『炎の末裔』作者:堕天使 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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一人の青年が砂漠を歩いていた。

彼の名は『火渡 陽炎』

炎の使い手である。

陽炎は紅い髪に黒い瞳を持つ17歳の青年。

昔 西陸に住む火渡一族は何者かによって滅ぼされ

現在残った者達は逃亡中なのである。

太陽が彼を照らす。

彼独特の紅い髪が光によって光る。

陽炎は水を追い求めて歩き続けた。

が、

力なくその場にしゃがみ込む。

「・・・水・・・」

とだけ呟くとそのまま倒れ砂に顔を埋めた。

そこへ一人の男が陽炎に話しかける。

「おい、大丈夫か?」

男は陽炎の横にしゃがむと持っていたカバンから水の入った水筒を取り出した。

「!!」

陽炎はいきなり顔を上げると男の手から水筒を奪った。

そして一気に飲み干すと男を見て。

「あんたいい奴だな」

陽炎は真面目な顔をして言った。

「俺は火渡 陽炎・・・あんたは?」

「雷光だ」

雷光と名乗る男は見た目からして20代であろう。

大きなカバンを背中に背負い、ジーパンとコートを着こなしている

髪は茶色で目の色は黒。

「お前さん旅人か?」

雷光は陽炎の顔をまじまじと見つめながら言った。

「・・・そんなもんじゃないさ」

陽炎はゆっくりと立ち上がると全身の砂を払い落としながら。

「俺は・・・今逃亡中なんだよ」

「逃亡?」

雷光はハテナな顔をすると立ち上がる。

「そう、俺達火渡一族は何者かよって滅ぼされたんだよ」

陽炎は俯くと歯をギリっと言わせ

「俺の能力が一族中で一番高いから・・・だから狙われた」

陽炎は顔を上げ

「俺がいたから襲われたんだ・・・」

「・・・お前さん強いんだろ?だったら見返してやれよ」

雷光はニカッと笑い。

「見返す?」

「そうだ、自分はこれぐらい強いって所みれば相手は怯えるだろ?」

雷光は陽炎の肩に手を置き

そして優しく微笑む

「そういえばあんたは何処を目指して旅してるんだ?」

陽炎は下から雷光を見ながら聞いた。

「俺は何の当てもなく旅してる」

「つまり俺と同じって事?」

陽炎は顔をそのままにしながら言った。

「まぁそうなるな」

それを聞いた陽炎は顔を下にし

「あんた、俺をどう思う?」

「どうって?」

「化物の俺を・・・あっ」

陽炎はハッと口を押さえた。

「おい、今何て・・・」

雷光は怯えるような目で陽炎を見た。

「・・・俺は―・・・」

何かを言おうとした時向こうの方から爆発音が聞こえてきた。

その爆発音を聞いた途端陽炎の様子がさっきと一転する。

「来るなぁ!!」

「陽炎?・・・」

頭を抑え怯えるようにしゃがみ込む陽炎。

「一体どうしたんだ・・・?」

雷光が陽炎に触れようとしたその時

熱いものが手に触れる。

「うぉっ」

見ると手は火傷していた。

「来るなぁぁぁ」

陽炎は顔を天に向けて獣ように吼えた。

そして真っ赤な炎が辺りに広がっていく

その真ん中で蹲る陽炎。

「おいっ陽炎!!」

近づこうとしたその時彼は叫んだ。

「黙れ!!」

陽炎はゆっくりと顔を上げると雷光を睨んだ。

「俺は・・・俺は化物だぁっ!」

熱風が巻き起こった。

「うあああぁぁぁぁ」

紅い光が砂漠全体を包み込む。

そして次の瞬間炎の獣のような者がいた。

おそらくあれは・・・。

「・・・陽・・・炎?」

あの炎の獣が彼なのだろうか

雷光はそっと近づく。

獣は雷光を見ると吼えてきた。

「俺だ・・・雷光だ」

雷光は獣に手を差し伸べる

獣はその手を噛んだ

「・・・痛っ」

雷光は噛まれた手を離さなかった。

何故なら彼に自分だと教えたかったから・・・

「俺だよ」

獣は座り込むと炎を纏った。

そして

倒れる音が聞こえてきた。

「陽炎!!」

雷光は倒れている陽炎に駆け寄る

(こいつ・・・。)

「・・・ぅ」

陽炎は頭を押さえながらゆっくりと起き上がる。

「大丈夫か?」

目を開けると心配そうな雷光の顔が目に入る。

陽炎は思った。

(俺何してたんだ・・・?)

陽炎はよろめきながら立ち上がる。

「・・・行こう」

「行こうって何処にだよ」

「何処って、俺は向こうの町が気になる」

陽炎は砂山の向こうを見ると言った。

「爆発音があったろ?」

「あったな・・・」

「俺の強さを見せ付けてやれって言ったの雷光だろ?」

フッと微笑むと歩き出す。

「そうだな」

雷光も微笑むと歩き出す。

二人は町に向かって歩き出した。

目指すは砂漠都市「サバンサ」





どれくらい歩いたのだろう

幾度も幾度も砂が続いていて町が見えて来ない。

「おい、どれくらい歩いた?」

雷光は陽炎の方を見て言った。

「まだ1時間ぐらいしか歩いてないぜ?」

「1時間!?随分歩いたけどなぁ・・・」

唖然としている雷光に対して陽炎は平気な顔して

「早く行こうぜ?」

「・・・あぁ」

雷光は頭の中で『若いっていいよな』と言った。

だがあえて口にはしなかった

なにせ相手はからかうのが好きな青年だからだ。

言えばきっと返って来る『雷光ってホントおっさんだよな』と

「雷光ー?」

立ち止まってしまった雷光に話しかける陽炎。

「ん?どうした陽炎」

「どうしたって聞きたいのはこっちだよ」

陽炎は呆れた声に溜息を混ぜながら言った。

「早く行こうぜ?」

「わかってる」

雷光は足を動かす。

その時足音がした

砂しかないここにどうやって敵が近づいてくるのか

そして何処にいたのか・・・。

「誰だ!!」

雷光は音のなる方へ向いた。

「水之 雫様に向かってなんたる態度だ!!」

名前を聞いた途端陽炎は表情を険しくした。

(・・・水之・・・雫・・・)

陽炎はゆっくりと雫に近づいていく

「お前・・・何者だ!」

「火渡・・・陽炎だ」

名を口にすると眼で雫を睨む

「・・・火渡というのね・・・」

雫は陽炎に近づき

「聞いた事があるわ・・・」

「ち、近づくな!!」

陽炎は背負っていたカバンから剣を取り出すと

雫の胸に近づけていく

「お前!止めろ!!」

雷光が止めに入る。

「離せよ雷光!こいつが・・・こいつがっ」

陽炎の眼は変わってきていた。

(こいつはやべぇ・・・また、あれになっちまう)

「こいつが俺達一族の村を!」

陽炎の周りがどんどん温度を上げていく。

「お、落ち着け・・・あちぃっ」

「雫様!この者は・・・」

「火渡一族の若き末裔よ・・・」

雫はふっと口に笑みを浮かべ

「奇遇だわ・・・」

「うるせぇ!殺してやる!!」

剣を振り上げる陽炎に対し雫は武器を持っていなかった。

「雫様!!」

次の瞬間何かを弾く音がした。

水が陽炎を濡らした。

「くはっ・・・」

顔や体に付いた水を払い落としていく陽炎。

「あなたなどこれで十分」

雫は持っていた杖を振り上げる。

「水の精霊・ヴォルカス・・・この者に絶望の裁きを」

「・・・こ、これはっ」

「与えなさい・・・」

水の塊が何処からともなく現れたかと思った瞬間

目の前が真っ暗になった。

一体何が起きたというのか・・・。

「くっ・・・」

かろうじで攻撃を避ける陽炎

「ちっ・・・炎の神・ゼフィラ」

召喚した瞬間鈍い音がした。

「く・・・はぁぁ」

陽炎は倒れこむと吐血した。

「陽炎!!」

雷光は陽炎に近づく

そして

「お前さん達・・・こいつに恨みでもあるのか?」

「恨み?そんなものないわ・・・」

「じゃあ・・・何故・・・」

雷光は顔を険しくしながら問う

「この者は殺さねばならない者なのですよ」

「あいまいな理由で殺すんじゃねぇ!」

雷光は雫に殴りかかった。

「無礼者!!」

雫の傍に居た兵士が雷光の腹を刺す。

「うぐっ・・・」

血が雷光の服を汚した・・・

「・・・さぁ、とどめを・・・」

杖を持ち直し陽炎へ近づいていく。

「・・・眠りなさい」

「眠るのは・・・お前だ」

陽炎はゆっくりと立ち上がると雫の方へ向いた。

「眠るのは私・・・?」

「そうさ・・・」

突然熱風が雫を襲う

「何て熱さなの・・・まさかこれが」


火渡一族の末裔・火渡 陽炎なの?


「さぁ・・・来いよ」

それを見た雷光は叫ぶ

「陽炎!!止めろ!」

雷光の声は陽炎の耳には入っていない

陽炎の周りを炎が包む

「・・・っうぅ・・・」

自分の体を押さえつける陽炎

何かを押さえ込むかのように・・・

「くあ・・・ぁ」

「どうしたの?私を倒すのでしょう?」

雫は陽炎に問いかける。

「黙れ・・・ぇ」

炎が消え現れたのは眼の色をオレンジした陽炎であった。

「陽炎・・・」

覚醒は免れたものの・・・

この威圧感は一体・・・。

「かかってこいよ・・・水の化物さん」

「こやつ・・・」

兵士が5人、陽炎に向かって斬りかかってくる。

それに対し陽炎は余裕な笑みを浮かべていた。

鈍い音と同時に兵士3人が倒れた

「・・・さぁ、来いよ」

「この野郎・・・」

陽炎は炎を出現させると何かを唱え始めた

「・・・何だ?」

「炎の龍よ哀れなる者を灰と化せよ・・・」

炎が龍の形へと姿を変えていく

「・・・炎龍吼破撃!!」

炎の龍が兵士を跡形もなく灰にしていった。

「そういえばまだいたな・・・」

陽炎は雷光を見ながら言った。

「・・・おい、まさか・・・」

「そのまさかさ・・・」

拳に炎を灯し殴りかかる

「うわっ・・・」

なんなく陽炎の攻撃を避ける。

「正気を戻せ、陽炎」

雷光の声は怯えているようだった。

「おじさん・・・残念だったな・・・」

陽炎は不適な笑みを浮かべながら炎を出し

「燃えてなくなれ!」

「・・・くっ」

その時陽炎の拳が雷光の目の前で止まる

「う・・・くっ・・・」

片方の手で頭を抑えていた

「燃えろ・・・やめ・・・ろ・・・」

どうやら何かと戦ってるらしい

それは精神の奥に眠る陽炎の正しい心と憎しみに満ちた邪悪な心。

「殺せ・・・殺すな・・・」

陽炎はしゃがみ込んだ。

「うわぁぁぁぁ」

赤い光が砂漠全体を照らし出す

「ぐあぁぁぁ」

炎が陽炎を纏い始めた

(ヤベェ・・・このままではまた・・・)

雷光は立ち上がると炎に向かって走り出した

「陽炎!!」

炎に突進していく雷光

「来るな!!」

「しっかりしろ!」

服の所々が燃えているのに気がつき陽炎は言った。

「死んじまうぞ!!」

「俺なんてどうでも―・・・」

言葉を失った

雷光が陽炎を抱き締めてやっていたから。

「離せよ・・・燃えるぞ?」

陽炎は離れようと必死だった。

雷光は離さなかった。



ずっと孤独だった

毎日生きる事だけを考えてた

他の人とは違う血が

能力が

俺にはある

そんな俺をこいつは・・・


初めて知った人のぬくもり

俺はこいつの近くにいたい・・・



炎が消えた

同時に陽炎も正気を取り戻した。

「・・・俺・・・」

「気が付いたか?」

雷光は陽炎の顔を覗き込む

「雷・・・光・・・?」

そこへ雫が歩み寄り

「・・・その腕輪・・・貴方・・・」

雫は雷光の右腕に付けている黄色い腕輪を見た

「貴方は・・・『月影 雷光』?」

その言葉に雷光は言った。

「ほぉ・・・俺を知ってるのか?」

雷光は少々からかいながら言った。


月影 雷光

云わずと知れた最強の男

立ちはだかる者を己の能力で倒していく。

あの『月影 雷光』か・・・。



雫は笑みを浮かべると

「貴方とはいつか戦ってみたいものだわ」

そう言って砂漠から姿を消した。



その数日後

二人はやっと砂漠町「サバンサ」に辿り着いた

「やっと着いたな、なぁ、陽炎・・・・?」

そこには何故か陽炎の姿がなかった。

「おい、何処行ったんだ?あいつは・・・・って」

何と陽炎は食べ物の試食をしていた。

「おいっ」

「何だよ、雷光も食いたいのか?」

陽炎は手に持っていたソーセージを雷光に手渡す。

「あのなぁ・・・」

そう言いつつソーセージを食べる雷光

「お前、腹減ってんのか?」

雷光は呆れた眼で見ながら言った。

「いや、つい、食べたくなっただけだよ」

陽炎は無邪気な顔で雷光に微笑んだ

「そうか・・・」

雷光は町を見回し

「何処に止まるか決めようぜ」

「じゃあ、あそこでいい?」

陽炎が指差したのは見た目からして豪華な建物であった。




2004-03-15 05:01:08公開 / 作者:堕天使
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■作者からのメッセージ
途中になりましたがお許しをm(_ _)m
書ければ書こうと思ってます。
続きはまだまだ考え中です。
この作品に対する感想 - 昇順
ストーリー構成はとてもいいと思いますが、展開が速く、登場人物の事情なんかが曖昧になりがちです。そこの所をもっと詳しくすれば、もっと興味深い作品になると思いますよ。頑張って下さい。続編を楽しみにさせて頂きます。
2004-03-15 10:10:16【★★★★☆】DARKEST
初めまして。突然ですがおもしろいです。私もこういう自然の属性同士のお話は大好きですよーっ!
2004-03-15 15:24:00【★★★★☆】若葉竜城
計:8点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。