『親知らず』作者:ラウンド ロビン / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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 物心がついた頃から猫背だった。親や学校の先生から何度も注意されたが、注意を受けた数分後には元に戻ってしまっていた。猫背だからといって勉強が出来なかったり、スポーツが駄目だったりすることはないので全く気にしなかったが、大学に入りバイトをするようになってから猫背は損だと気付いた。姿勢が悪いと大人は不真面目だと思うらしい。三度バイトを首になってから分かった。だから四度目からは姿勢を正して働く事にした。だが、どうも背に気を取られてしまい肝心の仕事が手につかなくなってしまった。そうして四つ目のバイト先も首になった。姿勢よりも仕事を見てくれよと思ったが、世の中マナーが一番と知っていたので反抗する気にはならなかった。人の元で働く限りはまず外見がしっかりしていないと駄目なのだ。能力は二の次……気に入らないが仕様が無い。

 そんな時テレビの情報番組で猫背の原因は歯並びにあると知った。自分自身では歯並びはそんなに悪くないと思っていたのだが、歯医者で診てもらった所、かなり悪いと言われた。何でも親知らずの生え方が異常だという事。是非抜いて矯正しなさいと歯医者はこちらの返事も待たないで市民病院の紹介状を千円で売りつけた。金銭には困ってないが、その医師の態度が偉そうで酷く腹が立った。だから帰りがけ駐車場に面した医院の壁に小便をしてやった。ざまあみろと思ったが歩行者の視線が当たる分こちらの方が損かもしれないと思った。

 翌日市民病院へ行った。市街にあるのに異常に古臭い建物で、出入りする者は老婆がほとんどだった。中も薄暗く、夜になったら幽霊でも出そうな怖さがあった。病院はサービス面に無頓着だと聞いていたが、成る程その通りだと思った。外見もそうなら、受付の態度も愈々悪かった。こちらが紹介状を見せれば、「口腔外科ですね、左の廊下をダーっと行って、左手二つ目を曲がってダーっと行って突き当たった所を……」と早口にまくし立てる。そんなに一辺に言われて覚えられる物かと思いながら、聞き返すのも癪だから、迷うなら迷えば良いと覚えてる内容だけで歩いた。廊下に地図板が立て掛けてあったから辿り着くことが出来たが、あの受付嬢の不親切は決して忘れない。必然的に頼りにされるという立場を悪用してまるで接客を学ぶ気持ちが無い怠け者と見える。俺はそういう人間が大嫌いだ。これ以後俺は何度もこの受付に行く事になったが遂に一度も礼を言ってやらなかった。
2004-03-19 12:39:16公開 / 作者:ラウンド ロビン
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実体験を着色する定で更新したいと思います。

頑張ります。
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