の所の、赤いバラの刻印も洒落ている。


カタン


その女性の隣に、別の女性が腰を下ろそうとする。
金髪の、ショート。けれど、顔の横の部分だけ伸ばしている。

「隣、いーですかぁ?」

何か考え込んでいる様子にもお構いなく、
彼女は漆黒の髪の女性に尋ねた。

「どうぞ」

ニコッとした作り笑いで答える。
悲しそうな表情は、消えない。

「えーっとぉ・・・・オレンジジュー・・・・じゃなくて!
 グレープカクテルを一つ!!」

バーの店長、ひげを生やした太った男性に注文する、
金髪の女性。少し幼い顔だ。

「お姉ちゃん・・・・カクテルはアルコール入ってるから、
 元服(この世界では15歳を迎える事)してから
じゃないとダメだよ。」

男性が、優しい口調で言う。
すると予想外に、金髪の女性はニッと笑ってこう答えた。

「じ・つ・は!今日でげんぷく!!じゅうごさい☆」

「お〜そりゃめでたい!!それじゃあサービスしたげるぞ!!」

「やったぁ☆」

こんな会話を交わす二人の隣に座る、
先ほどの女性はこう言って話題に入ってきた。

「ちょっとそれは酷くないマスター。
私だって今日で元服なのに。」

「「え!!」」

そう言う漆黒の髪の女性の言葉に驚く二人。
どう見ても金髪と漆黒の髪の女性、同い年には見えない。
・・・・が、事実だ。

「おめでとぉー!!よぉし!じゃあ今日は二人で元服祝いだぁー!」

「おっちゃんもサービスするぞ!!」

「そうだね。」









カクテルを少し多めに注がれたコップを手に、
2人はしばらく初めての酒をたしなむ。

「う〜ん・・・・あたしはあんまり好きじゃないかも・・・」

顔をしかめて金髪の女性が言う。
そして、続ける。

「そだ!ねぇねぇ、どこからきたの?」

目をきらきらさせながら、漆黒の髪の女性に問う。
すると、質問された彼女は少し困った顔をして、言った。

「・・・・・・・・わからない」

「・・・・へ?あははっ、変わってるね!」

「・・・・・・・おかしいと思う?」

上目遣いに、今度は漆黒の髪の女性が問う。

「なんで?誰にだってわからない事くらいあるよ!
 出身地ってのは初耳だけど〜!!あははっ!」

「・・・・・けど、分かる事は・・・・あるよ」

悲しそうな表情が、更に増した。

「へぇ!なぁに?」

「・・・・・・・生まれてからずっと、
・・・・・一人で生きてきたって事・・・・」

「・・・・・・・・ふうん・・・・・」

少し不思議な顔をして、話を聞く金髪の女性。
しかし、直後、明るい声でこう言った。

「じゃあ、もう一人ぼっちは終わりだね!」

「・・・・え?」

「だって、あたしがいるじゃん!もう、一人ぼっちじゃないよ!!」
























その時───目頭が熱くなって、
『この人に出会えて良かった』って思った。
──────こんな気持ち初めてで、でも、本当の事で。










「・・・・・・そうだ!!名前聞いてなかったじゃん!!
 キミ名前は??」

「リリィ・ブラッディーだよ。」

「『リリィ』って、百合って意味だよねぇ?可愛い名前だねっ♪」

無邪気にそう言う女性。
喜ぶと思ったから、そう言ったのに、
リリィは少し薄れた悲しげな顔が、再び蘇った。

「そうでも・・・・・ないよ・・・・・」

蚊の鳴くような小さな声で、呟いたリリィ。
気を取り直して、反対に問う。

「貴方は?」

「あたしはね──────」


ドンドンドンドンッ


しかし金髪の女性の言葉は、4発の銃声によって遮られた。
その銃声と共に、体格のいい男性が乱暴に入ってくる。
店内がどよめく。

(まさかっ・・・・・)

心の中でそうリリィは呟き、腰にある短剣、『レッドローズ』に手をかける。











刹那、目にも留まらぬ速さで、リリィはしっかりとレッドローズを
拳銃をもつ男性の首へ当てていた。
そして、耳元でこう囁いた。

「・・・・お前が『サンフラワー』か・・・・・?」

あまりの速度に恐怖を覚えた男性は、体が小刻みに震えていた。

「さ・・・・サンフラワーだぁ・・・?向日葵って意味か・・・?
 ち、ちげぇよ・・・・お、俺はジィクだぜ・・・・・」

「ちっ・・・・」

リリィは小さく舌打ちする。
その音にあわせて、ジィクと名乗る男性の体がビクンッと動く。

「え?向日葵?」

唖然としてその光景を見ていた金髪の髪の女性は、
リリィに問う。

「うん・・・・向日葵・・・・」

リリィの脳裏に、ぞくっと計り知れない嫌な予感が過ぎる。
もしかして、という恐怖と不安。

「向日葵はね、あたしだよっ!あたしが向日葵!!」


















さっき、お互いの元服を祝った女性。
涙が出るほど、裏表のない、優しい言葉をかけてくれた女性。

リリィの任務、『サンフラワー』を殺す事。
百合が元服を迎える時、2人は出会う─────





そう































─────私はあの子を殺さなくちゃいけない─────
















イブの最後を





看取った





者として。














無意識にリリィの手から離れた『レッドローズ』の転がる音が、
沈黙の続く店内に響く、唯一の音源となった。





















・・・第二話へ続く・・・















2003/12/30(Tue)03:27:40 公開 / 木下日丸
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■この作品の著作権は木下日丸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして、木下日丸と申す者です!
私の駄サイトから引っぱり出して参りました。
とても素敵な小説掲示板ですね!

なんだか残酷なストーリー展開ですが(汗
どうか、寛大な方は、おつき合い下されば嬉しいですー^^
感想、ご指摘など、ございましたら書いていって下さると狂喜乱舞いたします(すな
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